第1566話 川の上流へ
全員揃って、探索を始める為に……早々に死亡して、アルの木から復活! さて、『侵食』での察知効果はこれで30分は得られるし……って、いきなり反応あり!?
「山の上の方、降りてきてるぞ!」
「え、いきなりかな!?」
「およ? あ、確かに降りてるのが見えて……あらら、降りたの山の反対側みたいだね」
「反対側は、流石に遠い気がします!」
「今から行っても、厳しいかも? 結構、距離はあるよね?」
「だろうな。ケイ、他のプレイヤーの動きはどうだ?」
「ちょい待ち。それもすぐ確認する」
反応を即座に拾えたのはいいけど、露骨に場所が悪過ぎるんだよな。平坦な場所ならそのまま追いかけていくけど、山を挟んで反対側となると……色々と厄介ではある。
まぁそれをどうするかの判断材料として、他の人の動向も確認しておこうっと。
<行動値を6消費して『獲物察知Lv6』を発動します> 行動値 121/133
えーと、反応は……灰の群集の集団がいくつか拾えるけど、大きな動きを見せているとこはないな。山の反対側に降りたのなら、無理して追わないって判断をしたのかも?
「灰の群集の人自体はいるけど、特に目立った反応はなしだなー」
「なるほどな。全員がさっきのUFOに気付いてないとは思えないし、追わないって判断か」
「多分なー。俺もその判断にしようと思うけど……問題なし?」
「下手に行っても良い事はなさそうだし、賛成かな?」
「わたしも賛成! アルマースさんなら一気に山頂まで行けるだろうけど、無理してまで行く必要はないと思うよ」
「レーダーもあるし、近くに降りてきた以外はスルーでいくのです!」
「降りてくるUFOだけが、全てじゃないもんね」
「だなー」
満場一致で、山の反対側へ降りていったUFOはスルーに決定。地形の影響を大きく受けるけど、まぁその辺は仕方ないな。
逆にこっち側へ降りてきた場合は、反対側にいる人達も諦める可能性は高いから、まぁ決してデメリットだけではないしね。
「おし、とりあえずレーダーの反応も見てみますか!」
という事で、インベントリからレーダーを取り出して、広範囲に設定して、反応を拾ってみる。おっ、反応あり! いくつか反応は拾えたけど……。
「反応、5つくらいあるな」
「およ? そんなに……あ、そっか。動き始める人が増え始めるのは今くらいの時間からだし、夜中に墜落してて、誰もまだ手を付けてない可能性はあるのかも?」
「今がチャンスなのさー!」
「確かにチャンスかもしれないけど……それ、他の人にとってもそうだよね?」
「ケイ、他の人の様子はどうなのかな?」
「あー、灰の群集の人達、どれも別々にだけど……レーダーに出てる反応に向かってるっぽい? 絶対にそうだとも言い切れないけど……」
「それはレーダーを持ってるって考えて動いた方がいいだろうよ。その上で、どこも向かってない反応はあるか?」
「あー、ちょい待ち。照らし合わせてみる」
複数の場所にある落下物の反応と、それぞれの集団の進行方向を照らし合わせなきゃいけないから、即座に答えるのは難しいわ!
でも、動き自体は拾えるんだから、ちゃんと考えながら結びつけていけば分かるはず。このPTは、この落下物に向かってて……あっちはあそこのか。ふむふむ、これはこっちで、あれはあっち……。となれば……。
「多分、川の上流の方にはどこも向かってないと思うけど……一番、ここから遠い反応だな」
「遠い場所より、近い場所を優先した感じか?」
「そうだとは思うけど……レナさん、ここの川の上流ってどんな場所?」
場合によっては、場所そのものを避けているという可能性もある。何かヒントになるような情報を、レナさんが持っていればいいんだけど……。
「中規模の湖だね。そこが川の水源だよ」
「あー、湖か!」
森林深部の川と違って、渓流の系統ではないんだな。どっちかというと、ネス湖を水源にしてる川に近いのか。まぁネス湖は平地の真ん中にある湖で、こっちは山の上の方にある湖って違いはあるけども……。
ただ、このレーダーだと、正確な距離は分からないんだよなー。川の上流の方向で、そこそこ離れた位置なのは分かるけど……。
「はい! また水の中に沈んでる可能性はありますか!?」
「その可能性はあると思うよー! 水の中は、他より面倒なのは間違いなさそうだしさ。UFO、水没したら壊れるんだよね?」
「全部が全部、そうって訳ではないみたいだけどなー」
海仕様であれば、水没で故障という訳ではなさそうだしさ。だから、湖の中でサンプル回収をしているUFOの可能性もあり得る。
ただ、水中は適応したとしても、普段とはどうしても動き方が違ってくるからな。他に候補があるなら、優先順位が下がる理由にはなるか。でも、逆にそれはチャンスでもある!
「他の人達と被ると面倒だし、上流の方へ行くだけ行ってみるか。アル、移動はよろしく!」
「おう、任せとけ! 進むルートは……川の上流なら、川の上を通っていくか。『根の操作』!」
「拓けた場所に出るまでは、その方がいいだろうなー」
昨日はアルに乗ってこのエリアの入って見渡せたけど、今は川から少し外れた木々が少なめの場所にいるだけだからなー。エリア切り替え付近は木々が多めだし、しばらくはそれが続きそうだから、川の上を通っていくのが無難だろ。
今、拾えている他のPTの動きを見る限り、被りそうな気配もないしね。俺らの動きも拾われてるだろうから、この状況なら目的を分かりやすくしておく方がいいはず。
「アルさんに乗ったら、出発なのさー!」
「道中でUFOが墜ちてる可能性もあるから、そこも要注意かな!」
「どこにあるか、分かんないしね。敵のLvも高めなら、油断も出来ないし!」
「ケイ、索敵を怠るなよ?」
「分かってるって! おし、乗り終えたし、川の上流へ出発!」
「「「「おー!」」」」
「早めに、レンズを手に入れたいとこだよねー」
アルが伸ばしてくれている根を足場に、クジラの背の上にみんなは終わったし、本格的に移動開始! レナさんも言ってるけど、『侵食』の察知の代わりになるレンズは、早めに手に入れたいとこだよなー。
その為にも、改造が可能な全壊してないUFOの発見が必須! 動き出す人が増え始めるこの時間帯なら、既に墜ちてるUFOを確保するチャンス!
◇ ◇ ◇
しばらくは森の中にある川という光景が続き、何度か雑魚敵との戦闘を繰り広げ……この辺、川で山が削られて谷みたいになってるんだな?
「おー! 大きな岩が、ゴロゴロと転がってるのさー!」
「遠くからだと、谷みたいになってるのは気付かなかったかな!」
「近くまで来て、なんとか見える景色みたいかも?」
「実際に見ないと、分かんない場所ってあるからねー! 湖が水源だから、上流でも結構水量があるしさ」
雰囲気としては、岩と岩の間を流れる激流みたいな感じだね。下手に川の流れの中に落ちれば、激流であちこち岩にぶつかって、盛大にダメージを受けそうではある。
そこそこの範囲、こういう様子の川が続いてるっぽいね。名前がパッと出てこないんだけど、こういう急流の川をゴムボートとかで下っていくやつってあったよなー。
「……ハーレさん、川の中には突っ込むなよ?」
「突っ込まないよ!?」
即座に否定してきたけど……正直、ちょっと怪しいんだよなー。嬉々として飛び込んで、流されまくって遊ぶというのは十分考えられるし――
「ハーレ、自分からやったら……流石に、迎えには行かないからね?」
「あぅ!? ヨッシまで!?」
「だって、飛び込みたくてウズウズしてるでしょ?」
「……思ってるけど、我慢はしてるのさー!」
やっぱり、やりたいとは思ってたな。絶叫系は大好きなんだし、この川の様子を見ればそんなもんかと思ったけど……。
「まぁリアルでは『ラフティング』なんてのもあるし、急流下りも楽しいとは思うけどねー。でも、流石にそのまま突っ込むのは危ないよ?」
「はい! レナさん、『ラフティング』ってなんですか!?」
「およ? 知ってそうな気はしたんだけど……ほら、何人かでゴムボートに乗って、こういう急流下りをしてる映像や写真は見た事ない? 正確には『ホワイトウォーターラフティング』って呼び方になるんだけどさ」
「おぉ! あれって、『ラフティング』って呼び方なんだ!?」
あー、ハーレさんが突っ込むのにイメージしてたのは、まさしくその光景だな! あれ、『ラフティング』って言うのか。地味に縁がないから、名前を知らなかったよ。
「……クラゲで全身を包んで、ゴムボート代わりにしたら……うー、バランスを保つのが難しそう!? はっ!? ケイさんの水なら、ゴムボート代わりに――」
「おーい、思いっきり実行する方向に思考が行ってるぞ?」
「あぅ!? でも、集合場所に戻る時にはありな気がします!」
それなら一応、やれなくもないか? 万が一に死んだとしても、転移の実を使えば済む話だし……下手に我慢させるよりは、その方がいいかも? いや、でもこれは断言しない方がいいな。
「状況次第だから、やっていいとは断言出来んぞ? まぁ大急ぎで移動する必要があれば、その時ならいいかもなー」
「はっ!? UFOを追いかける必要がある時なら、活用出来そうなのです!」
「あくまで、そういう状況になれば……だけどなー」
「機会がある事に期待なのさー!」
俺らがもっと上流に行って、その時に都合よく下流にUFOは出ればの話……。ないとは言えない可能性だけど、そういう時がもしあれば、まぁ天然の急流は高速な移動手段には出来るはず。
とはいえ、流石にアルの木やクジラではやりにく過ぎるから、俺の水でゴムボート代わりをするしかないだろうし……一時的に、別行動って事になりそうだけどさ。でも、もっと人数がいるならともかく、現状で別行動はシンプルに危ないか。
「ケイ、この川の中……敵はいるのかな?」
「流石に激流部分にはいないけど、少しでも流れが緩やかになってる部分になら普通にいるな。昨日と違って、Lv帯が高い場所だし……下手に水中に行けば、襲われると思うぞ」
「あ、やっぱりいるのかな!」
「具体的に、何がいるかは分からんけど――」
「あっ! 水色のツチノコ!?」
「「えっ!?」」
「およ!? あ、川の奥に潜っちゃったね」
くっ! ヨッシさんが見つけたあと、盛大に水飛沫が上がったけど、姿は見そびれた!? あー、激流の中に入って……自ら流されていってない?
「水属性のツチノコは、『ミズノコ』だったな。前にどこかで見た覚えはあるが……川にいるのは、元々水に棲んでいる個体ばかりじゃないのは、今更か」
「ですよねー! あー、でもミズノコの姿、見れなかった……」
「あぅ……完全に油断してたのさー!?」
「ちょっと川の方に、意識が行き過ぎてたかな……」
サヤとハーレさんが、揃って見落とすというのも珍しいもんですなー。まぁ思いっきり、川の流れに意識が取られてたせいもあるんだろうけど……って、ちょい待った!?
「瘴気の渦が、川の真上に出来てきてる! 何か、転移してくるぞ!」
「およ!? ここで、瘴気での転移!?」
「ケイ! 『Ⅰ型』なら、確実に転移を封じろよ!」
「分かってる! 全員、戦闘態勢!」
「分かったかな!」
「了解!」
「了解です!」
大急ぎでインベントリから、機動機能の妨害装置を取り出して……よし、いつでも使える状態! 転移しての移動があるのは『Ⅰ型』の方だけど、乱入クエストを進めている無所属の人の可能性もあるから要警戒!
「っ! ケイ!」
「分かってる!」
転移してきたのは、少しダメージを受けている『Ⅰ型』のUFO。ステルスがかなり生きてるけど、一部に破損が出てて、完全には隠れ切れてないな。
良いタイミングで出てきてくれたし、これでも食らっとけ!
<『採集機・機動機能停止装置』を使用しました>
クオーツの部品から大して見た目が変わってないこれから、なんかパッと衝撃が広がって……どうなった? これで、転移機能は封じられたのか?
だー! 多少のダメージを受けてて、ステルス機能が薄れているけど、それでもまだ機能が生きてはいるから、見た目の変化が分かりにくいわ!
「およ!? アルマースさん、これ、危ないかも! 一気に吹っ飛ばして!」
「了解だ! 大雑把な位置しか分からんが……これでいく! 『旋回』!」
「みんな、飛び降りて!」
ちょ!? 俺らも乗ったままなのに、思いっきりクジラで旋回するのかよ!? しかも縦方向にって……いや、ここはレナさんに何か狙いがあるみたいだし、そのまま従った方が良さそうだ! サヤやハーレさんも飛び降りてるしさ!
「おっとっと!」
ふぅ、危ない、危ない。急な飛び降りだったから、着地を少し失敗し掛けた。でもまぁ、なんとか体勢を大きく崩すまでにはならなかったね。
サヤとレナさんは、綺麗に着地してますなー。ハーレさんは、クラゲの傘を広げてパラシュート状態で落下中。ヨッシさんはそのまま飛んでるから問題ないか。
UFOは……あー、アルが盛大に吹っ飛ばして、谷の側面崖部分に叩きつけられてる状態だな。……まだステルスが少し機能してるし、過剰攻撃にはなってなさそう?
「レナさん、今のってどういう状況になってた?」
「UFOが勢いのあるまま、川の中へ突っ込みそうな状態だったんだよね」
「……へ? え、マジで?」
「本当だよ。アルマースさんが吹っ飛ばさなきゃ、今頃、激流に呑まれてたかも?」
「……マジっすか。あー、だからあの旋回か!」
「水面が少し乱れたのが見えてたが……ちゃんと当たってくれてよかったぞ。ステルスがまだ結構生きてたから、結構適当な狙いだったからな」
「あー、それであれなら、ナイス!」
下から上へ掬い上げるような旋回だった理由は、UFOが着水しそうだったからこそか。いやー、危ないとこだったんだな!
「んー、見た目には特に変わりはないけど……『識別』! あ、ちゃんと『転移機能:停止中』ってなってるね! まだ『中度破損』だから、破壊は足りてないみたい!」
「レナさん、確認サンキュー! みんな、壊し過ぎない程度に破壊していくぞ!」
「「「「おー!」」」」
サラッとUFOの現状確認をしに行ってるレナさん、行動が早いわ! でもまぁ、ちゃんと転移で逃げられない状態にはなってるみたいだし、ここでしっかりと『重度破損』になる程度に壊して、新しい改造を確保しちまおう!
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