第621話 一閃


 

 リングに上がった途端、闇剣士から威圧がビリビリと飛んでくる。


 30本以上の蜘蛛の脚のような腕が背後から生え、脇腹からも副腕が生えそろった蜘蛛染みた格好。

 その腕全てに異なる形状の剣を携え、もうとても人型とは言えない異形となった剣魔人。


 その手の中の48本の剣のうち、果たして俺の身体に傷をつけうる空間攻撃を放つ剣はどれだろうか?




「右腕だけ少し色が違うな………」



 全て黒色系統で染められた闇剣士の機体だが、本来の右腕だけが他の腕とほんの僅かだけ色合いが異なる。



「そう言えば、あの右腕以外は全て新たに生やした腕か」



 ルガードさんの後半の猛攻で右腕以外断ち切られていたはず。

 だとすると、あの腕だけが最初から付いていた腕ということに………


 

 

「カカカカカカカカカカカカカカカカカカッ! ようやく、ようやくお前と勝負ができるナ! 待っていたぞ、この時ヲ!」


「御託は良い。始めるぞ」


「お、おイ! お前まであの不愛想な男の真似をすることは無いだろウ! 少しだけでいいから俺の口上ヲ………」


「その手には乗らん。時間稼ぎは結構」



 相手が強ければ強い程強くなるという闇剣士。

 

 では、その強くなるタイミングというのはいつなのか?


 試合開始から?

 剣を合わせてから?

 ダメージを貰ってから?

 もしかして、リングの上に立って向かい合った時から?

 アイツがわざわざ大層な口上を述べてくるのも、そういった理由があるのではなかろうか?



 どちらにしても、時間をかけるわけにはいかない。

 とにかく速攻で仕留めるしかないのだ。



「だとすると、俺が選ぶ武器は…………」



 この異空間に入ってから…………

 いや、このダンジョンに入ってから、ほとんど手放すことも無かった『瀝泉槍』。


 戦闘が発生するかもしれない場所では、常に俺の手の中にあり、俺の脆弱な心を支えてくれた俺の守り神。

 

 これがなければ自分や仲間の命を賭けた試合を前に、とても平静でいられたとは思えない。

 圧し掛かった責任感の重さに耐えられず、醜態を晒していた可能性だってある。


 戦場でも日常でも手放せないパートナー。

 武器としてもこれ以上無い程の能力を持つ宝貝。



 貫けぬモノ等ない神秘を宿した穂先。

 決して歪まない真っ直ぐな柄。

 蛇が巻き付いたような鱗模様が浮かぶ黄金の槍。


 

「そういや、斬りつけた敵を毒化させる効果もあったような………」



 しかし、大概の敵は一撃で葬ってしまうので、ほとんど活用されることのない効力。

 俺の戦い方は一撃必殺が基本なので仕方ないね。



「攻撃にも防御にも優れた、俺のメインウェポンだけど…………」



 だが、ここで望むのは攻撃力と速度。

 あの何十本もある剣群を一刀で切り裂くことのできる長大な刃。



「だからここで使うのは『瀝泉槍』じゃなくて…………」


 

 瀝泉槍を腰に付けたバッグ(を経由しての七宝袋)へと収納。


 代わりに引き出すのは、俺の最も古い相棒。

 

 20cm程の長さの剣の柄。

 ただの短いワンドにしか見えない形状。

 

 しかし、仙力を注入すれば、ライトセーバーのごとき光の刃が出現。

 何物をもバッサバッサと切りまくる殺戮兵器。



 その名を『莫邪宝剣』。




 !!!!!!!!!!



 

 俺が瀝泉槍を収納した途端、後方の観戦席から驚きの声が上がった。



 それはそうだろう。

 『白ウサギの騎士』ヒロの特徴は、


 いつも機械種ラビットを連れ回し、

 普段着にしか見えない黒のパーカーを着て、

 古びた槍を手に持つという姿。


 

 高位の発掘品と思われている『槍』を手放したのだ。

 代わりに取り出したのが、ただの短い棒。

 これで驚くなという方が難しい。



「こんな大人数の前で使うのは初めてかな?」



 とにかく目立つことこの上ない武器。

 太陽のごとく光り輝く剣など、物語の中の勇者や英雄が追い求め、手に入れるまで数々の試練を乗り越えなければならないような伝説の装備。


 そんなモノを俺が持っているとすれば、どこかの鐘守が聖遺物だとばかりに回収に来てておかしくない。



 しかし、そんなリスクを負ったとしても、今回の試合に『莫邪宝剣』は必須。


 重量級に近い巨体を一撃で両断できる刃を生成。

 駆け寄って一刀すれば、それで終了。


 向こうは近接戦闘型だから『空間障壁』は使えないであろう。

 ならば数々の高位機種の血………、いや、鉄やオイルを喰らってきた莫邪宝剣の敵ではない。



「そういや、俺がこの世界に来て、一番の重傷はお前に足を切られたことだな?」



 ふと、頭に過った、足を切断されて激痛にのたうち回った光景。


 今になっては懐かしい思い出とも言える話を口にすると、


 莫邪宝剣から、『それは自業自得だろ!』という荒っぽい口調での反論が流れ込んできた。



 はい、それはごもっとも…………

 









「かカカカカカカッ! それがお前の切り札カ? それとも、あの威勢の良い小僧のように本命を隠すためのブラフか?」


「さてね? どちらが正しいかは、試合の決着後に分かるだろうさ」



 闇剣士からの問いをはぐらかしながら、莫邪宝剣を脇構えに持ち、腰を低く落とした体勢を取る。

 少しばかり居合抜きしそうなポーズにも見えなくも無い。


 

 莫邪宝剣の光の刃はまだ出さない。

 出せば警戒されるだろうから、ギリギリまで隠しておくつもり。


 相手は48本の腕と48本の剣を持つ異形の剣士。

 対してこちらは莫邪宝剣1本。

 ちょっとぐらいは手の内を隠さないと、ハンデがあり過ぎる。



「ほウ? 最初に会った時と雰囲気が異なるナ。槍を持ったお前は泰然自若とした山にも等しい巨岩に見えタ。だが、今のお前は今にも吹き荒れそうな嵐の直前のよウ。武器1つでここまで変わるとハ…………」


「…………………」


「フンッ! 無視カ、つまらんナ」



 俺が取った構えを見て、早速闇剣士が通ぶった解説を口にしてくるが、完全無視。 


 

 俺の雰囲気が変わるのは至極当然。

 

 瀝泉槍から流れ込む武術の腕は宋時代の大英雄、岳飛に由来するモノだ。


 そして、この莫邪宝剣は、殷周革命時を題材とした封神演義に出てくる道士、黄天化が収めていた武術を俺に付与してくれる。


 元が違うのだから、雰囲気が異なって当たり前。

 未だかつてそれを指摘してきた者などいないけど。


 どちらが優れているのかは、俺の知見では計りようが無いが、瀝泉槍は人間型相手の戦闘が得意。


 莫邪宝剣は化け物相手や空中機動戦等の特殊戦闘に秀でていると言える。

 

 ちょうど今の闇剣士は化け物と言っても良い形状。

 莫邪宝剣にピッタリの相手であろう。


 しかし、いかに莫邪宝剣が俺に武窮を授けようと、闇剣士が相手となれば、もう一つの課題を解決しなければならない。



 

 即ち、『超高速戦闘』。




 俺が超高速で動けばどうしても周りにある空気の壁が邪魔をする。

 思考加速で知覚は問題無くても、身体が付いていかないのだ。


 元々、ヨシツネ相手の模擬戦でも、スピードでは後れを取っていた。

 この超高速戦闘がネックであることは、教官からも言われていた通り。


 実の所、超高位機種レベルの、技と速度に優れる中量級近接戦闘型相手の勝負はコレが初めてだったりする。

 今までそういった相手はヨシツネや白兎、ベリアルに押し付けていたから当然。


 基本的に俺は勝てる敵しか相手にしない方針なのだ。


 しかし、今の状況に至ってはどうしようもない。 

 



 目の前に立つ闇剣士を睨みつける。


 莫邪宝剣の柄を右手で握り締め、

 身体をやや半身、右足を前に、

 つま先に力を入れ、いつでも駆け出すことができるように準備。



 

 闇剣士を速攻で倒す為には、超高速戦闘が必須。

 ルガードさんのような減圧フィールド発生装置なんて持たない俺では、それを行う方法は1つしかない。




「では、行くぞ、闇剣士!」


「全く情緒の無い奴ダ…………、まア、良いだろウ。少々遊んでやってからもう一度チャンスをくれてやるとしよウ」




 48本の腕で迎え撃たんと構える闇剣士。

 

 おそらくあの剣が届く範囲に一瞬でも留まれば、ルガードさんと同様切り刻まれる。


 大部分の斬撃は俺の身体には通用しないだろうが、その中に一閃でも空間攻撃が混ざっていたらそれでジ・エンド。



 故に速攻。

 攻撃を受ける前に、敵を仕留める!




 ひょおおおおおおおおおお………




 剣を構えながら大きく息を吸い込んでから、


 

 左手の指を擦り合わせて作り出した仙丹を口に放り込み、

 


 息を止めて、腕輪に嵌まっている『定風珠』へと心の中で命令を下した。





 『この場を真空で満たせ』




 

 言葉の意味合いを考えると正しくないのかもしれないが、それでも俺の意を組み上げ、風や大気を操る宝貝『定風珠』はその能力を発揮。




 スィン…………



 

 酸素も窒素も、当たり前に存在していた大気がリング場から消失。


 物理的な化学反応も、マテリアル機器を用いた事象も関係ない。


 ただ理不尽で不可思議な仙術が結果だけをこの場にもたらした。




 正直、『真空』は怖い。

 だが、これしか思いつかなかったのだ。


 おそらく一瞬のことだから耐えられるはず…………

 一応、仙丹を口に含んでいるから、傷を負ってもすぐさま治療ができるだろうし。

 




「何!?」




 闇剣士が慌てる様子が目に入る。


 マテリアル反応も無しに、いきなり辺りが真空状態となったのだ。

 

 機械種だけに、理には沿わない現象に戸惑いを隠せない。





 好機!!





 そう捕らえた瞬間、俺は足を踏み出し、『縮地』を発動。


 普段ならヌルリと纏わりつく空気の感触も、今は感じない。


 足を踏み出す動作が恐ろしくスムーズ。


 限りなくタイムラグ無しに、俺の身体は5m程瞬間移動。


 さらに続けて、『縮地』を行い…………


 




 昨今の能力バトル物では、主人公達が頭を絞り、いかに能力を活かして思いもつかなかった方法で戦うのかが主流。


 まさか、こんな使い方があったなんて……………


 あの最弱スキルが、こんな効果を引き出すとは…………

 

 これが物語に深みを持たせ、読者を引き付けるのだ。


 

 非常に練られた設定。

 読者の想像の範囲を超える展開。

 意外性をこれでもかと詰め込んだ戦闘シーン。

 様々な能力を組み合わせ、誰もが納得する結果を導き出すクライマックス。



 俺が保有する数々の能力は、他のネット小説の主人公達にも劣らない万能ぶり。

 しかし、残念ながら俺の決して柔軟でない頭では、そんな意外性を用いた能力の使い方なんて思いつかない。


 だから、俺にできるのは、溢れんばかりのパワーを用いて、超強力な武器を叩きつけるだけ。

 

 情緒もへったくれも無いが、最もストレートに敵を倒すことのできる一番の近道。





 莫邪宝剣!!!



 心の中で呼びかければ、待ってましたとばかりに光の刃が現出。


 眩い輝きが辺りを照らし、俺の駆ける姿を瞬かせる。




 3度目の『縮地』を以って、闇剣士の間合いへと到達。


 時間にすれば、0.1秒も経っていないだろう………多分。


 だが、闇剣士は超高位機種たる反応速度で俺の接近を知覚。


 俺が生み出した光の刃を何とか防ごうとして、48本の剣を用いて迎撃を試みるが………

 

 



 残念、俺の方が速い!



 莫邪宝剣を脇構えからグッと引き抜いて上段へ。


 莫邪宝剣の刃を伸ばし、大きく頭上へと振り上げ…………





 神速の踏み込みと刹那の一閃。


 思考加速と『闘神』の身体能力、そして、『定風珠』による真空の場がもたらした究極の一。


 剣術にはあまり詳しくない俺だが、それでも、ネット小説好きとして、示現流兵法剣術の剣速の逸話は知っている。


『秒』は脈四回半の速さ。

『絲』は秒の十分の一の速さ。

『忽』は絲の十分の一の速さ。

『毫』は忽の十分の一の速さ。

『厘』は毫の十分の一の速さ。

『雲耀』は厘の十分の一の速さ。

  

 最も早い『雲耀』は空を駆ける雷の速さだという。



 ならば、この一閃に相応しい技の名前は……………





『秘剣 一文字・雲耀』!!!





 俺は全力を以って、莫邪宝剣を振り下ろした。







 ズバンッ!!!!!







 莫邪宝剣の光の刃は、闇剣士が構えた無数の剣身ごと、その機体を斜めに両断。



 闇剣士の顔が信じられないとばかりに歪…………んだように見えた。



 自身が纏う黒の甲冑も、己の代名詞たる剣も、飴細工のように切り裂かれたのだ。


 

 何百年を生き抜き、何百、何千の強者を滅ぼしてきた自分が、一度も剣を合わせることなく敗北するなど、到底信じられるモノでは無い。


 

 だが、これは紛れもない事実。


 

 ただの一閃を以って、この勝負は決着を迎えた………………

















 しかし、一つ、俺に誤算があったとすれば、




 超高位機種ともなれば、たとえ機体を両断されても、頭の晶石を砕かれない限り、数秒は動くことができる…………






「げっ!!!」





 両断された闇剣士の機体。


 右肩から左腰まで真っ二つ。


 だが、それぐらいでは背中から伸びる異形の腕は止まらなかった。


 

 闇剣士の赤い目が瞬く。


 怒り、憎悪、妬み、嫌悪…………、その全てが凝縮されたように強く激しく。


 まるで、お前も道連れだと言わんばかりに。




 当の俺は全力攻撃を敢行したばかり。


 体勢が崩れたままの状態。


 そんな最中、襲いかかってくる無数の剣群。


 まるで雨のようにギラリと光る刃が降り注ぐ。




「うおっ!!!」





 振り下ろされる『蝶剣』を身体を捻って回避。

 突き下ろされた『刺剣』は莫邪宝剣の柄で弾く。


 切り下ろされる『葉剣』の刃はギリギリで俺の肩口を掠め、

 殴りつけられた『槌剣』の一撃を倒れ込みながら躱す。



 この攻撃のどれが空間攻撃なのか分からない。

 分からない以上、全部回避するしかないのが現状。



 ガリッ!!



 躱し損ねた『鍵剣』が俺の太ももに命中。

 だが、傷ついていない所を見ると、空間攻撃では無いようだ。



 ゴンッ!



 下から掬うように来た『殴剣』に背中を殴られる。

 しかし、これも無傷。



 ズバンッ!


 

 俺の首を狙ってきた『槍剣』を莫邪宝剣で切り飛ばす。

 だが、1本破壊したところで焼け石に水。





 

 イカンッ!!


 無茶な体勢で避けようとするから、余計にドンドン追い込まれる!


 今のところ、空間攻撃は避けられているようだが、万が一、重要部位を潰されたら即死する可能性がある。


 とにかく全部避けないわけにはいかない。




 迫りくる剣群を躱し、弾き、避け………、それでも何本かの剣に切りつけられる。



 ああ………

 あと何回だ?

 あと何秒でコイツは動かなくなるんだ?



 実際はまだ5秒も経ってはいないだろう。

 だが、この超高速戦闘と思考加速を用いた状態では、まるで永遠に続く攻撃にさらされているような気分になって来る。




 早く終われ!

 早く終われ!

 早く終われ!



 

 心の中で念じるも、振り下ろされる刃はまだまだ残っており………

 



 あっ!

 ヤバい!!




 俺の視界に入って来る、一本の長剣。


 それは恐るべき速度で俺の首へと一直線に伸びている。


 その腕は闇剣士本来の左腕の位置に当たるモノ。


 


 これは…………

 避けられない!!!





 今まで無理をして回避していたこともあって、俺の態勢は完全に崩れている。


 頼みの莫邪宝剣も思いっきり振り切ってしまっており、あの数十センチで迫る長剣を迎撃するには間に合わない。


 完全に俺の動きを読まれた形。

 もしかしたらそうなるように誘導されていたのかもしれない


 

 あの長剣の一撃を確実に当てられるように…………


 だとすると、あの長剣の一撃は……………




 俺の目に移る長剣の刃の周りが、ほんの少しだけ歪んで見えるような………


 あれは空間斬が引き起こす余波ではなかろうか?




 ニヤリ………




 視界の端に、闇剣士がニヤリと笑ったような気がした。


 


 そして、長剣の刃は俺の首へと命中し…………………






 











 ただの薄皮一枚切り裂くことができずに当たっただけで終わった。






 ここで、時間切れ。






 ガタンッ!!!





 

 両断された闇剣士の機体が崩れ落ちる。


 またも信じられないというような表情を残して。


 あれだけ動いていた腕達も一斉に力を失い床へと落下。

 





 ………………終わったのか?





 自分の首筋に手を当てながら、床に倒れた闇剣士の目を確認。


 赤い光はすでに消え失せており、完全に機能は停止している模様。






 そっか…………終わったのか? 

 …………でも、なぜ?






 手で触ってみても特に傷ついている様子は無い。


 だが、あの攻撃が空間攻撃であったなら、俺の首は一撃で飛んでいたはず。





 もしかして、空間攻撃じゃなかった?



 あの左腕は一度ルガードさんに潰されて再生した腕のはず。


 だから本来の機能が発現しなかったとか?




 しかし、事情を知っていそうな闇剣士はすでに破壊され活動を停止。


 他に分かりそうな者もいない為、最終的には打神鞭で占いするしか………



 あ、でも、打神鞭には一度、『空間攻撃は俺に効くのか?』と問うて、『効く』という回答が得られていたな。 


 ひょっとして、空間攻撃のレベルによって、効く、効かないがあるのだろうか?



 う~ん………………

 これは後で、実証実験をするしかないのかなあ…………




 と考え込む俺の耳に、







 ゴオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!







 なぜか、風が荒れ狂うような豪快な音が飛び込んで来る。



 周りに目をやると、猛烈なナニカが俺の立つリング中央に向かって渦を巻くように接近してくるのが分かった。




 あ、これは…………


 このリング上を真空状態にしたから、周囲の大気がここへと流れ込んで来ている……




 ヤベエ! 

 退避!!



 

 俺には、『危ない!』と思うと、後ろや横にジャンプする癖がある。


 そして、今回も、突然の現象に深く考えることも無く、少しでも中心部から離れようとジャンプしたところへ、





 ボフォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!





 

 猛烈な暴風が俺へと直撃。

 疑似的な竜巻がその場で発生。





「うきゃああああああああああああああああああああああ!!!!」






 風に巻き上げられる木の葉状態で、十数メートル上空へ飛ばされた俺は、







 ドシンッ!!!!






 そのまま床へと叩きつけられた。






 当然ながら俺の身体に傷も痛みも無いが…………





「心が痛い…………、真空なんて大嫌いだ」




 折角ラスボスを秒殺したというのに…………



 その後、敵の最後っ屁を慌てふためきながら逃げ惑い、

 最後は風に巻き上げられての高い所からの落下オチ。


 なんで、俺っていつも最後は締まらないんだろう?

 これはむしろ俺にかけられた呪いとかではなかろうか?



 纏まらない頭でそんなことを考えながら床へと突っ伏していると、


 


「あ…………、解放されたんだ?」




 床と平行する視線の先に、隔離区域から解放されたレオンハルト、アスリン、ガミンさん、白兎がこちらへ駆け寄って来るのが見えた。


 また、少し視線をずらせば、アルスやハザン、ガイ、ニル、ドローシアも俺の方へと走って来る姿が見える。




「………………最後が締まらなかったから、もう少しこうしていよう」




 あまりにカッコ悪い最期のシーン。

 

 折角、カッコ良く決めたと思ったのに、それをぶち壊しにしかねない醜態の連続。


 本来なら肩を抱き合って、勝利を共に祝うべきだろうが、今はとてもそんな気分になれない。


 すぐに顔を合わせるのもバツが悪いので、しばらく気を失ったふりをすることに決めた。







『こぼれ話』


低位から中位の機種は、頭部を切断するか、動力が集まる心臓部を破壊すればすぐに活動を停止します。

ですが、高位機種になると、稀に切断・破壊した後も数秒ですが、活動を停止せず、こちらへの攻撃を続けることがあります。


安全に倒そうとすれば、頭部を切断ではなく晶石ごと破壊するのが一番なのですが、それはそれで実入りが減ることとなり、『安全or収入』といった狩人を悩ませる2択となっています。




ストックが切れました。

あと5話ぐらい続けたかったのですが、もうこれ以上の連続投稿は難しいので、一旦、書き溜め期間に入らせていただきます。


ですが、少し中途半端な所なので、2週間くらいで再開したいと思っております。

よろしくお願いします。

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