第505話 秤屋4
早速、白兎と森羅を伴い秤屋へと向かう。
今回の訪問は狩りとは関係の無い話だから、あまり目立たないと思われる随員構成で訪問。
案の定、扉を開けて中に入っても、一瞥されただけで、特に注目されずに済んだ。
「……………つーか、俺は別に変装していないのに、何で気づかれないんだ?」
予想通りなのだが、なぜか納得いかない感じ。
何度もストロングタイプを連れて訪れているというのに、誰も俺の顔を覚えていないのであろうか?
もしかして、秘彗や剣風、剣雷の添え物としか認識されていない?
群衆に紛れたら溶け込んでしまうモブ顔の宿命なのか………
ピコピコ
『目立ちたいのだったら、僕踊るよ!』
「いや、そういうのとは違う…………、と言うか、そういう目立ち方はしたくない」
「マスターは、注目されるのはお嫌いではありませんでしたか?」
「そうなんだが…………、注目はされたくないが、無視されるのもなあ………」
森羅のツッコミに、言葉を濁しながら答える。
「注目されたくないが、一目は置かれたいというか………、矢面には立たないけど、さりげなく重要なシーンには顔を出している……みたいな………」
自分で言ってて、矛盾しているようなのだが………
パタパタ
『多分、それ、オーラが足りないと思う』
「うるせー。どうせ俺は、ルガードさんやアルス、レオンハルトみたいに、存在感のあるキャラじゃないさ」
ただそこにいるだけで存在感をバリバリ発揮するようなオーラは俺には無縁。
瀝泉槍を持っているから、見る人が見ればタダ者では無いと見抜くだろうが、常人からみれば機械種エルフと機械種ラビットを連れた駆け出し狩人にしか見えないだろう。
元々目立つつもりは無かったのだから好都合なのだけれど。
でも、モブに紛れ込んでしまうのも、それはそれで面白くない。
「気づいている方はいるようです。今回、初顔のメンバーを連れていませんので、あえて注目する理由がないだけなのではありませんか?」
「…………そりゃあそうか。目新しい機種を連れていないなら騒ぐ理由も無いか」
森羅からの推測を聞いて納得。
この秤屋にいる狩人だって、仕事で来ているんだから、毎回俺のことだけを気にしている訳ではない。
「さっさと受付をして、用件を済ませるか………」
比較的今日は空いていたらしく、ミエリさんには10分程待っていただけで会うことができた。
いつもの個室へと誘導され、お互い向かい合って席に座る。
「ヒロさん、今日は一体どんなご用でしょうか?」
「実は…………」
ミエリさんに、現在俺達が借りているガレージを購入するにはどうしたら良いのかを尋ねる。
また、その理由について、狩りに出ている間に侵入者があったことを伝え、その対策としてセキュリティー設備を備え付けたい旨も説明。
「なるほど、所有物にして好きに改造したいと?」
「はい。本当は留守番役を置くのが一番簡単なのでしょうが、狩りにはできるだけメンバー全員を連れて行きたいんです」
侵入者対策だけなら、オークやオーガを2,3機置いておくだけで十分のはず。
しかし、それだとカーミラの時のような高位機種に襲撃されると対処できない。
2回目は無いとは絶対に言い切れないのだ。
万が一、狩りから帰って来て、俺が従属させた機械種が破壊されていたら大変。
半狂乱になって暴れ回る自分が想像できてしまうから。
「手続きならこちらでやっておきましょう。白翼協商にとって、ヒロさんの安全は何事にも代えがたいです」
「本当ですか? ありがとうございます」
そして、しばらく調べてもらった後、
「ヒロさんが使っているガレージの価格、買い取られるなら340万Mが必要です」
「ぬおっ! ………やっぱり結構しますね」
「あれだけの広さですから………」
今の俺の資産は3,000万M、日本円にして30億円。
せいぜい10%超ぐらいだから払えない額ではない。
「買います!」
「はい、毎度ありがとうございます。この瞬間から、あのガレージはヒロさんのモノですよ」
「早! まだマテリアル払っていませんが………」
「ヒロさんが築きあげた信用と貢献度からすれば、些細なことです。よろしければ、白翼協商がそのガレージを買い上げて、ヒロさんへ無料提供することもできますよ」
「それは………、遠慮しておきます」
いくら何でもそこまでしてもらうのは怖い。
白翼協商から離れるつもりはないけれど、あんまりガチガチに取り込まれてしまう気にもなれない。
ガミンさんやミエリさんは良い人だと言うのは分かるけど、白翼協商の全てがそうであるはずがないからな。
「それは残念。でも、困ったことがあったらいつでも相談してくださいね」
そういってニッコリと微笑むミエリさん。
大人の余裕を感じさせるビューティフルスマイル。
ビジネス用だというのは分かっているけれど、それでも、一瞬ドキッとするほど魅力的に見える。
こういったお姉さんタイプもいいなあ………
でも、俺の周りにはどうもこういった大人な感じの美女が少ないような気がする。
サラヤ、ナル、雪姫、エンジュ、アスリンなんか、ほとんど俺と同年代。
アテリナ師匠は俺より1,2つ年上だけど、あんまり大人と言う感じはしない。
ユティアさんは年齢的には大人なんだが、ポンコツだ。
しかも今度一緒に遠征するのが10歳程度のお子様である白露………
あっ! そう言えば、しばらく街を離れることを言っておかないとな。
「ミエリさん、俺、9日後に遠征をすることになっていまして………」
「遠征? 巣の攻略ですか?」
「まあ、そんな感じです」
白露とのことはできるだけ伏せておきたい。
どうせバレるかもしれないが、変に噂されるのも怖いし………
「ご帰還はいつぐらいになりますでしょうか?」
「多分、20日間くらいだと………」
「20日間! それは長いですね。それだと少し問題が………」
俺の言葉を聞いたミエリさんは少し困ったような顔。
「問題ですか?」
「はい、2つありまして…………、まず1つ目、今月の成果をどうするのかということですね」
今まで俺は3ヶ月連続300万M以上を稼ぎ、『最優』の成績を取り続けている。
もちろん4ヶ月目も『最優』を取るつもりなのだが、20日間街に戻ってこないとなると、秤屋に獲物を収めることができずに『不可』となってしまう。
だから暴竜討伐へと出発するまでに300万Mに相当する獲物を狩ってこないといけないのだが…………
これについては、巣に潜るわけにもいくまい。
あと、9日で出発する予定なのだから、最寄りの巣であっても時間的に間に合わない可能性がある。
何せ予想外のトラブルに巻き込まれることに関しては定評があるからな。
かといって、街の近辺で流離っているレッドオーダーでは、短期で300万M稼ぐのは難しい。
だから、ここはスカイフローターでも狩ろうかと思っている。
これは、我がメンバーの一員となった機械種オウキリンの輝煉の案。
空中戦に長けた高位重量級の力を以って、空を飛び行く飛行型機種を捕まえるというもの。
スカイフローターは空を飛ぶモノの存在を許さず、地上数百m以上を長く飛行している者がいると必ず現れる。
時には集団で、それも重量級以上の飛行型が含まれることもあり、それ等は空を犯す不遜なるモノを撃ち落とさんと襲撃してくるのだ。
飛行可能な機械種は珍しく、損傷少なく機体ごと確保できればかなりの稼ぎになるだろう。
これはスカイフローターを物ともしない飛行可能な高位機種が揃っている俺のチームだからこそできる荒業。
「そっちは出発までに何とかします。それで、もう一つは?」
「……………新人の皆が『可』や『良』を取るのに苦労されていますが、ヒロさんにとっては近所に買い物を行くみたいなものですね」
俺のあっけらかんとした物言いに、ミエリさんは苦笑。
俺もこの街に来るまでは、マテリアル不足でヒイヒイ言っていたが、ここまで装備やメンバーが揃い、マテリアル化できる環境が整うと、稼ぐだけなら苦労なんてしない。
所謂『壁を越えた』という現象であろう。
狩人を目指す者にとって、最初の『壁』は機械種に有効な武器を手に入れること。
これが無いとそもそもレッドオーダーを倒せない。
この場合の武器と言うのは、機械種の装甲を破壊できる近接武器や下級以上の銃。
断じて鉄パイプを武器とは言わないのだ。
次の壁は『獲物を運ぶことのできる足』の入手。
これは主に破壊した機械種の残骸を運ぶ車両のこと。
獲物は持ち帰えることができて初めて成果になる。
晶石だけを回収していては、いつまで経っても大きな成果につながらない。
その次の壁は『秤屋との契約』。
定期的に機械種を狩ってこれるという実力を見せて、初めて正式に狩人として認められる。
逆に秤屋と直接契約していないと、仲介業者に手数料を抜かれて半分も手元には残らない。
秤屋と直接契約できるか否かは、運の要素も絡み、よほど実力が飛びぬけていなければ有力者のコネが必要となる場合が多い。
俺もボノフさんの推薦書がなければ、数年はこの街での下積み生活は免れなかったであろう。
延々と仲介業者に搾取されるだけの狩人家業。
俺が稼げば稼ぐほど、仲介業者も俺を手放すまいと企むだろう。
とても今のような華々しい活躍なんてできなかったに違いない。
今の俺は、すでに一流の狩人に至るまでの『壁』は超えてしまっている。
あとは、中央への切符を手に入れるだけなのだ。
こんなところで足踏みなんてするもんか。
「あははは、そんな気軽なモノではないですが、算段は付けていますので心配ご無用です。………で、もう一つの問題とは何でしょう?」
「実は1ヶ月後に中央からの視察人が来る予定でして、中央への希望者と面接してもらうことになっているんです」
「面接………」
「ちょうどご連絡しようと思っていたところだったのですが、少し間が悪かったですね」
うーん………
面接ねえ…………
多分、成果だけじゃなくて、狩人の人格とかを確認するつもりか。
いずれ中央に来る人間の情報を早めに知っておきたいのだろう。
だけど、今から1ヶ月後だと本当にギリギリだ。
さっと暴竜を見つけて、サクッと倒してしまえれば帰ってこられるだろうけど。
「その面接は必ず受けないといけないことなのですか?」
「これは白翼協商だけでなく、全ての秤屋が対象なんです。ですから、今から1ヶ月後、1週間くらいは遠出を避けてもらいたかったのですが………」
「すみません。でも、もう決まってしまったことなので変更できません」
白露に頼めば、延期してくれるかもしれないが、あの追い詰められっぷりを見ると、下手をしたら勝手に行動しかねない。
俺が忙しいのを見て、巻き込むのは悪いと思い込み、自分達だけで暴竜に挑もうとしたり、行き止まりの街に行こうとするかもしれん。
ミエリさんには悪いが、ここはこちらの予定を優先させてもらう。
強い口調で断りを入れると、ミエリさんは慌てた様子で返してくる。
「いえ! こちらも連絡が遅くなったこともありますから………、中央は勝手に予定をねじ込んできますので、本当にこちらも困っているんです………」
そう言いながらミエリさんが浮かべるのは無理難題を押し付けられる中間管理職の表情。
「理由はこちらで考えておきます。ヒロさんはお気遣いなく…………」
ミエリさんのやや引き攣るような笑み。
おそらく俺が不在であることを上手く説明しなくてはならないのであろう。
何となく、元の世界の自分の立場を思い出してしまう。
いつもお世話になっているミエリさんなのだから、ここはできるかぎりのことを…………
やはり、正直に言っておくか。
いくら秤屋の上層部でも、鐘守の要請と聞けば文句も言えまい。
「ミエリさんいいですか?」
「はい、何でしょう?」
「実は今回の遠征のことなんですが………」
偶然、鐘守の少女、白露と知り合い、その手伝いをすることになったと説明。
もちろん守護者討伐であることは伏せ、鐘守としばらく一緒に行動する旨を伝えた。
俺の話を聞いて、しばらく黙っていたミエリさん。
10秒程、沈黙した後、躊躇いがちに口を開き、
「ヒロさんは白露様の『打ち手』になられたのですか?」
「違います!」
飛び出てきた質問を即座に否定。
「護衛を依頼されただけです! あのク………、コホンッ! 白露様の『打ち手』になろうなんて、考えていません!」
「そうですか………、実はヒロさんが白露様の『打ち手』になったのではないかという噂が流れていまして…………」
げっ!
やっぱり打ち合わせの時に、色んな人に見られたからか?
そもそも隠しても意味が無かったか。
しまったなあ………
あの傍若無人さを振り撒いて誰にも相手にされていなかった白露に、狩人らしい男が一緒に居たら、そう誤解されてしまっても仕方が無い。
まあ、その辺は後で白露から否定して貰えれば良い。
でも、出回ってしまった噂が収束するのに、一体どれほどの時間がかかることか………
むうっと悩む俺に、ミエリさんからの更なる情報。
「今まで女っ気の無いヒロさんは、実は白露様のような幼い少女が好みだったという話も………」
「なんですと!?」
なぜにそんな噂が?
ちょっと、白露とレストランでお茶しただけじゃないか!
しかも1日しか経っていないのに………
「ヒロさんは、今この街で一番話題の狩人ですよ。おまけにその素性もほとんど知られていない謎の新人。皆がヒロさんの一挙一動に注目しているんです」
ぐぬぬ!
確かにあの場で名前を呼ばれてしまっていたな。
顔はあんまり知られていなくても、『狩人ヒロ』の名は街中の人が知っている。
さらにその情報もほとんど無いと来ては、ほんの僅かに見せた行動を拡大解釈されて大げさに噂されてしまってもおかしく無い。
イカンな。
このままでは『狩人ヒロ』の名はロリコンという嗜好とともに広まってしまう。
何とか噂を修正できる手立ては……………
「はあ………、俺はどちらかというと、ミエリさんみたいな大人な女性が好みなのですが………」
「あら? ありがとうございます」
「その噂、何とか抑えることはできませんか?」
「うーん………、人の口に戸は立てられませんから。でも、別の噂で上書きすることはできるかもしれませんね。例えばヒロさんは年上の女性がタイプだという噂を流す…………とか」
「ミエリさん、愛しています!」
「まあ! 私もヒロさんのこと大好きですよ…………、ふふふ、これで相思相愛ですね。でも、こんな個室では噂は広まりません。いっそロビーで公開告白をやってみますか?」
「そ、そこまではちょっと…………」
それは流石にレベルが高すぎる。
注目されるのがあまり好きでない俺にとっては、羞恥を通り越して拷問に近い。
しかし、それぐらいインパクトのある出来事を起こさないと噂の払拭は難しい。
さて、一時の恥ずかしさを我慢すべきか、言われなき冤罪を耐えるべきか………
そんな2択に悩む俺を見て、ミエリさんは笑みを深くしながら口を開き、
「まあ、冗談はさておき………」
少し真面目な口調で俺へと打開策を提案。
「では、ヒロさんが白露様の打ち手にはなっていないことを皆に周知しましょう。単なる護衛依頼を受けただけだと。そうすれば、時間はかかりますが、自然に噂も消えていくでしょう」
「おおっ! 本当ですか?」
「噂の元となった情報が間違っていると知れたら、その噂も長く続きませんよ。そういった流言をコントロールするのも秤屋の仕事の一つです」
「よ、よろしくお願いします」
机越しにミエリさんに向かって頭を下げる。
思っていた以上に秤屋は色々と手広くやっているようだ。
秤屋は、というより白翼協商は、と言った方が良いのかもしれないが。
「おや? それだけですか? せっかく相思相愛なんですから、もっと熱烈な愛の言葉を囁いてくれてもいいんですよ」
ニッコリ笑って、俺を揶揄うような目で見つめてくるミエリさん。
「いや、その…………、先ほどは失礼しました。でも、ミエリさんが魅力的な女性で、俺のタイプであることは間違いないですよ」
「ふふふっ、お世辞がお上手ですね。でも、ヒロさん。相思相愛の間柄ですが、貴方と私は結ばれることのない運命です。残念ながら………」
「はい?」
「私、既婚者ですから」
「え? 既婚者? …………あ、ああ………」
そりゃそうか。
ミエリさんみたいな美人がその歳まで未婚なわけないか。
この世界では女性はだいたい20過ぎまでには結婚していることが多いからな。
秤屋の職員の女性なんて、一般人からみたらかなりの高嶺の花のはずだし。
「…………重ね重ね失礼しました」
慌てて椅子から立ち上がり、神妙な表情でもう一度頭を下げる。
俺の足元の白兎、そして、背後の森羅も一緒になってペコリ。
そんな主従が揃って頭を下げる様子を見て、ミエリさんは面白そうにクスクスと笑い出した。
手続きと支払いを済ませ、ミエリさんと一緒に個室から出ると、秤屋のロビーで一際目立つ集団が目に入った。
人型機種4機と人間4人。
人型機種はおそらくジョブシリーズのベテランタイプ。
いずれも戦闘型の前衛系。
人間の方は護衛らしい成人男性が3人と、俺と同じ年くらいの少年1人。
この辺境では珍しい上位の武装を身に纏い、人品卑しからぬ雰囲気を漂わせている。
「何だ? アイツ等。こういった場所に立ち入るなら、中量級は一チーム2機までだろうに…………」
この世界の不文律と言っても良いマナーを守らない集団に向けて、顔を顰める俺。
そんな顔をした俺に対し、ミエリさんは小声で囁いてくる。
「ヒロさん。あの方はこの街の領主のご子息です。万が一のことがあってはいけないので、特別に許可されているんです」
「領主の? なんでまた秤屋に………」
「それは…………、ヒロさん達の活躍に刺激を受けて…………ですね」
聞けば、彼はこの街の領主の3男。
同年代である俺やアルス達の活躍を耳にして、自分も狩人になると言い出したらしい。
領主やその親族が拍付けの為に、少しの間、狩人として活動するのはよくあるケース。
この世界において、狩人や猟兵は街の人々から尊敬される職業の一つ。
何よりも強さが尊ばれる世の中に、これほど自分の強さを知らしめる立場は無い。
「それで親の金を使って機械種や装備を整えたって訳ですか………、いいご身分だなあ」
少しばかり俺の声に棘が混じるのは仕方があるまい。
何せ俺のスタート時点での武装はゼロで所持金ゼロ。
初めて手にした武器は鉄パイプ。
初めて従属させた機械種はラビット。
ほとんどスラム出身の一少年と変わらない出発点。
そこからどれだけの苦労を重ねて武装や仲間を増やしていったことか。
秤屋と契約して正式に狩人になれるまで、どれだけの苦難を乗り越えてきたか。
ネット小説ならすぐさま現れるはずの現地協力者や有力者との接点も無く、地道な努力と僅かな出会いを積み重ねてようやく今の立場を手に入れたのだ。
まあ、『闘神』と『仙術』スキルがあったおかげなのだけれど。
しかし、どうしても恵まれた人間には厳しい目を向けてしまうのが人情………、というか、俺のせせこましい性格なのだ。
「でも、あれだけの戦力では比較的新しい赭娼の巣でも攻略は苦労しますよ」
あれが全てではないと思うが、ベテランタイプだけで赭娼を安全に倒そうと思うなら、最低2小隊はほしい。
戦闘型ストロングタイプが1機でもいる、もしくは、あの護衛達がそれだけの実力を持っているなら話は別だが。
「いえ、彼等はダンジョンに潜るのだそうです。ご領主様が街の外への遠征はお許しにならなかったそうで」
「へえ? ダンジョンなら街の近くだからオッケーと?」
「慎重に進めば巣よりは安全に稼ぐことができますからね。深層に立ち入らなければ、高位機種は出て来ませんし」
「ふーん………、そうですか………」
もしかして、白露と出会わずダンジョンに潜っていたら、彼等と鉢合わせしていたかもしれないな。
何気なく眺めていると、彼等とは相性が悪いような気がしてくる。
甘やかされた領主の息子に、その護衛の面々。
俺が引き連れる自分達より上位の機械種を見て、彼等がどのような反応を見せるのか、何となく想像がついてしまう。
「でも、今の俺には関係の無い…………」
呟いてしまってから、フラグっぽいな………と少し思ってしまったが、とにかく彼等への関心をそこで断ち切って意識を切り替える。
今は暴竜戦に向けての準備に集中しよう。
さて、これでガレージの防衛の目途は着いたから、あとは………
起こったかもしれない出会いやイベントは、頭の中から綺麗さっぱり消して、 次なる課題に向けて、考えを巡らせることにした。
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