第666話 二足3



「我目で見てもなかなか信じられません。ヒロさんがここまで『人型戦車』の操縦に長けているなんて………」



 俺が操縦席から出て皆の所に戻ると、失意から立ち直ったらしいパルティアさんが早速、俺の操縦について感想を述べてくる。



「お見事です。これでは私が教えられることなんてないみたいですね」



 褒め称えながらも、残念そうな憂い顔。

 妙齢の金髪美女にそんな顔をされてしまうと、男としては何とかしてあげたいなと思ってしまう。


 だけど、パルティアさんの目的を考えると、おいそれとその目論見に乗ってあげるわけにもいかない。


 中央行がもうすぐ決まる以上、何週間も付き合えないんだよなあ。

 少しだけパルティアさんとの甘い指導期間は惜しいと思うけど………



 チラリとパルティアさんの素晴らしいボディラインに視線を這わせながら、 

 


「少し動かせる程度ですよ。本格的な戦闘は無理ですからね。今の俺は『準中級』と『中級』の間くらいでしょう」



 少しばかり謙遜を交えてパルティアさんに返す。



 人型戦車の操縦レベルにおいて、


 『初級』が機体を起動させ、歩くことができる程度。

 『準中級』が簡単な軽作業ができる程度。

 『中級』が殴ったり、武器を使って攻撃したり、銃を撃ったりできる程度。

 『準上級』が装備された『攻性マテリアル機器』を使用した戦闘ができる程度。

 『上級』が重力制御やスラスターを使用して高速戦闘が可能な程度。


 とされている。

 

 猟兵や狩人で『人型戦車乗り』と名乗りたいなら、せめて『中級』が必要となる。

 

 俺は『中級』に辿り着く手前でギブアップした。

 『人型戦車』で近接戦を行う練習はかなりハードなのだ。

 

 本格的に攻撃を回避しようとすると衝撃が凄い。

 また全力でぶん殴っても同様。

 巨大な質量が素早く動けば、その反動も凄まじいモノとなる。


 自分で速度を調整できる演武ではないのだ。

 敵との戦闘になれば、何度も自分の限界を超える速度が襲いかかってくる。

 

 もはや自分を超える為の闘いであろう。

 それを乗り越えられるのは、ある種の才能が必須。


 それが俺にあるとは思えなかった。

 生半可な努力では越えられない壁の高さが見えてくると、当初の熱意もやがて消えゆき、結局、そこでやめてしまった。


 どれだけ操縦が上手くなろうと、俺自身の肉体に勝るものなど無いのだ。

 その労力に見合ったモノが手に入らないのなら、諦めてしまうのも当然。


 何度も言うようだが、『人型戦車』はそこまで有用な兵器では無い。


 どこまで行っても機械種には敵わず、攻撃力と防御力においては戦車車両にも格段に劣る。


 また、個人の兵装なら『フォートレススーツ』がある。

 アルスが着ている使い易さ重視の『軽装』から、武装が備わった『中装』、パワーアシスト機能が付いた『重装』まで揃っている。


 電磁バリアを使用すれば短時間ではあるが戦車並みの防御力を発揮できるのだ。

 逆に『人型戦車』はその大きさゆえに、機体全てを電磁バリアで覆うのが困難。

 出来ない訳では無いが、消費が激しく、その分効果も時間も減少してしまう。


 人型である為、バリア展開が複雑な仕様となってしまい、戦車車両ほど簡単に張り巡らせることができないのだ。


 おまけにデカいから敵からの的になりやすいことも欠点の一つ。

 防御力が増しても敵から集中攻撃を受けるのなら意味が無い。

 これが狩人から人気が無い理由の一つでもある。 


 中央でも際物扱い。

 猟兵団でもそうなのだから、コイツを使って狩りを行う狩人はほとんどいない。

 ディー・ディーという例外はいても、決してメインにはなれない。

 


 『人型戦車』が有利な点と言えば、個人の兵装では装備しきれない『マテリアル重力器』が備わっていることぐらいだろうか。


 これを十全に扱えるようになれば、高機動型機械種のごとく高速戦闘が可能になる。

 かの『死の踊り手』デー・ディー・ディーのように。


 ただし、常人では『マテリアル重力器』を使いこなすのは難しく、ほんの一握りの天才だけが扱うことのできる尖った機能。


 技術の進歩によっていずれ万人が「重力制御」を使いこなせるようになれば、話が変わってくるのだけれど…………

 そればかりか、人類にとってはまだ未知の分野である『空間制御』が使えるようになれば…………


 

 

「ヒロさん、よろしいですか? 少しお聞きしたいのですが?」


「はい? 何か?」



 『人型戦車』の将来性について思いをはせていると、パルティアさんから質問の声が上がり、



「その、ヒロさんがおっしゃった『準中級』や『中級』とは、ひょっとして『人型戦車』の操縦資格のことなのでしょうか?」


「へ?」


「私自身、6年前まで中央でその分野の仕事に一部携わっていたのですが………、聞いたことが無くて…………、どちらからの情報でしょうか?」


「いや、それは………」



 あれ?

 もしかして、今の段階で、そういった基準って生まれてなかったの?

 確かに俺が『人型戦車』の勉強をし始めたのは、今から3年後のことだけど………


 でも、当時、俺が利用していた教本は4年前に出版されたモノだった。

 そこにはきっちり人型戦車の操縦レベルが記されていた。

 つまり、遅くとも今から1年前にはその基準が出来上がっているはずで………



 俺が未来視の情報との齟齬に混乱する中、パルティアさんはさらに言葉を続け、



「人型戦車は中央で出回り始めてからまだ3年程度しかたっていないんですよ。それまでは開発に関わった関係者だけで使われていたモノなのですし………」


「え?」


「最近になって、ずっと実験機を操縦していた子が実戦に出てようやく活躍し始めた段階だと聞いていますが…………、何でも史上初、重二足で紅姫を狩ったとか」


「!!! ………す、すみません。その実験機を操縦していた子………方って、お名前は?」


「………ディー・ディー君、って、私は呼んでいましたね。でも、ヒロさんが呼ぶ時はディー・ディー・ディーと呼ばないと多分怒るでしょう」


「やっぱりアイツかよ!」


「え?」


「いえ、こっちの話で………」



 あれ? おかしい!

 ディー・ディーの全盛期ってちょうど今頃だったと思うんだけど。

 すでに何機も紅姫を落としていて、中央では超有名人になっている頃のはず。


 俺の記憶と齟齬があるような………




 あ! しまった!

 この世界の情報伝達の速度を忘れてた!

 

 ネットも電話もSNSも無いこの世界では、情報の伝わる速度が現代とは比べ物にならない程遅い。


 さらに中央と一言で言っても広い。

 比較的辺境に近い場所であれば数ヶ月もあれば届くだろうが、中心部となると1年以上、下手をしたら数年のスパンもありうる。


 ほぼ時間差の無い通信手段があることにはあるが、それはあくまで緊急用。

 もしくは、巨大組織の上層部にだけ許された特権。

 

 中小の秤屋の幹部でしかないパルティアさんには届くはずもない。

 今のパルティアさんの中央の情報って、おそらくは数年前のことであろう。


 その頃であれば、まだ、人型戦車の一般の知名度は低い状態。

 なぜなら人型戦車の知名度はディー・ディーの活躍によって爆発的に広まったモノなのだから。



 う~ん…………

 今までの俺が流した情報の数々。

 確かに辺境にずっといたはずの俺が知っていたらおかしいことばかり。

 俺が中央の出身であれば、いくらでも言い訳のしようがあるが、ガイには辺境の奥の方の出身と告白してしまっている。

 

 どちらからの情報と言われても答えようが無い。

 まさか並行世界の未来の情報を見ましたなんて言えないし………



「……………………」


「ヒロさん?」


「…………………」



 不思議そうな顔で尋ねてくるパルティアさんを前に黙り込む俺。

 

 今更ながら美女を前に調子に乗り過ぎてしまったことを後悔。


 さて、どうやって誤魔化そうか………



 とか何とか悩んでいると、



「ママ! 子供がこっちを覗いているよ!」



 突然、パルミルちゃんからの連絡。

 

 驚いて彼女が指差す方向へと視線を移す。



 するとそこには………





 ガレージの窓に内側からベッタリと顔をひっ付けた天琉と廻斗。

 まるで自分達も混ぜてほしいとばかりの齧り付き具合。


 あれではパルミルちゃんが驚いて声を上げるのも無理はない。

 特に天琉の顔は子供のように柔らかい素材でできている為、窓ガラスに引っ付き過ぎて顔が面白いことになっている。


 マスターである俺がずっとガレージの前で何かしているから気になって仕方が無かったのであろう。

 特に今は白兎もお目付け役の森羅も外にいるのだから止める者もいなかったに違いない。



 

「ヒロさん、あの子は………」


「あ~~………」



 パルティアさんの興味が俺のガレージ内にいる天琉達に向けられる。

 廻斗の方は迷宮前街で一度顔を合わせているはずだから、『あの子』とは天琉のことを言っているのだろう。


 

 う~ん………

 天使型である天琉の存在を教えても良いものか………


 

 何と説明しようかと言葉に詰まるも、



 どうせアスリンも白露も知っているし………

 それに人型戦車のことを誤魔化すにはちょうど良いか。



 頭の中で素早く計算。

 メリットとデメリットを比較し、最終的には『まあ、いいか』の精神であっさり決定。



「えっと、俺の従属機械種の天琉です。こっちに呼んで挨拶させますね。おーい! 天琉! 廻斗! こっちに来ていいぞ。外出スタイルでな!」



 俺が大声で呼んでやると、すぐさまバタバタとガレージ内がにわかに騒がしくなり、


 その10秒後には、ガレージの扉がバタンと開いて、



「あい! マスターが呼んでくれた!」

「キィキィ!」



 白ローブに金髪おかっぱ髪の子供が転がるように飛び出て来た。

 俺の言いつけ通り、翼を収納した外出スタイルで。

 また、その頭上には白い子猿型の機体がフワフワと浮かぶ。

 

 2機は俺の方へと一直線に向かってきて、体当たりな感じで飛びついてくる。



「あい! マスター!」


「お~、よしよし」



 大型犬のようにベタっとくっついてくる天琉の頭をなでなで。


 すると天琉は青く輝く目をこちらに向けて、

 


「テンル、あのデッカイのに乗ってみたい!」

「キィ!」


 

 実に子供らしいお願いをしてくる。

 また、廻斗も同様にオメメをキラキラさせてオネダリポーズ。



「あ~~、流石に機械種はこれを操縦できないぞ。まあ、後で俺が動かしてやるからそれで我慢しておけ」


「あ~い! マスターが動かすデッカイのに乗る!」

「キィキィ!」


「よし!良い子だ!」

「エッヘン!」

 

 ワシャワシャと髪の毛をかき混ぜてやると、得意げな顔で笑みを零す天琉。


 う~ん、まるで親戚の子供をあやしてあげているみたい。


 

 そんないつものやり取りを、少しの間微笑まし気に眺めていたパルティアさんだが…………、ふとナニカに気づいたように、驚きの表情を浮かべて、



「ヒロさん、もしかして、その子は…………天使型ですか?」


「あ………、はい。良くお分かりで」


「やっぱり………」



 と言いながらも信じられないといった様子で天琉を見つめるパルティアさん。

 その顔は怖いくらいに真剣だ。


 また、『天使型』という言葉にパルミルちゃんも反応。

 ビクッと身体を一瞬震わせる。

 表情固く、その瞳にほんの僅かに怯えを見せて。



 これが中央出身の人間の主な反応。

 『天使』というキーワードは容易に『出会えば即死』という言葉に結びつく。

 

 大天使に率いられた天使の群れは、対空兵器を装備していない旅人にとっては、どうしようもない災害。

 逃げても空から追いかけてくるし、当然、降参なんて受け入れてもらえるはずが無い。

 

 故に中央では、街から街への移動に猟兵団が護衛に就くことが多いのだ。

 その場合は団丸ごとでは無く分隊という形になるのだけれど。



「へえ? こんなガキが天使型ねえ………」



 中央出身ではなさそうなガイは、天使型という言葉にも大した動揺も無く、ただ胡乱な目で天琉を見つめて、



「全然強そうには見えねえなあ」


「天使型の本領は粒子加速砲だぞ。空を飛びながらバンバン撃ってくる。重量級だって蜂の巣さ」


「ほう? 砲撃型って奴か。そいつは厄介だな………、んん? じゃあ、なんであのダンジョンに連れてこなかったんだよ? 粒子加速砲がスゲエんだろ?」


「ダンジョンの中じゃあ、天使型の力を活かせないからな。天使は空を飛んでなんぼだ」


「…………おお! そういうことか」



 俺の説明に納得するガイ。

 

 いやまあ、一般的な天使型はそうなのだが、うちの天琉は遠近両方イケる万能型。

 近づけば『天兎流舞蹴術』、離れたら『光の槍』が飛んでくる仕様。

 防御は万能防具の『光の盾』、広範囲殲滅攻撃『光の翼』も備える主天使型。



 子供のような外見のままの天琉の姿では、まず見抜かれることは無いであろう事実。

 

 それはパルティアさんであっても同じだろう。

 そもそも機械種ドミニオンクラスの超高位機種が軽量級のままというのは大変珍しい事のなのだから。



 パルティアさんは天琉の前で屈みこみ、じっと観察するような目で見つめている。

 

 それは多分、学者の目。

 辺境では存在せず、中央でも滅多に捕獲されることの無い希少種。

 間近で見ることのできる機会なんてほとんど無いはず。


 過去、人類を絶滅させかけたこともある仇敵。

 現在もなお、その遭遇を天災と扱われる人類の脅威。



 しかし、そんな様子は微塵も感じさせることの無い、緩み切った顔の天琉。


 造りは天使の名の通りの気品のある整った顔立ちではあるが、

 何も考えていなさそうなキラキラの青い目、無邪気を通り越して脳天気な笑顔。

 世に聞く荘厳な天使の面影など一欠けらも存在しない。



 天琉は目の前で自分を見つめてくる女性を不思議そうに見返すと、

 クルッと俺の方を振り返って、パルティアさんを指差し、



「あい? マスター。この人だ~れ?」


「パルティアさん。俺にこのデッカイのをプレゼントしてくれた人だ。お偉いさんだから失礼な真似はするなよ」


「あい! テンル、失礼な真似しないし、いつもみたいにおっぱいも揉まない!」



 ニコニコ顔で俺の命令を復唱する天琉………いや、余計な一言をつけ加えて。



「ええ? 『いつも』、『おっぱいを』!?」



 天琉の発言に、自分の胸を抑えて後ずさるパルティアさん。


 そして、俺を非難するような目を向けてきて、



「ヒロさん。こんな小さい子になんてこと教えているんですか!」


「ご、誤解です! べ、別に何も教えていないのに、コイツ、なぜか女性のおっぱいに興味があるみたいで………、断じて俺がそんな命令をしたわけじゃなくて………」


 

 突然かけられた冤罪に慌てふためく俺。

 シドロモドロになりながらも言い訳に終始。

 

 そんな俺の言い訳に対し、パルティアさんは自身の知識と経験則を交えた推論を展開。



「…………従属機械種はマスターに似ると言います。それは従属機械種が常にマスターのことを意識しているからです。もし、この子が女性の乳房に興味があるなら、それはマスターであるヒロさんの嗜好を読み取ったとも言えますね」


「え? 天琉がおっぱい好きなのは、俺のせいなんですか?」


「ヒロさんの視線が女性の胸に行くことが多いなら………、そういったことが原因である可能性が大きいという事です。マスターが好きなモノは、従属機械種も好きになるんですよ……………、心当たり、ありますよね?」


「あ…………、はい」



 ジトッとした目で俺を追及するかのような言葉を放つパルティアさん。

 その目は『さっきも私の胸、見てましたよね?』と暗に問いかけているかのよう。



 ごもっともでございます………

 言い訳の仕様もございません………

 大変良いモノをお持ちなので、つい、視線が吸い寄せられてしまうのです。

 

 

「はあ………、ヒロさんの歳くらいの男の子だとしょうがないのかもしれませんが、もう少し不躾にならないような立ち振る舞いを覚えるべきだと思いますよ。特に女性は男の人の視線に敏感なので」


「うう…………、申し訳ありません」


「ヒロさんが中央に赴けば、もっと世間から注目を浴びることとなります。その言動一つ一つが色々な人の目に止まり、良くも悪くもヒロさんの狩人稼業に影響を与えていくでしょう。だからプライベートまでとは言いませんが、公式の場では紳士な振る舞いを忘れないようにしましょうね」



 シュンとなった俺に、パルティアさんは視線を緩めて優しい口調。

 覚えの悪い生徒を諭す女教師のような忠告。


 美人で有能なだけでなく、優しさも兼ね備えた大人の女性。

 本来の俺の年齢からすれば年下であるのにも関わらず、憧れのようなモノを抱いてしまいそうになる。

 


「私も、ヒロさんのような若い子にそんな目で見られるのは少々気恥ずかしいですし……、以後、気をつけてください」


 

 パルティアさんはほんの少し苦笑いを浮かべながら、そう締めくくろうとしてくれた矢先、


 

「ヒロ、お前、パティさんを変な目で見るんじゃねえよ。全く、ヒロはどうしようもないスケベだな」



 横から漏れ聞こえる話を聞き、ようやく内容を理解したガイが呆れたような顔で口を叩く。



「前はアスリンの胸をガン見してやがったし、今度はパティさんかよ。お前、見境なさすぎだろう」


「ぎゃああああ!! やめて! その事はこの場では言わないで!」


「皆で酒盛りした時もドローシアやニルの胸をチラチラ覗き見しやがってよぉ」


「あああああああああああああああ!!! てめえ!!!!」



 続けざまにガイから語られた俺のスケベ心からの行い。

 

 少なからず憧憬を抱いていたパルティアさんの前でソレを晒されたことに、流石に我慢ならず、ガイの口を黙らすべく飛びかかる俺。


 

 止めろよ! パルティアさんの前で俺のスケベな行いをバラすんじゃねえ!

 少しぐらい空気読め! できないなら、永遠にその口を開かないようにしてやる!



「何すんだ! いきなり飛びかかってくんじゃねえ!」

「うるせえ! 不意打ちはお前からだろうが!」

「ヒロが節操無しだからだろ!」

「それをわざわざパルティアさんの前で言いやがって!」



 右手でガイの機械義肢を抑え込んで、左手で顔面をアイアンクロー。

 少しばかり強めに圧力をかけてやる!



「イテテッ! ……コラ! 痛いだろうが!」

「痛くしてるんだから、当たり前だ!」

「この…………………、なんで、俺の機械義肢よりパワーがあんだよ! これは闘鬼の腕だぞ!」

「そんなの知るか!」

「こっちは前の2倍以上の出力なのに、何で力負けすんだよ! お前、人型戦車に乗るより、絶対に生身の方が強いだろ!」

「そんなこと、初めから分かってるわい!」



 俺とガイとの掴み合い。

 まあ、一方的に俺が抑え込んでいるだけなのだが。



「ちょ、ちょっと、ヒロさん! 私は気にしていませんから!」

「ヒロさん、どうしたの?」


 

 男同士の突然の取っ組み合いに慌てて止めに入ろうとするパルティアさん。 

 何のことだか分かっていなさそうにキョトンとしているパルミルちゃん。



「あいあいあい! 楽しそう! 天琉も混ざる!」

「キィキィ!」



 原因である天琉は悪気無く『あいあい!』と騒ぎ、

 廻斗も悪ノリする様子で両手を振り回して『キィキィ!』と叫ぶ。



 フルフル!

 フルンフルン!



 白兎は俺と応援するように耳を振るい、

 ラトゥも負けじと尻尾をフルンフルンと振り回す。



 非公式ながら鉄杭団から悠久の刃へと謝礼の品が贈られるというレセプション。

 

 最後は良く分からないカオスな感じで終わることとなった。





『こぼれ話』

晶石を人間が扱い易いようにスペックダウンさせたモノが『黄式晶脳器』です。

主に設備や武器、防具、兵器、車両に組み込み、AIコンピューターのような使い方をされます。

『黄式晶脳器』には元が通常の晶石のモノと、元が色付きの晶石のモノがあり、

当然、元が色付きの晶石の方が、性能が格段に高くなります。


また、元が色付の晶石であった『黄式晶脳器』は特別な力を持つと言われています。長く経験を積ませることで、組み込まれた設備や車両の能力をランクアップさせることがあるそうです。それも元の晶石に属性に沿った形で。


例:赭娼 機械種ユキオンナの赭石を『黄式晶脳器』に変え、機械義肢に装備していると、いつの間にか冷却攻撃ができるようになった。




※すみません。明日と明後日の投稿はお休みします。

次は4月13日(土)の投稿となります。

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