Epilogue
「…………」
夕焼け空の下、街は静かだった。俺は何を言えばいいか分からず、チラチラと隣を伺うばかり。それが鬱陶しかったのか、摩理がつっけんどんな口調で言った。
「何か言いたいことでもある? いや、あるでしょ」
「言いたいことって?」
「色々。《レンタル妹》に手を出してごめんなさい、とか」
「べ、べつに悪いことじゃないだろ。それに勝手にしろって言ったのはお前だ」
「……だとしても、どうして理世なわけ? それがまず、大問題。あと、本当に偶然だったの?」
「偶然だよ!」
「まあ、いいけど。真相は正直、知りたくないし……」
摩理はボソリと呟くと、スマホを取り出した。会話が途絶える。俺は妙に落ち着かなくなり、思いつくままに話をした。
「あ、あー、そういえば、今日は友達の家に泊まるんだったな」
「もうとっくに断ったよ。なんか、気分じゃなくなったし」
「あっ、そう」
「……ねえ、兄貴は昔に戻りたいって思ったことある?」
息を吸った後、摩理は少し真面目な口調で聞いてきた。
「それは……当然、ある」
「そう」
「でも、お前がさっき言った言葉に気づかされた。過去の理想を追い求めても、結局無意味だって」
この妹には正直、驚かされた。ずっと子供だと思っていたのにいつの間にこんなしっかりしていたなんて。
俺は心の底から思ったことを口にした。
「お前さ、妹よりも姉の方が向いてそうだな」
「……《レンタル姉さん》、始めてみようかな」
そう言った後、摩理は冗談っぽく笑ってみせた。
レンタル妹 シーズーの肉球 @ishiatama
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