星の輝きの記録 Vol.2

星質同調プラズム・シンパサイズ


 自身のけものプラズムの波長を星座の輝きと『同調』させて、眩いほどの輝きの力をその身に纏う技。ほとんどの場合、通常の状態と比較して非常に高い戦闘力を得ることになる。


 基本的にこの技を使うには、対応する星座の石板を所持している必要がある。


 以下に、四章終了時点で所持している石板を列挙する。

 


 兎、大熊、子熊、彫刻具、彫刻室、画架、コップ、カラス、白鳥、インディアン、三角、ポンプ、海蛇、水蛇、オリオン、エリダヌス、子犬、仔馬、仔獅子、カメレオン。



 例外として、こぎつね座は石板の現物を持っていないが、クオ(もしくはクオの身体を操る者)と協力することで『同調』を行うことが可能である。


星質同調プラズム・シンパサイズを発動している間は石板に溜め込まれた輝きを常時消費し続け、石板内部の輝きが無くなった時点で解除される。

 その場合、該当する星座の輝きが回復するまで、その星座と『同調』を行うことは出来ない。


 また前述した特性の為に、ソウジュは自身の乏しい妖力をこれによって補い、今までより長い時間の戦闘を行うことが出来るようになった。



 ―――星の輝きをその身に宿すことで、彼は大きな力を手にした。これと同じことが出来る人物は、彼の他にはそうそう存在しないことだろう。




★『狐憑きの神樂』――同調:Vulpeculaこぎつね



 ―――神様のいない世界でも、神使の狐は踊り続ける。



 クオの身体の中にあった大きな輝きと『同調』し、ソウジュがこぎつねの力を身に宿した形態。彼の黒髪と同じ色をした狐耳と尻尾が生え、服装は普段着から神社の正装を思わせる和風の装束に変化している。


 この形態では身体能力が大幅に上昇し、妖術の構築速度も普段より格段に速くなって、非常に戦闘力が高くなっている。普段は非力で思うように扱えない刀も取り回しが上達し、一端の剣士と遜色ない実力を発揮する。


 またキツネになった影響で知覚も鋭くなり、クオが彼女と自分の荷物を完璧に分けることが出来る理由を身を以て実感した。

 …だが、分けることが出来ても荷物は常に一緒に放り込まれている。


 耳と尻尾の感触は本物のキツネと一緒であり、クオをモフることが出来ない日は自分の尻尾を触って誤魔化しても良さそうだと彼が感じるくらいであった。

 もちろんクオの協力が無ければ『同調』は出来ないし、クオが彼の頼みを断ることも恐らくは無いだろう。


 ほぼ全ての星座は石板に輝きを依存するが、クオと協力して『同調』するこぎつね座は彼女の膨大なけものプラズムを消費して活動することになるため、半永久的に『同調』を継続することが可能である。


 場合によっては、常にキツネの姿で活動するようになる日も来るのかもしれない。


 そして彼がクオの輝きをその身に受け入れた時、とても重たく大きい何かが自分の中に入ってきたような感覚を覚えたという―――。




★『氷槌・大熊の掌』―――同調:Ursa Majorおおぐま



 ―――敵は一人とて倒れない。立ち尽くしたまま息絶える。



 おおぐま座の石板を使い、『同調』をした形態。

 もこもこの服を身に着けて、手には大きなハンマーが握られている。


 ひとたびハンマーを振るえば冷気が周囲に立ち込め、彼以外の存在は遍く極寒の温度に凍えることになる。直撃を食らえば冷気は身体を貫通し、例えば小さなセルリアンなら一瞬のうちに全身を凍らされてしまうことだろう。


 そうなれば、彼は出来上がった敵の氷像に向かってハンマーを振りかぶり、一撃で砕き葬り去る。


 もしも冷気を掻い潜って彼の元に辿り着けたとしても、クマを模した高い防御力の前に果たして有効な傷を与えることが出来るのかは定かではない。


 ……この星座の力を借りた結果、彼は少し間違った形でクマのフレンズの強さの秘訣を学んだ。




★『暗夜の鴉羽』―――同調:Corvusからす



 ―――その矢羽が青空を覆い尽くした時、射手の弓矢も彼を狙っていた。



 カラス座の輝きと『同調』した姿。

 影に身を潜める忍者のように暗く、夜闇を舞う怪盗のように優雅な容貌をしている。


 この姿の大きな特徴は空を飛べること、そして過去にセルリアンがやっていたように無数の矢羽を飛ばせることである。自身の身体を黒い矢羽の雨の中に隠せば、ステルス飛行をしているように振舞うことも可能だ。

 

 また非常に瞬発力に優れており、数メートルほどの距離なら滞空しつつ何度も往復して、腕や脚による打撃を与えることが出来る。


 反面、防御は比較的に脆く、敵の攻撃を受けずに立ち回ることを求められる。


 だが、生半可な速度の攻撃で彼の身体を捉えることは到底不可能だろう。


 彼は戦いの後、自身に宿った力の中身を振り返って、ホートクでセルリアンが見せた巨大化能力が無かったことに疑問を抱いていた。




★『底の見えぬ清流』―――同調:Eridanusエリダヌス



 ―――いったいどうして、川を打ち倒すことができるのだろう?



 エリダヌス座の輝きと『同調』した姿。

 青い流線型の模様が特徴的な、魔術師を思わせるローブを身に着けている。


 大量の水を放出できることがこの姿の特徴である。メリのように水を自由自在に操ることはできないが、圧倒的な水量はそれだけで多くの生物やセルリアンにとって多大な脅威となり得る。


 その代わり使いどころが難しく、例えば迷宮のように限られた空間で使わなければ周囲の地形に節操なくダメージを与えてしまうことになるだろう。


 この姿は防御面でも優れたものがあり、攻撃に対し勢いよく水を出して、攻撃を跳ね返したり威力を軽減させることができる。敵の足元へと常に水を送り続ければ、浮くことのできない相手は彼の元に辿り着くことさえ出来ないだろう。


 おおぐま座と力を合わせれば、止めどない凍結反応で敵を封殺することもできそうだが、今のところ2つ以上の星座の力を同時に扱うことはソウジュには出来ない。




 ―――どんな状況になろうとも、星空は彼らを見守り続けている。



 ―――星が彼らに味方するかどうかは、まさしく彼ら自身の手に掛かっている。


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