第1582話 頼まれ事
昼飯の冷しゃぶを食べ終え、自室へと戻ってきた。いやー、食洗機が設置されて、食器洗いから開放されたのは本当にありがたいっすなー!
お盆にサヤとヨッシさんが遊びに来る件もどうにか、晴香は休みに出来そうだし……相沢さんが調子に乗って、模擬戦の相手とか言ってくるとは思わなかったけど! まぁそれはいいとして……。
「直樹から、追加のメッセージなぁ……?」
携帯端末を自室に置いたまま、昼飯を食いに行ってたけど……戻ってきてくれば、追加で届いていたメッセージ。相沢さんから『調子に乗って、ごめんなさい!』ってのはあったけど、まぁそっちはスルーでいいとして……。
「流石に、グループメッセージで脅したのはまずかったか?」
あれ、直樹も見れてる訳だし……何かその辺で、怒られるような内容な気がする。わざわざ、個別にメッセージを送ってきてるのも……今、直樹の方は大会の真っ只中だよな?
そういや、直樹は昼からの部門では何か出てるのか? 出場人数の関係で出てないのなら、暇してる可能性はありそうだけど……。
「まぁいいや。とりあえず、見てみるか」
集合時間の13時にはまだ少し時間の余裕があるし、内容を確認してる時間はあるはず。さて、どういう内容になってるのやら?
「えーと……はいっ!?」
ちょ、待て!? 直樹が俺に、模擬戦の相手を頼んでくるのかよ!?
「いやいやいや、モンエボの効果がどれだけあるか、実演してくれって、そんな無茶な……」
しかも、チーム戦で晴香も一緒にって……あー、でもモンエボで交流する機会の一環としてか。直樹は俺と同じチームってなってるから……うちの高校のeスポーツ部を叩きのめした時と同じメンバーでか。
晴香にはまだ話は通してないみたいだから……てか、出来れば明後日の放課後って、随分と早いな!? でも、夏休みに入ってからだと旅行に行く晴香の予定が合わないし……8月に入れば、尚更に無理か。
「兄貴、ちょっといい?」
「ん? おー、俺からも話があるし、丁度いいや。今、鍵を開けるから待ってろ」
「はーい!」
ふー、鍵は付いたから、急に入ってこられる事がなくなったのはいいな。これまでなら、今のタイミングで問答無用に入ってきてただろうしさ。
とりあえず部屋の鍵を開けて、晴香が入ってきた。今は13時前だけど……晴香からの用事ってなんだろ?
「それで、どうかしたか? てっきり、スクショの整理でもしてるのかと思ったんだけど……」
「昨日の夜の、交流会の件なのさー! あれの日程、決めた方がいいと思って!」
「あー、そういやそうか。その辺、まだ決めてなかったもんな」
なるほど、さっきの直樹からのメッセージって、その辺の催促もあったのかも? 少なくとも、晴香にさっきの話をしようかと考えてたとこだし……今は丁度いいタイミングか。
「それなんだけど……ちょっと別件があってな?」
「……別件?」
「直樹からの頼みだな。ほぼ間違いなく、相沢さんの調子に乗った要求の影響だとは思うけど……俺と晴香と直樹の3人で、直樹のとこの部員と模擬戦をして欲しいんだと。出来れば、明後日の放課後に」
「えっ!? そんな話になってるの!?」
「部屋に戻ったら、そういう内容のメッセージが届いててなー。多分、流れ的にモンエボの中での交流よりも先になる可能性はあるけど……どうだ?」
「急な話過ぎるのさー!? あ、でも、夏休みに入ったら、予定が合わないのです!?」
「そうなるんだよなー」
多分、直樹は交流も考えてはいるけど……ガチで練習を兼ねた提案をしている気もするしさ。まぁ練習なら、出来れば直樹は俺ら側じゃない方がいいんだろうけど……。
「……兄貴、その話、ヨッシとサヤを誘ってもいいですか!?」
「ん? なんでそこでサヤとヨッシさん?」
「モンエボでも交流する事になりそうだからなのさー!」
「あー、なるほど」
まぁ確かに、オンライン対戦でやるなら無理な話でもないか。サヤかヨッシさんのどっちかが、俺と晴香とのチームに入ってくれれば……直樹も相手側に回れるもんな。それもありかも?
「それなら、モンエボでの交流は……明後日、火曜の夜にでもしておくか? 別々の日より、同じ日がいいだろ?」
「うん! それでいいのです! あ、サヤとヨッシに、確認を取ってくるねー!」
「ほいよっと。それで問題なさそうなら、その内容で直樹に伝えるからな」
「はーい!」
予想外の形でサヤとヨッシさんが加わる事になりそうだけど……2人はどういう反応をしてくるかな? 晴香に関わる事なら乗ってきそうな気もするけど……変に無理強いはしたくない。
って、よく考えたら、俺、普通に模擬戦をやる事を受け入れちゃってるじゃん!? まぁ直樹からの話だし、相沢さんと違って断る理由もないけどさ。
「あ、そういや、ゲーム自体はどうすりゃいいんだ?」
家庭用の『Magic Gunfight』は持ってないんだけど……家からやるなら、人数分は買わなきゃ無理なのでは? eスポーツ部の備品を借りるなんてのは論外だし……。
「ちょっと直樹に聞いてみるか」
サヤかヨッシさんの参戦自体がどうなのかも含めて、聞いておかないとなー。そもそも参加自体が無理って可能性もあるし……俺と晴香がどうすればいいのかも、別問題であるし……よし、その辺の疑問をメッセージで送信! って、すぐに通話で返ってくるんかい!
「よう、圭吾? なんか面白い話になってんじゃねぇか? サヤさんとヨッシさんが参戦だって?」
「晴香の提案でなー。まぁまだ当人達には、今、意思確認中だけど……」
「あー、まだ確定って訳じゃねぇのか。まぁゲーム自体は気にすんな! こっちで人数分のライセンスコードは発行するからよ」
「……それ、いいのか?」
「競技用の別バージョンで、ソロプレイ用の機能は削られてるからな。ライセンスコードさえ発行すりゃ、そのバージョンのソフト自体は無料なんだよ。ま、コードを発行するのに、一定以上に競技者ライセンスが必要なんだが……うちの部は、その手の資格持ちは多いしな。もちろん俺もだぜ?」
「あー、そういう……」
eスポーツの競技に認定されているからこそ、対戦相手を自前で用意出来るようにされている感じなのかもね。そこから興味を持って、本家を買わせようって目論見もありそうな気がする?
「兄貴! ヨッシもサヤも、OKだってー! でも、ソフトはどうすればいいですか!?」
「あー、了解っと。直樹、遥香が確認を取ってきたから、通話をグループに切り替えるぞ」
「おう、それで頼むわ」
晴香も話に加われるように、共有状態に変更! よし、これでいい!
「山田さん、大会優勝おめでとうなのさー!」
「おう、あんがとな! つっても、ここから先が壁だからよ。俺がいつものチームで動けるように、サヤさんとヨッシさんを誘ってくれたんだってな?」
「うん! サヤが特に乗り気なのさー!」
「へぇ? サヤさんがか! 圭吾、サヤさんは……ぶっちゃけ、『Magic Gunfight』だとどうなんだ?」
「全くやった事はないはずだけど、多分、動きは問題ないと思うぞ? モンエボでの近接、相当な強さだしな」
「……なるほど、俺の時みたいにナイフ一本で突っ込ませるなんて芸当は、普通に出来る訳か」
「……まぁ否定はしない」
というか、サヤはFPSゲームを全然やった事ないって言ってたし、立ち回りとしてはそれが最適解になってくるよなー。でも、超人的な立ち回りはモンエボの影響で出来るだろうし、竜で砲撃みたいな事はしてるんだから……動きが悪いって事はないはず?
「ま、俺らを相手にガチで倒しにこいって訳じゃないから、お遊び程度で緩く考えといてくれ。ソフトのダウンロード先とライセンスコードは、家に帰ってから圭吾の方に送っとくぞ」
「ほいよっと。明後日……火曜の放課後に、こっちの全員が揃ってから開始でいいか?」
「おう、それで構わん」
「了解っと。あ、そうそう。その日の夜、モンエボで交流しようってのでもいいか? それなら、都合は付くと思うんだけど……」
「おっ、そっちも日程が確定か! あー、月曜はやっぱり無理そうなのか?」
「今のクエストの進行が、意図的に運営から止められてるっぽくてなー。ちょっと正確な予測が出来なくて……」
「……なるほど。となると、終了時刻もそれなりに決められてそうだな? 連休に合わせてやってるなら、日付が変わるギリギリまでやるかもしれないのか」
「その辺、実際になってみるまで分からないってとこなんだよ。だから、明日は避けとく」
「確かに、それが無難なとこか」
何が終わりのタイミングになるのかさえ不明だけど……考えられるとしたら、UFOの降下が終わるくらいか? 落下物やUFOの残骸の回収なんかは残りそうな予感もする?
「ま、とりあえず俺は予選は終わったし、今日の夜から参戦するからよ」
「……あ、そういや月曜は大会はないのか。明日は、何もなく休み?」
「おう、そうなるぜ! つっても、終盤からの参加で何が出来るか分からんけどな」
「そりゃそうだ!」
いや、普通に同意したけど……意外とそうでもないかもしれない? 灰の群集では限定的ではあるけども協力体制が戻ってきているし、クエストの進行内容次第では……後から参加した人でも何かしら役目がある可能性はあるよな?
「おっと、悪い! 昼休憩はここらで終わりだから、そろそろ切るぜ。俺が出た部門は決勝まで終わったが、部全体ではまだ全部は終わってねぇからよ」
「ほいよっと! 頑張れって伝えといてくれ!」
「……他の高校の奴に言われると、なんか妙な気分だな? あー、そういや相沢さんが変に取り乱してたのを見たが……あんまり虐めてやんなよ? 親へチクリは、結構エグいぞ?」
「それは自業自得だから知らん! いきなり、母親に相沢さんの親が謝ってたって言われた俺の身にもなってくれ」
「……ま、確かにそれも笑えねぇ状況ではあるか。色々、親同士で筒抜けだったりするし……っと、悪い! もう限界だ、切るぞ!」
「おうよ!」
そこまで言って、通話は切れた。まぁ部で活動中なんだから、慌ただしくなるのも仕方ないか。
「兄貴、ライセンスコードって何ですか!?」
「あー、競技用の別バージョンのがあるんだと。ソフトはそれを使えば金がかからないらしいから、人数分は用意してくれるって話だ」
「おー! そういう風になってるんだ!?」
「直樹から送られてきたら、渡すからな」
「はーい! あ、ちなみにヨッシは観戦だけを希望なのさー!」
「……へ? え、参戦する訳じゃないのか?」
「うん! 人を撃つのが苦手って言ってたもん!」
「あー、そういやそうだっけか。なら、サヤと俺と晴香の3人で確定?」
「そうなるのさー! サヤが前衛で、私が後衛で、ケイさんが指示出しなのはいつものパターンなのです!」
「全く同じ感覚でいいって訳でもないんだけど……まぁガチで勝ちに行くよりは、お遊び感覚の方が強いんだし、別にいいか」
「でも、勝負なら勝ちを狙いに行くのです!」
「……相手、全国大会に出る実力者なのを忘れるなよ?」
「それくらい分かってるのさー! それでも、初めから負けるつもりでやるのは、相手に失礼なのです!」
「ま、それは確かになー」
とはいえ、晴香はこの前1回やっただけで、サヤに至っては完全に未プレイ……。本気でやっても届く訳もないし、そのくらいの意気込みでいいくらいなのかも?
「そういや、サヤとヨッシさんは、先にログインしてる感じ?」
「うん! 話が終わったら私達も行くって伝えておいたよー!」
「それじゃ、サクッとログインして、最新情報を集めていきますか!」
「ふっふっふ! そうするのです!」
今の話も、出来れば他のみんなが集まる前に済ませておいた方がいいだろうから、急がないと! 晴香も自分の部屋に戻っていったし、俺もサッサと準備をしていこう!
◇ ◇ ◇
フルダイブを開始すれば、いつものいったんのいるログイン場面にやってきた。急いでログインしたいけど、一応変化がないか見ておこう。サラッと重要な内容が出てても困るしなー。今のいったんの胴体は『緊急クエスト【謎の飛行物の落とし物】が進行中! 協議の結果は、如何に!?』となって……って、ちょい待った!? なんか『協議の結果』とか煽り文が出てるんだけど!?
「いったん、クエストに何か進行があった?」
「そこはお答え出来ません〜! ただし、そう遠くないうちに何か動きがあるかもね〜?」
「それ、もう少しで何か進行があるって事か!?」
「それは自分の目でご確認下さい〜!」
なるほど、はっきりいつ進展とは言わないけど、何か進展があるのを仄めかす事はしてくるのか。今回、スルーせずに確認しておいて正解だったかも。
「……ちなみに今のお知らせ、更新っていつ?」
「13時に更新されたところだね〜」
「……13時か」
となると、かなり最新の情報だな。今が13時15分だけど……記載して、すぐには起きないはず。最低でも1時間くらいは空けておかないと、いくらなんでも急な情報過ぎるし……動きがあるとしたら14時か……もしくは、多少の余裕を持たせて17時?
あー、昼飯から戻ってくる人を対象にした告知だろうから、どっちか読めん!? ともかく、早い方を基準に動いた方がいいな。
「それじゃ、コケでログインを頼む!」
「はいはい〜! クエストの攻略、頑張ってね〜!」
「ほいよっと!」
ちょいちょい、いったんからは重要な情報が出てくる油断が出来ん! ともかく、サッサとログインして、最新情報を仕入れよう!
全員の集合は14時だけど、それまでの間に可能な限り情報を集めて、共有しとかないと! 灰の群集のみんなの動きも、どうなってるか気になるしさ!
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