第1586話 動き出す状況
<『群雄の密林』から『群雄の密林・灰の群集の安全圏』に移動しました>
急遽、ベスタがメンバー入りして、連結PTのフルメンバーになって、安全圏へ転移してからタシュー・タヨーウへと移動していく事になった。とりあえず、一旦安全圏へと転移してきて――
「ねぇ、ケイ? ここの黒の異形種とも対話は試すのかな?」
「あー、どうすっかな……」
クエストに進展があったのだから、ここの妨害ボスであるゾンビな大蛇とも対話が成立するようになった可能性も――
「ケイ、それはどういう事だ?」
「ほら、そこのゾンビな大蛇も黒の異形種じゃん? 一応、翻訳機能が通じるかは試したんだけど、その時にはまともに会話が成立しなくてさ」
「今なら、違う反応が返ってくるかもって話かな!」
「……なるほど、そういう事か。安全圏にいる黒の異形種は盲点だったな」
あれ? ベスタがその可能性は考えてなかったのは意外だね? あー、でも1人であちこちに移動してたのなら、見落としがあるのは仕方ないのかも。
「すぐ近くにいるのだから、ついでに試していくのもありかもしれんな」
「まぁそれはそうなんだけど……多分、ここのは別枠だぞ?」
「……別枠だと? どういう意味だ?」
「どうも、ここのゾンビな大蛇の中身は、元がマサキっぽくてさ。その関係でこの場所に囚われてるみたいで、溜まり場にいる黒の異形種との接点は皆無っぽいんだよ」
「なるほど、中身がマサキの『陰』という事か。確かに、そういう推測が出来るのなら、別枠なのは納得ではあるな」
今の状況で話しかけたらどういう変化があるかは気になるけど……優先順位を考えると、ここは後回しでもいい気がするんだよなー。山岳エリアまで行くのに時間がかかるし、他の群集や無所属の乱入勢の動きを考えるなら……溜まり場の方が重要度は高いはず。
「それならば……桜花、聞こえるか?」
「おう、ばっちり聞こえてるぜ! ここで俺に声がかかるって事は……そこのを試す人員を集めりゃいいのか?」
「あぁ、そういう事だ。俺らは山岳エリアへ向かうから、ここの検証を頼めるか?」
「黒の異形種に関しては協力して動けるようになってるし、その程度なら問題ねぇぜ! ただ、必要な物を持ってるPTがすぐに集まるとは限らないが……」
「多少、時間はかかっても構わん。そのまま放置しておきたくないだけだからな」
「了解だ! それじゃ、これから呼びかけてみるから、人手が揃ったら伝えるぜ!」
「あぁ、それで頼む」
ベスタとしても、俺らは先を急ぐべきって判断か。まぁ必ずしも俺らがしなきゃいけない訳じゃないんだから、他の人に任せるってのもありだよね。
「……ケイ、一つ確認しておく。このメンバーの中で、山岳エリアへすぐに行けるのは何人いる?」
「それなら、飛翔連隊以外は全員行けるけど……え? もしかして、先に行っておけって話?」
「まぁそうなるな。中に入るのは俺らが追いつくまで待っておいてもらいたいが……先行して、他所の動きを探っておいてくれるか?」
なるほど、そうきたか。うーん、急いで確認をするのであれば、確かにそれも手ではあるんだけどなー。でも、全員で一緒に動きたい気もするし……。
「……紅焔さん達、この提案はどう?」
「何がどうなるか分かんねぇから、先に場所だけでも確保って事だよな? あー……足は引っ張りたくねぇし、それでいいぜ。ただ、確認だ、ベスタさん!」
「……何をだ?」
「ベスタさんの事だから、近場に転移地点を設定してんじゃねぇか? それなのに、俺らと一緒に移動しようってのなら……その理由を聞かせてもらいたいんだが?」
あー、確かにベスタなら、それくらいはしてそうかも? でも、ベスタは紅焔さん達と後から来るつもりな言い方をしてたし……その理由は気になるかも?
「あぁ、その理由か。まぁ単純な話だが……タシュー・タヨーウにも黒の異形種の溜まり場があってな。そちらの状況の確認をしようと思っている」
「およ? あそこにも溜まり場ってあったんだ?」
ほほう? それは何気に初耳だね。まぁ命名クエストがあるエリアは、どこも簒奪クエストの対象になりそうだし……別に不思議な事でもないか。
「小規模な上に、命名クエストが終わった後には中にいた黒の異形種の姿は見えなくなっている。だが、演出が進んだ事で何か変化がある可能性も否定は出来んから、直接確認に行きたくてな。紅焔達には、それに付き合ってもらいたいんだが……あぁ、それほど遠回りにはならんぞ」
「もういなくなってんのかよ!? あー、念の為の確認って事か?」
「まぁそうなる。無駄骨の可能性も高いから、誰かに任せる気にもなれなくてな」
あー、だからこそ、ベスタ自身が確認に行きたい訳か。黒の異形種関係は群集で連携して動けるようになったとはいえ……いや、だからこそか。
連携出来るからって、なんでもかんでも放り投げたい訳じゃないのかも? 道中で立ち寄れる程度の場所なら、尚更に。
「その気持ち、分かるぜ! 無駄骨の可能性が高いなら、他の人には任せにくいよな! おし、そういう事なら、付き合おうじゃねぇか! みんな、それでいいよな?」
「まぁそういう確認も必要だろうしね。僕は賛成だよ」
「逆に、もぬけの殻になっている元溜まり場というのも気になりますしね」
「確かに? そこ、なんかアイテムでもあったりしない?」
「その辺も含めての確認なんだろうよ。だよな、ベスタさん?」
「正解だ、甘口辛子。とはいえ、何もない可能性の方が高いがな」
「無駄骨、上等! 何かあったら、儲けもんってとこで
……ケイさん、本命の確保は任せるぜ!」
「おう、任せとけ!」
ベスタが紅焔さん達と移動してくる理由は分かったし、それを全員でするよりは、分担しておいた方がいいのは理解した。ここは全員で動く事に拘らず、早く現地入りした方がいいだろ。
「俺らは先に山岳エリアの、黒の異形種の溜まり場に行くぞ! ベスタと飛翔連隊が到着するまで、あの洞窟を確保する!」
「はい! あの入り口を守ってるクモは、どうしますか!?」
「全員が揃うまで、仕留めるのは無しで! 無駄に何度も倒す羽目になりかねないしな」
「おぉ!? 確かにそれはそうなのです!」
「……ケイさん、質問。他の人達がいた場合は……?」
彼岸花さんのその警戒は……まぁ当然の内容だな。その時の状況次第でどうとでも判断が変わりそうだけど……まぁ基本的な方向性は決めておきべきかもね。
「灰の群集の人なら、一緒に協力してもらうとして……ベスタ、他の群集の人は?」
「相手の出方にもよるが……今の時点で、無理に争う必要もないだろうな。無所属に関しては、基本的に排除で構わん。だが、現地での判断はケイに任せるぞ」
「ですよねー。彼岸花さん、ケースバイケースにはなるけど……基本的には、無所属以外はこっちからの攻撃は無しで!」
「……うん、分かった」
簒奪クエストの進行に協力している群集所属のプレイヤーが妨害してくる可能性もあるけど……それは、その時になってみないと判断が下しにくいしな。灰の群集か、それ以外かで対応も変わってくるし……まぁそれは出たとこ勝負で!
「それじゃ、ベスタと飛翔連隊以外は、すぐに転移で!」
「「「「おー!」」」」
「今、どういう状況になってるかなー?」
「……それを確認する為にも、急ぐべき!」
「はいはーい! そりゃ当然の話だよね!」
「違いないな」
「……すぐに戦闘になる可能性も、考慮しておくべきか」
「……周囲の警戒も……大事!」
さーて、本当に何がどういう風に動いてくるかが予想出来ないから、警戒は怠らずに急ごう! 転移地点の登録、無意味だと思ってしまったけど、意外とそうでもなかったね。という事で、転移の実を使っていきますか!
<『群雄の密林・灰の群集の安全圏』から『名も無き未開の山岳』に移動しました>
転移時に花が咲く演出を経て、山岳エリアで登録していた場所に転移完了! アルに乗った状態で転移してこれたけど……ちっ、少し離れたところから戦闘音が聞こえてくるな。
「アル、リコリスさん、UFOが近くにいるか!?」
「ここから北の方に、1機降りてきてるな」
「戦闘音のする方向と同じだから、多分戦闘中だね! 細かいとこは、ケイさんがチェックをお願い!」
「やっぱりか! 確認、サンキュー!」
『侵食』での察知の代わりになるレンズは、すぐに効果が分かるのがありがたい! でも、分かるのはUFOがいるかどうかまでだから……それ以上は、俺の獲物察知の出番だな。
<行動値を6消費して『獲物察知Lv6』を発動します> 行動値 127/133
すぐに発動して……反応は、どうだ? って、そうきたか!? あー、こりゃどうも嫌な予感が――
「ケイ、どうかな?」
「無所属……それも、そこそこ黒く染まってる反応ありだ。UFOの反応がある辺りで、灰の群集のPTと交戦中っぽい」
「っ!? 簒奪クエスト、ここで進めてるのかな!?」
「ここから拾える反応だけじゃ、まだ何とも言えないけど――」
「ケイさん! こっちに関係しそうな情報が入ってきたぞ!」
「マジか、桜花さん! それ、どういう情報!?」
桜花さんは安全圏にいる黒の異形種との交渉の準備をしてたはずだけど……その最中であっても、飛び込んでくる重要情報があったっぽいな。これ、あんまり良い情報だとも思えないね……。
「ぶっちゃけ、悪い情報だな。ベスタさんが手遅れだと報告を上げていた『名も無き未開の海岸』だが……『異形の海岸』という名に変わったのを確認したそうだ」
「やっぱり、そういう内容か!?」
「どうやら『簒奪クエスト』が完了したようだな。桜花、エリア名以外に、何か変化は報告されているか?」
「空中に、複数の瘴気の渦が常駐してる状態になってるらしいぜ。すぐに襲われて、逃げ帰ってきたらしいから詳細までは分からんが……複数あるのは見えたらしい」
「それが、安定した転移用の出入り口か」
「多分だけどな。ケイさん達の方に無所属が現れてるのなら、そこから来てる可能性があるから、注意しといてくれ!」
「ほいよっと! 桜花さん、情報サンキュー!」
くっそ、クエストの進行があって大きく動き出したのは、俺らの方だけじゃなかったって事かよ! ただ単にタイミングが重なっただけの可能性もあるけど、簒奪クエストも進行を止められてた可能性が出てきたな。
「アル、リコリスさん、瘴気の転移に要警戒で! サヤ、ハーレさん、レナさんも周囲に特に警戒しといてくれ! これまでの瘴気の転移と同じなのか、まだ判断が出来ないから!」
「……違いねぇな。このレンズ無しで、目視出来る可能性もありそうだ」
「あっ! 片目ずつで見え方が違うので、その辺は見分けられるかも?」
「わたし達も警戒しとくけど、アルマースさんとリコリスさんは特に警戒をよろしくねー!」
「……これは、油断出来そうにないかな!」
「いつ、どう襲ってくるのか、全く分からないのさー!?」
一度、直接転移をしてくる様子を目視したいとこだけど……そうなれば、戦闘はほぼ不可避か。群集が味方している可能性もあるんだから、灰の群集の人を見つけても、すぐに警戒を解く訳にもいかなくなってるのが厄介だな。
いや、それでも曼珠沙華から、そういう可能性があると聞けていただけマシか。本来なら油断したらいけない状態なのに、そうと気付かず接する可能性もあったんだしさ。
「……ケイさん、どう動く?」
「簒奪クエストで大々的に他のエリアまで動き出してるなら、すぐにでも黒の異形種の溜まり場まで行くべきだな。ベスタ、紅焔さん……悪いけど、状況次第では到着を待たずに、すぐに突入するぞ」
「あぁ、それで構わん」
「下手に俺らを待って、後手に回る訳にはいかねぇもんな! ケイさんの判断で進めてくれや!」
「ほいよっと!」
出来るだけ、ベスタと飛翔連隊の到着は待つつもりではあるけども……それが可能かは、今の時点では分からない。でも、そういう判断を下す可能性があるのは、今の時点で決められるからな! いざって時は、そうするしかないだろ。
「アル、飛ばしていくぞ! 川の上で高度を上げて、周囲を見渡せるように!」
「了解だ! 俺らが見つかるのは……気にしない方向か?」
「隠れるだけ、無意味だしな! 襲ってくるなら、返り討ちにするまでだ!」
アルの巨体を隠そうとするのは無理があるし、目立つのなんて今更だ。むしろ、堂々と存在感を示して、どういう対応をしてくるかを探った方がいい。
襲ってくるならとは言ったけど……ぶっちゃけ、俺らは避けられる可能性もあるんだよなー。その辺の対応も探っておきたいところ。
「……襲って……くるの?」
「……黒く染まるのが目的なら、奇襲という行動はあり得るだろう。……奇襲止まりの可能性もあるがな」
「わたしも十六夜さんの意見に賛成。黒く染まる事が狙いなら、襲いかかった時点で目的は達成だからねー。無理して深追いは……多分しないんじゃない?」
「……それは、人次第かも?」
「コトネさん辺りなら、死んでもお構いなしに突っ込んできそうかも?」
「インクアイリーの検証勢でも、実行担当役は無茶をしたがる傾向があるからな」
「およ? んー、そっか、そういう傾向もありかー。それじゃ、実際に遭遇してみるまでなんとも言えないかも……」
「ですよねー! あー、もう、実際に遭遇した時に考えるしかないか……」
『コトネ』って人は、確かやたらと好戦的なタカの人だったよな。どことなく、暴走した時の弥生さんを思い出しような感じだったし……ザックさん的な死亡上等で動かれると、結構厄介かも?
単独で動いているなら対処はしやすいだろうけど……多分、集団で動いてくるだろうしなー。どこでどう出てくるかが分からないから、後手に回るしかないのがキッツイ! でも、手分けをして先に転移してきて、正解だったかもね。
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