第18話 1560年3月『茶室』(2)
さて、桶狭間の戦への関与について話し合う事となったところで『茶室』の発言がピタリと止まった。
『まあ、皆自分と直接関わらない話だから遠慮はあるよな』
竹中重治
今川さん、義元を見殺しにするのは決定としてそこまでの流れとその後の今川さんの予定している動きを教えて頂けますか? 構想が固まっていないなら途中のもので構いません。
今川氏真
分かった。尾張侵攻作戦には俺が口を出すのは無理だから史実通りに進める。皆が言っていた松平元康を独立させちゃだめだっていうのも分かったから俺はこれの阻止に動く。
『おお、意外とまともじゃないか』
今川氏真
留守の兵士のうち何人かを引き連れて桶狭間の戦当日に、先に岡崎城へ入って松平元康を待つ。戻ってきた松平元康に敗戦の責任を取ってもらって首をはねる。
『おいおい、強引すぎないか?』
一条兼定
ちょっと、さすがにそれは無理があるんじゃいかな? どうやって責任を押し付けるの?
今川氏真
そこは内応して敵を義元のところまで呼び込んだとか何とか。多少強引でも無理があっても首をはねちゃえばおしまいだよ。
『戦国武将だし多少の強引さは必要な要素かもしれないな。あれ? 義元どこへ行った? まさか信長まかせってことはないよね?』
北条氏規
それで、その後はどうするんですか? 首をはねた後の処理とか。
今川氏真
首をはねた後の戦国時代独特の処理とか、細かいことは部下に任せる。俺は国力を充実させるために当面は現代知識を使っての内政に専念する。
『いろいろとダメだろう、今川さん。そもそも聞きたいのはそんなことじゃないのでは?』
伊東義益
今川さん、それダメなやつですよ。史実の氏真が義元の報復戦を行わなかったのを理由に松平元康が独立したくらいです。ポーズだけでも報復の姿勢を見せた方がいいです。
最上義光
そうですね、家中から腰抜けとか思われかねません
今川氏真
そうかー、報復戦までは考えておくよ。それよりも竹中さんは何か意見ないの? 自分のことでしょう?
『こいつ……義元じゃなくてお前を見殺しにしてやりたくなってきたよ。まあいい。これは義元が命からがら逃げ
竹中重治
では、美濃とその周辺の情勢、工作状況についてお話しますね。先ず、美濃ですが国主の斉藤義龍の寿命はそう長くありません。史実よりも早く他界します。今年一年はもたないでしょう。
北条氏規
やっぱり史実と微妙に違っていますよね? 話の腰を折って申し訳ありませんが、嫡男の氏政が昨日落馬で他界しました。もちろんこれは秘密にお願いします。
今川氏真
おお、北条さん風向きがいいね。あと二人だね。
『あと二人だね、じゃないだろっ!』
北条氏規
いや、今川さん、そんなお気楽な話じゃありません。氏政の奥さんは武田晴信の娘です。三国同盟崩壊の引き金になるかも知れません。竹中さん、すみません。影響があってはいけないと思って先に話しました。
伊東義益
北条、武田、今川でそれぞれの嫡男が国主の娘を嫁に迎えての三国同盟ですからね。
竹中重治
北条さん、ありがとうございます。今のところ大きな影響はないと思います。では、話を再開しますが、途中でも思うことあればどんどん発言お願いします
『影響がないのは今だけだろう。これは程なく影響がでそうだな』
竹中重治
百地丹波というよりも、百地三太夫といったほうが分かりやすいかもしれませんね。百地とその一党、忍者を丸ごと配下に出来ました。それと蜂須賀正勝とその一党も配下に出来ました。
一条兼定
忍者? すげー恰好いい
今川氏真
忍者いいねー、俺も欲しいな
北条氏規
百地丹波って上泉信綱以上に護衛に適していますよ、いや、羨ましいです。おめでとうございます
最上義光
忍者、いたんだ
安東茂季
東北にも忍者っているのかな? 何にしても、おめでとうございます
伊東義益
百地三太夫かあ、いろいろと情報操作してくれそうですね。
小早川繁平
なるほど、武将だけじゃなくて忍者とかも配下として考えられるんですね。参考になります。
竹中重治
皆さん、ありがとうございます。
『予想はしていたが百地丹波、忍者への食い付きが異常にいいな。蜂須賀正勝が聞いたら怒り出しそうだな。百地丹波はむせび泣くな』
竹中重治
この二人と美濃に身を寄せている織田信安を利用して尾張の武将に調略を仕掛けます。並行して忍者を使って北畠が尾張を狙っていると噂をばら撒いて、実際に北畠に見せかけた攻撃と尾張からの報復に見せかけた攻撃、小競り合いを演出します。
『ここまで、誰も何も言ってこない。どうやら俺の話しに耳を傾けてくれているようだ』
竹中重治
さらに織田から美濃のけん制に近江の六角や浅井と手を結ばれないように先に手を打ちました。内々ですが西美濃勢と浅井とで不可侵を結びにいっている最中です。これで浅井の戦力は六角に振向けられるので六角も浅井も美濃どころではなくなる予定です。
桶狭間の戦では西美濃勢が織田信安と呼応して尾張に攻撃を仕掛けるので、信長が桶狭間の戦で勝利しても大きく勢力を伸ばすことは出来なくなると思います。
『俺の計画通りなら信長の力を大きく削ぐことが出来る。港を引き続き押さえられたままなのが悔しいが仕方がないだろう』
竹中重治
その後は全員で織田と徳川の有力武将を勧誘しましょう
北条氏規
ご馳走様です。ありがたく調略に向かわせて頂きます
安東茂季
遠いよ、分かってはいたけど遠い。
最上義光
そうですね、ちょっと我々には織田と徳川の調略は無理そうです
伊東義益
いえ、私は調略に配下を向かわせます。一人でも優秀な部下が欲しいですし、コレクション欲を刺激されます。
一条兼定
俺も、調略に参加させてね。ダメもとでやってみます。
今川氏真
これで義元が生き残ったらどうしよう。
小早川繁平
暗殺(ボソ
今川氏真
それだっ!
小早川繁平
え? 冗談だったんですけど。マジで暗殺とか考えていますか?
今川氏真
そうだな、機会があれば暗殺しちゃってもいいかな。理想を言えば史実通り信長に討たれて欲しいよ
竹中重治
では、桶狭間の戦は先程話した流れで進めましょう。『茶室』ですが最初の開催からちょうど一ヶ月。次も一ヵ月後に開催される想定すると桶狭間の戦直前ですね。
伊東義益
ええ、その直前の『茶室』で最終調整をしましょう。本当の土壇場なので何が出来るのか怪しいですが、もう一度話し合いをする機会があるのは心強いです。
北条氏規
私も北条家と武田家との関係、それと三国同盟がどうなっているのか把握して『茶室』に参加するようにします。
竹中重治
頼もしいです。よろしくお願い致します。
最上義光
じゃあ、こんなところかな? 何も無ければ次は小早川さんの相談だね。
小早川繁平
皆さんのアドバイス通り、自分の周囲を把握することから始めました。先ず家臣ですが一人いました。田坂頼賀さんです。何でも親父の頃からの家臣で最後まで付いてきてくれているので信用できそうな気がします。
『生きていたのか、田坂頼賀っ。ここでも歴史が既に違っている』
一条兼定
良かったね、一人じゃなくって。これで少しは光明が見えたかな?
小早川繁平
一条さん、ありがとうございます。
それ以外はやっぱり下男下女でした。ときどき訪ねてくる武将はいますが小早川隆景の配下で、どうやら私の状態を報告するために来ているようです。
領地も捨扶持っていうのでしょうか? 少しだけありますが下男下女への支払いと二人の家臣でカツカツです。
伊東義益
でも、領地があるなら作物は育てられますね。さっきも言いましたがジャガイモを手に入れたので何とかして渡したいですね。
小早川繁平
それで、できることから始めようと、椎茸菌を近隣の猟師にお願いして手に入れました。裏庭で栽培実験をしています。それと石鹸の作成に成功しました。
竹中重治
いい感じじゃないですか、小早川さん。前回のときよりも可能性がありますよ。もっといろいろと調べていろいろなことをやりましょう。
小早川繁平
ありがとうございます。そこで、皆さんにご相談なのですが堺の商人を私のところに遣わせて頂けないでしょうか。取り敢えず、石鹸を売って現金を手に入れたいのです。
竹中重治
構いませんよ、今度堺に部下を向かわせるのでそのときに頼んでみます。石鹸が手に入るということでそちらへ向かうようにしましょう。
小早川繁平
おお! ありがとうございます。竹中さん、感謝します。
最上義光
他には何かありますか? 小早川さん
小早川繁平
いえ、もう何もありません。
今川氏真
それだけ?
小早川繁平
はい、これだけです。何にも出来ない環境なので今はこれくらいしかないんですよ。
北条氏規
でも、前回に比べれば大躍進じゃないですか。次回はもっと良くなっていることを期待していますよ
最上義光
じゃあ、次は内政関係での成功と失敗の話かな? それとも剣聖や忍者みたいに調略の状況にしますか?
一条兼定
いつ『茶室』が閉じるか分からないから内政にしない?
竹中重治
賛成です。内政の成否報告にしましょう。
一条さんと俺の意見が受け入れられ、次は内政へと話題が移った。
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