第663話 朝3



「マスター、そろそろ起きる時間だガオ」


「………ふあ? …………んん~~~ すぅ………ZZZ」


「二度寝ちゃ駄目だガオ。起きてほしいガオ!}


「ああ………、はい………、うおっ!」



 愛用する発掘品のベッドの上で目を覚ませば、視界一杯に広がるの虎芽の顔。

 俺の顔を覗き込みながら起床を促してくれている様子。


 宝貝『冷艶鋸』を手に入れた二日後の朝。

 どうやら今日の俺を起こす当番は虎芽であるらしい。



「お………、おう、おはよう」


「おはようございますガオ。良かったガオ。このまま起きてくれなかったらどうしようかと思ったガオ」



 虎芽の距離の近さに戸惑いを覚えながらも何とか『おはよう』を返す。


 すると鋭い犬歯をチラリと見せて大きく笑みを浮かべる虎芽。


 朝を告げるに相応しいキラキラと輝くような爽やかな笑顔。

 はっと魅入られてしまいそうな魅力を秘める。


 落ち着いた態度を崩さない辰沙や恥ずかしがり屋の玖雀と違い、虎芽はいつも感情をストレートに表現してくる。

 喜怒哀楽がはっきりとしていて、嬉しい時は虎耳をピョコピョコ動かしながらニコニコ、悲しい時は虎耳をペタンと伏せ眉を八の字にしてメソメソ。


 そんな仕草は外見相応の少女のようではあるが、その実、重量級をも素手で薙ぎ倒し粉砕する戦闘力の持ち主。


 機械種タイガーメイドと機械種チャンピオンを兼ねるストロングタイプのダブルにして、俺の生活に潤いを与えてくれる3メイドの1機。

 


 外見は15,6歳のボーイッシュな美少女。

 少し太めの眉毛にエネルギッシュさを感じる力強い眼差し。

 青く輝く目の奥には猫のような縦長の瞳孔が見て取れる。

 黄色と黒のメッシュの髪に虎耳がピョンと飛び出た紛うこと無き虎メイド。

 虎縞にも見える白と黒のストライプ模様の現代風メイド服を着こみ、膝上10cmくらいのミニスカートな仕様。



 ここまで気合の入りまくったメイドはなかなかお目にかかれるもんじゃない。

 こんな可愛いメイドに起こしてもらえるなんて、俺はなんて幸せ者なのだろう。


 

 寝転んだまま顔を横に倒し、虎芽の姿を視界に収めながら喜悦に浸る。


 そんな俺の思考を他所に、虎芽はベッドの横に立ちつつ目覚まし係の役目を果たそうとしてくる。



「マスター、起きないのかガオ?」


「ん~~~、もうちょっとこのままで………」


「寝坊助さんなマスターだガオ。きちんと起きるまで待っているガオ」


「ふぁあ~い。御苦労さま~~」



 寝惚けた頭で寝惚けた返事を返す俺。

 ぼんやり思考のまま目線の先にある虎芽のスカートの端を何となく見つめる。


 まるで俺を誘うようにヒラヒラと揺れ、

 その奥に隠された俺の興味を引いてやまないお宝の存在をアピールしてくるかのよう。



 ほんの少しめくり上げればそこには眩い太ももと男の子達の憧れであるパンティーが見えるはず………

 


 半ば夢見心地のまま、思わずフラフラと手を伸ばす。

 特に深くも考えないまま、何とかスカートの端を抓もうと人差し指と中指を動かしていると、



「んん? マスターは僕のパンツが見たいのかガオ?」



 俺の手の動きに気づいた虎芽は、



「はい、これでどうだガオ!」



 なんと一秒も躊躇うことなく、自分で膝上10cmのミニスカートをピラッと捲り上げた。



 俺の視界に飛び込んでくる虎芽の下半身。

 10代の張りのある肌、しなやかな筋肉が程よくついた健康的な太もも。 

 そして、女性の秘部を隠す黄色と黒の虎縞柄のパンティー………




「…………うああああっ!!」




 あまりに予想外の出来事に、思わず飛び上がって後ろに後ずさる俺。

 眠気なんて遥か彼方に吹っ飛び、目の前の状況にただ混乱。


 

 美少女メイドが自分でスカートを捲り上げるというエロ漫画そのままのシチュエーション。

 大変目には優しい光景だが、世間からが厳しい断罪しか得られない完全なNG案件。

 誰かに見られたら俺の社会的評価が真っ逆さま。

 マスターとしても、虎芽の破廉恥な行動は注意せざるを得ない。 


 


「コ、コラ! と、虎芽! 何てはしたないことを…………」


「どうしたんだガオ? 僕のパンツ見たかったんじゃなかったのかガオ?」


「それは………、見たいけど………、違う! そうじゃなくて………、」



 ベッドの上に立ち、虎芽の方を見ないようにしながら言葉を探し……



「女の子が自分でスカートを捲り上げてはいけません!」


「??? でもこうしないとパンツ見せられないガオ………、あ! スカートを脱げば良いのかガオ」


「脱げるの、ソレ? ………違う違う! 脱ぐんじゃない! 止めんか!」



 ウエストベルトに手をかけ、今にもスカートを脱ぎそうな虎芽を怒鳴りつける。


 すると、虎芽は手を止めて、

 


「マスターが見たそうにしてたから見せたのに………、怒るなんて理不尽だガオ」



 虎耳をペタンと伏せ、唇を尖がらせて言い返してくる。


 何がいけなかったのか全然わかっていない様子。

 まるで性知識が無い女子小学生のような反応。



「女の子は男にパンティーを見せちゃ駄目なんだよ!」


「そうかなガオ? 漫画に登場する女の子達は結構頻繁に男の子にパンツを見せていたガオ」


「それは読者サービスの為であってだな…………」


 

 と言いながらも、それ以上上手く言い返せずにモゴモゴ。


 虎芽は俺が現代物資召喚で取り出した漫画を暇があれば読み込んでいるらしく、妙に偏った知識を蓄積してしまっている。


 確かに現代日本の漫画に登場する女の子のパンチラ率はかなり高い。

 そういう意味では虎芽は現代日本のサブカルに汚染されてしまった哀れな犠牲者であろう。


 これは俺が原因と言えなくも無い。

 現代日本の知識を無秩序に与えていくのは教育上良くないのかもしれない。 



「だけど、恥じらいもなくスカートを捲り上げるなんて。前々から虎芽は少しズレているなと思っていたが………」


「マスターの為ならスカートの一枚や二枚、お安い御用だガオ! 良かったら、タッサのスカートも捲り上げるかガオ? とってもセクシーなパンツを履いているんだガオ!」


「おお! マジか………、って! そういうのを止めろと言っているんだ!!」 



 俺の役に立とうとばかりにトンデモナイ提案をしてくる虎芽。 

 俺は、フンスッ! と鼻息荒く自慢げに腕組みする虎芽を再び怒鳴りつけることとなった。

 

 







「全く………、虎芽の奴、乙女の嗜みというモノを教え込まないといけないな。一度ラズリーさんに頼んでみようか………」



 ブツブツとメンバーへの再教育プランを呟きながら潜水艇から出ると、そこはいつもの俺達のホームであるガレージ内。

 窓から差し込む朝日に照らされながら、我が『悠久の刃』のメンバー達が俺を迎える為に立ち並ぶ。

 


「「「「おはようございます!」」」」

「ああ、おはよう」



 次々にかけられるメンバー達からの挨拶に軽く手を上げて応える。


 いつものメンバー達の顔を見渡して、



「んん? 少ないな……………、あ、そうか。森羅と胡狛、秘彗、刃兼は早朝から買い出しか。あと、浮楽が………」



 まだ少し眠気を残す頭を振って覚醒を促しながら、ガレージの奥へと移動。


 そこは詰み上がった木箱で簡単に仕切られた区画。

 奥を覗き込めば小さめの木箱にチョコンと座る浮楽と、まるで保護者のように寄り添う白兎、そして、豪奢な僧服を身に纏った毘燭の姿が目に入る。


 

「毘燭、どうだ? 浮楽の修理は?」


「おはようございます、マスター。この通り、すっかり元通りになっていますぞ」



 俺の問いにガレージの隅で浮楽の修理に当たっていた毘燭が答える。


 その言の通り、昨夜見た浮楽の外装の破損は綺麗に元通り。

 これも毘燭のプライマリーメタルを利用した『修繕』の効果。


 

「そうか、出発前に修理が完了して良かったな、浮楽。間に合わないならボノフさんのお店まで持ち込むことを考えたが………」


「ギギギギッ!」


 

 俺が声をかけると浮楽は立ち上がって袖をフリフリ。

 ギザギザ歯を見せびらかすように口を大きく開いて笑顔を見せてくる。

 

 また、白兎も後ろ脚で立ちあがって耳をフリフリ。

 


 フリフリ

『おはよう、マスター』


「おはよう、白兎。付き添いご苦労さん」


 パタパタ

『ごめんね。僕の献策が間違っていたばっかりに……』


「いやいや、元はお前の提案だけど、許可したのは俺だ。それにこういった作戦での予想外のトラブルは付き物だぞ。それを乗り越えて無事に帰って来たんだ。それでもう十分作戦成功だよ」



 白兎からの申し訳なさそうな謝罪に対し、俺自身の見解を述べてフォロー。



 昨夜、ヨシツネを『泥鼠』へ、浮楽を『灰色蜘蛛』へと派遣し、人命にかかわらない程度の破壊工作を行わせた。

 兼ねてより計画していたタウール商会への威力偵察を行ったのだ。

 

 これは以前、白兎が進言してきた計画。

 なぜか昨晩、絶対に行うべき! と白兎がさらに強く主張してきたため、即日執り行うこととなった。


 目的はタウール商会への威嚇と嫌がらせ。

 いきなり自分達の事務所が何者かに襲われたのなら、こちらへと仕掛けてくる余裕もなくなるだろうと目測。

 光学迷彩による透明化と隠身技術に長じた2機に仕掛けさせた。


 狩人未満の人間達の仕事斡旋所である『泥鼠』と繁華街を縄張りに持つ『灰色蜘蛛』を対象にしたのは消去法。


 弱者を集めて畑や田んぼで働かせている『土蚯蚓』は、身体の弱いお年寄りや子供が中にいることが多いので対象から外した。


 また、赤能者がいると思われる『躯蛇』の事務所は地下にあり、警備もかなり厳重とのことで避けた。

 それに現在、『躯蛇』は先行隊襲撃の容疑がかけられた状態で、多方面から色々注目されている様子なのだ。

 場合によっては他の秤屋からの監視の目が入っている可能性がある。

 そんな鉄火場にわざわざ突っ込まなくても良いだろう。


 さらには俺の情報提供者でもあるルークが所属するのが『躯蛇』なのだ。

 万が一のことを考えれば、対象から外さざるを得ない。

 




 とにかくタウール商会に害意を抱いている者の存在をアピールできれば良いのだ。

 ヨシツネと浮楽であれば、その任を軽々達成できるはずであった。



 一応、打神鞭の占いで『威力偵察』を行うべきかどうかを確かめた。


 結果は『トラブルはあれど行った方が良い』との答え。

 これが白兎の案を強く補強する結果となり、

 故に『威力偵察』実行にゴーサインを出したのだが………

 


 

 ヨシツネの方は占いの結果通り、多少のトラブルあったものの、特にこれといった被害無く任務を遂行してくれた。

 


 『泥鼠』の施設の設備を幾つか破壊し、中の人間達を慌てさせることに成功。


 これも『泥鼠』の事務所が街の中心部から離れた所にあるからこそ。

 白の恩寵が薄いエリアの為、加害スキルを持たないヨシツネでも破壊工作が可能。

 人間を傷つけることはできないまでも、人命にかかわらない程度の設備の破壊なら許容範囲。


 ただし、感応士が事務所内にいた為、すぐにヨシツネの居場所が察知されてしまった。


 感応士の指示を受け、襲いかかってくる警備兵達。

 さらに感応士も感応の術を使い、こちらを捕らえようとしてくる。 


 だが、いずれもランクアップしたヨシツネの敵ではない。

 いかに感応士と言えど、緋王のレベルに達し、空間転移で飛び回るヨシツネを捕らえきれるわけがない。


 主にベテランタイプであった警備兵達を中破させ、1機だけ混じっていた軽戦士系ストロングタイプ、機械種シュトルムフェンサーの片腕を切り落として、危なげなく華麗に脱出を果たしたのだ。




 しかし、『灰色蜘蛛』の拠点である大ホールに派遣した浮楽の方に多少所ではない大きなトラブルが発生。


 建物内への侵入時、偶然『灰色蜘蛛』に攫われたと見られる女の子を発見。

 暴力を振るわれる寸前であった為、浮楽は女の子を助けようとして介入したのだ。


 万が一にも正体を覚られぬよう、浮楽は『幻光制御』『現象制御』『変装』の組み合わせて『認識阻害』を発動し、颯爽と少女を救助。

 灰色蜘蛛の一員と思われる男達を蹴散らし、自分が囮となって女の子を外へと逃がした。


 その後、すぐに脱出を行おうとしたらしいのだが、そこで意外な強敵と遭遇。


 以前、闇市でボノフさんから紹介された機械種ハーリティ。

 鬼子母神の名を持つ元赭娼。

 大ホールを守護する『灰色蜘蛛』の切り札。

 浮楽を逃がすまいと大ホールを囲む結界を張り巡らし、鬼神のごとく襲いかかって来たそうだ。


 浮楽によると、その性能は拠点防御に特化しており、自身が守ると決めたホームにいる限りその力を何倍にも増すという仕様らしい。

 浮楽を上回る剛力、さらに『ピャンガラ』という赤子に扮した自動攻撃型強化オプションを備え、元赭娼ながら紅姫にも匹敵する戦闘力を発揮した。 


 浮楽も紅姫と同格の臙公ではあるが、自身の責務が『威力偵察』であり、事前に俺からあまり被害を出し過ぎないようにと言い含められていたこともあって全力を出せずに苦戦。


 おまけに途中から『灰色蜘蛛』の長であるグレインという人間も現れ、機械種ハーリティに加勢。


 機械種ガンマンの弟子を名乗るグレインの銃の腕は凄まじく、さらに機械義肢である両足の裏からジェット噴射で高速飛行まで行う予想外な戦闘スタイルを見せた様子。


 2対1という不利な状況の中、浮楽は『現象制御』と『創界制御』の組み合わせである大技、全ての攻撃を無効化する『月光曲芸団 サーカス大劇場』を展開。


 さらに従機である『月光曲芸団』のメンバーをフル動員し、何とか互角の戦況に持ち込むことに成功。 


 そして、どちらとも手を出せない睨み合いが続き、


 その後、そこに現れた1機のレジェンドタイプが全てを終わらせることとなった。



 浮楽の帰りが遅いことを察した白兎が援軍としてタキヤシャを派遣したのだ。

 

 タキヤシャは強化オプション『マサカド』を発動させ、大ホールを囲んでいた結界を完全破壊。

 そして、オマケとばかりに機械種ハーリティとグレインを威圧。

 

 1機と1人はそれで戦意を失った。

 浮楽とタキヤシャの撤退を、負け惜しみとも取れる捨て台詞を投げかけて、ただ見送るしかできなかったそうだ。






「まあ、浮楽に大きな破損が無くて何よりだ」


「ギギギギ、ギギギ! ギギギギギギ………」


 フルフル


 

 俺がかけた言葉に浮楽が何やら申し訳なさそうに『ギギギ』と話す。

 すると即座に白兎が翻訳。


 内容は、マスターの命令に背いて少女を助けてしまったこと、また、敵に情けをかけてしまったことへの謝罪。


 少女を助けてしまったことが、今回の騒動に繋がってしまったのだ。

 俺の命令を至上とするなら、少女を見捨てるべきであっただろう。


 だが、浮楽はその選択を取ることができなかった。

 結果的に大きな失敗にはならなかったものの、浮楽の行為は命令違反に等しいモノ。

 

 これが任務に忠実、且つ、冷徹な判断もできるヨシツネなら、少女を見捨てる選択肢を取ったかもしれない。

 しかし、浮楽のアライメントはランクアップ後、大きく『善』に傾いており、特に女子供の危機を見逃せない性格になってしまった模様。


 これは浮楽の帰還後、事情を聞いた上で白兎や胡狛と話し合って判明した事実。


 仲間を傷つけたような敵に対しては残酷なまでに容赦しないが、無関係の人々は自身の芸を見てもらえるかもしれないお客様として大事に扱う。


 また、以前は人やモノを破壊することに喜びを感じていた浮楽だが、その性質が逆転。

 人が大事にしているモノを壊すことに抵抗を感じるようになったと言う。

 

 現に、『灰色蜘蛛』との戦闘では、機械種ハーリティが自身の赤子として可愛がる『強化オプション』、そして、グレインが教官との絆と称した愛銃を一度は取り上げることに成功しながらも、相手から壊さないでくれと懇願されたことで、何もせずに返してしまった程。

 

 戦闘者としてはどこまでも甘く、ランクアップ前の破壊者・殺戮者としての顔も薄れてしまった。


 胡狛によれば、これは俺が浮楽の前では弱きを助け強きを挫く行動を見せていたことが影響しているらしい。

 マスターである俺の対応が甘いから、自然とメンバーの行動もそれに準じることになると…………



「まあ、浮楽はランクアップしたことで、ソレが特に強く表に出てしまったんだろうなあ………」



 これは浮楽が色付きであるという事も大きいのかもしれない。

 このマスターの命に縛られない、自身の業に従う奔放さが色付きの特徴なのだから。

 

 

「ギギギギギギギッ! ギギギギギ!」


 パタパタ



 続けて浮楽が自分を罰してほしいと申し出てくる。

 白兎はソレを翻訳しながらも、上司として自分も同罪だとの弁。



「気にするな。お前達を罰するつもりなんて無い。俺が元々大きな被害を出すなって言ってたし……」



 俺は即座に2機の申し出を却下。


 機械種ハーリティが抱えていた赤子、そして、灰色蜘蛛の長の愛銃を壊さなかった浮楽の判断は俺からすれば正しい。


 鬼子母神の赤子を殺してしまったら大変だ。

 地獄の底まで実行者を探し続けるであろう。


 また、教官とも縁のある愛銃をぶっ壊すなんて、俺だってやりたくない。

 それにそもそも不必要な恨みは買うべきではないのだ。


 今回の『威力偵察』は、自分達が襲われると言う可能性を思い知らせて、後ろ暗い活動を委縮させる為のもの。


 タウール商会程の規模になれば、恨みを買う相手には事欠かないはず。

 襲撃者が俺だと特定できなくても、しばらくは活動を控えて防衛に力を入れるはずなのだ。


 だが、私怨が生まれてしまうと、そんなことすらどうでも良くなり、暴走の引き金を引いてしまいかねない。

 だからこそ建物・設備への破壊工作をメインとし、人命の被害を極力抑えるように指示を行ったのだ。

 



「それに、女の子を助けたことについても、浮楽の判断は間違っちゃいない」




 確かに俺の命令を違反したことになるのだろうが、そもそも今回の『威力偵察』先に無関係な一般人が囚われていたなんて想定外。

 イレギュラーに見舞われたのなら、それに対応する為に柔軟な思考を行う事が求められるであろう。




「目の前に助けを求めている人がいるなら助けるのが当たり前………」




 そして、何気なく返してしまったヒーローが良く口にするお題目。


 『助けるのが当たり前』と答えた所で言葉に詰まる。


 自分で口にしながら、到底実践できていないことだなあと思ってしまったから。



 俺自身、自分に余裕があるなら助けるだろうが、そのことで著しく利益を損なうことがあるなら躊躇してしまうだろう。

 俺は自分のことを正義の味方とは思っていないし、善人でもないだろうと自覚している。


 悪人でも無ければ非道を行うような人間でもないが、それでも、『目の前に助けを求めている人がいるなら助けるのが当たり前』等と、大きな口を叩ける人間では決してない。



 浮楽は普段の俺の行動を鑑みて、自分の益にならない人助けをしたそうだけど、俺の行動はあくまで表面だけ。


 内心は自分のことしか考えていない小狡い人間のまま。

 俺が行ってきた人助けは、周りの状況に流されただけに過ぎない。



 俺は皆が思うような立派な人間じゃないんだけど…………



 ふと、自らが行ってきた成果とその時々の葛藤を思い起こしながら、その著しいギャップを痛感。

  

 きっと他の物語に良くいる主人公達は、その正義感と行動が一致しているからこそ、英雄やヒーローと呼ばれるのであろう。

 ならば、行動と心の中の思いが一致しない俺は、何と呼ばれるのであろうか?



 何となく頭に浮かんでしまった疑問。

 だが、それはきっと自分自身では答えを思いつくことの無い永遠の課題………



「ふむ………、マスター、よろしいですかな?」



 そんな悩む様子を見せる俺に、毘燭が声をかけてくる。

 その声は低く静かで深い。

 まるで何十年も修行を重ねてきた清廉な僧侶であるかのように。

 

 

「内心はどうであれ、マスターの手によって救われた者がいるのも事実ですぞ。あまりお気にされないように」


「毘燭、俺の心を分析するなよ。お前に心理学のスキルを入れた覚えはないぞ」


「ハハハハ、これはご無礼を。マスターのお顔は分かり易かったので、つい口が滑りましたな。罰はいかようにも………」


「うるせー、顔が分かりやすいのは仕様だ。お前が遠慮なく俺にポンポン物申してくる仕様なのと一緒でな」


「マスターと一緒とは誠に光栄。そのお言葉だけで拙僧の晶脳は喜びで打ち震えますな」



 俺の嫌味にもめげず、意趣返しであるかのように慇懃無礼な一礼を返して来る毘燭。

 コイツの面の皮の厚さは白兎やベリアル並みかもしれない。

 



「フンッ! …………とにかく、その件についてはこれで終わり。それよりも気になるのは、その『灰色蜘蛛』の長、グレインが残した捨て台詞だな」


 

 鼻息を鳴らして毘燭を一睨み。

 そして、白兎や浮楽に向き直って話題を無理やり次へと移行。

 


 聞けば、浮楽とタキヤシャがその場を去ろうとする際、グレインが残したセリフが2つ。



『灰色蜘蛛は降りる』

『お前達のマスターに伝えておけ。命が惜しくばこの街から離れろ』




 この『降りる』という意味はある意味『負け』を認めたようにも取れる。

 今回の『意力偵察』で『見えない敵』の実力を思い知ったから、しばらく活動を控えるということであろう。


 グレインが状況から、浮楽やタキヤシャを俺の従属機械種と見抜いていたという可能性も僅かに残るが、『灰色蜘蛛』はこの街の裏社会を仕切る巨大な犯罪組織。

 俺の件以外でも色々と多方面に仕掛けているだろうから、あくまで襲撃者の大本を特定ができないまま、とりあえず『手を引く』という宣言を行ったのではなかろうか。

 

 少なくともそう言っておけば二度目の襲撃を回避できるだろうから。



「実際に俺を探っていた件から手を引くようだし…………」」



 念の為、『灰色蜘蛛は俺に対して何か仕掛けてこないか?』と打神鞭の占いを行使した所、『何もしてこない』との答えであった。

 つまり『灰色蜘蛛』は俺達の『意力偵察』に懲りて、しばらく全面的に活動を控えるつもりなのだ。



「あと、『命が惜しくばこの街から離れろ』………か。これは浮楽とタキヤシャの誰とも分からないマスターに向けての脅しだろうな。言われなくても俺はあと1週間でこの街から出て行くけど」



 面子を潰されてしまったのだから、言わずにはおれなかったのだろう。

 向こうは紛うこと無き反社会的組織なのだ。

 表面上だけでもそう言っておかなければ、部下の手前、威厳を保てない。



「打神鞭の占いで灰色蜘蛛は『何もしてこない』と出たんだから口だけだな。全く面子って言うのは厄介だねえ……」



 灰色蜘蛛については気にする必要がないということ。

 となれば、残るタウール商会を構成する組織は3つ。



「『土蚯蚓』は除くとして、残りの『泥鼠』『躯蛇』のことは気になるけれど………」



 だが、『泥鼠』にはすでに俺の情報を探れという依頼が出回っている。

 ヨシツネの『威力偵察』により、牽制効果はあるのだろうが、末端まで届いた依頼は今更取り上げようがない。

 おそらく俺に対する細かいチョッカイは、頻度は減るだろうが今まで通り行われるはず。

 これに関しては日頃注意することぐらいしか対応策が無い。

 

 また『躯蛇』についても、ダンジョン活性化における先行隊襲撃の失敗で人員的に大打撃を負った模様。

 その証拠は見つかっていないようだが、『白翼協商』『蓮花会』『征海連合』『鉄杭団』から猛烈な追及を受けているようで、俺にちょっかいを仕掛けてくる余裕もなさそうだ。



「まあ、俺がこの街にいるのもあと一週間だし、それに森羅達が買い出しから帰ってきたらすぐに街を出る予定だからな。これ以上、タウール商会の奴等と関わることも無いだろう」


 フリフリ


「んん? ……………ああ、予定通り、暴竜の狩り場の白の遺跡に向かう。刃兼をダブルにして、その後は空中庭園と浮遊島の連結だな」


 パタパタ


「そうだぞ。この街に帰って来るのは5日後だな。ちょうど試験が終わる前日。領主のパーティが終わった2日後だ」



 ダンジョン活性化終了と三男救出の祝い、そして、それに関わった者達の慰労を兼ねた領主主催の祝賀パーティ。

 アルスやハザン、アスリンチームやレオンハルト達は参加するようだが、俺は辞退。


 どう考えても厄介事しか見えないから。

 俺だけ仲間外れになった感はあるけれど、それでも慣れない上流階級っぽいパーティに参加するなんて御免。



 そうして白兎と今後の予定について話し合っていると、



「マスター、今戻りました」



 ガレージに帰って来たらしい森羅の声が耳に届く。



「お! 森羅達が帰った来たのか。じゃあ、そろそろ出発を………んん? どうした? 森羅………」



 扉が開いて森羅が姿を見せるが、なぜかその顔は険しいしかめっ面。

 

 美麗な森羅が悩まし気に歪む表情はともすれば耽美とも言える雰囲気を醸し出すのだが、今回はどこか仕事に疲れたサラリーマンような煤け具合が見受けられる。

 

 まるで苦手なタイプの人間に付き合わせられたような………

 

 

「マスター、申し訳ありません」


「え? 何?」



 入って来るなり俺に謝罪してくる森羅。

 

 

「実は、帰る途中でガイ様とバッタリ会ってしまいまして………」


「え? ガイと?」


「お連れの方と一緒に、どうしてもマスターに会いたいとおっしゃり………」


「…………つまり、一緒についてきちゃったわけね」


「はい………」



 申し訳なさそうな顔で森羅が頷く。

 

 だが、今までのガイとの関係上、森羅では断るのが難しかった様子………というより、断っても強引に付いてきそう。

 ならば、まだ一緒に連れてくる方がマシと判断したのであろう。



「私達がガイ様に見つかってしまったばかりに……」


「いや、それはどうしようもないだろ」



 森羅は光学迷彩を使うことができるだろうが、一緒に胡狛や秘彗、刃兼がいるのだから無意味。

 買い出しなのに、知り合いに遭遇することを念頭に隠れながら街中を進むのも馬鹿馬鹿しい話。



「さて、ガイは一体何の用なんだろうかね?」



 模擬戦の申し込みだろうか?

 つい先日、新しい機械義肢を見せびらかされて、その試運転とばかりに勝負を挑まれた所。

 

 その時は教官が間に入ってくれて回避することができたが、まさか俺のホームまで押しかけてくるとは………



「そりゃあ、俺があともう少しでこの街を出ていくのだから、勝負を焦る理由は分かるけど………、それに付き合うのも面倒臭い」



 ガイの姿を頭に思い浮かべて、少々げんなりした気分になりながら白兎、森羅の2機と一緒にガレージの外へと出ると、




「おう! ヒロ。元気そうだな!」



 飛んできたのは、無駄に活力に溢れた声。

 声の主に視線を向ければ、相変わらず暑苦しい雰囲気を纏ったガイの姿。


 そして、その後ろには沈んだ表情で立ち並ぶ秘彗、胡狛、刃兼達。

 俺の意に沿わず、ガイをここに連れて来てしまったことを申し訳なく思っているのであろう。

 


「ありがとよ、シンラ。おかげでヒロと会うことができた。助かったぜ」


  

 やたら機嫌が良さそうに、珍しく感謝の言葉を口にするガイ。


 森羅に近づき、その肩を生身の左手でバンバン叩く。

 彼なりの感謝の表し方なのであろうが、どうにも荒っぽい。




 うあ………

 森羅がめっちゃ嫌そうな顔。



 ガイに絡まれているように見える森羅の姿はじっと苦難に耐える修行僧のよう。

 眉間に皺を寄せ唇をかみしめた、精一杯の不快感を表すような表情。

 

 森羅がここまで感情を露わにするのは珍しい。

 よっぽど相性が悪いんだろうか?



 ダンジョンでガイ達を助けた時も森羅が一緒に居たし、再突入した時も一緒だった。

 秘彗や胡狛といった女性型に比べ、中性型である森羅の方が話しかけやすかったこともあり、道中、生活関連についてはガイは森羅に頼っていたのだ。

 

 ガイにとってはそれなりに仲の良いつもりなのだろうが、森羅にとっては俺が感じているのと同様、ガイを少々うっとおしく思っていてもおかしくない。


 だが、ガイはそんなことは欠片も察することができないまま、にこやかに話しを続ける。



「偶然、シンラ達と出会えて良かったぜ。でなきゃガレージ街を全部総当たりしなきゃならない所だった」



 それはそれで迷惑極まりない話。

 コイツならやるだろうと確信を持ってそう思う。


 どの道、ここに来ることが確定しているのなら、森羅達と出会ったことで余計な手間が省けたとも言える。

 

 これも運命か………

 これが美少女との再会なら諸手を挙げて歓迎するんだけど、ガイだからなあ。


 

 運命の残酷な仕打ちにうんざりした顔をしてしまう俺。 


 個人的にはガイのことは嫌いではないが、根がオタク気質で小心者の俺としては、粗暴で喧嘩っ早いガイは苦手なタイプ。


 

 いかにも荒事が得意ですといった荒っぽい雰囲気。

 革ジャンに逆立った黄色の髪の毛という不良スタイル。

 右腕には新しく装着した『吼え猛る闘鬼』の腕。


 どこをどう見ても危険人物以外あり得ない。

 街中で出会ったのなら、即後ろを向いて逃げ出したであろう。


 ダンジョンでの救出作戦前なら余計なトラブルを避ける為。

 ダンジョンでの救出作戦後ならウザ絡みされるのがうっとおしいから。


 最初に出会った時と現在とでも、ガイへの扱いは大して変わらない。

 会話は通じるようになったが、その分面倒なことも増えたのだ。

 

 

「ガイ、なんだよ、朝っぱらから………」


「ハハハハッ! 随分と機嫌が悪いじゃねえか! ヒロは朝が弱いのか?」


「たった今、お前の暑苦しい顔を見たから機嫌が悪くなったんだ」


「ハンッ! 自分の顔も鏡で見ろよ。今よりもずっと機嫌が悪くなるぜ」


「なにおう! 俺が不細工って言うのかよ! お前だって大した面していないだろうが!」


「お前から顔のこと、言ってきたんだぞ!」



 売り言葉に買い言葉。

 ガレージの前で罵り合う俺とガイ。


 どうしてもコイツと会うとこんなパターンに嵌まってしまう。

 これ自体がコイツとのコミュニケーション方法なのかもしれないが。



 しばし、ガレージの前で子供染みた口喧嘩が続き、



「ガイ。少し静かにしてくれないかしら」



 横からかけられた女性の声によって、一時中断。



「押忍! す、すみません、パティさん」



 その声にガイは顔を引き攣らせ、まるで兵隊のようにピシッと直立。

 

 そして、その声の主はツカツカと足音を立てながらこちらに近づいて来て、

 



「おはようごさいます、ヒロさん。すみません、ご自宅に押しかけるような形になってしまい………」



 ガイの隣に並び、俺への挨拶と謝罪の言葉を口にする。



 それは紺色のスーツに身を包んだ妙齢の女性。

 外見は20代後半の金髪美女。

 その実、30代半ばであり、しかも子持ちである鉄杭団の団長ブルハーンのご息女にして副団長。



「えっと………、パルティアさん……でしたね?」


「はい、鉄杭団の副団長を務めますパルティアです。この度は娘のパルミルを救助してもらった上に、父である団長も助けていただいたようで。本当にヒロさんには感謝しております」



 颯爽とした仕草で感謝の意を示すパルティアさん。

 雲間から朝日が降り注ぐ中、パルティアさんの金髪が美しく輝く。


 一つ一つの所作が実に上品で洗練されている。

 その魅力的な姿態と合わさって、それだけで相手の好感度を稼ぐことができるであろう。


 あの粗暴で野卑な所もあるブルハーン団長に代わり、他の団体との交渉を一手に握る有能な交渉人でもあるらしい。

 ブルハーン団長が1ヶ月間居なくても団は回るが、この人が一週間休めば団は崩壊するとの下馬評だ。



「こうして娘と一緒に外を歩けるのもヒロさんのおかげです」


「ヒロさん、ありがとうございます!」



 俺の耳に届く幼い少女の声。

 よく見ればパルティアさんの横に鉄兜を被った少女、パルミルちゃんも居た模様。

 その足元には機械種ラタトスクのラトゥの姿もあるのに、パルティアさんのゴージャスな姿に隠れて全然気づかなかった。


 パルティアさんが服装は控え目なのに、そのスタイルの自己主張が激し過ぎるから。

 まだ年端もいかないパルミルちゃんとでは存在感の差が著しい。


 パルミルちゃんも可愛らしい少女ではあるが、パルティアさんの美しさと色っぽさの前には霞んでしまう。

 悪いけど、パルティアさんのおまけにしか見えない。


 それぐらい俺の目はパルティアさんの魅力に惹きつけられてしまっている。

 ただ立ち尽くし、その魅力的な唇が奏でる言葉に陶然とするだけ………



「本来であれば、団長が訪れてお礼を言うべきなのでしょうが、未だ怪我が治らず入院中なのです。ご容赦ください」


「はあ………」


「つきましては、そのお礼の品を届けに参りました。些少ではございますが、お受け取りいただけませんか?」


「はい………、え? お礼の品?」



 普段あまり目のすることの無い成熟した大人の魅力に見惚れてしまい、気の無い返事を返してしまう俺。


 だが、『お礼の品』という言葉に、ハッと我に返り、



「あ………、ひょっとして、その後ろのトラックですか?」



 少し離れた所に止まる輸送用の大型トラック。

 荷台にはナニカが乗せられている様子。

 シートがかけられていてその中身は分からないが、おそらく重量級並みの大きさであろう。



「はい。こちらがヒロさんにと、ご用意しましたお礼の品になります………、ガイ! お願い」


「押忍! パティさん!」



 パルティアさんの指示でテキパキと動くガイ。

 いつもの不良染みた荒っぽさや反骨心はどこへやら。


 タタっと駆けてトラックの後部へと回り、荷台にかけられたシートを取り外す。



 そして、トラックに乗せられていた『お礼の品』が全容を現す。



 それは荷台に横たえられた全高5m程度のずんぐりとした人型機械。

 相撲取りのようなごついフォルム。

 上半身に比べ下半身が太く、特に脚部の太さは一本で胴体を支えることができそうな程。

 全身鎧を着こんだ5頭身の巨人の騎士といった造形。



 機械種で言えば、巨人型か鬼神型であろう

 

 だが、これは機械種ではない。

 明らかに人の手で造られたモノなのだ。

 それも中に乗り込んで人が操作するタイプの………



 かつて見た未来視での魔弾の射手ルート。

 『魔風団』と名を換え、中央で活躍していた際、通常の戦車に混じって戦場を駆けた移動砲台とも言うべき兵器…………いや、戦車。



「うわあ………、『人型戦車』だあ………」



 俺の口からその兵器の名が漏れた。


 それは数限りない人間に希望を与え、同じくらいに失望をももたらしたロマン兵器であった。

 

 

 


『こぼれ話』

金持ちが街の中心部に住みたがる理由の一つに、機械種に危害を加えられないから、というものがあります。

白鐘による白の恩寵は、教会がある街の中心部から離れるほど薄くなり始め、それにより機械種への『枷』が徐々に緩くなっていくからです。


最も白の恩寵が濃い白の教会内では、機械種はたとえ護衛スキルを持っていて、マスターが襲われようとしていても、敵が人間なのであれば傷つけることができなくなります(敵が機械種なら反撃できます)。


ただし2つの例外があり、1つはマスターが感応士の場合、もう1つは機械種が加害スキルを保有している場合。


なので、白の教会は感応士を集め、加害スキルの保有を禁じていると言われています。


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