第19話 1560年3月『茶室』(3)

 そして始まる自慢話。現代知識を活かしての内政無双のお話なので自然と全員のテンションが変な方向に上がっている。


 北条氏規

 って感じで、金鉱を発見しちゃいました。もちろん親父や兄、家中の主だったものには内緒です。


 竹中重治

 え? それ、大丈夫なんですか? 変な感じに疑われたりしませんか?


 北条氏規

 どうでしょうね? 何となく親子関係と兄弟関係は良好なので許してくれそうです。もう一つくらい見つけたら報告予定。


 一条兼定

 うわー、いいな。何だか聞いているとすぐにもう一つくらい金鉱を見つけちゃいそうですね


 最上義光

 伊豆は金鉱が複数あるからすぐに見つけちゃいそうだ。羨ましい限りです。うちにも産出量は少ないけど金鉱があったはずだし頑張ってみるか


 今川氏真

 いいなー、金鉱あるところが羨ましい。


 竹中重治

 いや、今川さん。今川さんのところも金鉱ありますよ。今回領地に金鉱無いのは私だけじゃないのかな? もちろん産出量の差は大きいですけどね。伊豆が圧倒的に多い。


 伊東義益

 最大の金鉱って越後でしたよね? 越後を奪うのは無理だろうなあ。


 竹中重治

 軍神、長尾影虎ですからね。地理の問題もあります。頑張れば最上さんが何とか行けるかも。


 最上義光

 勘弁してください。どうせ頑張るなら他のところで頑張りますよ。ジャガイモ、カモーン!


 伊東義益

 OK! ジャガイモ、の種芋を手に入れましたよー。欲しい人は取りに来てください。


 一条兼定

 行くよー、行っちゃうよ、ジャガイモ貰いに。


 小早川繁平

 伊東さん、私もジャガイモお願いします。たった一人の家臣ですが向かわせます。


 伊東義益

 じゃあ、博多あたりで受け渡しをしましょう。暗号とか決めて。


 小早川繁平

 分かりました、暗号は『山』『川』ですか?


 伊東義益

 それだとベタすぎるので『茶』『室』で行きましょう。


 小早川繁平

 了解です。『茶』『室』で。そうそう、私、硝石も少量ですが作りましたよ。


 今川氏真

 糞尿にまみれて?


 小早川繁平

 ええ、糞尿にまみれました。もう、周りからは気が狂ったと思われたようです。


 最上義光

 すげーっ! 私は部下にやらせました。


 一条兼定

 俺は部下経由で農民にやらせた。


 竹中重治

 私も部下にやらせました。農民にやらせて情報が漏れるのが嫌だったので。


 一条兼定

 しまった! 情報が漏れるのを考えていなかった。今度から気をつけます


 伊東義益

 私も部下にやらせました。


 安東茂季

 俺も部下にやらせた


 北条氏規

 私も部下にやらせました。本当、少ししか取れないんですよね。実用性皆無です。


 竹中重治

 自作の硝石の他、輸入製品を扱っている商人から硝石を買ってそれなりの量の火薬を作成しました。


 

 さすがに火薬の話題になると会話が弾む。その後しばらく火薬の製造に関する苦労話を装った自慢話が続いた。

 驚いたのは火薬の作成に手を出した六名全員が一回で成功していることだ。俺たちの成功事例もあるし、この分なら今川さんと小早川さんも一回で成功しそうだ。

 

 一条兼定

 小早川さんが椎茸栽培を裏庭で始めたって言っていたけど皆も椎茸栽培はやってみましたか?


 伊東義益

 やりました、椎茸。同じように裏庭の一画に椎茸栽培用の専用区画を作りました。そこで温度とか湿度、日当たりなんかを少しずつ変えて実験しています。

 

 最上義光

 私も伊東さんと同じような感じです。最初に菌を捜すのが大変でした。


 竹中重治

 私はもう一歩進んで一部の領民にお願いして何箇所かで実験を兼ねて栽培を開始しました。どちらかというとぶっつけ本番での実用化の意味合いの方が大きいです。


 北条氏規

 そうか、この時期に本格的な栽培を始めないと、次は来年になってしまうんですね。私も明日には実験施設を拡大するようにします。


 

 その後も農作物や試験的な二期作の話題でひとしきり盛り上がった後で、伊東さんが『ところで』と話を変えた。



 伊東義益

 磁器とガラスの方はどんな感じですか? 私の方は磁器まで手が回っていませんがガラスの方は幾つか試作品が出来上がってきました。


 


 伊東さんの振った話題に次々と答えが書き込まれていく。

 今川さんと小早川さんは誰もが予想したようにどちらも未着手だった。一条さん、最上さん、北条さん、安東さんは磁器の製造に着手したばかり。そして俺はガラスの製造に着手したことを伝えた。



 今川氏真

 何だ、磁器もガラスも誰も成功していないのか。


 最上義光

 いや、今川さん、そう言うけど難しいんですよ。何しろ試行錯誤しながらですからね。


 北条氏規

 そうですね、どうしてもさっき話題になった火薬の作成に力を注いでしまいますよね


 一条兼定

 いやー、北条さんは金鉱の発掘じゃないんですか。


 安東茂季

 そうそう、磁器やガラスだけじゃなくて他にもいろいろとやっているからね。


 竹中重治

 磁器も大変なようですね。ガラスも苦労しています。


 伊東義益

 ガラスは私と竹中さんだけですね。ガラスが出来ると南蛮貿易の貿易品としてだけじゃなく、それを利用しての瓶詰めが売れそうですからお互いに頑張りましょう。


『瓶詰めか。考えていなかった。単純に輸出品くらいの考えだった。瓶詰めにして売ればただの野菜が高値に変わる。場合によっては技術を売れるか』


 竹中重治

 瓶詰めって十九世紀の発明品ですよね。瓶詰めに使えるだけのガラスとなると少し時間掛かりそうですね


 北条氏規

 なるほど、瓶詰めですか。それは面白そうですね。我々も磁器を頑張るのでガラスの方、よろしくお願いします。


 

 その後また磁器とガラスの話題とそこからの流れで輸出用の商品ラインナップの充実について話し合いをした。

 南蛮貿易の有用性は分かっていても対価としての輸出品に頭を悩ませていたのは同じだ。そして、この辺りの商品ラインナップの充実も次回までの課題としてそれぞれが持ち帰ることになった。



 俺は『茶室』の雰囲気が一段落したところで提案を切り出した。



 竹中重治 

 ところで、相談なんですが秋になったら米相場で一儲けしませんか?


 

 俺のそんな一言に全員が即座に興味を示した。『茶室』の画面は言葉少なく続きをうながす文字が次々と書き込まれていく。

 

 安東茂季

 知識が必要とか?


 竹中重治

 いえ、そんな難しい話ではありません。米の収穫に合わせて米を買い集めて高騰させる。隣国が米不足などで価格が十分に上がったところで米を放出。安くなったらまた買い集めて高騰するまで保管。高騰したら放出とこれを繰り返して適当なところでどこかの大名にジョーカーを引かせる。


 伊東義益

 なるほど。米を誰がどれくらい備蓄していていつ放出するかなんて誰にも分からないよね。


 北条氏規

 そうですね。ここの八名以外は分からないでしょうね。価格操作し放題な気がします。試してみる価値はあるのではないでしょうか。


 最上義光

 いいねー、それ。乗った。


 一条兼定

 俺も乗らせて。それって最初からジョーカーを引かせる大名は決めておく感じですか?


 竹中重治

 そうですね。ある程度米の流れとか時期を決めてからの方がスムーズに進むと思うのでジョーカーを引かせる大名も当たりをつけておく必要があります。


 安東茂季

 やりましょう。上手いこと敵対する大名をはめられれば経済的に追い詰められるね


 今川氏真

 いいねー、俺が国主になったら是非参加させてよ。


 小早川繁平

 米相場を操作できるなら確実に儲かります。この時代の他の大名や商人じゃ太刀打ちのしようがありませんね。たいして米を売買できませんが参加させて下さい


 竹中重治

 では、いつ頃やるかは桶狭間の戦いの次の『茶室』で話し合いましょうか。



 俺の問いかけに全員が二つ返事で賛成してくれた。


『よし、これで秋以降はお金に困ることは無くなりそうだ。少なくとも困窮することは無いだろう』


 その後、桶狭間の戦や小早川さんへの商人の紹介、ジャガイモの受け取りなどをはじめとして話題となった事柄の再確認をした。

 再確認の間も次々と補完事項が持ち上がる。余談も含めて次回、恐らく桶狭間の戦の直前となる『茶室』までにやらなければならない事が山のように積み上がった。


 こうして、第二回の『茶室』が終わった。

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