第1570話 見つけた場所
用途不明な鉱石や宝石の原石が出てくるようになってきて、色々と気になってきているし……ダメ元で、クオーツに聞いてみたいとこだよな。その為にも川の上を通って、上流へと移動中。
そろそろ俺の『侵食』の察知効果が切れるんだけど……これ、確認しとこ。
「アル、そのメガネはどんなもん?」
「左右で見え方が違うというのは、意外とありだな。UFOの反応は少し拾いにくいが、瘴気の濃さが一目瞭然なのは大きいぞ」
「あー、それはリコリスさんも言ってたっけ。そんなに違うもん?」
「かなり見え方に差があるからな。同時に見て、比較出来るのはかなり違うぞ」
「……そういうもん?」
「確かに、同時に見えると結構違いそうだよねー! 『侵食』での察知が発動してすぐは違和感が出るけど、すぐに慣れちゃうしさ。そのモノクルの利点は、そこかも?」
「ま、そんなとこだ。瘴気の濃さがより浮き彫りになるからな」
「……なるほど」
まぁそう言われてみれば、確かにそうだよなー。瘴気が薄い部分は転移に使われた痕跡にはなるけど、左右で見え方が違えば……そりゃそれだけ、違和感も拾いやすくなるか。
「あ、そういや、そのメガネって木の方に移動出来たりする? クオーツが、どっちにするか確認してたけどさ」
「そもそも、このメガネは……あー、一応は外せるのか」
「おー!? メガネが消えたのさー!」
「インベントリに入れたのかな?」
「ま、そういう事になるな。ただ、キャラに紐付けされているようだから、キャラ間での移動は不可能か」
「なるほど、そういう仕様か……」
移動が可能なら、木にメガネをかけた様子を見てみたかったんだけどなー。その上で、視界にどういう影響が出るのかが知りたかった……。いやまぁ、大した情報じゃないんだろうけど!
「あっ!? 滝があるのです!」
おー、結構大規模な滝っすなー。岩壁がほぼ見えないし、かなりの水量っぽい。水源は中規模の湖だって話だったけど、この様子だとその湖にかなり水がありそうだね。
「そこそこ登ってきてるし、水源の湖が近いかな?」
「うん、もう近くまで来てるねー! 滝の上に行って、少し進めば湖だよ」
「意外と目的地は遠くなかったんだね?」
「山はまだまだ上があるが……まぁ、この様子だと湖を超えた辺りから、木々が減ってきそうだな」
「そんな感じだよなー」
アルが空中を飛んでいるとはいえ、そこまで極端に高度は上げていないから……滝の上の様子は見えない。でも、遠くから見渡していた時の様子から考えると、まぁ木々が減ってくる高度はそろそろってところだろう。
「およ? でも、レーダーはまだ先の方を示してるね?」
「これ、湖の中じゃないかもなー」
「それはそれで、ありなのです! 水没してない方が楽だし!」
「ま、そりゃそうだ」
あくまで、レーダーでこっちの方向に反応があったというだけだもんな。必ずしも湖の中にUFOが沈んでいるとは決まってないんだから、普通に陸地に墜ちている可能性はある!
まぁそもそもの話、UFO自体があるかどうかも不確定なんだけど……。
「次に『Ⅰ型』を見つけた時、改造はどうする?」
「あー、それはちょっと悩ましいかも……」
『Ⅰ型』で可能な改造は、分かっている範囲では3つのみ。そして、もう既に3つとも手に入れたから……これ以上の改造は不要?
「レーダーは、予備を持っててもいいんじゃないかな?」
「また落とした時に、予備があれば安全なのさー!」
「落とすのを前提に考えるのはやめてくれね!? いやまぁ、確かに否定はし切れないけどさ!」
実際に落としたし、他にも紛失した人がいるのも確認はしてるけども……!
「とりあえず、先に進まない? 絶対にUFOが墜落してるとは限らないし……悩むのは、見つけてからでも遅くないよね」
「それもそだなー。アル、滝の上まで行ってくれ」
「おうよ!」
ヨッシさんの言う通り、今はUFOの存在を確認する方が先ですよねー! 滝の目の前まで進んでいた状態から、どんどん高度を上げて――
「っ!? ちょ!? UFOの反応、どこから出てんの!?」
「こりゃ、滝の奥か?」
「はっ!? 滝の奥に洞窟があるパターンですか!?」
「およ? ここの滝の裏って、洞窟あったっけ?」
「ちょっと見えるようにしてみますか!」
コイコクさん達が隠れ家にしてた場所も、滝の裏に洞窟が隠されてたりしたもんな。レナさんは不思議がってるけど、明らかにUFOの反応はこの崖の内部に続いているから……空洞が絶対にあるはず!
<行動値1と魔力値2消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 126/127(上限値使用:6): 魔力値 324/326
<行動値を2消費して『水の操作Lv10』を発動します> 行動値 124/127(上限値使用:6)
前にもやったけど、滝を押し除けるように水を生成! まぁ完全に押し留めると変な事になるから、滝の裏に隠れた岩壁が見えるように、左右に流れを分ける程度の……。
「……あれ? ただの岩壁で、洞窟はない?」
「また誰かが偽装してるって可能性はないの?」
「……特に、違和感はないかな?」
「生成された岩があるとは思えないのさー!」
「んー、見分けられない程、精度の高い偽装……? ケイさん、獲物察知にプレイヤーや敵の反応は? 妨害されてるって可能性はない?」
「そこの滝壺の中や、崖上の森の中に反応はあるから、察知の妨害はされてないとは思うけど……」
擬態の個体でも、見えにくいとはいえ察知は可能になってるんだ。それでも反応はないから……多分、いないはず? いや、違う! よく見れば岩壁の奥に向かって1本、擬態している黒い矢印が出てる!
「奥に擬態した個体の反応あり! これ、敵個体の擬態そのものじゃなくて、岩の操作で生成して塞いでるのかも!」
「およ? そういうパターンもあるんだ?」
「Lv6の獲物察知、とんでもないのさー!?」
「……一瞬、見落としかけたけどなー」
本当に薄っすらと表示される矢印だし、『侵食』の察知効果で全体的に薄っすらと瘴気が見えてるから、そのせいで余計に見落としやすくなってたのかも。
「そういう事なら、この岩の範囲自体が広めなのかもねー。まぁでも、岩の操作ならこれでどうとでもなるよ! 『黒の刻印:剥奪』!」
「っ!? 岩壁が消えたな」
「おー、やっぱり岩の操作だったか」
剥奪で消えたって事は、岩の操作で隠していたのは確定。アルが普通に通れそうなくらい、大きな入り口の洞窟が出てくるとは思わなかったけど……これ、かなり広いんじゃね?
「かなりの範囲が、岩で覆われてたんだ?」
「想定したよりも、範囲がかなり広めだったかな!?」
「境目の位置、そもそも滝に隠れてなかった部分なのです!?」
「これ、今のケイさんの水で押し除けてる滝で隠れた位置になるかも? んー、流石にこの規模は想定外だったねー」
あ、滝の裏側を見ようとして、押し分けた滝が逆に境目を隠してしまってたのか!? なんという、絶妙な罠!
「はっ!? 攻撃が来るので――」
「そこ! ありゃ? 動きが速いね。『看破』!」
<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
レナさんが看破を使えば、岩壁に張り付いていた何かが……あ、これは――
「ケイ! 私は戦線離脱するかな!」
「クモだし、仕方ないな! アル、サヤを樹洞に入れてやってくれ!」
「了解だ! 『樹洞展開』! サヤ、急いで入れ!」
「分かったかな! ケイ、アル、ありがと!」
「「どういたしまして!」」
思いっきりアルと被ったけど、そこはまぁいい! 洞窟の中で、岩に擬態して、岩の操作を使って入り口を隠してたのは、この茶色い1メートルくらいありそうな大グモなんだな。
「クモかー。これ、大きいなー。『識別』! えっと、『激操オオツチグモ』でLv20、属性は土で、特性は大型、擬態、操糸、俊敏、捕縛だね」
「その構成……操作系とクモの糸の使用に特化してるっぽいな!?」
「あと、土魔法も使ってきそうかも?」
「それもありそうか……」
盛大に糸を吐きまくって、洞窟の奥へと行けないようにしてるけど、これは特性『操糸』の影響かもね。特性『捕縛』もクモの糸を使ってくるからこそか。
うーん、この感じは強さよりも、嫌がらせに特化してるような印象だな。でも、意地でもこの奥には行かせないって感じ……アルマジロの集団が思い浮かぶ。
「ケイさん、ケイさん! この奥、もしかして黒の異形種の巣窟ですか!?」
「多分、そうだろうなー。ただ、前に行ったとこの殺意満載のアルマジロと違って、嫌がらせする気満載なのがこのクモっぽいか」
「……あっという間に、洞窟の通路がクモの巣で埋め尽くされたね」
「だよなー」
クモ自体もクモの巣に隠れて、直接攻撃が通りにくい状態になってるし……地味に厄介だな、これ。下手に遠距離から高火力で攻撃し過ぎれば、奥にいる黒の異形種まで攻撃が届く可能性もあるんじゃね?
かといって、近接では……このクモの巣は非常に厄介そう。いっそ、燃やすか? レナさんのリスは火属性を持ってるんだし、加減しながら……いや、クモ自体を仕留めないと、追加されるだけか?
「ケイ、どうする? UFOの反応は途絶えたが……奥に進むか?」
「ここで引き下がるのも癪だしなー。それに、あの骨の竜以外にも黒の異形種と接点を持っておく事自体は、そう悪くはないと思うぞ」
「……まぁそれは俺も同意だな。まともに話が出来るかは分からんが、後々の事を考えて接触はしてみるべきか」
「そういう事!」
対話が出来ないのなら、この奥へ突っ込んでいくのは自殺行為。でも、俺らは翻訳機能の改造品は持っているし、黒の異形種が意思を持っているのも把握している。
場合によっては、味方に引き入れるなんて展開にもなりそうな予感はするし……その為に、布石を打っておくのは悪くないはず!
「問題は……このクモをどう突破するかだなー。レナさん、燃やせられない?」
「んー、一応、火魔法も火の操作も炎の操作も使えるけど……わたし、操作精度はそんなに良くないし、昇華にすら至ってないよ? ケイさんが『進化の軌跡・火の純結晶』を使って操作した方がいいんじゃない? ……持ってたらだけど」
「あー、そういう手もありか」
レナさんの自己申告、正直ちょっと当てにならない部分はあるんだけど……まぁ無理にやれっていうのも微妙か。昇華に至ってない火属性って、本当におまけ程度の属性持ちっぽいしなー。
火属性と蹴りの応用複合スキルは持ってそうではあるけど……近接はこの状態では向いてないのは確かか。それを考えれば、レナさんの案が一番いいのかもね。
「ヨッシさん、『火の純結晶』は1個出てたよな?」
「うん、ハーレが当てたのを貰ったのがあるよ。これ、ケイさんに渡せばいい?」
「いや、使うのはヨッシさんがしてくれ。火属性なら状態異常が乗りやすいし、それは俺よりヨッシさんが適任だしな。ウニの方でやれば、氷属性との相性問題は出ないだろ」
「あ、私が使うんだ? でも、ケイさんはどうするの?」
「奥まで燃やし過ぎないように、水で洞窟に蓋をしとく」
「あっ、逃がさない気なんだね。それなら、私が多少加減を誤っても大丈夫?」
「まぁなー! 昇華相当の威力に、流石に負ける気はしないしさ!」
クモを水で溺死って手段もあるけど……それをすると、後でクモの巣の除去の時に、面倒な事になりそうだしね。クモの巣とクモ本体、両方を一気に始末出来るやり方でいこう!
「アルとレナさんは、クモが洞窟から出てこようとしたら、それを妨害してくれ!」
「おう、任せとけ!」
「とことん、逃がさない気だね! その作戦、了解だよ!」
「ハーレさんは、火の中にいるクモへ、ひたすら攻撃で!」
「了解なのさー!」
サヤはクモが大の苦手なのは分かりきってるから、今回はアルの木の樹洞の中で待機でいい。こんなとこで無茶させる訳にもいかないし、敵の数も一体のみだしね。
しかも、張り巡らせた巣の中に引きこもって、俺らへ攻撃してくる気配もない。この状況なら、戦線離脱してても問題はないな!
「それじゃ進化しちゃうね。『纏属進化・纏火』!」
おー、普通の纏属進化よりもやっぱり演出が派手になってますなー。赤い膜で卵状に覆われるだけじゃなく、そこから思いっきり燃え上がっていってるよ。
まだまだレアアイテムだけど……特定の条件下では、普通に大活躍しそうだよな。俺らのPT、まともに火属性での攻撃が出来る人がいないしさ。
「ふぅ、やっぱりこの進化は派手だね。うん、準備完了!」
「ヨッシの進化、完了なのさー!」
普段はもうほぼおまけ程度にしかなってない、ヨッシさんのウニが真っ赤になっているのは珍しいよな。いやはや、支配進化は、通常の纏属進化ならどっちかだけを進化させられるのが良いところ。
「おっし! それじゃ、クモ退治といきますか!」
「だな。変に時間をかけたら、サヤが罪悪感を覚えそうだし手早く済ますぞ」
「苦手な生物は仕方ないし、気に病む必要はないからねー! 『魔力集中』!」
「クモは、私達に任せてくれていいのです! 『魔力集中』!」
「すぐ終わらせるから、待っててね! いくよ! 『ファイアクリエイト』『炎の操作』!」
「うん! みんな、頑張ってかな!」
サヤは特に気を病んでるような様子はなしか。とはいえ、あんまり時間をかけてはいられないし、手早く済ますまで!
ヨッシさんの炎がクモとその巣に迫っていくのに合わせて、俺の水も動かしていきますか! 滝から洞窟を見えるようにしたままにしておく必要はあるから、追加生成でやるか。
洞窟の……天井側から通していこうっと。天井の添わして、新たに水を生成して、洞窟の奥へと送り込んで……よし、クモの位置は超えたな。ここで洞窟を塞ぐように、一気に水の生成量を増やしていく! さーて、これで奥には逃しはしないぞ!
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