なぜ高齢者の運転免許返納は捗らないのか? 問題の根本

curuss

第1話

1 事故が起きる原因はハッキリしている


 ずばり老化です。

 まだ作者はオッサンで、車の運転へ影響していると思えませんが……それでも老化は感じています!

 確実に日々、人は衰えて!


 格闘ゲームの話となりますが、もっとも熱中していたころは2フレーム技を100%の精度で使えていました。

 しかし、少し前から3フレーム技すら安定しないように!

 いまや確実といえるのは4フレームにまで落ち込みました。


 これはエンジョイ勢ならともかく、対戦プレイヤーとして死を意味します。引退止む無しです。

 なぜならコンボがどうの、駆け引きがどうの、読みあいがどうの以前な話であり、格闘ゲーム世界ではおじいちゃんも同然だから!


 中年となるだけで精神的な反射速度半減ですから……これへ肉体的反射速度の遅れや、さらなる精神的劣化までを考えると、歳をとるのが恐ろしくてなりません。


 そして実は、自動車運転も反射神経の世界です!


☆車が止まるのに必要な距離


   時速   停止距離(空走+停止)  老人予想


 20km        9m       15m


 30km       14m       22m


 40km       22m       33m


 50km       32m       46m


 60km       44m       51m


 空走距離というのは、対象を認識してからブレーキを踏むまでに進んでしまう距離です。

 通常、踏むまでに0.7秒ほど掛かるといわれています。

 逆にいうと、健全な若者でも――


 時速20kmで、10m先からの飛び出しへ対応できても、マージンは1mだけ


 という驚くべき事実が!

 そして時速20kmで1m進むのには、たったの0.18秒! 入力猶予へ直したら10フレーム!


 一般の反応速度より、ほんの25%ほど遅くなったら事故です!

 でも、冒頭の事例では、若者が中年となるだけで、反応速度は半減にも等しい!


 そして時速20kmなんて、現実のケースでは「徐行はしてないだけ」なノロノロ運転です!

(ほぼマラソンペース。短距離に限れば、殆どの人が走れば追いつける)


 老人の反応速度が一般の倍と仮定したら、もはや走る凶器でしょう。

(街中でも普通に要求される時速40kmで、33m先の飛び出しに反応できないとか……若者の感性だと「避ける気がない」or「避ける能力がない」に近いかと)


※ 念の為


 そもそも一般のドライバーは『かもしれない運転』をしているので、そうそう飛び出しで事故を起こしません。


 10m先で飛び出しがあるかもしれない。


  ので、時速10kmまで減速した。

  ので、いつでもブレーキを踏めるよう準備した。

  ので、少しだけ車体を右へ寄せた。


 などをしています。

 ここで問題としているのは――


 33m先で飛び出しがあるかもしれない。


 などと予測をしてきていないことです。

 もちろん、それをしなければ自分が対応できない自覚もありません。

 それが昨今問題な老人ドライバーの問題点でしょう。



2 なぜ老人が免許返納に応じないか?


 高齢者にとって免許の意味が、若者と違うからでしょう。

 そして作者も同世代と比較して珍しいのですが、高齢者と同じような価値を見出していると思います。

 それは誇りです。


 作者の世代だと――


 免許は親が買い与えるもの


 であり、通常は大学在学中に。もしくは高校卒業前後に修得するものでした。

 なぜなら履歴書に――


 無いと不自然な一行


 であり、その修得時期から家庭環境をも窺われるからです。

 女の子の場合、結納品の一つに見做されることも!?

 ですが作者は、社会人になってから自分の稼ぎで自動車学校の学費をだし、働きながら眠い目をこすって必死に免許修得という、かなり時代遅れなパターンでした。

 その証拠に作者と似たような年頃の人は皆無でしたし!


 ありとあらゆる資格より、運転免許を貰った時は感動した覚えがあります。

 誰の助けもなく、まちがいなく自分ひとりの独力でしたし――


 大人になっても、人は新しいことを学べる


 と再認識させられました。

 そして同様な修得方法の高齢者は『免許=誇り』である世代な論拠となります。



3 さらに自我拡大装置でもある


 貴方は時速150kmで走れますか?

 作者には無理です。


 貴方は重い荷物を何トンも運べますか?

 作者には無理です。


 貴方は何人も背負って走れますか?

 作者には無理です。


 そんなのできたら漫画のスーパーヒーローというかもしれません。

 でも――


 車の免許があれば、その全てが可能になるのです!


 なぜ昔の不良がバイクに憧れたのか?

 それは手っ取り早い自己拡大だからに他なりません。

 バイトして買うでもいい。どこからか盗むでもいい。親に強請るでもいい。

 とにかく入手してしまえば、次の日から――


 時速100km以上で走れる超人と同等なのです!


 それに意味があるかないかなんて関係ありません。

 自分以上になれる凄いギアなんですから、子供っポイ感性の趣くまま求めればよいのです!

 暴走族などで群れる若者たちの理由は、これだけではありませんが……この自己拡大欲求は大きなものの一つでしょう。


 厨二的にいうのであれば――


 免許とは力の象徴に他なりません。


 ……あるいは仮面ライダーの変身ベルトや魔法少女の変身スティックでしょうか?



 免許に通常以上の価値を見出しちゃってる勢ではありますが、他にも『力』と結び付く要素を感じたことがあります。

 それは運転免許が、限定的であっても殺人許可証なことです。

 遠縁のやらかしなのですが――


 見通しの良い交差点で70歳の老人をはねて、ほぼ即死させる。

 不幸中の幸いで、対人保険は無制限だった。

 補償に満足した遺族は、特別に訴えたりはしなかった。

 結果、ドライバーは有罪となるも執行猶予がついて、保険の等級が下がっただけ!


 色々と条件が折り合えば、運転免許とは――


 殺人すら免責されるのです!


 どころか覚悟さえ決めれば、一般人でも簡単に殺人可能となる兵器!

 銃器入手困難な日本では、これ以上の武力はありません!


 これを見知っていた作者が、苦労の末に免許を交付された状況を想像してみて下さい!


 もう絶対に君を手放したりしない!


 そう心の中で絶叫してました(苦笑)



※ さらに


 貴方は指先からビームをだして相手を倒せますか?

 作者には無理です。


 でも、銃の所持が許されている国では、簡単に必殺技の習得が!

 それもフルオート連射すら可能で!


 相互安全保障とか、自衛権とか、いざというときの正当防衛とか――


 全て関係ないんじゃない?

 銃を持つだけでスーパーヒーローなんだから、持つことそのものに意義があるんでしょ?

 アメリカ人が頑なに銃規制に正反対なのも、納得ですし……おそらく未来永劫に渡って銃を手放さないとも思います。



4 規制または返納の難しさ


 銃規制は実利問題を発端とし、反対派はメンタルヘルス由来なんだから……両者は分かり合えるはずありません。


 よく「銃による犯罪が多発していても、銃規制反対なのは不思議」なんて意見を耳にします。

 ですが、それは別々の話であり、規制反対派にとっては論点ずらしなのでしょう。

 これを車の免許で言い換えると判り易いと思います。


 誰かが交通事故で死んだからって、なぜ僕が免許を返納しなけりゃならないの?


 これは正論過ぎるでしょう。

 逆に、これが通るのであれば、誰一人として免許を持てません。 

 ……もう一歩踏み込んでみましょう。


 誰かが老人の暴走運転で死んだからって、なぜ僕(老人)が免許を返納しなけりゃならないの?


 理屈の上では、正しいままだったりします。

 間違いとするには、全ての老人が暴走運転をすると証明しなければなりません。

 ですが、それは立証不可能な事例――白いカラスはいないと同じ事でしょう。


 そして老人に免許返納をさせたい人達は、非常に愚かしい説得を始めます。

 身分証明書が必要であれば代替品を、日々の足が必要ならタクシーなどの補助を……――


 しかし、返納したくない老人は、相手が諦めるまで問題点を上げ続けると思います。

 なぜなら免許を失いたくないから!


 だって自己拡大を実現する素晴らしいギアなんです!


 実際に運転するかどうかは関係ありません。

 メリットデメリットでいえば、いつだって何とかなる程度の話です。

 本当に必要ならば生まれた時に持っていなけりゃ駄目ですし、実際、最近の若者は車に頼っていません。


 それまで『できた』ことを、これからは『できない』とさせるのは残酷です。

 ましてや、それを納得させるのに実利を持ち出すようでは、成功も覚束ないでしょう。

 本質を――


 相手に要求している犠牲を理解できていません。



5 では、どうするか?


 逆説的ですが強制するしかありません。

 生半可な説得では、決して納得してくれないでしょう。

 作者であれば、よぼよぼの明日死んでもおかしくないような老齢になろうと、それこそ這ってでも免許更新に行くと思います。

 よって、もう法律で――


 高齢者限定解除自動車免許


 とでもいうべき制度を作ればいいんです。

 通常の免許を65歳未満専用とし、その限定を解除したら運転を続けても良いとかすれば。

 さらには、その場合でも毎年の更新試験を用意で。


 ……作者だったら、意地でも死ぬまで更新し続けますけどね。

 逆に老後の目標とすら!?



6 さらに、どうする?


 そして自己拡大のギアを奪うのですから、説得なんて生温い方法論ではなく――


 洗脳


 の必要があります。

 免許を手放すのが正しく、それこそが逆に自己の拡大につながる。

 つまり――


 時速150kmで、二トンもの荷物を、何人も背負って走れる!

 けど、敢えて!

 敢えて、その権利を捨てる俺は、もっと強くて偉い。


 とでも理論展開を!

 なんだかアル中でも治すような感じですが、軽い依存症であるのは間違いありませんし。

 意味のすり替えなどを利用し、意識改革なしには不可能だと思います。

(アル中ってのは、酔っぱらった時の多幸感や万能感での自己拡大が重要であり、快楽そのものは目的ではないようです。つまり、『そうである自分・そうできる自分』が好きなうちは、断酒は不可能だとか)


 ……もしかしたら暴走老人による大交通戦争時代もあり得る訳ですし。



◎まとめ


・『高齢者限定解除自動車免許』を制定する


・返納することが正しいとプロパガンダをうつ


・返納した人のメンタルケアを考える

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