第1559話 ボス戦を終えて
うーん、命名クエストの選択肢をどれにするか悩む……。読みやすさを考慮して1番目の『ラグバッグ広野』にするか、ネタに振り切って『タシュー・タヨーウ』にするか……いや、ここまで悩むなら、いっそ無難かつエリアの特徴を明確に示している『種々雑多な』もありかも? ……よし、それでいくか。
「ケイ、決まったかな?」
「今、決めたとこだな! もう迷い過ぎるから、単純明確な『種々雑多な地』にしてみた!」
「そういう選び方なのかな!? でも、確かにそれもありかも? 私もそれにしようかな?」
「へ? え、別に俺に合わさなくても――」
「ケイ、他人の選択に口出しするのは野暮だぞ?」
「……まぁ、それもそだなー」
サヤ自体、どの選択肢にするかを悩んでたみたいだし……俺の選び方に納得してるんだから、同じように選ぶのを駄目というのも良くないな。
「そういうアルは、何にしたんだ?」
「俺は『ラグバッグ広野』にしたが……大して選んだ理由はないぞ? ピンと来たから、そのまま選んだだけだからな」
「なるほどなー」
まぁ命名クエストの選択肢を選ぶのに、大層な理由は必要もないか。自分が良さそうだと思ったものがあれば、それを素直に選べばいいんだしさ。
「はい! ヨッシはどうしましたか!?」
「私は『ミセレイニアス』にしてみたよ。ほら、今までそのエリアで、カタカナだけって珍しいじゃない?」
「おー! 確かに、言われてみればそんな気がします!?」
「あー、言われてみれば、そうなるのか……?」
行った事のないエリアも結構あるけど……確かにカタカナオンリーのエリアはパッと思い付かないな。大抵、後ろに『高原』だったり、『平原』だったり……。……ん? あれ、ちょっと待てよ?
「確か、ネス湖から流れてる川のあるエリアが『リヴィエール』って名前じゃなかったっけ?」
「……あ、そういえば、そうだったっけ? あはは、でもまぁ珍しいのは珍しいよね!」
「まぁ確かになー」
今、思い出そうとするまで忘れてたくらいだし……他にあったかどうか、正直分からん! うーん、覚えやすさ云々を考えると、カタカナオンリーよりも、ネタ選択肢の覚えやすさは段違いか?
「まとめの編集、完了! さーて、みんな、投票は済ませたみたいだし……そろそろ移動しちゃう?」
「レナさん、それは待ってかな!」
「およ? サヤさん、なんか不都合あった?」
「ケイがまだ、追加分の落下物の確保をしてないかな」
「あっ、そういやそうだった!?」
「あらら、それはやらなきゃ駄目だねー! というか、ケイさん、忘れちゃってた?」
「……まぁそうなります」
フィールドボスを捕獲していた件に意識が向き過ぎてて、すっかり抜け落ちてたよ。いやはや、サヤが言ってくれて助かった!
えーと、敵が出てきた分はカウントされず、更にもう1個の入手が可能なんだから……2個は手に入れられるんだよな。
「おし、なんか良いやつが出てこい!」
「ケイ、2個手に入れられるのまで忘れるなよ?」
「そこは分かってるっての!」
アルに釘を刺されたけど、その部分はちゃんと覚えてるから! えーと、どれにしよう? あー、長々と悩んでも仕方ないし……よし、1個目はこれだ!
<『仲間の呼び声(期間限定)』を1個獲得しました>
ほほう? これが来たか。他に手に入れている人もいたけど、俺はまだ手に入れてなかったし、これはいいかもね。
「1個目は何が出たかな?」
「仲間の呼び声だな。アルだけが死んだ時には、使えるかも?」
「そんな状況、あるのかな?」
「さぁ?」
「なんとも言い難いとこだが……仮にそうなった場合は、ケイに任せるぞ」
「おう、任せとけ!」
使わずに済むならそれが一番だけど……万が一って事もあるからね。ジェイさんに足止めさせられそうになった時もあったし……でも、あれは俺も一緒にだったから、意味ないか。
てか、よく考えたら、またここの落下物から『仲間の呼び声』が出てきたのか!? ……異様に出現率が高いな?
「これ、2個目も仲間の呼び声だったりしない……?」
「……ケイ、もしそうなったらヨッシさんに渡しておけ。その方が、分散出来ていいだろ」
「確かに、それもありか」
今のヨッシさんは支配進化になっているんだから、死んだ際に共生進化が解除になる心配はないからね。俺以外にもアルを呼び出せる人がいる方が、何かあった際に役立つはず!
「そういう風に言ってる時に限って、出なかったりするんだよね?」
「あー、それはあるな……。まぁとにかく、2個目の確保をしていくか!」
よく物欲センサーとか言われるけど、欲しがれば欲しがるほど、そのアイテムが出てこない事ってあるもんな。そして、期待してない時に限ってポロッと出たりもするのが世の常! さて、何が出るのやら……?
<『黒曜石』を1個獲得しました>
ん? あー、そういや黒曜石が入手可能になってるって話は、昨日してたっけ。ハーレさんに石器として加工済みの黒曜石のナイフを渡してから、その後はすっかり忘れてた。
「ケイさん、何が出ましたか!?」
「黒曜石が出たんだけど……桜花さん、これってどういう使い道がある?」
「おぉ!? 黒曜石!」
「ん? あー、最近出るようになった天然石が出たか。昨日話したが、黒曜石のナイフは作れるぞ。後は投擲の弾として、結構凶悪な性能をしてるみたいだな」
「なるほど……。他には何か、用途はあったりしない?」
「あるかもしれんが、現状では不明だな。ただ、金や銀なんかも少数ながら入手が確認されているから……何かしらの用途があるかもしれん」
「んー、黒曜石だと『オブシディアン』って宝石だと認識も出来るけど……そういうラインナップだと宝石系じゃなくて、鉱石系の扱いなんだ?」
あー、今手に入った『黒曜石』は原石で思いっきり普通の石っぽい感じだけど、加工すれば宝石扱いにもなるか。でも、他に見つかってるのは……金や銀なら、鉱石になる……?
いや、この2種類だけだとどうなんだ? 金と銀なら装飾品としての材料って共通点がある気がするけど……謎過ぎる!
「その辺、情報がまだ出揃ってなくてな。レナさん、昨日灰のサファリ同盟と動いてたなら、何かその辺の情報を知らないか?」
「ごめん、その辺はさっぱり! 群集で大々的に情報交換が出来ない状態は痛いねー」
「まぁ現状じゃ仕方ないか。ケイさん、とりあえずそれは持っておいてくれ。何か、重要な役目があるかもしれんしな」
「ほいよっと!」
クオーツ……元『惑星浄化機構』の名前が、石言葉から来ているんだから、何か意味がある可能性は十分ある。とはいえ、現時点ではそれが何かはサッパリ分からないけど……。
「あ、十六夜さん、その手の情報はあったりしない?」
「……いや、今までこれといった報告はないな。だが、ただ単に気にしていなかっただけの可能性もあるし、確認してみよう」
「あー、そういう状態か。それなら、確認は頼んだ!」
「……あぁ、了解だ」
『縁の下の力持ち』に何か情報があればいいけど……まぁ、今まで俺らの中でも出たのが初めてのアイテムだから、そこまでは期待しないでおこう。
「……もしかして、オンライン版でも『装飾進化』がある?」
「その可能性は出てきたよねー! あれ、使い勝手は悪かったけど!」
「どちらかと言えば、適応進化の保存機能の方が可能性はあるんじゃねぇか? いや、でもそれは進化の軌跡があるからややこしいな。ただ単に見た目を変えるだけが、シンプルでいいか?」
曼珠沙華の3人が言っている可能性はあるけど……黒曜石、アイテムとして使用が出来ないんだよなー。見た目を変えるだけのオフライン版での『装飾進化』があるとしても、ただ単純にアイテムとして使えば済むというものでもなさそうだ。
「……機械の砂と……一緒に使う……可能性は?」
「……その可能性はあるかもしれんな。エンの分体を模した時、色調までは調整出来ていなかったのは印象に残っているぞ」
「あー、混ぜて使って染料代わりか!」
なるほど、その線は確かにありそうな気もする。でも、肝心の機械の砂の用途がまだはっきりとは分からないのが問題だな……。
「これ以上、考えてても結論は出ないだろうし……とりあえず、探索を再開しますか!」
「それもそだね! ケイさん、余った落下物はどうするの? 他の人に渡さないように、沈めとく?」
「あー、どうするか……」
俺らが引き上げた落下物をそのまま放置して譲るというのも……いや、だからといって沈め直すのもなー。ちょっとずつ川の流れも落ち着いてきてるし、沈めたところで俺らが得する要素もないか。
「よし! 特にメリットもないから、このまま置いていこう」
「はいはーい! それはいいんだけど、今、丁度南の方にUFOが降りてきてるよー! 多分、山岳エリアの方!」
「マジで!? レナさん、今から急げば間に合う?」
「およ? んー、わたしに聞かれても参戦が遅れたから判断が難しいんだけど……多分、厳しいんじゃない? Lvが高い人ほど、ああいうLv帯が高いとこに行ってるから……激戦区だと思うよ。ここの場合、特に灰の群集の人が多いだろうしさ」
「あー、やっぱりそういう判断になるか。てか、どういう人達がいるか、分かったりしない?」
「昨日の範囲でなら……『オオカミ組』の本隊や『モンスターズ・サバイバル』、『三日月』や『森林守り隊』、それに風雷コンビが行ってたのは聞いたね。今日も同じように動いてるとは限らないけど……」
「あー、どこも実力者揃いっすなー」
挙げられたいくつかの共同体名の中に、風雷コンビが混ざってるのは異質だけど……森林エリアと森林深部エリアの実力者を有する共同体が動いているんだな。『森林守り隊』は森林エリアでの『モンスターズ・サバイバル』みたいな立ち位置の共同体だったはず。『三日月』はツキノワさん達か。
まぁあくまで昨日の話だから、今日もいるとは限らないけど……進出している人達が強いのは間違いなさそうだ。
「そういえば、そのメンバーは群雄の密林で睨み合いになった時、全員見た気がするのさー!」
「あー、そういやそうだっけ!」
『森林守り隊』の人とはほぼ面識がないから分からなかったけど……それ以外は、確かにあの時に顔を合わせたメンバーだな。いる可能性、十分ある気がする。
「あっ! よく考えたら、フレンドリストを見れば今いるエリアは分かるね!」
「あ、そういやその機能があった!?」
「んー……あー、今挙げた人達は、本当に山岳エリアにいるね。およ? ベスタさん、今回は居場所は非表示にしてるんだ。徹底して、ソロで動いてるっぽいねー」
ふむふむ、自分のフレンドリストを見た感じでもそんな様子ではある。現在地の表示の有無は、人によってバラバラですなー。あ、何気に紅焔さん達『飛翔連隊』も非表示にしてるんだね。
俺らは隠さず、そのまま……というか、その辺まで意識してなかったわ! 現在地の座標までは表示にしてなかったと思うけど……あー、うん。分かるのはいるエリアまでだな。まぁそれくらいなら、分かっても別にいいか。
他の群集だと……シュウさん達は『ニーヴェア雪山・氷結洞』に集まってるけど、ジェイさん達は非表示になってますなー。本当、人によって設定がバラバラなもんだね。
「これなら、急ぐだけ無意味だな。多分、どう足掻いても間に合わないだろうし……リコリスさん、一応反応を追うだけ追っといてくれ」
「はいはーい! まぁまだ山岳エリアまで辿り着くには、時間もかかりそうだしねー!」
「だなー。まだ半分くらいまでしか進んでないんだから、先は長いしさ」
時間的には……今日中の23時までに山岳エリアへ辿り着ければ、目的達成ってとこかもね。ここまでの探索で思ったよりも時間がかかってるし、命名クエストの完了時間も含めればそんなもん……そろそろ、今日の終わりの話をしておくのもありか? ……それもありだな。
「みんな、今日は何時までする予定?」
「俺はケイ達に合わせるが……ケイはどうする気だ?」
「今のペースだと23時までに山岳エリアに到着くらいな感じだし、そこで切り上げようかなーと」
「なるほどな。なら、俺もそこまでにするか」
「自動的に『グリーズ・リベルテ』の解散時間が決まった気がするのさー!?」
「あはは、確かにね。でも、それくらいで丁度いいんじゃない? 無理して深夜までやっても、成果があるとは限らないしさ」
「3連休、まだ初日かな! イベント進行が意図的に抑えられてるなら、無理して進めるだけ無駄かもしれないよ?」
「それもそうだったのさー!?」
夜からの探索、なんだかんだで川の中に結構な時間いたけども……クエストが進む気配はまるでない。まぁ進む時は唐突だから、前兆なんてないんだけど……それを言い出せば、いつまで経ってもログアウト出来ないしね。どこかではっきりと区切りは付けておくべき!
「……欲張って、ログイン制限に引っ掛かってもマズいか。俺も今日はその辺で切り上げておこう」
「……それには……同意。……桜花は……大丈夫?」
「あー、俺はちょっと今日のログイン時間は危ういな。明日、午前中に調整するか。ケイさん、午前中はいなくても大丈夫か?」
「その辺は、各自の都合で問題ないぞー」
今日の午前中とか、俺らはハーレさんの都合に合わせてログインしてなかったんだしね。まぁログイン制限回避を狙ってもいたから、決して無駄という訳でもないしさ。
「……私達も、今日は23時で終わりにして、明日の午前中は自重するよ?」
「まぁそこは仕方ないね! ちょっと今日は動き過ぎてたくらいだし!」
「それもそうだな。この様子だと、明日も昼から集合という形になるか?」
「そうなりそうだけど……紅焔さん達は、それでも問題ないか?」
飛翔連隊はちょっと慌ただしい様子っぽいんだけど……これ、こっちの会話は聞こえてるのか?
「あー、悪い! 今、余裕ねぇから後で頼む!」
「あ、邪魔したか!? それは了解! また後にするわ!」
「そうしてくれると助かるぜ!」
飛翔連隊は、今、ネス湖の地下空間の『湖底森』に行ってるはずだけど……どういう状態なんだろね? まぁ話す余裕がないのは、仕方ないな。
「明日の予定については、紅焔さん達の状況が落ち着いてからにするとして……とりあえず、俺らは移動を再開するか」
「はいはーい! ケイさん、レーダーを見せて! 川の中に沈んでそうな反応、ある?」
「ちょい待って。すぐ、確認してみるわ」
あのエリアボスの水の竜と戦闘になった時点で、レーダーはインベントリに片付けてたしね。まずはインベントリから取り出して、反応を拾う範囲を広げて、落下物の反応を確認するとこから再開だな!
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