第8話

平日昼間のステーキハウスは落ち着いており、前みたいなうるさい客もおらず、そしてセンリも遅刻することなくやってきた。


「ハンバーグの肉の含有量は?」

「あ、こいつもハンバーグで大丈夫です」

私はセンリの口のなかにフォークをつっこんだ。

「悪くない味だね、ネェさん」

センリは背伸びをしながら店員を見つめていた。

「そういえば、肩は大丈夫なの?」

「あぁ、まだ痛いかな。辰巳さん家はどうなったの?」

「母方の実家にいるそうよ」

「裕子さん、また天ぷら作ってくれないかな」

私は、あらゆるものが燃えて壊れてしまった家のなかでセンリに脅されるまま天ぷらを作っていた裕子氏が気の毒でならなかった。

「脅してない」

「センリは怖いから仕方ないか」

「僕は怖くない」

ハンバーグが届いたので、センリはそれを一口でたべた。鉄板を届けにきた店員に、それを突き返した。店員は苦笑いをしていたが、ギリギリの愛想を保っていた。


「そうだネェさん、火もってる?」

「……ないけど」

「そうかぁ」

そしてセンリは立ち上がり厨房に向かっていった。

私は、次からセンリに会うときはライターを持っておかないとあらゆる人に迷惑をかけることになると肝にめいじた。

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カプリチオ 古新野 ま~ち @obakabanashi

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