第1556話 川の中の竜
まさか、フィールドボスの水の竜が川の水との同化なんて事が出来るとは……。獲物察知の反応にも引っ掛からなくなるし、これはかなり厄介かも……。
「サヤ、ハーレさん、レナさん、リコリスさん! 目視で確認は出来ないか!?」
「水に入ってすぐなら分かったけど、今は奥に潜られて分からないかな!」
「雨で濁った水とは、同化してなかったのさー!」
「綺麗な水に変化してたみたいだから、上がってくればわたし達じゃなくても目視は可能だと思うよ!」
「ふふーん! この濁った川の様子は、私達にとって有利かもね!」
「あ、そういう感じなのか」
完全に川と一体化するんじゃなくて、自分の姿を水に変えて、紛れているだけっぽいね。そして、濁った水の中では姿は丸分かりか。……その辺、急な登場だったから、しっかりと監査出来てなかったよ。
俺の水の操作が強制キャンセルされた事も考えれば、すぐに川底へと潜って姿を隠している状態なんだな。出来れば、川の中から引っ張り出したいとこだけど――
「ケイさん! 水魔法で攻撃が来るのさー! 標的、みんな!」
「みたいだな。だったら、これで!」
川の中に姿を隠したまま、川の上に水を生成ってか! どこまでの水魔法を使うか分からない……って、これ、生成魔法からの水流の操作か!? いや、それでも問題ない!
<行動値上限を10使用して『アブソーブ・アクア』を発動します> 行動値 115/119 → 109/109(上限値使用:22)
水魔法に対して絶大な防御性能を発揮する、これを発動! そんでもって、飛行鎧で飛んで、俺らを押し流そうと迫ってくる水流へ突撃して……よし、吸収完了! 生成魔法だから、大した量の魔力値は吸収出来なかったけど、まぁ防御としては十分だろ。
「おー! それ、私がまだ持ってないやつだ!? 次、絶対にそれが欲しい!」
「あ、リコリスさんは水の操作の方だけがLv10なのか」
「そうなんだよねー! その系統を持ってるの、ラジアータだけだし!」
「……そういや、そうだったなー」
うん、競争クエストの最終戦の時の事を思い出すね。リコリスさんが大量の水を生成して、そこにエレクトロクラスターを放ちまくるラジアータさんだっけか。
その戦法、今使うのもありだな? 姿が見える位置まで移動してくるのを待つより、思いっきり攻撃を叩き込む方がいい……と言いたいけど、結構川の中に他の敵もいるんだよな。俺らより格下だから、探索中には邪魔にならなかったけどさ。確認して……いや、これは自分でやった方が早いか。
<行動値を6消費して『獲物察知Lv6』を発動します> 行動値 103/109(上限値使用:22)
あー、俺の水の操作が解除させられてるから、川の中の魚が普通に戻ってきてるな。こりゃ、思いっきり巻き込む事になりそうだけど……まぁいいか!
「サヤとヨッシさんの2人で、川の中にサンダーボルトを発動! ラジアータさんは、エレクトロクラスターを連発で叩き込んでくれ! 川の中の雑魚敵も含めて、あの水の竜に盛大に電気を叩き込む!」
「分かったかな! ヨッシ、やるよ! 『略:エレクトロクリエイト』!」
「了解! 『エレクトロクリエイト』!」
「水の中には、それが有効だろうな! 『エレクトロクラスター』!」
雷鳴を轟かせながら、サヤの竜とヨッシさんのハチで昇華魔法『サンダーボルト』が発動した。使用する魔力値で考えるとヨッシさんとラジアータさんの組み合わせの方が威力は出るけど、今の組み合わせの方がラジアータさんが色々と出来るからね。
<ケイが成熟体・瘴気強化種を討伐しました>
<成熟体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント4獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・瘴気強化種を討伐しました>
<成熟体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント4獲得しました>
<ケイが成熟体・暴走種を討伐しました>
<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を討伐しました>
<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイが成熟体・瘴気強化種を討伐しました>
<成熟体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント4獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・瘴気強化種を討伐しました>
<成熟体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント4獲得しました>
黒の暴走種、瘴気強化種、残滓を合わせて……結構な数を撃破したね。でも、今は人数もいるし、Lv差があるから、1体ずつの経験値は少なめですなー。
「おー!? 凄い事になってるのさー!?」
「流石にあの竜も、この攻撃は避けられないだろうねー。とはいえ……どこにいるか、ハッキリ突き止めないと!」
「浮かんでくる様子は、なさそうかな?」
「これだけの雷、耐えちゃうの!? ラジアータ、もっとどんどん撃ち込んじゃって!」
「麻痺して水面に浮いてきてくれりゃ、楽なんだがな。『エレクトロクラスター』『エレクトロクラスター』!」
サンダーボルトでの落雷が続く中、ラジアータさんの電気も次々と放たれていく。
<ケイが成熟体・暴走種を討伐しました>
<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を討伐しました>
<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイが成熟体・瘴気強化種を討伐しました>
<成熟体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント4獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・瘴気強化種を討伐しました>
<成熟体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント4獲得しました>
これで、雑魚敵の反応は全て消えたな。肝心のフィールドボスの水の竜の姿は……まだ捉えられないか。ちっ、ラジアータさんが言ってたように、麻痺してくれれば楽だったんだけど……流石にそう甘くはないみたいだな。
となれば、もう完全に実力行使といかせてもらおうか!
「リコリスさん、合図を出したら水で上流から追い込んでくれ! 俺は下流で、逃げ場を塞ぐ!」
「はいはーい! 川の中から逃がさないようにするんだね!」
「そういう事! それで竜の位置を明確にするぞ!」
負担が大きくなる下流側は俺がやって……操作は剥奪の可能性も入れて二重にしとくのがいいかもな。水魔法での反撃は……アブソーブでの吸収に任せればいいだろ。
「風音さん、竜の姿が見えたらブラックホールで吸い寄せ! アルは根、彼岸花さんは氷塊、十六夜さんは岩で拘束! どれかが決まれば、それでいいから!」
「……任せて!」
「……うん!」
「剥奪されても、誰かしらの拘束が効果を発揮するように分散か」
「……姿が見えない厄介さを考えると、妥当な判断だな」
水の中で姿が見えなかろうが、存在しているのならどうにかなる――
「……っ!? 『アイスウォール』!」
「おー、今のはアクアインパクト! 彼岸花、防御ありがとね!」
「……リコリス、油断し過ぎ。自分の危機察知に出てたよね?」
「あはは、そこはほら、攻撃の瞬間に動きがないかなーってね? 防御は予想通り、彼岸花がしてくれたしさ!」
「……そう。……変化はあった?」
「少しだけど、流れに乱れはあったねー。レナさん、あれって攻撃のタイミングで顔を出してきてない?」
「リコリスさんのその見立てで合ってるね。一瞬だけど、綺麗な水になった場所があったから、それがあの竜だと思うよ」
「やっぱり! あの竜は私達を目視しないと、ちゃんと攻撃出来ないっぽいね!」
「え、そんなのが出てたのかな!?」
「あぅ!? 川の水面、一気に全部を見渡せてる訳じゃないから、見落としたのさー!?」
「あー、そういう状況か。リコリスさん、レナさん、ナイス!」
流石は観察力の鋭いリコリスさんとレナさんだな。川の範囲が広いから、サヤとハーレさんは見れてない位置だった様子だけど……攻撃の際に、居場所が分かるのは大きいな。あ、これは確認出来たのかな?
「リコリスさん、レナさん、HPの減り具合は見れた?」
「ごめん! そこまでしっかり見てるほどの余裕はなかった!」
「わたしも同じくだね。でも、どういうタイミングで顔を出してくるかが読めてきたし、次に顔を出してきた時は把握出来ると思うよ!」
「あー、急過ぎて厳しかったか。それなら了解っと」
流石に仕方ない部分だな。今のは、攻撃を仕掛ける際に目視してくるってのが分かっただけでも良しとしよう。そういうパターンだと分かれば、確認する用意もしやすいだろうしね。
「リコリスさん、さっきの作戦の合図は俺が出すつもりだったけど……リコリスさんが竜の姿を確認したタイミングでやってくれ。その方が範囲を確実に絞れるしな」
「あ、確かにその方がいいかも! ただ、顔を出してから攻撃までの間に、どの程度移動してるかは分かんないからね!」
「それは……まぁ実際にやってみるまで、仕方ないな」
上流か下流、どっちかに大急ぎで移動してから攻撃を仕掛けてきている可能性はあるからなー。ある程度、広めに捕獲範囲を設定するしかないか。
うーん、上流から下流へはまだしも、下流から上流への移動はそのままじゃ負担が大き過ぎる? 途中に多少の隙間を作って……そこから逃げられるなんてのは、あり得るのか? ……いかん、その可能性は否定し切れない。もう少し判断材料が欲しいし、聞いとくか。
「ラジアータさん、水化の特徴って詳しく知ってる?」
「いや、俺も存在を知ってる程度で、そう詳しくはない」
「……マジっすか。あー、完全に液体状になって、狭いところをすり抜けるなんて事は……?」
「俺の知ってる限りではだが……そこまでの性能は無いはずだ。精々、打撃や斬撃の大幅な軽減程度のはず……」
「それでも十分、ヤバいんだけど!?」
それでも、見た目は完全に水になってても、全身が水になってる訳ではなさそうだな。……ラジアータさんが知らない、他の要素がなければ――
「っ!? みんなが狙われて――」
「『根の操作』! おらよ!」
「ちょ!? アル!?」
根で引っ張って、俺を盾にするな!? また水流の操作での攻撃っぽかったけどさ! 吸収して、すぐに消えたし!
てか、今のってすぐに合わせて飛行鎧を動かしてなかったら、強制解除になるとこなんだけど……? まぁ、そうならないように大急ぎで合わせたけどさ!
「悪いな、ケイ。水流の操作は、どうにも防ぎにくそうでな」
「いやいや、確かにそれはそうかもしれないけど! 俺は俺で、やる事があるんだが!? 『剥奪』で防げ、『剥奪』で!」
「まだ色々と確認中で、作戦に移す段階でもなかっただろ? 『剥奪』は、今の時点では温存だ、温存。拘束しようとした際に、身を守る為に使われる可能性もあるだろ? それを破るのに必要だしな」
「……まぁ確かに、それはそうだけどさ」
水中に特化してる個体なんだから、自分の生存圏を確保する為に水の操作を使う可能性は否定出来ない。それを奪い去る為に、『剥奪』を残しておいた方がいいのは……確かにアルの言う通り。
「およ? 水流の操作での攻撃の時は、顔を出してる様子はなかったかも? サヤさん、ハーレ、リコリスさん、動いてる様子は確認出来た?」
「ううん! こっちはさっぱり!」
「私もそんな様子は見えなかったかな?」
「同じくなのさー! でも、みんなに危機察知の反応が出てたから、広範囲で適当にぶっ放してるような気がします!」
「……確かに、あの広範囲なら大雑把な狙いでも可能だろうな」
「なるほど、そういう行動パターンか」
ハーレさんや十六夜さんの見解は、多分合ってるだろうね。まさか、顔を出してこない攻撃パターンがあるとは思わなかったけど……観察力に優れた4人がかりでも見つけられないのなら、見落とした可能性よりも、見つけられない要素があると考えた方がいい。
アルの無茶な防御も決して無駄ではなかったし、気を取り直していくか。姿が見えないだけで、攻撃頻度が激しいではないから観察が出来て助かるな。いや、決して良い状態とも言えないけど……まぁいいや。
「次に竜の姿が確認出来たら、識別を頼む! 捕獲してからって思ったけど、可能な時にした方がよさそうだ」
「はいはーい! 捕獲開始は、その後から?」
「……ちょっと悩むとこだけど、識別が済んでからでいく! 攻撃手段は……内容を把握してから考える。サヤ、ヨッシさん、ラジアータさん、今のうちにアイテムを使って魔力値を最大まで回復しといてくれ!」
「了解! はい、サヤ。ラジアータさんも」
「あ、ナスの挟み揚げかな!」
「おっ、助かる。へぇ、これで魔力値200も回復するのか」
戦闘の真っ最中には、調理済みの回復アイテムは使いにくいけど……なんか、ヨッシさんが料理を出してるよ!? しかも魔力値200回復って、結構性能いいし! 確か、ハンバーグで100だった気がするけど、ナスの挟み揚げとか作っていたとはね。
まぁハンバーグはあったし、ナスの素揚げも出来てたんだから、揚げる技術さえあれば作れるものではあるか。
「……じゅるり」
「ハーレ、今は川にいる竜に集中ね。後で、ちょっと焦がして性能が落ちちゃった分、あげるから。見た目は悪くなってるけど、味自体はほぼ変わらないしさ」
「おぉ! やったのさー!」
ハーレさんの反応、予想通りだな!? てか、いつの間にヨッシさんはナスの挟み揚げを作ったんだろ? あ、俺らがログアウトしてる間に、風音さんくらいに協力してもらって、桜花さんの近くで作ったって可能性は――
「ケイ、その辺の話はまた後でだ。今は目の前に集中しろ」
「……ほいよっと」
思いっきりアルに注意されたけど、まぁそこに反論の余地はない。サヤ達が食べているナスの挟み揚げがいつ、どこで作られたのかは、今の状況では重要な情報ではないからね。……サイズ的に大き過ぎず、割と戦闘中に食べやすそうなのはメリットだな。
さて、この竜はほぼ間違いなく水属性の魔法型だとは思うけど……竜は種族的に魔法に耐性があるしなー。下手すると雷属性でも、魔法はあまり効かないって可能性もある。
せめて、今のHPの減り具合くらいは確認したいところだよなー。その為にも、顔を出して目視で攻撃してくるのを待つしかないか。
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