第1555話 見つからないモノ
今はまだ予想でしかないけども、これから機械の砂を使って何かが作れるのなら……興味深いよね。何かの用途があるからこそ、アイテムとして入手出来るんだろうし……って、まぁそれは今はいいや。
とりあえず、川の中に戻って、リコリスさんと水の操作を交代して、上流に向けて移動を再開。
それから、それなりに進んできて……うん、手に入れたレーダーを見る限り、そろそろか。
「もうちょいで、いくつかの落下物があるはずだな」
「レーダー、結構役立ちそうな感じかな?」
「まぁ折角、手に入れたんだからなー。役立ってもらわないと困る!」
という事で、少し上流にあった数個の落下物の反応の近くまでやってきた。ここにもUFOが沈んでてくれればありがたいんだけど……実際、どうなんだろう?
「そろそろ見える頃だと思うけど……」
レーダーの反応と俺らの位置は、かなり近付いた。これなら、もう目視が出来るはずだけど……。
「んー? それっぽいの、全然見当たらないよ? サヤさん、どう?」
「……さっぱりかな? ケイ、レーダーを見せてもらっていい? どの方向にあるか、確認したいんだけど……」
「ほいよっと」
サヤにも見やすいように、川底にレーダーを置いてみる。何気にレーダーの範囲の変えられたから、今は近くの反応を拾うようにしてるけど……これ、川の中にあるので間違ってないよな?
倍率表示、間違ってるとかなってない? ……初めは倍率変更が出来るのに気付かなくて、ここの落下物がもっと近くにあるものだと勘違いしたけどさ。なんか妙だと思って確認したら、倍率変更に気付いて……思ったよりも離れた上流にあったんだよな。
流石に今は……うん、そういう間違いはしてないね。だから、この近くにあるはずなんだけど……。
「反応的には……この辺かな? でも、見当たらないし……あ、もしかして!」
と言いながら、サヤが川底の石を除け始め……あ、光をそっちに向けたら反射した!? なるほど、埋まってたのか!
「やっぱり、あったかな!」
「この増水で川底の石自体が流れてきてて、その中に埋もれてた?」
「多分、そうだと思うかな? あ、でもこれは私は取れないね」
「あー、それは下に流されてたやつと同じ機体から落ちた分か」
となると……ここから少し下流の場所で見つけたUFOの部分に引っ掛かったのと、ここで埋もれたのと、どちらでもなく更に下流まで流された物に分かれそうだな。
うーん、UFOの場所で見つけた物は混ざっててどれがどこの物かは謎だし……一旦、全部集めて、みんなで確認した方がいいか。
「おし、とりあえずレーダーに反応がある分だけ触れずに回収して、川から上がってみんなで確認するか」
「うん、分かったかな!」
「なるほどねー! ラジアータ、レーダーを頼りに石を退けていくよ! 『土の操作』!」
「分かっている。彼岸花、確保した分を入れておく氷の器を用意してくれ。俺らが触れて、確保になってもややこしいからな。『土の操作』!」
「……それもそうだね。『アイスクリエイト』『氷塊の操作』!」
「私はもうどっちにも触れてるから、そこは問題ないかな!」
俺は水の操作を維持中だから、ここはサヤと曼珠沙華に任せて変に動かない方がいいかもね。……サヤがまた別の場所から流れてきてる落下物を拾う可能性もあるけど、まぁその確率は低いだろ。
「ケイ、そこに墜落したUFOはあったか?」
「残念ながら、なさそうだな。UFOが埋まってるって可能性は流石に低いだろうし……多分、ここのは攻撃を受けた時に落としたやつだと思う」
「あー、そんなもんか」
「何機も、ホイホイと川の中には沈んでてくれないのかもなー」
「そりゃまぁ、そうだろうな。人の多いエリアに残ってたのは、まぐれみたいなもんだろ」
「ですよねー!」
アルの言う通り、この広野に出向いている人は多いんだから、悪天候で川の中の探索が困難な状況でなければ残ってなかっただろうしさ。そもそも、悪天候で沈んだ可能性自体がある訳で……。
「そういや、アル? 地上の方の様子はどう?」
俺らが水中探索を進めている間、レナさんが『侵食』の変質進化での効果の更新とかしてたけど……具体的な動きは聞いてないんだよなー。チラホラと何かしらの動きがあったっぽいけど、特にこっちに話題を振ってきてはいなかったからスルーしてたしさ。
「上はろくに探索にならんな。何機かこの広野に降りてきてはいたが……まぁ集まっていく人数は多い様子だ」
「だろうなー」
「だから、レナさんの判断で、無理には取りに行かないって決定になってるぞ。今は、手付かずで放置されてる川底のUFOに賭ける方がいいとさ」
「ですよねー!」
うん、その判断は俺も同意。リコリスさんは反応を見るだけで無意味って様子で、たまに上を見上げる事はあるけど……UFOが降りてきている状況は伝えてこないもんなー。
手付かずで残っているUFOを1つ見つけたんだし、下手に大勢が競い合う中へ突っ込みにいく必要はないですよねー。そもそも、この広野での探索は、山岳エリアに行くまでのおまけだし!
「そういえば……ここのエリア、まだ命名クエストは発生してないんだな?」
「んー、そうなるんだよねー。あ、そういやケイさん、天然産のフィールドボスじゃないと発生しない可能性の報告を上げてくれてたっけ」
「まぁなー。あれ、レナさん的にはどう思う?」
「可能性としては、かなり有力だと思うよ。あっちの河口エリア……今は『ウワバミの口』だっけ。あそこはLv帯が高めだから、進出メンバー的に倒しやすいからねー」
あー、そういや成熟体のフィールドボスの最低Lvは16なんだっけ。そう考えると、ここの広野には天然のフィールドボスは過剰にLvが高い個体になる?
「あそこに比べて、ここの広野のLv帯は低いけど……一応、天然のフィールドボスの出現は確認されているよ。誕生もさせられるから……それでも、まだ命名クエストが発生しないのには、何か見落としがある可能性が高いね。その見落としていた条件が誰もまだ見つけてない天然産のフィールドボスだとすると、色々と納得かなー?」
「なるほど、そういう判断になるのか」
なんだかんだで、このイベント中でも昨日のあの報告は意外とメリットはあったっぽい――
「ただ、これだけ大勢が出向いて、あちこち動き回っているのに……まだ見つかってないってのが不思議だね」
「あー、言われてみれば確かに……。でも、イベントに集中しちゃってて、フィールドボスはスルーって可能性もあったりしない?」
「んー、Lv差を考えると、それも絶対に無いとは言えないんだけどね……。それでも、こっちに出向いている人で実力者がいない訳でもないんだよ?」
「……タイミング次第だけど、見つけたのに倒さないっても不思議は不思議か」
フィールドボスを見つけたのとほぼ同時に、UFOがすぐ近くに出たとかならスルーする可能性はある。でも、そうじゃなければ……灰の群集なら、わざわざスルーしないよな。
フィールドボスに負けたって可能性もあり得るけど……その場合、育つって要素もあるからなー。少なからず、報告が上がっても良さそうなもんだけど……レナさんの反応的に、それもなさそうだ。
「……ここのフィールドボスは……見つかりにくい……場所に……いる?」
「……その可能性はあるかもしれんな。それこそ、ケイ達がいる川底なんかは怪しいんじゃないか?」
「へ? でも、普段は今ほど荒れていないんじゃ?」
「ケイさん、荒れてはなくても、川の中を移動する人は少ないよ? 魚系の種族でも空中を泳いでいる人の方が多いし……十六夜さんの読み、案外当たってるかも? ここで見つかった自然発生のフィールドボス、巨大イノシシだしさ。ここの川は広いから、川の中に別個体が潜んでいても不思議じゃないかも?」
「マジか!? ラジアータさん、獲物察知にフィールドボスの反応が出てたりは……?」
「今のところ、反応はないぞ。というか、それで拾えるなら、既に見つかってるだろ」
「……ですよねー」
あれで一目瞭然なんだから、人の多いエリアで見つからない訳はないか。普段ならまだしも、今は獲物察知は大活用中だろうしさ。
「となると……擬態持ちの可能性あり?」
「その可能性が高いだろうねー。まぁその場合、川の中に限らなくなるけど……それでも川底が怪しいのは間違いないかも?」
1つのエリアに複数体のフィールドボスが存在するのは今更な事だけど……陸のフィールドボスとして巨大イノシシなら、川に陣取る何かがいる可能性は高いよな。それが擬態持ちなれば、探すのは難しいか。
「はいはーい! それなら、私やサヤさんは、そっちの警戒もしといた方がいい?」
「命名クエストは発生させた方がいいだろうし、可能ならその方がいいかもね。ただ、絶対にいるとも断言出来ないから、もし見つけたらでいいよ」
「はーい! サヤさん、フィールドボスの捜索も追加ねー!」
「うん、全力でやるかな!」
「あらら? 随分とやる気だねー。まぁいっか!」
乱入クエストの件もあるし、命名クエストは可能な限り早く発生させて終わらせた方がいい。俺らの探索範囲に、その疑惑の個体がいる可能性があるなら……新エリアでの命名クエストの発生法則を確定させる為にも、やるべきだろうね。
「あ、ケイ! 落下物の回収は終わったから、上まで移動かな!」
「ほいよっと!」
水の操作の消耗加減は……まぁ戻ってくる時に交代してもらえば大丈夫な範囲だな。さーて、彼岸花さんが先に川の上まで持っていってくれてるし、俺も上まで行こうっと。
レーダーは置き忘れないように回収、回収! 失くすと困るからね、これ。
◇ ◇ ◇
川から出て、サヤ達と曼珠沙華で集めてくれた落下物を広げ中。数は……まぁレーダーで見えてたけど、10個程度。
下流に流された分も含めて考えれば、人数分を確保した上で余る可能性もあるけども……足りない可能性も考えて、さっき2個目を手に入れなかった人を優先に触れていってもらっている。
まぁ手に入れられなかったの、俺と彼岸花さんとラジアータさんと風音さんの4人だけどなー。これ、余る可能性が高くなってきたけど、余ったらどうしよう?
「ここで使い捨ての『仲間の呼び声』か。リコリス以外は揃ったな」
「あー!? ラジアータ、ズルいんだー!?」
「……リコリス、運だから仕方ないよ?」
「そりゃそうだけど! あ、それってトレードは?」
「……一応は、可能みたい?」
「おー! 可能なんだ! それじゃ、余りが出たら私にも頂戴! それで、誰でも呼び寄せられるでしょ!」
「ま、俺ら曼珠沙華の中ではそうなるな」
ふむふむ、まさかのトレード可の仕様とはね? どうも出現率自体が上がってる印象もあるし――
「……あ、私も出た」
「彼岸花も!? それ、頂戴!」
「……うん、どうぞ」
「やったー!」
そして、すぐにそのトレードの機会が来たようだ。随分と早いな!?
「……あれ? ……こっちも……『仲間の呼び声』?」
「ちょい待った!? 風音さんまで!?」
「……嘘は……言わないよ?」
「あー、別にそこを疑ってる訳じゃないんだけど……なんか、偏り過ぎてない?」
「んー、そんな気はするけど、ここのが全部『仲間の呼び声』って事はないはずだよね。それなら、流れてきてたのを確保したわたしの分とかも『仲間の呼び声』なはずだし!」
「まぁ確かにそりゃそうだ」
ここで俺が引いた分まで『仲間の呼び声』だったとしても、大きく偏りが出ただけに過ぎないか。いや、そもそも俺が引く分までそうなるとも限らない訳で……。
「とりあえず、俺の分を確保で終わりだよな。他のは、またみんなが1巡して確認してもらうとして――」
「他のは後でいいから、ケイも手早く引いちまえ」
「へいへいっと」
アルに促されるままに、地面に放り出されている落下物の元へと移動する。いくらなんでも、これら全てが『仲間の呼び声』とは思えないし……どれにしようかなー?
「よし、これに決めた!」
という事で、触れていけば……ん? 容器が割れて――
<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
あー、敵が閉じ込められてたパターンだった……って、ちょい待った!? 黒い王冠マーク付きの水色の竜って、フィールドボスじゃん!? あ、川の中へ潜っていった。
「およ!? フィールドボスが、捕まってたの!?」
「どうも、そうみたいだなー。でもまぁ、川の中に逃げ込まれても、今は捕まえられる!」
その辺の川底は、俺の水の操作が展開されて……って、強制キャンセルされた!?
「ちっ! この水色の竜、黒の刻印の『剥奪』を使ってくるっぽい! 今、水の操作が消された!」
「え、そうなのかな!?」
「およ? それは随分と、厄介そうなフィールドボスだね! ケイさん、戦闘指揮をお願い! ここで、この水の竜は仕留めるよ!」
「ほいよっと! これで、命名クエストが発生すればラッキーだしな!」
まさか、フィールドボスがUFOに捕まっているとは思いもよらなかったけど……あのUFOの捕獲方法、行動の無効化手段でも持ってるのか? UFOって、フィールドボスどころか、普通の成熟体よりも弱いと思うんだけど……って、今はそれはいい!
とりあえずレーダーを失くさないように、インベントリに入れておいて……よし、これでいい。さて、戦闘開始だ!
「十六夜さん、ラジアータさん! 今の竜の居場所は分かるか?」
「……いや、川の中に入った途端、反応が消えたぞ」
「おそらく、それは応用スキルの『水化』だな。水中だけに生存権を設定している場合に取得可能な、水と同化するスキルだ。これまで見つかっていなかったのは、そのスキルがあったからだろう。あれを使われると、察知スキルでも察知出来んからな」
「うげっ!? そんなスキル、あるのかよ!」
同名のスキルがオフライン版にあったけど……完全に川と同化して、反応を拾えなくなるって、凶悪な性能に変わってんじゃん!? ラジアータさん、随分と特殊な条件のスキルを知ってるな。
あー、でも今までここのフィールドボスとして見つからなかった理由は分かった。擬態ではなく、水と同化してこの川に特化しまくった、かつてのネス湖にいたネッシーみたいな個体だからか! これ、倒すのに一苦労しそうだけど……どうやったもんだろね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます