第1569話 用途不明なアイテム
色々と騒動はあったけども、無事にUFOでの改造は進み中。今回ので、グリーズ・リベルテに『侵食』の察知の代用になるレンズが手に入るのは大きいね。
[これで、改造は完了だ。データは削除したから、完全に破壊を頼む]
「あぁ、了解だ」
アルのクジラの片目の前に……クジラサイズに合わせた、大きな片眼鏡が付き、改造は完了。手に入ったのはいいけど……思った以上にデカいな、これ!?
このサイズ可変はゲーム的な仕様なのか、それともクオーツの部品は質量変化も行えるのか……どっちなんだろ? あ、聞こうと思っても、もうクオーツとの接続が切れちゃったか。
「さーて、それじゃUFOをぶっ壊そっか!」
「だなー」
さっき、クオーツが話していた不穏な内容は気になるけど……今はレナさんの言う通り、UFOの完全破壊は優先か。落下物は……結構川に落ちたけど、陸地側にもちゃんと落ちてるから、そっちの回収もしていかないとね。
◇ ◇ ◇
手早くUFOを破壊し終えて、その場に残った機械の砂は俺が回収。この機械の砂の使い道、今日中には判明しますかねー? うーん、進展の内容次第だから、なんとも言えん! まぁそれはいいとして……。
「ふっふっふ! 落下物、回収タイムなのです!」
「今回、何が出るかな?」
「良い物が出ればいいんだけどね」
という事で、とりあえず落下物の回収をやっていこう。何が出るかは……運任せだけどさ。まぁそれは今回のイベントは始まってから、分かりきってた内容か。
「まさか、クオーツの部品が、クオーツの物ではない可能性が出てくるとはな……」
「あー、『クオーツの部品』と呼んでいいのか、怪しくなってきたかも……」
そもそも、正式名称が長過ぎるから『クオーツの部品』って呼んでるだけだしな。正式名称は『惑星浄化機構・長距離通信装置』なんだから……いや、それでも『惑星浄化機構』ってクオーツの旧名は付いてるのか。
「んー、確かにまさかの展開だったけど……どういう風に進んでいくんだろね?」
「はい! 聞いてて思ったけど、黒の異形種と機械人が共謀する可能性はありませんか!?」
「え、ハーレ、それ、どういう事?」
「あ、そっか! UFOに引き寄せられている黒の異形種と、翻訳機能を通じて話してる可能性かな!?」
「そういう事なのさー! 正直、失敗してる気もするけど!」
「黒の異形種の肉体を補填するのが、機械人って可能性も出てくるな」
「あー、確かにその可能性はあるのか……」
今の時点ではまともに話し合いが出来ているとも思えないけど……なるほど、そういう方向性なら、サンプル容器の中にクオーツの部品と同じ物が仕込まれている理由も分かるような気がする。
「ケイ、そりゃどんな理由だ?」
「勝手な推測だけど……あのサンプル容器、黒の異形種を捕獲しようとしてるんじゃね? その後、言ってる事の内容を翻訳して送信する為に、同じ容器の中へ通信装置を仕込んでるとか?」
「およ? あ、そっか! UFOに保存しとくんじゃなくて、その他の場所にすぐ送ってる可能性!」
「……送信先、まだ見ぬ母船かな?」
「多分なー。ただ、黒の暴走種や瘴気強化種と違って、黒の異形種の捕獲には成功していなくて、結果的に破壊を行う状態になってるとか?」
「それ、可能性はありそうだね」
「根拠のない推測だが……筋は通る内容だな」
「まぁなー」
あくまで、今まで出てきた情報の断片を繋ぎ合わせての推測に過ぎないからね。これで正解だという保証はどこにもないけど……。
「そう考えると、黒の異形種は敵にも味方にもなり得る存在になりそうかもねー?」
「その可能性、高そうなんだよなー」
少なくとも、あのUFOには黒の異形種の意思を読み取り、対話を行えるだけの機能が存在しているのは間違いない。ただ、機械人の方に対話する気があるかは……正直、怪しいな?
むしろ、無理矢理に改造して、生物の定義を探る為に利用する可能性の方が高そうな気がする。この今のイベント、敵陣営の中身を左右する内容になってたりしない? あー、可能性はありそうな――
「あっ! クオーツの部品が出た……さっきのやり取りを見た後だと、なんか警戒しちゃうのさー!?」
「あはは、その気持ちは分かるかも? これ、敵が用意した物の可能性があるんじゃね……」
「でも、それはそれで仕方ないんじゃないかな? クエストを進める上で、重要なアイテムではあるし……」
「あぅ!? それは、確かにそうなのです……」
確かに、クオーツの部品だと思っていたが、実は俺らの状況を探れる可能性があるとなれば、警戒もしたくはなるよな。
でも、その理屈で言えば、元がUFOの機械の砂だって同じようなもんだしね。機械の砂に関しては、一度クオーツの一部を勝手に使ったりもしたくらいだしさ。
「まぁ、なるようになるでしょ。あ、やった! 『スキル強化の種』だね!」
「おぉ! レナさん、大当たりなのさー!」
ほほう? レナさんも大当たりを引き当てたか! あー、こう何度も拾う機会があると、誰が何を拾ったか、分からなくなってくるな?
俺自身、何をどれだけ拾ったか……正直、まともに覚え切れてないしさ。まぁインベントリの中を見れば、自分が手に入れたアイテムは分かるけど……。
「私は……あ、『刻浄石』だね」
「私は、『刻瘴石』が出たかな!」
「あー、それらがセットで出たか」
出るのは分かってたけど、対になってるアイテムがほぼ同時に出るとはねー。生成が難しい条件だから、レアアイテムではあるけど……その後に手に入る、極意系の進化の軌跡や侵食の進化の軌跡も出るんだから、いまいちありがたみがないんだよな。
「ケイ、気持ちは分からんでもないが……それは今がボーナス状態だからだと思うぞ。普段通りに戻れば、入手難度も元に戻るだろうよ」
「あー、そりゃそうか」
あくまで、今回のイベントの趣旨は宝探しだからこそ、こうやって気軽に出てきているだけか。むしろ、今の機会に手に入れて、後々で入手したがるようにしてる気もしてきた?
生成用に、アブソーブ系のスキルを取る人も増えてくるのかもね。極意系の進化の軌跡は、純結晶の進化の軌跡の素材にもなるんだし……逆に言えば、それらがないと困る部分も出てくるのかも?
「とりあえず、推測はこの程度にして……ササっと回収して、上流へ向かうぞ」
「それもそだなー」
元々、俺らの目的地は上流に反応がある落下物の場所だしさ。まぁ途中でこうしてUFOが出てきたから、予定が大きく変わったけどなー。
いやはや、欲しかった『侵食』の察知代わりのレンズが、こういう形で手に入るとは思ってなかったよ。……6人で、上流まで行く必要は薄れた気もするけどさ。まぁ追加の改造品は増えても問題はないし、目的を変える理由もないか。
「……ん? これは昨日話題に出てた『金鉱石』か」
「『金』そのものじゃなくて、『金鉱石』なんかい!」
「ほれ、これが実物だ」
「およ? 原石の割に、金がいっぱいだね? リアルならちょびっと混ざってる程度なんだけど……これは、ゲーム的な仕様かもねー」
「おそらく、そうだろうな」
思った以上に、金ピカな金鉱石だった。いやまぁ、光沢は薄めだし、形も歪な石そのものだけど! それでも、一目で金だと分かるくらいの見た目だな。
「それで……結局、使い道は?」
「分からん。アイテムとして使用は出来んしな」
「やっぱり、そこは分からないままかー」
何か用途があるからこそ入手が可能になってるんだろうけど……その肝心の用途が、未だに欠片も不明なんだよな。使い道を探りたいとこだけど、こうもノーヒントだと……あ、そうか。
「よし、次にクオーツに接触したら聞いてみよう!」
「え? それ、ありなのかな!?」
「ダメ元でだけどなー。出来る事は試してみるまで!」
「……まぁ、確かにそれはそうかな?」
今のイベントが始まった時期と同じ頃から、入手が可能になってきたアイテムだしね。大々的に動いているクオーツなら、何かしら関与している可能性はある!
「ま、その為にも上流へ移動するべきだが……ケイ、サッサと拾っちまえ」
「あ、それもそうだった」
拾おうとした寸前、アルが『金鉱石』を拾ったから話が脱線してしまってたよ。拾ってないのは、もう俺だけなんだから、サクッと済ませて移動をしていかないとな。
えーと、拾おうとしてたのは……これだね。さて、今回は何が出るのやら?
<『エメラルドの原石』を1個獲得しました>
……ん? ちょ!? エメラルドって完全に宝石じゃん!? でも、原石ってなってるし、一応実物を見てみるか。
インベントリから取り出してみて……ふむふむ、緑色の石だな。ふむふむ、カット済みのオフライン版と違って、完全に未加工の原石か。『金鉱石』や『黒曜石』と違って、違いが分かりやすいね。
「ケイ……それ、何かな?」
「どうも、エメラルドの原石っぽい。見た目はオフライン版とは随分違うけど……アイテム名も『エメラルドの原石』になってるしさ」
「「「エメラルドの原石!?」」」
「およ? 宝石系アイテム、遂に登場?」
「でも、使い方が不明なのは、昨日の『黒曜石』や、さっきのアルの『金鉱石』と変わらないか……」
使用するって項目がどうやっても出てこないんだから、使おうとしてもどうしようもない。用途は色々と考えてみたけど、結局は推測の域を出ないんだよな。
「宝石だろうが、鉱石だろうが……どっちにしろ、用途は不明か。さっきのケイの案、本当にありかもな」
「だなー。その為にも、やっぱり上流に行くしかないか!」
クオーツが必ずしも答えを持っているとは限らないけども、何か糸口くらいは見つけないとどうしようもないわ! 少なくとも、プレイヤー自身が持ってるだけでは、何の効果も得られそうにないしさ。
まぁとりあえず、インベントリに戻して……脱線状態を戻していきますか! よし、収納完了。レーダーを落とした時みたいな真似は、もう二度としない!
「アル、出発だ!」
「……いや、ケイを待ってたんだがな? まぁいい、ともかく進むぞ!」
いやー、どうしても用途を知らないアイテムが出てくると気になるからさ。まぁでも、これでようやく移動を再開出来るようになった。
余った落下物はこの場に放置でいいとして……レーダーの反応を確認! ふむふむ、なんか拾える反応が増えてて、凄い勢いで動いてるけど……あー、これは川に落ちた落下物が流れていってるのか。
俺らが離れていってるのもあって、動いている状況が目立つ反応ですなー。あれ、どこまで流れて――
「はい! どこかで、原石を加工して宝石状態にしてもらうって可能性はありますか!?」
「それは、ありそうかも? 可能性としては……不動種か、群集支援種?」
「場合によっては、クオーツ自身って可能性もありそうかな?」
あ、その話、まだ続くんだ? まぁその辺が気になるのは、俺に限った話じゃないんだね。
「原石の状態で手に入っているのが共通点だしな。加工後、アイテムとして真価を発揮する可能性は十分あるか」
「だよなー。まさか、宝石まで原石で落ちてくるとは思ってなかったし……」
これ、あちこちで採掘が出来るようになってたりする? ただ、群集の情報共有が機能してないから把握出来ない状態なだけで、あちこちで見つかっているって可能性もありそう――
「わたしとしては、ちょっと気になる部分があるんだけど……ケイさん、試してみてほしい事があるんだけど、いい?」
「俺が出来る範囲ならいいけど……どういう内容?」
「鉱石や宝石って言っても、一応は石じゃない? 土の操作の範囲対象なのかどうかって疑問。わたしが自分で試そうにも、持ってないからさ?」
「あー、そういう……」
確かに、特殊な物とはいえ石は石だ。岩の操作では操作規模が小さ過ぎて無理だろうけど、土の操作なら操作対象に出来る可能性はある。
ただ、操作不可って弾かれる可能性もあるから……実際にやってみないと、本当に分からない部分だな。
「ちょっと試してみるか」
「うん、お願い!」
という事で、レナさんの疑問に答えるべく、再びエメラルドの原石をインベントリから取り出しておく! またUFOが出てきて、急な挙動になってもいいように、しっかりとロブスターのハサミで挟んどこ。
「……これ、割れたりしないよな?」
「およ? あー、エメラルドは硬さはあるけど割れやすいから、ちょっと扱いは慎重になった方がいいかも? まぁ黒曜石ほどではないけどさ」
「割れやすいのかよ!?」
そう言われてしまうと、ロブスターのハサミで挟んでおくのが怖くなってくるんだけど!? ……これ、プレイヤーに自力で加工しろなんて無茶振りは流石にないよね? うん、ないと思いたい!
ともかく、今は土の操作の対象になるかどうか、試してみよう! もし操作が出来るなら、割った黒曜石のナイフを武器として使うのもありかも?
<行動値を3消費して『土の操作Lv7』を発動します> 行動値 120/127(上限値使用:6)
さて、これで操作の対象には……あー、これは試してみて正解だったかも。
「レナさん、このエメラルドの原石は操作を受け付けないぞ。石判定になってないっぽい」
「あらら、やっぱりそうなんだ。黒曜石の方はどう?」
「そっちも試してみますかねー」
という事で、エメラルドの原石をインベントリに戻して、入れ替わりで黒曜石を出してみる。まだ操作対象の指定状態になってるから、これで操作が出来るなら指定出来るはずだけど……。
「あー、操作の対象には出来ないな。これ……ハーレさん、投げられるか?」
「前に貰った、黒曜石のナイフなら投げられるのは確認済みなのさー! 実際には、まだ投げた事はないけど!」
「なるほど……」
あー、そういや桜花さんは凶悪な性能になるとか言ってたっけ。投擲の弾としては、原石のどれでもそのまま使える? エメラルドの原石でも……いや、流石にここで試すのはなしか。
「試すなら、模擬戦でかな?」
「だなー。今は、操作対象にならないのが分かったのでよしとしとくか」
「んー、まぁそれもそだね。ケイさん、試してくれてありがと」
「どういたしましてだなー」
石のはずなのに、土の操作の対象に出来ないのが分かったのは、まぁ大きな進歩だしね。それ相応の理由があるからこそ、そういう状態なのは間違いない。
それが何なのか……昨日は謎のままで終わったけど、今日はそこをなんとか探っていきたいよなー。やっぱり、現状での有力な手段はクオーツに聞く事か。その為にも、どんどん上流まで進んでいこう!
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