第26話 1560年5月『茶室』(2)
ひとしきり、今川さんの人材確保の話題で盛り上がった。
北条氏規
今川さんの井伊直親と蒲原氏徳を今川義元から引き離して手元に置けたのはファインプレーですね。
今川氏真
ありがとー。武田への警戒と尾張遠征の援軍を兼ねてってことで何とか二人だけだけど引き剥がせたよ。
竹中重治
その二人を引き剥がせたのは大きいですよ。
最上義光
動きがあって羨ましいです。私の方は武将というよりも無名の人たちを雇い入れて内政に力を注いでいます。竹中さんを見習って椎茸栽培を拡張しました。
安東茂季
うちもそんな感じですね。兄の愛季の顔色を伺いながら無名の小物たちを雇ってコツコツ内政です。
やっぱりと言うか、何と言うか、東北地方で石鹸を大量に売り
最上義光
商売もそうですが、人材の確保が思うように行きません。
小早川繁平
人材かあ(遠い目)。有名どころを配下にできる人たちが羨ましいです。
一条兼定
北条さんが上泉信綱。竹中さんが百地丹波と島左近でしたっけ? 羨ましい。こちらは人材の確保ができていません。商売は割と上手く行っているので金で言うことを聞かせるしかないか。
竹中重治
そうですね。こんな雰囲気のところ言い難いのですがあれからまた人材が増えました。明智光秀です。斉藤利三もついて来ました。
最上義光
何だってーっ! 明智光秀っ! すっごい羨ましい。
小早川繁平
おおおお! 超有名人じゃないですか。
今川氏真
明智光秀かあ、裏切られないように気をつけないと(笑
竹中重治
ありがとうございます。
今川さん、まったくです。裏切りには注意して用いるつもりです。まだ登用したばかりですが軍事に内政にと活躍してくれそうな感じです。
伊東義益
竹中さん、おめでとうございます。いやーよかった。この雰囲気なら言えそうです。
滝川益重を一族ごと登用しました。ええ、もちろん金です。
竹中重治
まさかの滝川益重! 村上水軍といい、素晴らしい成果ですね。心強いです。
伊東義益
ありがとうございます。竹中さんにそう言ってもらってほっとしました。ちょっと後ろめたかったので。
竹中重治
いえいえ、人材の登用は早い者勝ちですよ。気にしないでください。
一条兼定
うわー、二人とも凄いな。俺も山中鹿之助に声をかけようかなー
最上義光
さすがにそれは無理でしょう。
小早川繁平
そうですね、やる前から結果が見えていますよ。
竹中重治
えーと。実は山中鹿之助に声を掛けました。ええ、皆さんのご想像通り見事に振られました。
今川氏真
竹中さんがそんな無謀なことをするとは。俺でも無茶だと思うよ。
北条氏規
同じく無茶をしました。正木憲時を一族の半分ほどまとめて登用です。まさか来るとは思いませんでした(笑
もちろん、金にものを言わせています。
安東茂季
ええー、里見との関係大丈夫なんですか?
北条氏規
駄目でしょうね。
『いや、北条さん。らしくないな。軽すぎるでしょう』
北条氏規
まだ他にも声を掛けているのでそれ次第のところはあります。
今川氏真
というと、調略でいい所まで行けそうってこと?
北条氏規
ですね。もちろん取らぬ狸の皮算用になる可能性も十分秘めています。いや、そっちの方が大きいかな?
『北条さんのタイプした文字から伝わってくる雰囲気では、然程重大なこととは捉えていない。まだ何かあるようだし、ここは口出ししないでおこう』
小早川繁平
北条さん、何だか簡単にあしらうつもりに聞こえますよ。
一条兼定
そうだね、隠し玉とか持っていそう。白状しちゃいないよ。
北条氏規
いやいや、本当に隠してなんていません。いろいろと仕掛けてはいますが果たしてどれが成功するか。成功の目処が立ったらここで報告します。
それよりも家督争いに発展しそうでそちらの方が悩ましいです。
『家督争い? 氏政死去の影響か』
今川氏真
順当に行けば北条氏照じゃないの?
最上義光
北条氏邦が何か言ってるんですか?
竹中重治
氏邦はトラブルメーカーのイメージありますね。
北条氏規
氏照は大石氏に、氏邦は藤田氏にそれぞれ養子に行っています。
どちらも北条家に戻って家督を継げばその子供は大石氏なり藤田氏の次期当主となって北条家との繋がりが強くなります。
『なるほど、気の長い話だが北条家の当主の息子が自分たちの家の当主となれば権勢を振るえる可能性が出てくるな』
一条兼定
なるほど、それで氏照派と氏邦派を名乗ってその実は大石派と藤田派に分かれて内紛の可能性が出てきたと。
北条氏規
いえ、そこまでは発展していません。というかさらにここに私が絡んできます。
私はどこにも養子に出ていないので北条家の人間です。加えて未婚。
安東茂季
未婚ってのはマイナスじゃないの? 後ろ盾になる
伊東義益
そうでもないでしょう。ここで北条さんに娘を嫁がせて北条の跡取りに出来れば北条家の中でも一歩リードできる。
北条氏規
えーと。話が飛んでいますね。父である氏康は健在なのですぐに跡取りとかにはなりません。取り敢えず嫡男を誰にするかと言った程度です。
まあ、それでも十分に争いの種にはなりそうなんですけどね。
竹中重治
なるほど、それで思うように動けなくなってしまった、と言う訳ですか。
北条氏規
ええまあ。それもありますが、もっと恐ろしい話が持ち上がりました。氏政の奥さんは武田晴信の娘なんですが、この兄嫁と私を結婚させようとする勢力が出てきたんです。
『うわっ、それは恐ろしい』
最上義光
うわー、嫌だなー、それ。
伊東義益
その勢力の考えは分かります。武田との結びつきをそのままに家中の争いを最小限に留めようってことですね。分かるけど、嫌だな。
一条兼定
ご愁傷様です。
竹中重治
お気の毒さまです。
『恒姫との結婚や新婚生活ののろけ話が出来る雰囲気じゃなくなってきたな』
今川氏真
まあ、何ていうかさ、強く生きなよ。正室は正室で必要と割り切って、側室に生き甲斐を見出すってのもありじゃないかな。
小早川繁平
北条さん、私から見たら結婚出来るだけ幸せですよ。私なんて今の軟禁生活からどうやって抜け出すかで頭がいっぱいです。下には下がいるんですよ。
北条氏規
いやいや、ちょっと待ってください。小早川さんの前でこう言うのも気が引けますが、兄が死んだからってその嫁がシフトしてくるとか勘弁してください。何か知恵とかありませんか? 竹中さん、ほらっ。
『いや、ほらっ、とか言われてもなあ』
今川氏真
その兄嫁を武田に送り返す訳には行かないの?
北条氏規
それも画策中です。ですがその場合、武田とは完全に敵対関係に戻ります。親父の氏康が納得するかどうか。
最上義光
それが分かっていて画策しているってことは、北条さんのなかでは兄嫁との結婚はNGってことですね。
北条氏規
ええ、絶対にありません。
竹中重治
頑なですねー。まあ気持ちは分かりますが。
北条氏規
竹中さんも他人事じゃないでしょう? 戦国武将としては適齢期だしこれから政略結婚でどんな娘がやってくるか分かりませんよ。
『あれ? 北条さんから振ってきたな』
竹中重治
実は先日結婚しました。
伊東義益
何ですって? 報告してくださいよー。おめでとうございます。
北条氏規
おめでとうございます。羨ましい。
竹中重治
相手は安藤守就の二の姫で恒姫、十四歳です。これが平成日本風の美少女なんですよ。二重で堀が深くて目が大きくまつげが長いんです。しかも色白で気立てがいいんですよ。
伊東義益
誰もそんなことは聞いていませんよ(笑
北条氏規
自分ばっかり幸せにー(苦笑
安東茂季
いいなー、羨ましい。俺も早く結婚したいよ。
一条兼定
平成日本風の美少女かあ、いいなあ。そんな美少女がいたら村娘でもいいから側室にしちゃおう。
最上義光
家中があれる原因ですよ。
竹中重治
領内の若い娘を無理やり連れて行く領主って、風聞が悪すぎますね。
伊東義益
でも、この時代なら側室とは普通ですよね?
竹中重治
あれ? 知らないんですか、伊東さん。一条さんの妹を正室に迎えておきながら他の女に手を出して、家を傾けているんですよ、史実の伊東家は。
伊東義益
え? 何ですか、その不吉な嫁は。
一条兼定
俺の妹だからね、言っておくけど。
伊東義益
そうでした。申し訳ありません。
竹中重治
まあ、伊東さんは側室とか持たずに嫁さん一筋のほうが生き残れそうだよね。
小早川繁平
いいなあ。嫁さん羨ましいです。これで独身は私だけか。一番年上なのになあ。
北条氏規
小早川さんも気の毒なのは分かりますが、今の私は眼前に不幸が迫っています。
一条兼定
武田晴信の娘でしょう?
北条氏規
後ろ盾としても怖すぎます。そんなことよりもどこかに手頃な娘はいませんか? 最上さんのところはどうです? 親戚に年頃の娘が大勢いるでしょう?
最上義光
いやまあ、それは沢山いますけどね。どうやって婚姻までもって行きますか? 何だか無理そうな気が凄くするんですけど。
北条氏規
金鉱の採掘と石鹸でお金ならあります。礼金は弾みますよ。
最上義光
どんな娘さんが好みですか? 言って下さい。探し出して見せます。
北条氏規
ありがとうございます。最上さんならそう言ってくれると信じてました。
安東茂季
うわ、金で嫁を買ったよ。
伊東義益
まあ、金も魅力のうちです。何と言っても今の状況では仕方ないでしょう。
北条氏規
案があるので協力してください。というかその準備をお願いします。
安東茂季
それは桶狭間の戦いよりも先に?
北条氏規
同時進行でお願いします。
北条さん曰く、この一月弱の間、考えに考えた案を皆で吟味しさらにそれぞれの立場から支援できそうなことを次々と出し合った。
伊豆で発見した金鉱を氏康に献上して尚且つ、北条幻庵を味方に引き入れることで婚姻の延期は成功。
問題は再び持ち上がるまでに北条氏康が納得する嫁を探し出して早々に結婚することだ。
そこで問題になるのは北条と武田との関係。
北条とはいえ強力な武田と事を構えるのは歓迎しない。ならどうするか。事を構えてもいいくらいに武田を弱体化する。桶狭間の戦いで織田信長を追い詰めた後、メインターゲットを織田信長から武田晴信へ変更する。
個人的には継続して信長をメインターゲットとして滅亡まで持って行きたい所だが止む無し。
その後武田弱体化計画の話し合いを経てようやく内政と人材へと話題が移った。
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