第610話 闇剣士



 方針が決まった所で、一旦解散となる。


 装備の点検や物資の補充。

 各秤屋ごと内での情報交換。


 連合を組んでいるとはいえ、やはり所属内でしか話せないようなこともあるのだ。

 アスリンやガイ、レオンハルトはそれぞれに所属するグループで固まり、何やら打ち合わせを行っている様子。


 また、白兎と白志癒は重傷を負った白翼協商の若手エースの治療へと向かう。

 アルスとハザンが付き添ってくれるから上手く誤魔化してくれるだろう。



「えっと、ガミンさん…………、少しご相談したいことが………」



 皆が離れていったタイミングを見計らい、周りに人がいなくなったガミンさんへと話しかける。



「おっ 久しぶりだな。お前からの相談は。だが、俺はいつも素寒貧だから、マテリアルの都合をお願いされても応えてはやれんぞ」


「……………仮にも『生還者(リターナー)』って呼ばれている凄腕探索者なんでしょ。そんなわけないじゃないですか!」


「ぐうっ! ……………………チィッ、もうバレたのかよ。バラしたのはミエリだな?」


「さあ? でも、アルスやハザンよりはずっとガミンさんのことを知っていますよ…………、だから秤屋上層部への口添え、しっかりやってくださいね」



 あえて『上層部』の部分を強調して念押し。

 すると、ガミンさんは少しばかりショックを受けた様子で肩を落とす。



「そこまで………バレているのか。畜生! 俺の楽しみの一つが無くなったじゃねえか」


「そんな楽しみは捨ててください。それよりもですね………」




 ルークから聞いた『タウール商会』………、いや、『躯蛇』の不審な行動について憶測を交えずに報告。


 もちろん、ルークの名前は出さない。

 あくまで俺独自に探りを入れた結果だと話す。



「赤能者2人に凄腕の暗殺者か……………」



 俺の報告を聞いてガミンさんはうんざりとした顔。



「今までも、嫌がらせの類は色々あったが、そこまでするかよ………」


「目的は不明ですよ。あくまでダンジョンへ向かったという情報だけですからね」


「分かってる。だが、考えられる目的は1つしかないな」


「やっぱりそうですか……………」


「しかし、アイツ等の行動パターンを考えると、絶対に失敗させてやるじゃなくて、隙があるなら仕掛けてやろう………程度だろうな。バーナムの性格から言って、一か八かの策なんて取らないはずだ」



 バーナム?

 ガミンさんの口ぶりでは『躯蛇』のボスの名前だろうか?



「蛇みたいに執念深くてしつこい奴さ。絶対に関わり合いになるなよ。対人戦のスペシャリストだ。噂によれば赤の死線で活躍していた現役の狩人を暗殺したこともある凄腕だとよ。まあ、アイツ本人が出てくるなんて滅多に無いだろうが…………」



 ひぇっ!

 それ、ガチでヤバいヤツでしょ!



「向こうとて、少なくとも俺達との全面戦争は避けたいと思っているはずだ。正面からだと戦力が違い過ぎるからな。だが、油断は禁物だ。特に帰り道は気をつけないと何をしてくるか分からん」


 

 ガミンさんの話では、先方にダンジョンの中層まで降りてくる実力は無いそうだ。

 故に仕掛けてくるなら間違いなく低階層。

 俺達が疲れ切った所を狙ってくるに違いないと。



「それにしても、ヒロの情報は助かった。何も知らなければ、痛い目を見ただろうな」


「お役に立てて何よりです。後はお任せしますね」



 必要なことは知らせた。 

 あとはガミンさんに任せれば良いだろう。











「さて、準備は整った」



 再び集まってきた皆を前に、ガミンさんが宣言。



「これから、もう一度『闇剣士』への挑戦を行う。出場メンバーは、白翼協商から、『ルガード』『ヒロ』『アルス』『ハザン』の4名、そして、鉄杭団から『ガイ』」



 ガミンさんから呼ばれた面々が、俺も含めて、前に一歩出る。



「年若い君達に俺達の命運を預けることになってしまい、誠に申し訳なく思う。だが、俺達に課せられた任務を達成する為には、もうこれしかない。『絶対に勝て』とは口が裂けても言えん。だが、『勝ってくれ』と願わせてもらう。また、命を賭ける勝負に挑むんだ。それに見合った『報酬』を『白翼協商、バルトーラ支店長ガミン』の名で約束しよう」



 ビクッ


 俺の隣に立ち並ぶアルス、ハザンの身体が一瞬震えた。


 チラッと横目で見れば、その目は大きく見開かれ、驚いている様子が目に入る。

 

 また、ガミンさんの方に視線を戻せば、真面目な顔をしつつも、どこか『言ってやったぞ』『どうだ、驚いたか?』の言葉が態度から滲み出ている。



 俺に知られているんだから、さっさと自分からバラしてしまおう……だな。


 支店長の立場に全く似つかわしくないお茶目さといえよう。


 しかし、こんな追い詰められた状況だ。

 自分の精神状態を保つためには、こういった遊びも必要なのかもしれない。

 何せ、この先行隊も含めた今の集団の中心は間違いなく、このガミンさんなのだから。




 だが、身内でのセレモニーはここまで。

 ガミンさんはギッと鋭い目を闘技場の奥へと向け、先ほどとは異なる厳しい口調で叫ぶ。



「さあ、時は来た。闇剣士よ、再びお前へと挑戦しよう!!」



 ガミンさんの声が迸るや否や、



 ギギギギギギギィ……………




 闘技場奥の扉がゆっくりと開き、中から現れるのは1機の人型機械種。


 全高は中量級ギリギリの2.5m。

 西洋鎧と武者鎧を混ぜ合わせたような和洋折衷の甲冑姿。 


 背中に2本の大剣。

 腰に2本の長剣。

 腿に2本の短剣。

 

 どのような戦闘スタイルか予測がつかない武装。

 だが、いかにも古強者といった雰囲気だけは伝わってくる。


 そして、厚い胸板を斜めに走る臙脂色のライン。

 それは赤の帝国での幹部の証。

 その実力は橙伯の上を行く『臙公』。



「アイツが『強者へと挑む闇剣士』か………」



 魔人型と呼ばれるレッドオーダー。

 中央にて特に危険とされ、その晶石に莫大な賞金をかけられた賞金首。


 何百年とこの闇剣士が倒されたという情報は無く、辛うじてその奇妙な行動様式だけが知られている。



 その異名通り、強者とされる者ばかりを狙うのだ。

 しかも、なぜか特殊な状況を組み上げ、舞台劇のようなシチュエーションを作り上げて。


 5階建ての塔を建て、1階ごとに番人を置き、挑戦者に昇ってこさせたり、


 強者の恋人を誘拐してトーナメントの賞品にしたり、


 強者の主に毒矢を打ち込み、助けたければ、十二宮を突破して神殿に置いてある解毒剤を手に入れろ、とか…………



 まあ、五対五の試合を持ち掛けるのは、その中でも割とオーソドックな方。

 

 だが、誰しもまだ勝ち得たことが無いというのだから、よほど、闇剣士が強いのか、

 それとも強者ばかりを狙いながら、実は自分が勝てる者だけに絞っているのか………

 



「カカカカカッ! ようやくそろったカ? 待ち草臥れたゾ。そのまま誰も来ずに野たれ死ぬのかと思っていたガ」



 金属音が混じる嫌に耳に触る響き。

 闇剣士が哄笑とともに、こちらへと嘲弄めいた言葉を投げつけてくる。

 


「その者達が此度の生贄カ? 随分と生きが良さそうだナ」


「!!! ………お前の言う通り、人数を揃えたぞ。もう一度試合を挑ませろ!」


「カカカカカッ! 慌てるナ。まだ、中のモノは生きている………、生きているだけだがナ。さてさて、あとどのくらい生きていられるカ……、少々オレの暇つぶしに付き合ってもらったからなア………、カカカカカッ!」


「てめえ! 人質には手を出さないと…………」


「カカカカカッ! 嘘だ嘘ダ。何もしておらン。カカカカカッ! お前の焦った顔が見たかっただケ! カカカカカッ!」 



 ガミンさんが強い口調で挑戦状を叩きつけるも、闇剣士はまともに取り合わず、ただ挑発を繰り返す。



「カカカカカッ! 新たに増えた者達がいるナ。フムフム、ホウ? 竜種カ? それに死霊騎士モ? ……オオッ! ストロングタイプがこれ程の数?」



 ガミンさんを一しきり揶揄った後、俺達の従属機械種に興味を向けた闇剣士。


 面白いモノを眺めるように、右から左へと見渡して、



「1機、業を重ねた者もいるナ。惜しイ。戦士であれば、剣を合わせたいところであったガ………、ホウホウ! 赤土の娼モ! これはこれは期待が高まル! これほどの機種を従属させているのダ、さぞかし強者なのであろウ……………」


 

 闇剣士はフルフェイス兜を被っており、表情は見えないが、喜んでいることだけは良く分かる。

 赤い目の瞬きから、ニヤニヤしているような感情が見え隠れし………



 ビクッ



 闇剣士の視点がある箇所に来た途端、なぜか、ピタリと動きを止めた。


 それはまるで信じられないモノを見たような雰囲気。

 明らかに動揺している姿がこちらにも分かる動向。

 表情は見えないものの、今まで厭味ったらしい笑顔でいたのが、なぜか急に真顔にでもなったような印象。



 そして、しばらくして、




「おイ、何でお前がそっちにいるんダ、詩人」




 感情を抑えた平坦な声。

 先ほどまでこちらを馬鹿にするような軽快な口ぶりとは大違い。

 完全にマジが入った口調。




 しかし、問われた詩人………トライアンフは自分のことだとは思わず、周りをキョロキョロ。



「お前ダ! お前!」


「んん? オマエという名の機種は、こちらにはいませんが?」



 堪らず、トライアンフを指差す闇剣士だが、当の本人は恍けた様子で返答。



「ふざけるナ! 『歌い狂う詩人』! そこのセンスの悪い羽根帽子を被ったお前ダ!」


「ふ~む? ワタクシの被っている羽根帽子は大変センスの良いモノなので、貴方のおっしゃる『詩人』とやらは、こちらにはいないようですね」


「コイツッ! ………斬り殺すゾ!」


「おやおや、良いのですかな? 試合外で貴方からこっちに攻撃を加えると、もう世界設定が守ってくれませんよぉ~」



 人を腹立たせることについては超一流のトライアンフ。


 先ほどと打って変わって、闇剣士は揶揄われる立場へ。



「それに見なさい! この頼もしい仲間達を! 貴方がこのワタクシに一筋でも傷をつけたのなら、仲間達全員でボコにしますからね。はははははははっ! ワタクシの仲間は皆、お強いですよ! それに連携も十分! それを恐れぬなら、かかってくると良い!」



 バッと前に出てきたかと思えば、大げさな身振りで挑発。

 芝居がかった口調でこれでもかと仲間の強さをアピール。

 完全に闇剣士をおちょくるのに全力を尽くすトライアンフ。



「さあさあさあ、かかって来ないのですか? たくさん持っている貴方の剣は単なる飾りですか? 闇剣士の名が泣きますよ!」


「このクソ詩人メ…………」



 煽りまくるトライアンフに、ギリギリと歯軋りで睨みつける闇剣士。



 まあ、いかに闇剣士の戦闘力が高くとも、この場全ての機種を敵に回しては勝ち目はない。

 

 その世界設定とやらが、人間と闇剣士との正々堂々な勝負を行わせるモノなら、確かに試合外で戦闘を仕掛けるのはルール違反になるのであろう。


 だが、それを見抜くとは、流石は世界有数の『創界制御』の持ち主。


 やはり性格には問題は山程あれど、有用なのは間違いない…………




「おい、ヒロ」


「あ、はい。何です? ガミンさん」


「あの闇剣士の言っていることは本当か?」


「……………狩人を探るのはマナー違反ですよ」


「くっ!」



 ガミンさんが俺に質問してくるが、俺の従属機械種でもないのに、勝手に教えるわけにはいかない。


 だが、周りを見るに、『歌い狂う詩人』がこちら側にいることに、かなり動揺している者もいるようだ。



 その悪行は天井知らず。

 長きに渡り人々を苦しめた疫病神。

 何千、何万人もの犠牲者を出した活動する災害。

 『歌い狂う詩人』とはそういうモノだ。

 

 まだ、強者しか犠牲になっていない闇剣士の方がマシと言える。

 

 その非道ぶりで言うと、うちの浮楽も大概なのだが………


 まあ、その被害の大半は中央なので、あくまで伝聞での話。

 

 それでも、なかなかにインパクトのある情報なのは確か。





 しかし、俺達の動揺を他所に、闇剣士とトライアンフは互いに言い争いを続けている。



「元々、ここで網を張る案を持ち出したのはお前だろうガ! この世界の管理をオレに任セ、いつの間にかフラッといなくなったと思ったラ、何で勝手に人間の手に堕ちていル?」


「んん~? そんなワタクシの知らないことを言われても困りますねえ~」


「この野郎! 我らが仲間の時も周りを苛つかせる奴だったガ、人間の従僕となったお前はさらに腹が立ツ! だいたい、お前みたいな奴が人間などの下にいられるわけがあるまイ! 己の性格を省みて見ロ!」


「うわあ、この機械種、ワタクシのことを全部知っているみたいな言い方をしますね。ひょっとして、ワタクシのファン、兼、ストーカーですか? ワタクシに人気があるのは仕方が無いですが、少々薄気味悪いですよ。一言で言うと、キモイ」


「アアアアアアアアアアアアア!!! コイツ!!!」



 剣の鍔に手を置くも、世界設定故にこの場では剣を抜くこともできない闇剣士。

 その代わり全身を震わせ、大いなる怒りを表現。


 だが、そんな様子を見ても、トライアンフは気にしない様子で大笑い。


 『ねえ、ハッシュ先生、アイツ、駄々っ子みたいですね。カッコ悪~い!』とか、言っている。



 何、レッドオーダー相手に散々挑発してんだよ。

 これからコイツ相手に5対5の勝負を挑むというのに。

 絶対に八つ当たりされるだろうが。



「ハア、ハア、ハア……………、もういイ! お前と話していても埒が明かン! おい! コイツのマスターは誰ダ?」



 なぜか機械種のくせに肩で息をしながら、トライアンフとの舌戦を取りやめたらしい闇剣士。

 いきなり趣向を換え、トライアンフのマスターは誰かと問う。



 けれども、レッドオーダーに問われて素直に答えるマスターなど………



「えっと…………、僕ですが」


 

 素直に手を上げるアルスがいた。



「コラ! アルス、何で正直に答えるんだよ!」


「ええ? でも、聞かれたし…………」


「レッドオーダー相手だろ! そんなの無視しろよ!」



 思わず説教をしてしまった。

 人が良過ぎるだろうに。

 ガミンさんにまで黙ってやったのが水の泡だ。



「お前カ…………」



 闇剣士はアルスへと近づき、ジロリと凶悪な赤き瞳で睨みつけて、



「提案ダ。この詩人をオレに殺させロ。その代わりオレが保有する財宝をお前にくれてやル」


「え…………」


「百年以上貯めこんだ財宝ダ。これは俺の亜空間倉庫に収納してあるかラ、たとえ俺を倒したとしても手に入らんゾ。ソレをお前にくれてやるかラ、この詩人との契約を解除してオレに差し出セ。俺の剣でコイツの機体をバラバラにしてやらんと気が済まン!」



 意外な提案にアルスの顔がポカン。

 

 どうやら闇剣士は冗談抜きでトライアンフを葬り去ろうとしているようだ。



 随分と恨まれたな、トライアンフ。

 財宝を提示してきて、マスターとの絆を断ち切ろうとしてきやがった。


 闇剣士の目が完全に本気だぞ。

 あれだけ馬鹿にされたのだからなあ。



 だが、トライアンフは闇剣士のアルスへの提案にも焦らず、涼しい顔をキープ。

 


「フフフフフッ、何を馬鹿なことをおっしゃる。私とマスターは深い絆で結ばれているのですよ。財宝を提示されたぐらいでは、アルス様は小動も………」


「……………………」


「ア、アルス様! その、どうしようかと思案しているような素振りは止めてください!!」


「……………あははは、冗談冗談」



 パタパタと手を振り、トライアンフを安心させるアルス。


 しかし、本当に闇剣士からの提案を一考しなかったのかは不明。

 だが、トライアンフのやり過ぎを少々諫めたかったという一面はあるだろう。



「トライアンフは僕の大事な仲間だよ。仲間を売るような真似は絶対にしない」



 闇剣士を真正面から見つめ、毅然とした答えを返すアルス。



 だが、その反応を受けた闇剣士は………



「本気カ? 人間ヨ。ソイツはどうしようもないトラブルメーカーだゾ。レッドオーダーであった時も皆、迷惑をかけられっぱなしだっタ。悪いことは言わン、仲間にするのは止めておケ」



 なんかガチっぽくアルスのことを心配していた。


 あれ? 何か性格変わってません、闇剣士さん?



「え、えーっと……………」


「優秀なのは間違い無イ。しかし、コイツは少しでも面白いと思った方向に勝手に突っ走る奴ダ。お前も覚えはあるだろウ」


「あ、はい…………」


「何度言っても、その場で謝るだけで、行動を変えようとはしないんダ。信用ならない味方は敵と変わらんゾ。身内に敵を抱えてどうすル。しかも、悪気が無いから始末に悪イ…………」


「何をアルス様に告げ口しているんですか! 主従の絆を汚さないでください!」


「お前にまともな主従関係が結べるはずがないだろうガ! この任を受けた時も、陛下を怒らせおっテ………」


「ワタクシが覚えていないからノーカンです!」


「それを堂々と言うお前が問題なのダ!」



 トライアンフが噛みつき、闇剣士が怒鳴り返す。


 言い争いを続ける2機の間で、アルスは困った顔でオロオロ。

 

 周りの皆も呆気に取られて唖然。

 

 もう状況がすでに意味不明なまでにカオス。


 

 

 そんな中で……………






 バンッ!!!!!!!!!





「!!!」

「何事?」





 轟く銃声が一発。




 

 轟音の元を辿れば、上空に向けて銃弾を放った様子のルガードさんの姿。






 たった、一発の銃声で皆の注目を集めた歴戦の狩人の口から、





「もう自己紹介の時間はもう終わりだ。これから互いに死力を尽くして戦う身。これ以上のじゃれ合いは止めておくべきだな」




 大きくは無い声量。

 しかし、不思議と腹の奥にズンと響く重たい声。




「闇剣士。貴様は人間に仇成すレッドオーダー。それから詩人。お前は人間に従うブルーオーダー。それだけで十分だろう」



「……………………」

「……………………」



 一瞬互いの顔を見合わせた闇剣士とトライアンフだが、どちらからとも言わずに顔を背けて黙り込み、


 トライアンフはしぶしぶと従属機械種達の元へと戻り、


 闇剣士は俺達から少し離れた位置へと移動した。


 おそらく、この配置がこれから戦う敵同士としての正しい距離。



 そして、そんな2機の様子を確認したルガードさんは、ガミンさんへと軽く目配せ。


 すると、ガミンさんはゴホンッと咳ばらいを1つした後、再度挑戦状を叩きつける。



「……………闇剣士よ。戦士を5人揃えた。もう一度戦いを挑む」


「………………カカカカカッ! よろしイ! その勝負、受けよウ!」



 悪役としての威厳を取り戻した闇剣士が受けて立った。


 これでようやく闇剣士との勝負が始まる………………


 







「アウチッ! ハッシュ先生、違うんです! ここで『笑点』のテーマソングを奏でたらウケるかなって思っただけで…………アウチッ!」




 後ろの方で何か声が聞こえてきた。


 やっぱり、アイツ、試合の間、地面の中に埋めておくべきではなかろうか?





『こぼれ話』


中央の賞金首、魔人型の被害ランキング


1位 死を誘う道化師 機械種デスクラウン

   出会った人間は全て殺戮。壊滅した町や村は数知れず。


2位 歌い狂う詩人 機械種ラブソディア

   街中で突然ゲリラライブを行い、何百人を一度に狂わせる。


3位 吼え猛る闘鬼 機械種ウールブへジン

   平原や荒野に現れて、隊商や旅人に被害。


4位 強者へ挑む闇剣士 機械種○○○○○

   強い者しか狙わない。ただし、目を付けられると高確率で強者が死ぬ。


5位 問いかける学者 機械種トゥ-ルスシーカー

   罠にかかった者へ質問。基本少人数。嘘をつかなければ逃がすこともある。

   



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