第1567話 急だったから
急な転移でやってきたUFOだけど、川に自分から突っ込んでいく寸前だとは思わなかった。まぁアルとレナさんが上手く立ち回って、水没は避けてくれたけどね。
昨日、川底に沈んていたUFOは運良く水没で壊れなかっただけで、水に落ちれば壊れる可能性も普通にあったんだから、ナイス判断だよなー。
まぁそれはいいとして……とりあえず、崖に突っ込んだ状態のUFOを壊し過ぎない程度に壊していこう!
「ねぇ、ケイ? 壊すのはいいけど……加減はどの程度にしておけばいいのかな?」
「『全壊』じゃなくて、『重度破損』まで抑えとかないといけないし……とりあえず、俺が逃げられないように固めとくから、識別で確認しながら破壊していく感じで!」
「やっぱり、そうなるかな?」
遠慮なく破壊していいなら、どうとでも手段はあるんだけどなー。やり過ぎれば『全壊』になって、クオーツに改造してもらう事が不可能になるから慎重にいかないと……。
その為にも、飛行状態に戻っていってるUFOを逃さないように捕獲しとかないとな。転移機能は封じたとはいえ、移動機能までは壊れてないみたいだしさ。
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 132/133 : 魔力値 323/326
<行動値を19消費して『岩の操作Lv4』を発動します> 行動値 113/133
破損具合によってステルス機能がどんどん弱まっていくみたいだけど、今の『中度破損』では……まだ全体像自体は隠れている範囲。
とはいえ、転移してきた時よりは明確に見分けやすくなってるし、固める範囲は分かる! あとは、生成した時の感覚に合わせて、実体を捉えれば済む!
「おし、捕獲完了っと。サヤとレナさんで破壊を頼む!」
「分かったかな! レナさん、どういう風にやる?」
「とりあえず、弱い攻撃から試していこっか。よっ! ほっ!」
「その方が、よさそうかな! 『略:大型化』!」
レナさんは俺の生成した岩を軽々と駆け登り、サヤは大型化した竜を足場にして空中へと上がっていく。俺が空中でUFOを拘束してるから、それに合わせての移動だな。
強引に地面まで引き落としてもいいんだけど……それはそれで、ダメージを与えそうなんだよね。拘束から逃れようとしてもいるしさ。
ただ、HPの表記がないのがややこしい! どの程度でどのくらいのダメージが入るのか分からないし……こうしておくのが無難かもなー。
「アルとヨッシさんとハーレさんは交代で識別をして、破損状態を細かく確認してくれ。これ、どの程度でどのくらい壊れるのか、サッパリ予想が出来ん!」
「ま、確かにそれが無難だな。俺、ヨッシさん、ハーレさんの順でやっていくか」
「了解なのさー! 1撃入れるごとに、確認していくのです!」
「了解! 折角の機体、ダメにしちゃ勿体ないもんね」
俺の岩の操作を振り解く程のパワーはないみたいだけど、慎重に対応しないとなー。散乱してる落下物は今は放置でいいとして……そういや、川にいくつか落ちてたっけ? あれ、思いっきり流されまくって……って、ちょい待った!?
「レーダー、どこ行った?」
「……は? おい、ケイ!? まさか、落としたのか!?」
「あー……うん、そのまさか?」
少なくとも、今、俺の手元にはレーダーはない。考えられるのは、アルが旋回して飛び降りた際に落とした可能性だけど……。
「ちっ! 拘束は俺が代わりにやる! ケイは、レーダーを探しにいけ! サヤ、ハーレさん、ケイを手伝ってくれ!」
「レーダーの紛失は困るのさー!?」
「すぐ探しに行くかな!」
「そうなりますよねー!? アル、そっちは任せた!」
「こっちはいいから、急げ! 下手すりゃ、川に落ちてる可能性もあるぞ!」
「その可能性、あるのか!?」
ここの急流の中に落ちてたら、冗談抜きでマズい!? あっという間に流されて、どこまで探せばいいのか分からなくなる! 折角得たレーダーを、こんなとこで失くしてたまるか!
あー、でも探しに離れると機動装置の妨害が切れる可能性もあるのか。だったら、こうだ!
「レナさん、これを預かっといてくれ!」
「およ? あ、妨害用の装置! うん、預かっとく!」
レナさんに投げ渡して……俺の手から離れても、頼むから機能は維持しといてくれよ!
「サヤは川の東側、ハーレさんは西側を頼む! 俺は川の中へ突っ込んで探す!」
「了解です!」
「分かったかな! ケイまで流されないように、気を付けて!」
「そこは、本気で気を付けないと……」
冗談抜きで俺まで流されるって可能性も否定出来ないんだけど……それは可能な限り、避けるように対策は考えよう。
これだけの急流の中に突っ込むと、何かの拍子にダメージが発生する可能性は高いから……移動操作制御の使用はなし。となれば、水の操作で自分自身を覆うのが無難か。
「アル、拘束の交代を頼む!」
「分かってる! 『並列制御』『根の操作』『根の操作』! ケイ、外していいぞ!」
「ほいよっと!」
俺が拘束している岩そのものに巻き付くように根を操作しているから、俺が岩を消しても、UFOが逃げる余地はないな。
……よし、解除したらすぐにアルの根が締まって、UFOの再拘束は上手くいったね。さて、次だ、次!
<行動値1と魔力値2消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 112/133 : 魔力値 321/326
<行動値を2消費して『水の操作Lv10』を発動します> 行動値 110/133
今回は大量の水を用意するんじゃなくて、自分を保護する程度……いや、視界確保の為に、少し広めにはしとこう。その上で、川の激流の影響を受けにくいように流線型にしておいて……よし、これでいい!
「それじゃ、ちょっと川の中に入ってくる!」
「ケイさん、川の中は自分で見つけられる!?」
「分からんけど、もうそこは賭けだ! 流されてたら、そもそも怪しいし!」
「……まぁ確かにそれはそうだね。川に落ちてない事と、仮に落ちてても流されてない事に期待するしかないかも……」
「そういう事! 急いで確認してくる!」
レーダーの紛失っていう最悪の事態も考えられるから、大急ぎで動くしかない! ともかく、今は急げ!
「おわっ!? 思った以上に流れが強いな!?」
川の中に入れば、激流が背後から押し寄せてくる!? でも、水の操作Lv10なら耐えられる範囲だし、形状も流線型にしているから思ったほどの影響ではないな。
「ケイ、もし流されてたら多分もう無理だから……落ちていても、流されない位置を探した方がいいんじゃないかな?」
「あー、まぁ確かにそうなるな……。なら、流れが緩やかになる位置を重点的に探すか」
サヤの言う通り……本当に流されていたら、もう手遅れな可能性が高い。ただ、どこに落ちたかまでは分かってないから……本当、見つかるかどうかは賭けだな!?
最悪の場合、今、捕獲と破壊をしているUFOの改造はレーダーにするしかなくなるか……? いや、そうならない為にも、探すんだよ! おっ、なんかキラッと反射した物が――
<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
「あー、くっそ! 敵がいる位置でもあるのか!」
流れが緩やかな場所には敵がいるというのは、少し前に確認した内容。目の前には……黒いカーソルの魚が悠々と陣取っている。これ、ヤマメっぽいけど……探すのには思いっきり邪魔ー!
今、出来れば交戦はしたくないんだけど……あー、これでいこう。水球を追加生成して……激流へ向けて、魚を吹っ飛ばす! あ、躱され……って、甘い! 更にもう1つ追加生成して、吹き飛ばす! ……よし、流されていったな。すぐに戻ってくるだろうけど、少しでも時間稼ぎが出来ればいい!
「あー、これは落下物か。他だ、他!」
ちっ! UFOから落ちた落下物が太陽光に反射してただけかよ! 紛らわしい物が今、結構落ちてる状態なのはややこしいな!?
「うー!? こっちも落下物なのさー!?」
「……この落下物が散らばった状態、色々と厄介かな!」
「そっちもか!?」
サヤとハーレさんも、俺と同じように見間違えてる状態っぽいな。くっそ、目の前にUFOが転移してきたのはラッキーだと思ったけど……こんな状況になるのは、ラッキーとは言えんぞ!?
ともかく、水球を駆使して邪魔な魚を吹き飛ばして、この周辺を総当たりで探すしかない! それで見つからなければ……川下へ流されていった可能性が――
<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
ちっ! また敵……って、今度はカニか!? いや、種類はどうでもいい! ともかく、邪魔なのは水球で激流に弾き飛ばして……って、ちょい待った!
「そのカニ、待てや!?」
吹っ飛ばしたのはいいけど、ハサミでなんかレーダーっぽいのを挟んでたんだけど!? マズい、今のがレーダーなら、カニごと下流に流されていっちまう!
くそっ! 焦って、判断ミスをした!? いや、まだだ! この川の流れの速さを利用して、追いつく手段はある! 後部をあえて水流を受けるような形状に変化させて、思いっきり水を受けて加速する!
ぐっ!? これ、加速が凄いし、あちこち岩にぶつかって衝撃が酷い!? いやでも、水の操作はまだ保つし、耐えられる範囲! ……おっし、カニが見えた! ハサミでレーダーっぽいのを挟んだまま、思いっきり流されてるな。
「よし、これなら届く!」
無防備に流されてただけのカニと、意図的に川の流れを加速に利用して、更に自前でも加速させれば……いけるはず! でも、ロブスターのハサミで掴むのはタイミングが厳し過ぎるし……だったら、これだ!
一気にカニを取り込むように水を追加生成して……よし、捉えた! その状態で、上へ移動して川から脱出!
「あ、あったかな! ケイ、レーダーあったよ!」
「……へ?」
サヤ、今なんて言った? え、今、俺が水の操作の中に取り込んだカニが持ってたのは……あれ? これも……ちゃんとレーダーだよな?
「あー!? ケイさんが捕まえてるカニも、なんかレーダーを持ってるのさー!?」
「えっ!? それ、どういう事かな!?」
「……どっちが俺が落としたやつなのか分からんけど、多分、落としたのは俺だけじゃないっぽい?」
この状況を整理して考えるなら、そうなってくるよなー? あ、カニが激流から逃れられたからか、思いっきり俺に迫ってきてる!?
レーダーを離す様子がないのは……あ、ハサミが銀光を放ち出したし、スキルの発動の影響で離せなくなったのかも? てか、思いっきり水の操作の時間が削られてるし、銀光も強まってるから、爪での連撃の応用スキルか!?
「サヤ、ハーレさん! このカニ、サヤの前まで吹っ飛ばすから仕留めてくれ!」
「分かったかな! 『魔力集中』『白の刻印:剛力』!」
「了解なのさー! 『魔力集中』『白の刻印:増加』!」
少しの間でかなり流されてるけど……まぁこの距離くらいなら、水の操作で一気に戻せる範囲! Lv10の操作、舐めるんじゃねぇよ!
俺はカニから攻撃を受けないように、更にもう1つの水球を生成してそっちに移って……カニのいる方は、反発力を強めて、脱出が出来ないようにしてから急激に加速!
「水から解放するから、盛大にやっちまえ!」
「了解なのさー! 『拡散投擲』!」
加速させた勢いで水球から飛び出て……そのカニへ、ハーレさんの拡散した弾が、いくつか当たっていく。狙いを付けるのが難しい勢いだから、拡散投擲を使うのはナイス判断!
おー、後の方の『白の刻印:増加』で強化を得た球の当たりどころが良かったのか、カニのハサミが千切れて、地面の上にレーダーは落ちていったね。
無茶な挙動をしまくったから、流石に操作時間がほぼ残ってないけど……あ、操作時間がここで切れたか。Lv10の操作でも、そりゃ限界は存在しますよねー。カニの応用スキルで削られてたんだから、尚更に。
<行動値上限を6使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 110/133 → 110/127(上限値使用:6)
高さは全然考慮してなかったから、何気に結構高い位置になってるんだよな。落ちるの嫌だから、飛行鎧を展開して――
「これで、仕留めるかな! 『連爪刃・閃舞』!」
おー、ハーレさんの拡散投擲で少し勢いが落ちたとはいえ、結構な勢いで吹っ飛んでいくカニは……サヤに思いっきり迎撃されていた。うん、一撃目で河原へと叩きつけるように振り下ろして当てるの、すげぇな。
その上で……なるほど、足で踏み付けるような形で続けるのか。まぁ爪があればいいんだし、そういうやり方でもいけるよね。
<ケイが成熟体・暴走種を討伐しました>
<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を討伐しました>
<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
いやはや、サヤとハーレさんの攻撃はお見事! この辺の敵、雑魚敵とはいえLv的には俺らより格上なのに……スキル2発で仕留めるとはね。
「ケイ、自分の加速分を忘れてないかな?」
「そうなのさー! あれも大概、おかしな勢いだったのです!」
「あー、そういやそれもあったっけ」
攻撃のつもりではなく、サヤ達の元へと届けるのが目的だったからなー。でもまぁ、あの勢いは確かに十分過ぎるほどの威力にはなってたか。
「まぁ、それはともかく……レーダー、ゲット!」
どこの誰が落とした物か知らないけど、これは貰っておこう。多分、俺が落としたのはサヤが見つけた方だろうしね。
さてさて、アル達のUFOの方はどうなったかな? こっちよりは緊急性はないんだし、良い具合に破壊出来てたらいいんだけど……。
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