第422話 必要悪


 擦りガラス状のパテントで仕切られた打ち合わせコーナー。

 万全ではないが、ここならある程度突っ込んだ話をすることができそうだ。

 

 人間そっくりな機械種ヴァンパイアの話はあまり人に広めるわけにはいかないし、他の商会が絡む話だから尚更だ。


 背後に森羅と秘彗を立たせて、ガミンさんの向かいに座る。

 俺の足元には白兎が待機していつもの配置。



「実は、交流会の後、タウール商会から襲撃を受けまして………」


「ちょっと待った!」


「はい?」


 俺が話し出した瞬間、ガミンさんから待ったがかかる。


「………内容が内容だ。防諜装置を起動させたい。いいか?」


「あ……はい」


 俺が返事をするとガミンさんはテーブルの中から手帳ほどの大きさの機器を取り出して机に置いた。

 小さなボタンがたくさん並んでいて、まるで電卓のようにも見える。


「少し時間をくれ。俺、これ苦手なんだよ」


 ガミンさんは打ちこみずらそうに人差し指で1個ずつボタンを押している。

 随分と使いずらそうな機器だ。


 防諜装置と言っていたけど、盗聴器とかを妨害するような機能なのかな?

 良く見ればコードあってテーブルと繋がっているようだから、今操作しているのはリモコンで、本体はこの机自体、若しくはこのコーナーのどこかに埋め込まれているのだろう。


 しかし、この打ち合わせコーナーにそんなモノが備え付けられているとは、流石はこの街でもトップの秤屋。

 その存在を支店長だから知っていることなのか、それとも、皆に周知されていることなのか………

 

 ………そう言えば、未来視で見た支店長の護衛であるベテランタイプの盗賊系はどこにいるのだろう?

 ひょっとして、この近くで姿を消して見守っているのではないだろうか?



 何となく気になったので、ガミンさんが機器の操作に集中しているのを確認してから両手をテーブルの下に入れる。

 こっそり七宝袋から『宝貝 掌中目』を取り出して両手で握り、隠れているモノがいないかを調べさせた。



 ピカッ



 反応があったのは、ガミンさんの背後のパテントの向こう側。

 擦りガラス越しに見える5m程離れた壁際に立つ人型の光源。

 未来視の情報から機械種キャプテンシーフに違いない。


 

 ふむ、やっぱりいたか。



 この狩人が多数いる秤屋の中で誰にも覚られずにいるのだから、隠密に特化した性能なのだろう。

 

 人間の視覚を騙すだけなら光の屈折を利用した光学迷彩で十分だろうが、警戒スキルを持つ機械種を誤魔化すなら相当高位の隠身スキルが必要となる。

 ただのベテランタイプでは在り得ない。

 この秤屋の最高権力者を護衛するに相応しい改造が行われているのだろう。


 また、この秤屋の事務所内でも相当のセンサーが張り巡らされているはず。

 熱探知を行う赤外線センサーや、俺の体重を計った重力センサー、マテリアル空間器の発動を察知する亜空間センサー等。


 たとえヨシツネであっても容易に侵入はできない。

 それなりの事前準備をしないと見つかってしまう可能性が高い。


 まあ、そんなことをするつもりもないし、必要もない。

 法に触れるようなことはなるべくしたくないし………

 


「よし! 終わったぞ。待たせたな」


「いえ………、これで盗み聞きされないんですか?」


「ああ、このパテント内ぐらいだが、あらゆる通信や音波、電波を遮断する膜を張った。指向性の超聴力を持つ機械種にだってこの中での話は聞こえない」


 なるほど。

 盗み聞き用の機械種がいたって不思議ではないな。

 多分、機械種ラビットなんかが得意そう。

 

「では早速、白ウサギの騎士様のご活躍を拝聴しようじゃないか」


「…………」


 パタッ パタッ パタッ パタッ


 白ウサギの騎士の名を聞いて、微妙な顔をしてしまう俺。

 それとは対照的に足元で嬉しそうに耳を揺らす白兎。


 白兎が喜んでいるから、声高々に否定しないけど、絶対にどこかで修正しないとこの二つ名が定着してしまいそうだ。



「ゴホンッ ………いいですか、もう一度言いますね」

  


 話した内容は3つ。

 

 タウール商会のミラという女性が20人近いメンバーを連れて俺のガレージへ襲撃をかけてきたこと。

 

 襲ってきた面々は全て倒したところ、人間のように見えた襲撃者達は全員機械種であったこと。


 その機械種はブラッドサッカータイプの機械種ヴァンパイアであったこと。

 

 

 そして、最後まで話を聞き終えたガミンさんは一言。



「………タウール商会なら在り得ないことではないな」


「そんなにヤバいところなんですか?」


 人類の敵対者であるレッドオーダーが所属している商会って、在り得なくないか?

 向こうはこちらを殺す気満々の殺戮者だぞ!

 そもそも会話が成立することすら稀なのに………


「ヤバい……というか、タウール商会ぐらいなんだよ。レッドオーダーが入り込めるのは。あそこは雑多な奴等がいるからな。こちらが取らないような怪しい奴とかも含めて………な」


 ガミンさんは神妙な顔で街の事情を説明してくれる。


 つまりこのバルトーラの街の秤屋で一番入会するハードルが低いのがタウール商会らしい。


 毎年この街には中央を目指す若者が列をなす。

 その中で白翼協商はお行儀の良い上澄みを取り、征海連合が金持ちのボンボンや中央にコネのある者達を取る。

 鉄杭団は脳筋………戦闘に自信のある体育会系を呼び込み、蓮花会が女性を中心に大人しい人材を迎え入れる。

 最後に残った取り立てて能力も無く、確かな身分も持たない連中が最後に頼るのがタウール商会。

 街に来た若者を放置したままにすると治安の悪化につながるから、言わばタウール商会がこの街のセーフティーネットの役目を果たしているという。


「もちろんそのタウール商会でも蹴落とされる者はいるがな。それでもそんな奴等の仕事の面倒を見てやっているんだ、タウール商会は………行き先は大抵裏社会になるけどな」


「…………なるほど。行き場の無い若者たちの最後の拠り所なんですね」


 大きな街だけに商会が社会保障の役目を果たしているのか。

 それだけ街全体に余力があるということだろう。

 エリアを作って放り込み、不良同士を食い合わせている行き止まりの街とはえらい違いだ。


「若者だけじゃなくて、胡散臭い連中もいる。他の街で居られなくなった犯罪者や逃亡者がな。放っておいて徒党組まれたら厄介だ。だからタウール商会が元締めをして、ある程度の決まりごとを守らせているんだ」


「うわあ……、それってもの凄く厄介なことでは?」


「厄介だぞ。タウール商会の中は毒蛇ばっかりだ。大抵、中だけで争っているだけだがな。この街の裏社会のボス連中がタウール商会の幹部も兼任しているような状況だ」


 つまりタウール商会は暴力団の組長が集まって運営している商会なのか。

 その割に5大商会の中で最小の規模なんだよな。

 暴力がそのまま力になるのならば、もっと勢力が大きくなってもおかしくないのに。

 

 それをそのまま聞いてみると、


「ハハハッ、裏社会のボスって言っても、所詮は人間相手にドンパチしているだけの連中だぞ」


 ガミンさんは俺の質問を鼻で笑い飛ばした。


「ヒロ、お前はいつも何を相手に命がけの戦いをしているんだ? お前に限らず、狩人は人間よりもずっと強いレッドオーダーと戦っているんだぞ。白鐘の恩寵の外に出るのを怖がっているような弱虫など、数が集まっても俺達の敵じゃねえ」


 ニヤリと野太い笑みを浮かべたガミンさん。

 それは人間社会を支える狩人としてのプライドの発露なのだろう。


「まあ、中には厄介な奴もいるがな。特に人間を殺す技に特化した暗殺者もいる。決して油断できる相手じゃないが、それでも真正面からやり合えば勝つのは俺達だ」


 確かに凄腕の暗殺者と言えど、光学迷彩で姿を消す高位機種には勝てないし、そんな機種にも勝つのが狩人だ。


 しかし、当然、タウール商会にも従属された機械種がいるはずで………

 その機械種がヴァンパイアであったこと。

 これは一体どのような意味を持つのだろうか?


「………そんなタウール商会に機械種ヴァンパイアが所属していた。ガミンさん、これはどう見ます?」


「機械種ヴァンパイアか………、噂はあったが、本当に街にいたとは思わなかった………だな」


「噂はあったんですか?」


「まあ、レッドオーダーが街の中にいるという話はどこにでもある。街の片隅で赤い目を見たって話は、酔っぱらい達が騒ぎ立てることが多いからな。大抵、何かの見間違いだが………」


 ガミンさんはそこで話を切って、じっと俺の方を見つめてくる。


「ヒロ、聞いたことは無いか? この街に来た優秀な若者が突然姿を消すという話を」


「え? …………ああ、なんかミエリさんがそんなことを話していたような……」


 アレは俺に向けての訓示じゃなかったっけ?

 どれほど優秀なモノでも油断すれば命を失うっていう。


「俺も長いからよ。この街に来る英雄の卵って奴には何人も会っているんだ。一目見ただけで『コイツはモノが違う』って感じるくらいのな。だが、そういった英雄の卵がふと姿を消してしまうことがあるんだ。調子に乗って難易度の高い巣に突っ込んでしまった……とか噂されるんだが、実はこっそり暗殺されているんじゃないかっていう話もあった」


「………では、その英雄の卵を、このカー……、ゴホンッ、えっと、ミラという女性……機械種ヴァンパイアが襲っていたと?」


「あくまで可能性の話だがな。でも、こうやってヒロを狙ってきたんだ。ここ何十年で一番優秀な新人をな。信ぴょう性は高いはずだ。もちろん全てに関与しているとは思わないが……」



 …………俺が優秀だから狙ってきた。

 俺の優秀さを知らしめたのは、誰も攻略できなかった紅姫の巣を攻略したこと。

 つまり、今回の件は俺の行動が切っ掛けだったということか。


 未来視で交流会の参加者が皆殺しにされたのも、その優秀な新人を見つけられなかったから? それとも、あのアルス達5人のうち誰かがそうだと思ったからだろうか?

 

「………ヒロの言うミラという女の名は聞いたことがあるな。こちらで言うミエリの役目だ。新人担当を8年くらいしているはずだ」


「え? とてもそんな歳には………いや、機械種なんだから当たり前か」


「ちなみにその前はキャミーという女性だった。その前はラミカだったな。顔も違うし目も髪の色も違うが、今思えば似たような雰囲気だった。同じ奴だったのかもな」


 うわ……安直な名前。

 これは歳が誤魔化されなくなると代替わりしたように見せかけているパターンか?


「………じゃあ、30年以上前からこの機械種ヴァンパイアはこの街に潜んでいたんでしょうか」


「そう考えるのは自然だな。はあ………なんてこったい。まさかヴァンパイアとはね………」


 椅子の背にもたれ掛かり、グデッとした感じで力無くため息をつくガミンさん。

 まるで厄介なクレームを抱えてしまったサラリーマンのよう。

 街を支える五大商会の秤屋、その支店長であるが故の苦悩だろうな。



 しかし、気になるのはなぜ、今、行動を起こしたのかということ。


 30年間、この街に隠れ住んでいたレッドオーダー。

 今まで誰にも気づかれないよう密かに活動を行っていた。

 それがいきなり前代未聞の派手な大事件を起こそうとする。

 

 なぜだ?

 なぜ今までのやり方を急変させた?


 優秀な新人を狙うにしても、全員が集まる交流会で仕掛ける必要性は?

 じっくり情報を集めて特定してからでも良かったのに………

 


 まあ、この辺は後で打神鞭で調べれば分かること。

 今は先にガミンさんから情報を仕入れる方が先か

 


「タウール商会はミラが機械種ヴァンパイアであったことを知っていたのでしょうか?」


「んあ? ……………一部の人間は感づいてはいたかもな。ここ最近タウール商会から優秀な奴は出ていないし、他の秤屋の金の卵が潰れるなら黙認くらいしてもおかしくは無い」


「優秀…………あ! そうだ。タウール商会にレッドキャップもいましたよ!」


 そうだ。

 ルーク君のことも聞かなければ!

 あの力はかなり厄介だ。

 しかも人間だから白鐘の恩寵なんて関係ないし。

 


 だが、俺のこの報告に対してはガミンさんの反応は薄かった。



「レッドキャップ? ああ、それは知っている。タウール商会の久々の期待の星だそうだ」


 あっさりとした回答。

 どうやらレッドキャップがタウール商会に所属したのは周知の事実のよう。

 レッドキャップがすべからく人類の敵である鐘割りというわけではないから、この反応も不思議ではないが………


「大丈夫なんですか? その………レッドキャップは情緒不安定っていいますし、その力を暴走させたりとか………」


「…………一応お目付け役をつけているって話だ………あ、そのミラって女か。チッ! 一体どういうつもりなんだか………」


 随分とやぐされてしまった感じ。

 他の秤屋の関係は常に競い合うモノ同士であり、街を支えていく仲間でもある。

 敵だとも味方だとも言い切れない微妙な関係。

 それだけに裏切られたような気分にでもなっているのかもしれない。


「………さて、どうするか。機械種ヴァンパイアが所属させていたことをそのままにするわけにもいかんし、かといって、タウール商会を攻め立てて潰すわけにもいかん………そもそも、知らなかったと恍けられるだろうし……」


「一応、ここに機械種ヴァンパイアの晶石がありますが……」


 机の上にカーミラが残した晶石を置く。

 10cm程の透き通った水晶玉。

 この中に機械種全て情報が詰まっている超小型の情報集積回路。


「………機械種ヴァンパイアがいたという証明にはなるが、これがタウール商会の仕業とするのは無理があるな。それにその晶石を白翼協商から出すと、お前の名前も出かねないぞ。何せ交流会ではあれだけ目立っていたんだから」


 ガミンさんの渋い顔からの忠告。


「ヴァンパイアの活動をタウール商会がどこまで把握していたのかは分からんが、ミラという職員は間違いなくタウール商会の一員だった。襲ってきたのを返り討ちとは言え、向こうが面子の為に報復を考えるかもしれんぞ。特に機械種ヴァンパイアの情報は大っぴらにはできない上、新人担当のミラはそれなりに慕われていた。事情を知らん奴等が暴走することだってある」


 うぬぬ。

 それがあったか。


 機械種ヴァンパイアのことは話せなくて、俺がミラという女性を害したという情報だけが流れたら、そういう行動に出る奴もいるだろう。


 打神鞭の占いでは、俺がこれ以上何もしないのであれば、タウール商会からのちょっかいはなくなるはずなんだよな。

 なら下手に突くのは悪手か。

 向こうから仕掛けられたらうっかり壊滅させてしまう可能性だってある。


 タウール商会も街の社会構造を支えている組織だ。

 安易に潰せば、未来視で見た、俺がレストランを経営していた街の二の舞を踏むことになる。

 悪党とは言え、街の一員には違いないのだから。


「………結局、このまま何もできないんですね」


「タウール商会についてはそうだな。だが、お前さんの活躍によって、この先の未来の英雄達が守られたのは事実だ。公にはできないが、この話は俺から白翼協商に話しておくよ。何らかの報酬がでるだろう」


 報酬………

 マテリアルとかよりもポイントの方を増やしてほしいなあ。

 半年を待たずして中央への切符をもらいたいんだけど。


 若しくは高位の蒼石。

 秤屋なら幾つか保管しているのだろうし………


 その旨を伝えると、ガミンさんは薄く笑って立ち上がる。


「まあ、できる限り掛け合ってみるさ」


「よろしくお願いします………あ! そうだ。一応証拠の品として、これを持って行ってください」


 空間拡張機能付きバックから残りの晶石20個を取り出し、机の上にバラバラと並べる。

 どうせ秤屋で換金しようと思っていたのだ。

 ここでガミンさんに預けてしまおう。


 だが、俺の申し出に少々困ったような顔を見せるガミンさん。


「こら、ヒロ。お前な。こんな高価なモノを一介の狩人でしかない俺に預けるんじゃねえ。もし、俺が持ち逃げでもしたらどうするんだ?」



 え? 

 支店長が持ち逃げなんてするわけが………


 あ………

 そうか、ガミンさんがこの秤屋の支店長ということは、まだ俺が知らないことになっているんだったな。

 イカン。また、現実と未来視の情報がごっちゃになっている………



「す、すみません。つい……、そのガミンさんがそんなことするわけないと………」


「会って間もない俺を信頼してくれるのは嬉しいが、俺自身お前に対してそこまで信用されるほどのことをした覚えはないぞ。ちょっとした世間話ともっともらしい教訓を語っただけだ」


 何やら呆れたような口調で俺へと諭し始める。


「最初に優しくしておいて、後で色々なモノを騙し取るのは詐欺師の常套手段だぞ。俺がその詐欺師だったらどうする? お前の人の好さは美徳だが、狩人を続けるならもっと警戒心を持っておけ」


「はい………」


 ガミンさんの顔は真剣そのものだ。

 俺の不用心さを心配してくれているのだろう。


「本当にアンバランスな奴だ。実力と人物像が全然一致しねえ。若くしてずば抜けた才能を示した奴は、もっと傲慢になるか、孤高になるかのどちらかだ。お前みたいにその辺を歩いている一般人っぽい奴なんて初めてだよ………槍を持ち歩いている時は結構凄みを感じるがな」


 流石に椅子に座る時は瀝泉槍は森羅に預けているからね。

 ガミンさんの目の前にいる俺はただの一般人で間違いない………ただし、『闘神』と『仙術』スキルを持っている一般人だけど。


「………じゃあ、その晶石を鞄に入れろ。それで今からお前の手でミエリに渡しに行け。俺は秤屋の上層部に話を通してくる」


「はい、ありがとうございます。やっぱりガミンさんは頼りになりますね」


 何やかんや言いながらも結局色々と動いてくれる。

 偉い人なのに随分と腰の軽い。

 だから信頼しちゃうんだよな。

 全く………『人の好い』のはどちらのことなんだか………


 つい、生暖かい目でガミンさんを見てしまう。


 するとガミンさんは少々憮然とした顔。

 新人に甘いと見られるのは納得のいかない様子。

 

 だが、不意にニヤッと笑みを俺に向けて、


「ふふっ………、白ウサギの騎士様ほどじゃねえさ」


 どうやら俺が『白ウサギの騎士』の二つ名を好んでいないことを見抜かれてしまったようだ。

 

「………………」


「何、マッドブロックを噛み潰したみたいな顔をしているんだよ? 結構じゃねえか。二つ名が付くなんて」


「まあ、嬉しくない訳じゃないですけど………」


 白兎の手前、そう言っておかねばなるまい。

 でも、もう少しカッコ良いのが良かった。

 

 『貫く黄金槍』とか、『黒衣の狩人』とか、『天旋風』とか……


「アハハハハッ、俺から見てもお似合いだぜ、『白ウサギの騎士』! ぴったりだろ? なあ、お前もそう思うよな?」


 ガミンさんはそう言ってしゃがみ込み、俺の足元で耳をパタパタさせている白兎の頭を一撫で。

 嬉しそうに耳をビュンビュン震わせる白兎。


「ハハハッ、相変わらず良い反応だな」


 ピョン ピョン


「お、なかなかのジャンプ力。ほれほれ、マテリアルをやるぞ」


 フリッ フリッ



 少しばかりのおじさんと白兎の他愛もないやり取り。



 ………うーん、ミエリさんに続いて、ガミンさんもファンにしてしまったか。


 白兎のことを可愛がってくれるのはいいけど、白ウサギの騎士を広めるのは止めてほしいなあ。

 白兎が喜んでいるから口に出しては言わないけど。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る