幕間.エデンズフィールド遠景

 エデンズフィールド――それは現実の街に重ね合わプロットされたもうひとつの世界だ。

 風にしろ太陽の熱にしろ、本物としか思えない。時間の流れは外の世界と等しいが、空はけして曇ることがなく、夜には無数の星が全天を埋め尽くすのが観測できる。隣り合う星の光点を結び合わせれば、あなたの見たこともない星座がいくつも出来上がるだろう。

 面積1平方キロメートル程度の『宿り木の街』には常時数百人のアクティブプレイヤーがしており、時間帯に応じて百人単位で増減する。狗吠市の人口が8万だから、概ね総人口の0.7~0.8%程度がエデンズフィールドに関わっている計算になる。

 中央通りヴィア・ピシオンの繁華街には市場や個人経営の店舗が立ち並んでおり、交差して伸びる戦士通りヴィア・ギジオンの西端にはウバの森が、東端にはケルヴィムの塔が聳えている。北には遥かに霞むアララト山の威容を臨み、その麓にはトニトゥルスの洞窟が口を開いている。南にはイオナの海があり、彼方には果てのない水平線がどこまでも広がる。

 四方のいずれに進もうと世界はどこかで『断絶』する。歩幅と等速のベルトコンベアを逆走するように、ある地点から先にはけして進むことができない、と考えていただいて差し支えない。

 アップルテイカーたちの主戦場に定めはなく、どこが舞台になるかはイベントに応じて変わる。つまりは運営の御心次第というわけだが、戦いの舞台がどこであれ、プレイヤーの取るべき行いが淡々としたハック・アンド・スラッシュであることには変わりない。

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