第50話 1560年6月『茶室』(2)
一条兼定
あー、言っちゃったー
今川氏真
おおっ! 結婚? おめでとさん
小早川繁平
こんばんは、私が最後のようですね
竹中重治
一条さんの妹さんとご結婚されたんですか? おめでとうございます。
安東茂季
いいねー、新婚さん。俺も側室欲しいなー
最上義光
伊東さん、おめでとう。前回は竹中さんが結婚したし、これで独身は北条さんだけかな?
一条兼定
言うのは最後にしよう、って言ったのに、言っちゃうんだもんなー
北条氏規
おめでとうございます。羨ましいなー。私も早く結婚したいです。
伊東義益
皆さん、ありがとうございます。滅茶苦茶、幸せです。いやー、戦国時代に転生してよかったー
『伊東さんも平成日本ではモテなかったのかな? 同類だとしたら、犯罪ともいえる様な若い嫁さんをもらった幸せは理解できる』
北条氏規
幾つですか? 奥さん何歳ですか?
伊東義益
数えで十五歳、同い年です。
北条氏規
十五歳っ! 数えですよね? 平成日本なら十四歳か。竹中さんの奥さんも十四歳と言っていましたよね?
竹中重治
ええ、そうです。数えで十四歳です。
北条氏規
皆さん、戦国時代を堪能していますね。私も若い、平成日本風の美人の奥さんが欲しい。
今川氏真
今から結婚相手を探せばいいじゃない。
安東茂季
そうそう、俺からしたら竹中さんと伊東さんは別格で羨ましいけど、これから自分好みの嫁さんをさがせる北条さんだって羨ましいよ。戦国時代に転生したと思ったら、既に奥さんがいたんだぜ。
最上義光
あー、それありますね。特に私なんかしがらみで雁字搦(がんじがら)めの奥さんだもんなー
『奥州探題、大崎義直の娘か。家格も奥さんの方が上だしいろいろと大変そうだよな』
北条氏規
今川さん、恩を感じているなら、平成日本風の美少女の嫁さんをお願いします。
伊東義益
今川さん、祖母の寿桂尼(じゅけいに)さんって京都の名家の出ですよね? 公家のお姫様とか伝手あるんじゃないですか?
今川氏真
婆さんに打診したんだけど、何人か呼び寄せて北条さんと実際に合わせる。その上で北条さんに選んでもらうつもりだ、って話したらこっぴどく怒られたよ。
公家のお姫様を何だと思っているんだっ! ってさ。
『当たり前だ。俺だってそれくらい分かる』
一条兼定
公家のお姫様だと、北条さんの好みの容貌のお姫様を探すのが大変じゃないかな?
北条氏規
一人だけ独身とか嫌だー!
小早川繁平
私も独身です。お仲間ですね。
最上義光
あー、そういえば小早川さんも独身でしたね。ってか、いつの間に居たんですか?
小早川繁平
え? 皆さんが伊東さんに祝辞を述べているあたりです。
竹中重治
気付かずに盛り上がっていて申し訳ありませんでした。
伊東義益
小早川さん、申し訳ありません。どうも私も少し浮かれすぎていた様です。
安東茂季
小早川さんは結婚とか難しそうだよね。
小早川繁平
伊東さん、ご結婚おめでとうございます。いやー、嫁さんをもらえるなんて羨ましい。
『小早川さんの現状を考えると、結婚は無理そうだよな。毛利元就がそんなもの許すはずないよなー。つーか、そんな事この場では言えないな』
今川氏真
いたいた。小早川さん、ログの上の方で見つけたよ。何だか、伊東さんの幸せメッセージと、それを祝福する皆のメッセージに完全に埋もれてたよ。
安東茂季
何というか、運がないというか、持ってないよね、小早川さん。
小早川繁平
運とかそういうのから、完全に見放された感じですよね。自分でも分かっています。
『今川さん、安東さん、さすがにそれは無い。小早川さんも、寂しそうな姿が液晶モニターの向こうに見えるようだ。正直、掛ける言葉が見つからない』
今川氏真
まあ、小早川さんは置いておいて、北条さんの嫁さんは本当に急いで探さないと、前回の話じゃないけど兄嫁がそのまま北条さんの嫁さんに収まりそうだよね
北条氏規
やめてー、それだけは嫌だーっ! 武田を弱体化しましょう。今回の『茶室』の議題にそれを改めて提案します。
『武田弱体化は賛成だが、今ここで切り出せる雰囲気じゃないよなあ』
小早川繁平
前回、最上さんが北条さんの奥さんを探すような事を言っていませんでしたっけ?
最上義光
それねー。手頃な美少女がいたんだけど、しがらみがなー。
一条兼定
しがらみ?
伊東義益
四男とはいっても、北条さんは養子に出ていない北条家の最後の男子ですからね。しかも未婚。その正室に自分の娘や血縁を送り込みたいと思う大名は多いでしょうね。
北条氏規
絶対に美少女と結婚したい。俺が数えで十七歳というか、実際は十六歳。四・五歳年下って考えると十一歳か十二歳の美少女かな?
『いや、なぜそこで四・五歳年下って考えるんだ?』
竹中重治
いや、北条さん、さすがにそれは年下過ぎるでしょう。子どもじゃないですか。
一条兼定
いやいや、竹中さんは人の事言えないよ。
安東茂季
竹中さんだって、平成日本でいったら十三歳の嫁さんをもらったじゃないですか。
北条氏規
もらっただけじゃありませんよ。新婚生活をもう二・三か月楽しんでいますよ。
最上義光
なんだろう、竹中さんを伊東さん以上に許せない気がしてきた。
竹中重治
申し訳ありませんでした。私の失言です。北条さんの嫁さん探し、協力させて頂きます。
北条氏規
ありがとうございます。竹中さんなら分かって下さると思っていました。
一条兼定
大北条の跡取りになるかも知れない、となると大変だな。俺だったら気軽に領地を歩き回って好みの娘を見つけちゃうけどな。実際に側室候補を三人見つけたよ。
伊東義益
え? まさか若い娘を三人も権力にものをいわせてさらって来たんじゃないでしょうね。
竹中重治
一条さん、村娘に入れ込んで家臣の人望無くすのは死亡フラグですよ。
一条兼定
大丈夫、大丈夫。さらって来ていないし、三人も囲うつもりないから。ちゃんと、一人に絞り込んでから、家臣と村の顔役に根回しをした上で迎えに行くからさ。
『村娘に手を出す気満々だよ、この人』
北条氏規
それいいですね。正室は難しいかも知れませんが、側室だったら村娘の方がいいかもしれません。特に関東は三河辺りに比べると、割と平成日本風の顔立ちが多い気がします。
伊東義益
今川さんを助けに行ったときにそんな事まで見ていたんですね。頭が下がります。
小早川繁平
北条さんは本当に行動の一つ一つを無駄にしませんね。見習わせて頂きます。
最上義光
全員揃ったんだし、桶狭間の戦いの話をしましょうよ。それから農作物と道具開発、交易について情報交換。
その後で、今後の課題となる、人材スカウトや北条さんの嫁さん探しとかの話をしませんか? 何だかこのままじゃ話が進まない感じですよ。
北条氏規
そうですね、申し訳ありませんでした。では、竹中さんの稲葉山城奪取の話、次に桶狭間、その次に尾張半国奪取でしょうか?
竹中重治
時系列的には桶狭間が最後の方が良さそうですよ。
安東茂季
竹中さんの言う様に、桶狭間最後の方が聞く側も分かり易いかな。
一条兼定
俺もそれに賛成。
竹中重治
では、時間も勿体無いので私から簡単にお話しします。
◇
稲葉山城への事前工作。史実通りに弟の久作を人質として差し出し、仮病を使った事から話を始めた。
その後も皆の質問に都度答えながら、美濃の傀儡国主として土岐頼元を据え、北尾張には織田信安をやはり傀儡国主として据えた事を伝える。
北条氏規
やはり血縁は大切ですか?
竹中重治
力を持ってしまえば、血縁など無視して朝廷工作で位なりを得るというのも有りでしょうが、今の自分の状況だとどうしても血縁を無視できませんでした。
『まあ、主に光秀と重光叔父上の入れ知恵なんだけど』
最上義光
血縁かあ、頭痛いなー。私のところなんてグチャグチャですよ。
伊東義益
この時代だと、多かれ少なかれ血縁に振り回されますよね。出来れば利用したいところですけど。
一条兼定
竹中さん、位が必要なら言ってよ。朝廷やその周りの貴族への献金だけで朝廷工作するよりも俺の一言があった方が確実だよ。
今川氏真
俺も朝廷には顔が利くはず。婆さんの機嫌が直ったら俺も協力するから、もう少し待ってな。
竹中重治
はい、その時はよろしくお願い致します。
安東茂季
それで、岡部元信の話も聞かせてもらえませんか? 個人的には岡部元信の反応の方が興味ある。
竹中重治
では、続けますね。
◇
安東さんにうながされる形で織田信長との会談から岡部元信との交渉、さらには大高城を織田家に返還する際のやり取りに付いて語った。
そして最後に、海賊たちの行き過ぎた侵略行為を伝え、今後、俺たち全員の問題として海賊とどう付き合って行くのかを議題として挙げる。
竹中重治
現在受けている迷惑は小さいものです。ですが、近い将来、太平洋側の交易海路として九州から関東までつなげる事を考えると早いうちに彼らを配下に治めた方がいいように思えます。どうでしょうか?
今川氏真
海賊はうちも欲しいな。従順な奴ね。
北条氏規
竹中さんが熱田か津島を抑えたら海で繋がります。そう遠い事でも無いでしょうから海賊や海路についても話し合いましょう。
伊東義益
海路、いいですね。我々が太平洋側の海路を牛耳る事が出来れば、他国を経済的に追い詰めるのは容易くなりますね。
一条兼定
この『茶室』を使って相場操作するだけで十分じゃないの?
今川氏真
相場操作ってやっぱり秋まで待たないと駄目かな? 早くやってみたいんだよね。
『後を継いで、早々に実績が欲しいのかな?』
竹中重治
米が一番大きな影響を与えます。ここは秋まで我慢してください。というか、秋に大きな収穫が出来るように開墾や技術革新を頑張りましょうよ。 >今川さん
北条氏規
竹中さんの言う通りです。今やるべき事は悪戯に相場操作をするのではなく、人材の確保と生産力の底上げが最優先です。
最上義光
話が逸れているようですね。海賊や海路、内政面については桶狭間の戦いの話を聞いてからでいいですよね。
小早川繁平
ですよね。今川さんと北条さんのお話を聞いてから海賊や海路を含めた内政の話をしましょう。
竹中重治
そうですね。すみません。何だか話を変な方向に持って行っちゃったみたいです。
今川氏真
いいって、竹中さん。気にしないでよ。じゃあ、俺から話をするね。正確には桶狭間の戦いじゃなくて、岡崎城の攻防戦なんだ。
◇
そこから、今川さんと北条さんによる岡崎城での攻防の話がしばらく続く。全員が最も驚いたのが、やはり北条さんの騎馬での戦い方と、北条内部を説き伏せての岡崎援軍の過程だった。
興味深かったのは、今回の岡崎攻めを松平元康と石川家成の二人で共謀して軍勢を動かした事にしていた。
松平元康は討ち死にしているので形の上では石川家成が一人で泥を被っている。いや、被ることで他の家臣たちとその家族の安全を今川さんが保障した。
そして、最後に松平元康の配下武将とその人質たちの話となる。
今川氏真
松平元康の配下だった武将たちからあずかった人質は、全員無条件で解放した。配下武将にも、家族を連れてどこへでも行っていいと言ってある。もちろん、今川家に残るのも自由だ。
何で、人材のスカウトは取り決め通り早い者勝ちだ。好きに声を掛けてくれ。
『岡崎城での攻防の話になった途端、今川さんに抱いていた、わずかな違和感が腑に落ちた。口調というか、チャットに表れる文章は然程変化が見られない。だが、明らかに考え方がしっかりしているというか、一本筋が通ったものがある。一言で言えば覚悟だろう』
安東茂季
太っ腹だね、今川さん。
今川氏真
三河の領地については織田信長に一旦取らせたいから、竹中さんは三河を切り取るのを待って欲しい。
竹中重治
もとより三河に手を出すつもりはありません。安心してください。一時的に信長が息を吹き返しそうで歓迎はしませんが、仕方ありません。
『信長は大高城を手に入れた。三河を狙える。まさか今川さんから言い出すとは思わなかったが、信長に三河を取らせるのは上策だ。だが……』
最上義光
せっかく簡単に手に入る三河を織田信長に取らせるのはなぜですか?
今川氏真
気持ちの問題だよ。
織田信長が容易に切り取れる三河を切り取る。その後、織田に支配された三河を今川が三河侍と力を合わせて取り返す。この場合の三河侍ってのは松平元康の配下だった連中な。
『これは成功する。織田信長の置かれた状況を考えれば、目の前に転がっている三河に手を出さずにはいられないはずだ。三河の住民と松平元康の配下はほとんど今川さんに付く』
その後、少しの間、今川さんと北条さんの今川家再興計画が語られた。
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