第252話 廻収


「ヒロさん。テンルちゃんに新しいスキルを入れてみませんか?」


 眼鏡の奥に光る抑えられない好奇心の煌めき。

 それだけでユティアさんからの提案の目的も分かるというもの。


 俺が押しても引いても首を縦に振らないから、絡め手で攻めてきた模様。


「必要ありません。すでに天琉には護衛スキルが入っていますので」


 天琉の数少ないスキル4つの内の一つが『護衛スキル(下級)』だ。

 天琉の価値を聞いてしまった以上、街の中へ連れていくつもりは無いが、それでも白鐘の恩寵下で身を守る術があるのはありがたい。

 しかも下級だから攻撃を受けなくても反撃が可能なのだ。

 いくらユティアさんでも護衛スキルの中級以上を持っているはずが無い。



「いえ、護衛スキルではなく、シンラさんが倒してくれた機械種グリフォンの晶脳から、スキルをサルベージしたいのです。構いませんか?」


「へ?サルベージ?スキルをですか?」


「はい。まだあまり時間が経っていませんので、今なら生きの良いスキルが手に入ると思います」


 生きの良いって・・・

 まるで市場で魚を買ってくるみたいな表現だな。


 意外な方向からのユティアさんの提案。

 ニッコリと自信あり気な笑みを浮かべた表情は、俺に全く断られるとは思っていない様子。


 まあ、確かにそれならば断わるつもりもないけど。

 しかし、倒した機械種の晶脳からスキルを取り出せることができるのか・・・

 まだまだ俺の機械種への知識は浅いようだ。



「それなら別に良いですけど・・・スキルが取れても天琉の頭は開けませんよ」


「うっ!・・・、まあ、それは仕方ありません。今は機械種グリフォンの晶脳で我慢します・・・」


 下唇を噛んで若干悔しそうなユティアさん。

 これは・・・多分、まだ諦めてないな。


 天琉とユティアさんを2人きりにするのは当分止めておくとしよう。

 どう言いくるめられるか分かったもんじゃない。










 天琉を残してユティアさんと潜水艇の外に出ると、エンジュがすでに作業を始めていた。


「ハクト!レンチ取って。ボルトはしっかりと持ち上げておいてね」


 ピョンピョンピョン


 車を潜水艇に横付けして、白兎とボルトを助手に作業の真っ最中。

 今は車の下にもぐって、ガチャガチャと部品を取り付けしているようだ。


「ふふ、エンジュも気合が入っているみたい。きっとヒロさんの役に立ちたいからですね」


 微笑ましそうな目でエンジュを眺めるユティアさん。

 

 エンジュが一生懸命に頑張ってくれているのは俺も分かっている。

 それについては疑ってはいないけれど。



 でも・・・なあ・・・



 ユティアさんとの関係は分かりやすい。


 依頼を受けた俺と、依頼人・・・正確には依頼したのはベネルさんだけど。


 だから俺はユティアさんを目的地まで連れていってあげなくてはいけないし、できるだけ負担の無いような生活環境を整えてあげる義務がある。

 その報酬はベネルさんから受け取っているから、これはビジネスにおける契約なのだ。ゆえにユティアさんとの関係は俺にとっても非常にシンプル。




 でも、エンジュとの関係だけが未だに不明瞭のまま。


 遭難していた所を拾ったから、保護者と被保護者?

 俺の旅のフォローをしてくれているから、仲間?相方?

 それとも身体を重ねたから・・・恋人同士?

 

 その疑問を解決するのは簡単だ。

 俺が決断を下せばいいのだけれど・・・



 多分、決断はいつまで経っても下せないだろう。

 何せ『保留』と『現状維持』を信条としている俺だから。

 


 この関係はエンジュが諦めてくれるか、それとも俺に愛想をつかすか・・・

 または、向こうから詰め寄ってきて俺が逃げ出すか・・・

 

 小柄な体を精一杯使って車を弄っているエンジュは魅力的だが、俺が決断をするには決め手に欠ける。


 俺が心を奪われるほどの美貌ではなく、俺が理性を失う程の女性的な魅力を備えているわけではない。


 そして、俺が心を預けられるほど信用もできず、俺の情報を打ち明かすことができるほど信頼もない。


 なにより一般人にしか過ぎないエンジュが、これから中央へと向かう俺についてくるのは難しいだろう。


 やっぱり次の街が安全な場所ならそこで別れるのが、お互いにとってベストなのかもしれない。


 これ以上傷口が広がらないうちに・・・








 それは鬣を備えた1m近い巨大な鷲の頭。

 正しく重量級機械種グリフォンの頭部。


 地上を走る車がコイツに狙われたら、逃げることは不可能に近い。

 迎撃しようにも、この巨体を撃ち落とすには少なくともミドル中級以上の銃が必要となるだろう。

 言わば元の世界の軍用ヘリコプターに近い存在。


 空戦ユニットであるヨシツネでなければ、あとは白兎くらいしか確実に倒せないだろう。

 豪魔でも、逃げまどう機械種グリフォンを捕まえるのはほぼ不可能だ。


 俺だって、ずっと上空で飛行されていたら、手持ちの宝貝だと撃ち落とすのは難しい。

 精々、低空飛行している所へ火竜鏢を投げつけるか、金鞭で電撃を放つしかない。


 地上に降りて来れば一瞬で片づけられるだろうが・・・







 森羅が周りを警戒してくれている中、1m近くある機械種グリフォンの頭を前に座って、ユティアさんがスキルのサルベージを行ってくれている。


 ヨシツネが倒してくれたのは2体だが、もう1体は頭が完全に破壊されていてどうしようもない状態だった。

 空中戦の結果だから、普通は倒した獲物は落下して破損してしまう。

 こればっかりは仕方が無い。

 1体だけでも無事だったことを感謝するべきか。


 

 ユティアさんの足元には村から持ってきた大きめのボストンバック。そこから取り出したMスキャナーをグリフォンの晶脳と配線でつなぎ、これまた一緒に取り出したキーボードをパチパチと叩く。


 傍から見ていて何をやっているのかは全くわからない。


「ううん、これじゃなくて・・・、あ、コレかな?もう少し近づかないと・・・」


 Mスキャナーの画面を食い入るように見つめ、ユティアさんは真剣な表情。

 前の世界の職場でシステムエンジニアがプログラムを弄っているような光景。


 パソコンなんてネットとメール、エクセルとワード、あとはパワーポイントくらいしか使わない俺では出来そうにない作業だ。


 機械種の晶脳からスキルを得ることができるとすれば、これからの旅で絶対に役に立つ技術のはず。

 こればっかりは、晶脳を認知できない機械種の白兎では習得できない技術だ。

 俺でもできるのであればと思ったが、ユティアさんの手際を見て、早々に習得は諦めることにした。


 



 しばらくして、ユティアさんの手の平には緑色の六角形の石、緑石が現れる。


 ユティアさんが『ここです!』と鋭い声を上げ、キーと強く叩くと、グリフォンの晶脳からコロンっと浮き出てきたのだ。


「はい、ヒロさん。良いのが取れましたよ。『高速飛行(中級)』です」

 

 満足げな笑みを浮かべ、俺に緑石を差し出してくれる。

 

 中級か・・・

 しかも『飛行』の上位スキルだ。

 結構なお値打ち物だな。


「俺が貰っても良いのですか?」


「はい、元はヒロさんの従属機械種が倒してくれたモノですから。私も久しぶりに手ごたえのある仕事ができて楽しかったですし」

 

「・・・天琉の頭は見せられませんよ」


 これは一応念押ししておこう。


「ふふふ、もう諦めましたよ。ヒロさんがそこまで大事にしていますのに、これ以上無茶は言えません」

 

 幾分スッキリした表情のユティアさん。

 機械種グリフォンも結構なレア物と言える機械種だ。

 それを思う存分弄り回したのだから満足してくれたのかな。


 倒したのは俺が従属する機械種であったとはいえ、その晶脳から緑石を取り出すという作業を行ったのは間違いなくユティアさん。

 それについての工賃も請求せず、中級スキルの緑石を事も無くポンと渡してしまう鷹揚さ。

 本当にこの人は研究者気質で、自分の研究対象以外のことは無頓着な人なのだろう。

 少しばかり、このまま辺境の街に放流してしまっても大丈夫かな?っと思ってしまう。



 そんな失礼な感想を抱いている俺に構わず、ユティアさんは話を続けてくる。



「あと・・・ヒロさん。これは驚かそうと思って、隠していたのですけど・・・」


 と言いながら、悪戯っぽい笑顔を浮かべ、ボストンバックに手を入れてゴソゴソ。


 そこから取り出したのは・・・



「お待たせしました。修理完了です」


「か、廻斗!」


 

 その体長30cmばかりの小さい身体。

 白い子猿に羽を生やしたようなデザイン。

 千切れていた手足は元通りだ。

 クルクルとまん丸いおめめは閉じられている。

 おそらくスリープ状態のままなのであろう。



 赤ん坊を受け取る様に恐る恐る手を伸ばす。 


 

「はい、どうぞ」



 ユティアさんから受け取った廻斗の機体は前に持った時よりも重くなっている。

 手足や装甲が元に戻ったのだから当たり前だが・・・



 んん?これは・・・何かの模様?


 廻斗の肩から胸に至って星のような小さな跡が残っている。

 その数はちょうど9つ。


 まるでどこかの世紀末救世主のような・・・

 廻斗の『斗』という文字に共通点はあるけれど、関係ないよなあ。


「ああ、その跡なんですけど、磨いてもどうしても取れなくて・・・」


「いや、別に構いませんよ。これは俺の為に働いてくれた勲章みたいなモノなので」


 失われた廻斗の同僚も9体。

 なぜか運命めいたモノを感じてしまう数だ。


「ふふふ、でも、こんなに可愛いんですから、ちょとばかしおめかししてみません?」


 ユティアさんの悪戯っぽい表情。

 そんなユティアさんがボストンバックから取り出したのは・・・


「じゃーん!!可愛いでしょ。これ、エンジュが私の持っていた布の切れ端から作ってくれたんですよ」


 そう言って差し出してきたのは、太さ2cmくらいの平べったい青い紐の様なモノ。

 


「これは・・・ひょっとして前掛け?・・・いや、ネクタイかな?」

 

「はい、ネクタイです。これを・・・こうやって・・・」


 眠っている廻斗の首にくるくるとネクタイを巻いていく。


「ほら、完成!こうしておけば、傷も目立たないと思いますし」


 マフラーにはちょっと細くて、ネクタイにしてはやや大き目だ。

 でも、白い機体にプランと胸にぶら下げられた青い前垂は、確かにネクタイを締めているように見える。


「・・・ふむ、悪くない。白いボディが白スーツみたいで、なんか英国紳士みたいにビシっと決まっているな」


 廻斗の頭を撫でながら、そんなことを呟く俺。

 白スーツにネクタイで英国紳士が出てくるのは、ちょっと想像力が貧困かもしれない。


「エイコク?・・・まあ、そう言われると、紳士っぽく見えますね。ふふふ、随分と可愛らしい紳士さんですけど」


 ユティアさんも廻斗に触れながら、俺と同じ感想を述べてくれる。


 おお、この世界の紳士もスーツにネクタイをしているのか?

 ・・・それとも俺に話を合わせてくれているだけなのかな。


 まあ、廻斗がカッコ良くなったのは間違いない。

 これを作ってくれたエンジュに感謝しないとな。

 もちろんユティアさんにも。



「ああ、それから、一応護衛スキル(最下級)を入れておきましたよ。既存スキルは『飛行(下級)』『警戒(最下級)』『近接格闘(最下級)』『回避(最下級)』でしたので、これで5つですね。でも、あまり戦闘に向いている機体ではないので、大事に使ってあげてくださいね」



 そう言って優しく微笑む姿は、まるで患者を労わる看護師のよう。


 マッドな研究者チックな所と、こういった気遣いをしてくれる思慮深い女性の姿。

 普段のポンコツ具合も含めて、ユティアさんの魅力なのだろう。

 



 しかし、何から何まで申し訳ないな。

 ちょっとユティアさんには借りが多すぎるような気がする。


 これは何かで返しておいた方が・・・

 でも、天琉に頭の中は見せたくないし。

 

 

 あ、そうだ!



「ユティアさん。ちょっと待っててください。取ってきますから」













「どうぞ、存分にご賞味ください。晶脳が見やすいように装甲を剥いでおりますので」


 俺が差し出したのは、機械種レッサーデーモンの生首だ。

 機械種エンジェルには劣るかもしれないが、これもかなりのレア物のはず。


 一度、潜水艇に乗り込み、七宝袋から取り出して、さもここに積んでありましたよという体で持ってきたのだ。


 別に渡すわけではないし、晶石だけ後で返してくれるなら、別に分解してもらっても構わない。

 俺にはもう豪魔がいるから、レッサーデーモンは必要ないし、そもそもブルーオーダーできる蒼石も無い。

 ユティアさんが好き放題弄ってもらっても全く問題は無いはず。

 

 それにまたサルベージしてくれて貴重な緑石を取り出してくれるかもしれないし。


 ちなみに廻斗は空間拡張機能付バックに収納しておいた。

 皆のお披露目もあるから、集合した時に起こすつもりだ。








「こ、これ・・・ヒロさんが倒されたのですか?」


 レッサーデーモンの首を前に、引き攣った顔のユティアさんが擦れた声で俺に問いかけてくる。


「まあ、白兎と2人で仕留めたのですけど」


「・・・どうやってラビットでレッサーデーモンを仕留めたのでしょう?どう考えてもヒロさんの槍で倒せる相手とは思えませんが」


「・・・・・・仙兎流舞蹴術で」


 ちょっと苦しいかな。

 でも、間違ってはいない。

 トドメを刺したのは俺だけど。



 ユティアさんは少しばかり強めの視線で、じっとこちらを見つめてくる。

 

 対する俺も視線は反らさない。

 こういう場合は沈黙を貫くしかない。



 しばらく見つめ合うこと十数秒。


 結局、根負けしたのはユティアさんの方。



「はあ…、もう本当に謎な人ですね。ヒロさんは・・・」


 ため息一つついて俺への追及を諦めてくれた模様。


 まあ、俺も自分のことを分かっているわけではないけどね。

 なぜ俺がこんなチートスキルを持ってこの世界に来たのは未だに謎のままだから。


「でも、こんな上位の機械種がこの辺境の街にいたなんて・・・、ひょっとして、この街の『特機戦力』だったのかもしれませんね」


「『特機戦力』?」


 その言葉は初めて聞くぞ。

 ニュアンスから秘密兵器みたいなものか?


「はい。街にはイザという時の戦力として、上位の機械種が秘匿されていることが多いんです。普段は誰も分からない場所に隠されていますけど、どうしようも無くなった時に出陣させる戦力です」


「・・・わざわざ秘匿する理由ってなんですか?強い機種を保有しているなら、アピールの為にも公にした方が良いのでは?」


「公になれば対策をされますから。どれだけ強い機種でも対策をされてしまえば、その戦力はガタ落ちになります。そうでなくても機種が判明してしまえば、同型を2体以上当てられたら勝てません。どれだけの戦力なのかが分からないことこそが、その街を守る特機戦力の意味なのです」


 なるほど。

 使わない、表に出さない戦力だから脅しの意味があるのだろう。

 その機種の名を聞くだけである程度戦力が分析されてしまうから。


 しかし、その意味だと、この機械種レッサーデーモンはブラフで、本命は俺の豪魔、機械種グレーターデーモンの方だったのだろうな。

 

「この街のように、白鐘を割られて滅びた街を漁る墓荒らし達も、最大の目的と最大の障害がこの特機戦力だそうですよ。おそらくはスリープ状態にある特機戦力がレッドオーダーされる前に確保できるかどうか・・・なかなか難しいみたいですけどね。大抵の場合、厳重に隠されていますから。」


 レッドオーダーされる前なら大成果。

 レッドオーダーされた後なら大惨事。

 正に天国と地獄。


 俺が豪魔を見つけることができたのは、宝貝墨子のおかげだ。

 ある意味、この街へ物資を探しに来た俺が、豪魔を見つけたのは必然であったのだろう。



「見つかる可能性は低いですが、それでも探す人は多いですよ。辺境では精々ジョブシリーズのベテランタイプや、重量級のモンスタータイプくらいですけど、中央だとレジェンドタイプを特機戦力としているという街も幾つかありますし」


「ええっ!レジェンドタイプを?」


 レジェンドタイプを従属した例は2,3体って聞いていたけど・・・

 街の中で隠し持たれている可能性もあるのか?

 それは予想していなかったな。


「流石にヒロさんもレジェンドタイプと聞くと、驚かれるのですね。少しだけ安心しました」


 俺の驚いた表情に、ユティアさんはほっとした顔を向ける。


「大国の首都や、大陸最大の交易都市が特機戦力として保有しているという話を聞いたことがあります。あくまで噂レベルですけどね。レジェンドタイプを保有しているのを公的に認めているのはほとんどありません。皆、その情報を秘匿しているのでしょう」


 恐るべき情報がユティアさんから語られた。


 俺のこの世界の知識のほとんどは魔弾の射手ルートの未来視が元だ。

 猟兵団という狭い世界の中、それも決して広い交友関係をもっていない俺では手に入る知識が偏ってしまっていても仕方が無いか。


 しかし、ヨシツネに匹敵する機械種が幾体も現在に存在し、国家権力がそれを握っているケースが多いとは・・・

 

 自分のチートスキルにかまけて油断していると、足元をすくわれる可能性がある。

 レジェンドタイプに続いて、機械種エルフロード、エンジェル、グレーターデーモンを従属したけれど安心はできないな。

 もっと戦力を集めて、万が一世界が敵に回っても生き残るだけの力を手に入れなくては・・・


「あ、そう言えば、レジェンドタイプを保有していて、その存在を公開している組織が一つありますね」


 ユティアさんは、ぽんっと手を叩いて今思い出したように話を続ける。

 それは何でもないようなことを話す口調。

 

 しかし、そこから続けられた話は、絶対に俺が無視できないことだった。




「白の教会がレジェンドタイプを保有しています。それも複数。有名なのは機械種アーサーですね、そして、確かもう1体・・・名前は・・・機械種ハンゾウ・・・だったかな?」



 アーサー!

 あの有名なアーサー王か?

 そりゃ、絶対に強いだろうな。

 間違いなくエクスカリバーを持っていて、そこからビームを放ちそう。



 で、もう1体が・・・ハンゾウ?


 その響きからして、おそらくは忍者として有名な服部半蔵のことか!

 徳川家康に仕え、自身の抱える伊賀忍軍を持って天下統一の支えとなった戦国武将の一人。

 その知名度は忍者の代名詞と言っても良いほどだ。

 忍者型の機械種のモデルとしてはこれ以上ない程の英傑であろう。




 思い出されるのは、雪姫の影の護衛役であった、ストロングタイプのジョウニン。


 俺の目を抉り、散々手こずらせてくれた機械種。


 アイツが機械種ハンゾウの配下だとすれば・・・



 思わず握った拳に力が入る。


 やはり、戦力の拡充は急務のようだ。

 

 七宝袋の中のストロングタイプを修理するか、新たな機械種を手に入れるかして、早々に軍団を作り上げなくてはならない。

 

 その為にはどうしても中央へ行く必要がある。

 辺境と中央では技術的にも経済的にも格差は大きい。

 俺が求めるレベルがあるのは中央しかないのだ。




「この3人の生活も・・・そんなに長くは続けられないな」




 目の前のユティアさんに聞こえぬよう、そっと口の中だけで呟いた。

 改めて自分の目指す所を確認する為に。

 

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