第1578話 情報共有板へ
羅刹とのフレンドコールが終わって、イブキの今後の処遇は決まっ――
「ケイさん! 俺はどうなる!?」
「慌て過ぎだっての!? あー、これから群集に今回の件を報告した後、灰のサファリ同盟の人が『仲間の呼び声』で――」
「ちょ!? 課金アイテムを使わせるのは、流石に悪いんだが!?」
「だから、落ち着けっての! 今回のイベント、期間限定の『仲間の呼び声』が普通に落ちてるから! 金はかかっとらん!」
「……へ? え、そうなのか!?」
「そうなんだよ!」
「そういう事なら、安心か!」
イブキめ、図太いのか、図太くないのか、どっちだよ! 正直、課金アイテムの使用で申し訳なく思うとは思ってなかったわ!
「一応、今回の協力があってこその受け入れだから、その辺は忘れるなよ」
「おう! ……元々は、ケイさんの強引な脅迫じみた行為が原因じゃね?」
「……今から、色々と取り消してこようか?」
「いやいや、それはやめてくれ!? 結果オーライだし、これで問題ねぇよ!」
「なら、文句を言うなよな」
「へいへいっと」
確かに強引な手段を取ったのは事実だけど……結果的に、イブキにとっても大きなメリットにはなってるんだしさ。そもそも、乱入クエストを進めて、簒奪クエストまで進んでたイブキに、襲われて文句を言う資格はない!
根本的に黒く染まるって状態は、群集を筆頭に、他の全てのプレイヤーを敵に回してるんだし! ……まぁ今はそれはいいや。
「レナさん、呼びかけの状態はどんなもん?」
「あ、ちょっとごめん! ベスタさん、少し待ってて! ケイさん、そっちは終わった?」
「終わったけど……え、今のフレンドコールの相手、ベスタ?」
「うん、そうだよ! 中々フレンドコールが繋がらなかったんだけど、情報共有板に人が集まり出したら、向こうからかけてきてね」
「あー、その反応はわざとスルーしてたっぽいな?」
「ベスタさんもそれは認めてたねー。でも、状況的に重要な案件だって判断してくれたみたいでさ?」
「……なるほど」
今回のイベント、ベスタは徹底してソロで動いてたみたいだもんな。でも、レナさんに大々的に情報拡散の準備をしてもらったのを察知して、向こうから連絡をしてきてくれたのはありがたいね。
自他共に認めるリーダーのベスタがいるかどうかは、かなり影響が大きいしさ。……だからこそ、ソロで動いていたってのもありそうだけど。
「それで、ベスタはなんて?」
「黒の異形種絡みかどうかの確認だねー。ベスタさんはベスタさんで、その辺を色々と探ってる最中だったみたいだよ?」
「マジか!?」
ベスタも黒の異形種を探っていたとは……いや、確かに色々と気になる部分なのは間違いないしな。俺らの知らない、他の情報を持ってる可能性もありそう?
「まぁわたしも詳細はまだ聞けてないんだけど……そこそこ人は集まってきてるし、そろそろ情報共有板に移ろっか?」
「その方がいいかもなー。みんなも、それでいい?」
「ケイ、待て。流石に今回は俺も確認したいから、どこか安全な場所に行きたいんだが……」
「同じくなのさー!」
「流石にここだと……色々、危ないかな?」
「高い山だから、頂上の上空でもないと……いつ狙われてもおかしくないもんね」
「あー、そりゃそうか……」
平坦な場所なら、単純に高度を取れば安全性は確保しやすい。だけど、この山岳エリアだと……高度を取っても、標高の高い位置から遠距離攻撃を受ける可能性が常に残るもんな。よし、それなら……。
「午前中の探索はここら辺で切り上げるつもりで、戻りますか!」
「そうしてくれると助かる」
「それで決定なのさー!」
「待て待て待て! ケイさん、待て!」
「……なんだよ、イブキ」
「いやいや、俺は!? 転移、出来ないんだけど!?」
「報告が終われば『仲間の呼び声』で回収してもらえるだし、それでよくね?」
「それ、俺はここで放置って事か!?」
いや、何を言い出してんの、このイブキ。別に俺らにイブキの面倒を見る義務とかないんだけど――
<レナ様のPTとの連結を解除しました>
「って、レナさん!? なんでPTを解散してんの!?」
「うん、もう少ししたら始めるから、その時にねー! ケイさん、そっちのPTに戻して!」
「ほいよっと」
「ちょ!? スルーって酷くね!?」
サラッとレナさんに切り捨てられてるイブキである。まぁレナさんも、俺と同じような考えなんだろうし、ササっと申請を送って再加入にしてしまおうっと。
<レナ様がPTに加入しました>
これでレナさんは俺らのPTに戻ってきて……必然的に、イブキはソロの状態に戻った。
「イブキさん、これまで散々、群集相手に暴れてた事……忘れないようにね? 傭兵として動いてた羅刹さんとは、立ち位置が違うんだしさ」
「うぐっ!? で、でも、今、羅刹と一緒に灰の群集に行こうって奴の中には、俺みたいな奴だって――」
「いるのは知ってるよ? でも、そういう印象を拭う為に、今一緒に動いてるの。ついさっきまで敵対してたイブキさんとは、立ち位置が違うのは分かるよね?」
「……そ、それは……」
「別に仲良くしたくないとか言ってる訳じゃないんだけど、最初の距離感は間違えないようにね? そこを間違えると……馴染めるものも、馴染めなくなるからさ」
「うっ!?」
おー、レナさん、容赦なくぶった斬ったな!? まぁ確かに、これまでの振る舞いが俺のイブキへの対応に影響を与えたりしてるんだから、それは他の人にも言える事か。
「言っておくけど、ケイさんの対応は雑に見えても優しい方だからね?」
「……え、あれで?」
「そりゃそうだよ? わざわざ羅刹さんに話を通してくれたんだし、それ以上の事を望むのは……我儘過ぎるんじゃない?」
「…………確かにそうだよな。……ケイさん、ありがとな」
「あー……」
まさか、イブキからお礼の言葉が出てくるとは思わなかった。レナさんがそういう方向性に誘導してるとはいえ……ちょっと予想外?
「ちょっと驚き過ぎじゃね!? ……あー、レナさんが言いたいのは、こういう反応が色々なとこからあるって事か」
「うん、そういう事! まぁ露骨に敵意を剥き出しにする人はそういないと思うけど、距離を一気に詰め過ぎて、変に避けられないようにね」
「……それ、マジで気をつけるわ」
これまで散々、完全な敵として動いてきたんだから……まぁそういう対応は必要ですよねー。元インクアイリーの曼珠沙華が警戒されるのを抑える為に、俺らが保証役を担ってたりする訳だしさ。
でも、当人の立ち振る舞いが一番重要になってくるんだから、そこをレナさんに注意されるのは当然ですよねー。集団行動になるんだから、ある程度の足並みを揃えるのは大事!
「さてと、それじゃわたし達はどこか初期エリアに戻るとして……イブキさん、そのままでも大丈夫だよね?」
「おう! ちょっと、色々と考えをまとめとくわ! まず、羅刹に謝っとかねぇと……あー、あと礼もか」
これからの報告の時間、イブキにとっては……これまでの事の精算について考える機会になるのかもね。まぁ灰の群集は排他的ではないんだし、よっぽど神経を逆撫でするような事さえしなければ大丈夫なはず。
そういう事態が起きないようにレナさんが忠告したんだし、イブキもそれを認識したんだから……トラブルにはならないだろ!
「おし! それじゃ、森林深部まで戻りますか!」
「「「「おー!」」」」
「森林深部だね! 了解!」
すぐに戻れるのは、やっぱり帰還の実の対象エリアになってくるもんなー。群雄の密林や五里霧林にはそういうのはないから、初期エリアのどこかになるのは仕方ない!
◇ ◇ ◇
<『名も無き未開の山岳』から『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』に移動しました>
戻ってきました、森林深部! ここでもUFOは下りてくるけど……まぁエンの近くで何もしなければ、特に問題も起きないだろ。報告する為に安全な場所へ移ってきただけだしね。
そもそも、今はUFOが出現しない場所なんかないんだから、気にするだけ無駄! それに、今なら注目を集めても問題ないしね。
あ、それでもアルがエンから少し距離は取ったか。まぁ転移の邪魔にならないようにする程度の配慮は必要ですよねー!
「それじゃ、報告を始めていこっか」
「だなー!」
という事で、情報共有板へ移動! ここ数日、まともに機能してない状態だけど……それも、ここで終わり! まぁUFOの件で情報共有はなさそうな気がするけどさ。
オオカミ : さて、そろそろ来るか?
カンガルー : コケの人、今回はどんな話だ?
ネコ : 黒の異形種関係じゃない? 昨日、常闇の洞窟の中でそういう発言があったって聞いたよ?
サボテン : 黒の異形種の溜まり場があるって話は聞くからな。
サル : あれ、見つけたはいいものの……中で殺されるのが大半だって話じゃね? 入るの自体、結構大変っぽいし。
オオカミ : 中で殺されるのは、特定の条件を満たしていないからだがな。
マグロ : 改造で手に入る翻訳機能が必須なんだっけか。今回のイベント、ろくに情報共有が出来てないから、ハッキリとした事が分からんのが痛い……。
草花 : かといって、持ってる情報を開示するかどうかは別問題なんだよな!
カンガルー : 確かにな。その辺はコケの人も同じだろうし、実際そういう動きをしてたはずだが……その上での、この状況は色々と異常か。
オオカミ2 : それほど、重要な内容って事なんだろうよ。
木 : 何か動きがあるにしても、クエストの演出が進んでからだと思ってたんだがなー。一体、何を見つけたのやら?
ちょっと覗いてみれば……うん、まぁこういう反応になるのは当然ですよねー! 俺だって、まともに情報共有が出来なくなってる状態で呼びかけられたら、疑問に思うしさ。
さて、それじゃ説明していきますか! これ以上待たせても悪いしね。
コケ : みんな、待たせた! ちょっと大事な話があるから、集まってくれて助かる!
リス : 呼びかけた通り、重要な報告を始めるよー!
オオカミ : 来たか。
カンガルー : さて、どういう内容だ?
ワニ : コケの人からの内容だしな。かなりヤバめな内容だと予想が出来る。
サボテン : 黒の異形種関係の話か!?
コケ : えーと、話題としては黒の異形種と無所属の乱入クエスト……正確に言えば、それが進んだ簒奪クエストの話だな。
オオカミ : ……ほう? やはり今回も簒奪クエストまで進行するのか。
イノシシ : ちょ!? 簒奪クエストって、競争クエストの時、無所属の乱入勢がやってたヤツだろ!?
木2 : ……なるほど。さっきの無所属の1人を迎え入れるって話題は、ここに繋がってくるのか!
カニ : それ、何の話?
ネズミ : あー、灰のサファリ同盟と協力状態で動いてる無所属の集団がいるんだけど、そこに1人入れてくれって話があってさ? タイミングがタイミングだから、変に思ってたんだけど……。
オオカミ : なるほど、そういう動きがあったのか。コケの人、その1人が情報源だな?
コケ : 情報源というか……正確には協力者? 簒奪クエストは、交渉次第で破棄させる事が可能なのが分かった。
リス : 黒の異形種に、取り引きを持ちかける事が出来てね。わたし達がさっき行ったとこでは、群集のイベント上での動きが決まるまでは、敵対しない事で確定!
カンガルー : なっ!? 俺らも対話はしたが、問答無用で追い返されたぞ!?
ヘビ : へ? え、俺らは普通に話が出来たけど……? 翻訳機能があれば、対話は出来るぜ?
クジラ : 意外とみんな、接触してる!? え、でも、どれが本当なの!?
オオカミ : どれも本当だ。黒の異形種の溜まり場は、新エリアのあちこちに存在しているし、場所によって反応は様々だ。だが……初めから友好的になる場合はあるが、追い出された所をひっくり返すのは初めて知ったな。コケの人、一体何をした?
コケ : 簒奪クエストの内容が分かって、そこからの推測で試してみた事が上手くいったんだよ。
リス : いやー、あれはまさかの盲点だったねー!
サル : ほほう? その具体的な内容を、これから説明していく訳か?
カンガルー : それ、再現性がありそうだな? そうか、他にも同じようにする為に、人を集めた訳か!
草花 : わっはっは! なるほどな! 黒の異形種、懐柔計画って事か!
草花2 : 懐柔って……何か違う気もする? でも、簒奪クエストを妨害する手段ではありそうだね!
オオカミ : コケの人、詳しい内容を聞かせてくれ。俺の方でも調べていた事はあるが、それとの比較をしてみたい。
イノシシ : ちょ!? オオカミの人も、なんか調べてたのか!?
オオカミ2 : あちこちに移動してたみたいだし、そういう事をしてたんだな。
コケ : とりあえず、順番に経緯を説明していくぞー!
ワニ : おう、頼むわ!
クマ : 無所属をちょいちょい見かけると思ってたが……裏で簒奪クエストが進んでいるとはな。そもそも、今の乱入クエスト自体の内容は何だ?
リス : およ? それならまとめに書いてるよー! あ、良い機会だからついでに言っとくね! 新エリアでの命名クエストの発生ルール、大体分かったから、そのまとめも作ってるよー!
オオカミ : そういえば、それもあったな。普段より閲覧数が激減しているが……良い機会だ。目を通しておく方がいいだろう。
ヘビ : え、そんな内容出てた……あ、マジだ!?
ネズミ : 今の乱入クエストって、命名クエストエリアの占拠狙いなのか!? あ、天然のフィールドボスの全ての撃破が条件!?
イノシシ : ちょっと待て!? その条件なら、昨日、群雄の密林の南部の広野で命名クエストが発生したのは……あの厄介な、川の中にいた水の竜を誰かが倒した!?
サボテン : あれ、すぐ見失って、ろくに戦えなかったんだが!?
あ、昨日のあの水の竜、見つかってなかった訳ではなかったんだ? まぁあれを倒すのが厄介だってのは、実際に戦ってみたから分かるかも? アブソーブ・アクアがあったから有利だったけど、そうじゃなければかなり苦戦してたはず。
てか、命名クエストもある意味、簒奪クエストを妨害する為の手段なのかも? 命名クエスト自体が群集支援種の影響が広がった事で発生するって話だったし……その辺も含めて、色々と説明が必要か。さて、それじゃ説明をしていこうっと!
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