第1554話 可能性の話
クオーツから、今はまだ機械の砂は使わない方がいいという思わせぶりな内容が出てきたので、その通りに使用は控えておいた。クオーツの部品自体、まだ数はあるし、絶対に機械の砂じゃないと駄目な訳じゃないしなー。
<『惑星浄化機構・長距離通信装置』を改造して、『紛失サンプル探知装置』を獲得しました>
おし、改造完了っと! これでレーダーが使えるようになったから、探索が捗るな!
[改造はこれで完了だ。この採集機を構成する『情報組成式物質構成素子』の不活性化の条件がまだ不明だが……これまで通り破壊しておいてくれ。今、破壊時に砂状に変わる現象の精査をしている最中でな]
「あ、そういうのも調べてたのか。まぁ破壊は任せとけ!」
[あぁ、任せたぞ]
不活性の状態にする手順、まだ正確に分かってなかったのか。まぁクオーツがUFOに残されたデータを削除しただけでは不活性化してないみたいだし、俺らが破壊する事に意味があるのかも?
「みんな、改造は終わったから、このUFOを破壊してくれ!」
「はいはーい! ラジアータ、よろしくね!」
「まぁここは俺は適任か。ケイさん、岩で包んで押し潰すから、出てきといてくれ!」
「ほいよっと!」
まぁ俺ごと押し潰してくれても、別にダメージはないんだけど……ここは気分的な問題だな。ササっと入ってきた場所へ行って、UFOから脱出!
「ケイ、お疲れ様かな」
「まぁそれほど大した事もしてないけどなー。ラジアータさん、頼んだ!」
「おう! おらよ!」
追加生成された岩でどんどんと押し潰され、あっという間に機械の砂へと変わっていった。こういう俺らの攻撃に、機械の砂の状態へ変化させる何かがあるんだろうね。
プレイヤーの攻撃って、そもそもが精神生命体の力が発現したものだから、それが影響している? クオーツがデータを削除した際に、俺らの攻撃への抵抗力が完全に消滅してるのかもなー。
「……ケイさん、この砂は持っておいて?」
「あー、まぁその方がいいか」
色々と俺に偏り過ぎてきている気もするけど、意図的に俺に改造物を集めているんだからな。ある意味、当然の処置か。
<『情報組成式物質構成素子』を1個獲得しました>
という事で、新たに機械の砂を入手完了! これで、今の俺の手持ちは2個か。まだどういう用途が待っているかは分からないけど……その辺はクエストの進展待ちだな。
「さてと、それじゃ次は落下物の確保をしていくか!」
「うん、そうするかな! あ、ケイ! レーダー、どんな感じかな?」
「あー、折角だし、すぐ使ってみるか」
改造が終わった後、UFOから脱出する時にインベントリに片付けたけど……改めて取り出してみる。えーと、取り出したままの状態だと、特に反応は出てないけど……これ、どうすりゃ反応する?
あ、上から軽く押したらいいのか。えーと、目の前に転がってる落下物の反応があるのは分かり切ってるけど……。
「ちょっと上流の方にも、何個かあるっぽいな? そんなに数はなさそうだけど……あ、下流にも……これ、完全に流されてるな。思いっきり移動してるし……」
「あ、本当かな! その反応、私が拾った分のかな?」
「その可能性はあるなー。ここのを回収したら、上流の反応も見に行ってみるか」
「およ? 早速、レーダーが役立ちそうな感じ?」
「まぁなー。とはいえ、人数分はなさそうだけど……」
「あはは、流石にそれは仕方ないんじゃない?」
「いつも、人数分があるとは限らないのです!」
「そりゃそうだ」
ヨッシさんとハーレさんの言う通り、都合よく個数が足りている状態ばかりな訳じゃない。まぁ今ここにあるのは、逆に余りそうなくらいだけど……。
「とりあえず、ここにある分を一度、陸地まで引き上げるか」
「……上のみんなの分も、確保しないとね。『アイスクリエイト』『氷塊の操作』!」
「おっ、彼岸花さん、サンキュー! おし、一旦、水上に出るか」
「うん! そうするかな!」
「はいはーい! ケイさん、今の水はどうしたらいい?」
「そのまま維持しといてくれ! すぐ、川の中に戻るしな」
「了解! それじゃ、維持しとくね!」
少しリコリスさんには負担をかけるけど、1から展開し直すよりは、この方が周りへの影響度は低いはず。大量過ぎる水は、生成直後が1番扱い辛いしね。
さーて、彼岸花さんが氷を使って引き上げてくれてるし、俺らも陸地に移動だな。何か良いアイテムでも出ればいいけど……どうだろね?
◇ ◇ ◇
落下物を川底から回収してきて、陸地へと戻って……みんなが落下物を手に入れていっている。今のところ、特に当たりと言えるアイテムは出ていないけど……。
俺は残念ながら、+17まで強化された『瘴気珠』を1個手に入れただけだった。いやまぁ、フィールドボス戦に使えるから、決してハズレではないんだけどさ!
全員が確保し終わるまで少し時間はかかるから、少し待機だね。その時間で改めて、さっきまで潜っていた川を見てみれば……増水して、荒れてますなー。うん、我ながらよくこの状態で探せたな?
「ケイ? どうしたのかな?」
「いや、思った以上に、荒れた川だったんだなーって思ってさ」
「確かに、それはそうだよね。ケイとリコリスさんの水があってこそ、出来た事かな!」
「うんうん、まさしくその通り! 私だけだったら維持が大変だし、ケイさんって交代役がいるからこそ、遠慮なく出来るとこはあるよね!」
「あー、確かにそれはあるな。同じ事が出来るリコリスさんがいるから、多少の無茶はしやすい……って、サヤ? どした?」
「……ううん、なんでもないかな?」
「そうか……?」
なんだか寂しそう……いや、拗ねたような様子に見えたんだけど……あー、今のはあれか。ハーレさんとヨッシさんの間でしか通じない話で、話題に入れない時の様子に似てたな。
サヤが振ってきた話題ではあるけど、リコリスさんが頼りになるってのは……あんまり面白くもなかったのかも? 何気にそういう寂しがり屋なとこ、あるもんなー。サヤ自身が苦手な操作系スキルの話ってのも、その一因なのかもね。
となれば、この話題を続ける必要もないか。別に無理に広げたい話題でもないし、話題変更だ、話題変更!
「そういや、サヤは何が出た?」
「あ、私はそもそも今回は弾かれたかな」
「あー、先に触れてた2個のうち、1個が今回のか?」
「うん、そうみたい。これ、上から流されてきたのも混ざったりしてないかな?」
「……なるほど、その可能性もあるのか」
「ほほー! それは考えてなかったね!」
確かにレーダーを見る限り、ここから上流に何個かあるのは間違いないし、下流にも流されていってる様子はあった。何より、サヤが2個、別々に入手してたんだから、可能性は低くはないはず。
「およ? それなら、片っ端から触れてたみるのもありかもねー。ほい、ほい、ほいっと!」
おっと、実際にレナさんが次々と地面に置いてある落下物を触っていってるけど……これはどうなる?
「あ、手に入ったって事は、本当に混ざってるね。でも『侵食』の進化の軌跡かー。んー、まぁ使っちゃったから補充だと考えれば、ハズレでもないけど……さっきの草属性の進化の輝石よりはいっか!」
「おぉ! 本当に混ざってるんだ!? みんな、もう一巡で確認していくのです!」
「あはは、その方がいいかもね?」
「だなー。おし、サヤ! 俺らも2個目、手に入らないか触ってくるか!」
「……え? でも、私は無理じゃないかな? 混ざってるのって、多分私がもう手に入れた分と同じとこの――」
「いやいや、分からんぞ? もしかすると、全く別のやつが更に紛れてるかもしれないしな! 試してみるまで、駄目って確定じゃないぞ!」
「……それもそうかな? うん、それじゃ試してみるね!」
可能性は低くても、決して0ではない! この荒れた川の状況なら、上を通過したUFOがポロっと落としたのが混ざっていたとしても、不思議じゃないからね。見た目では判断出来ないんだから、実際に触れてみるしか――
「っ!? 『仲間の呼び声』が出たかな!?」
「おー! 本当に、別のが混ざってたのさー!?」
「よかったね、サヤ!」
「うん! 試してみないと、分からないものかな!」
結構、ダメ元で言ったんだけど……本当に混ざってたとはね。川での探索は、こういう風に混ざる事もあるんだな。
んー、これはリスクと捉えるべきか、運が良いと捉えるべきか、ちょっと判断が難しいね。すべてを全員がチェックしていくのには時間がかかるし、時間をかけるだけのリターンが得られるかは……完全に運次第だよな。
「ふふーん! 面白いね、これ! どれだけ混ざってるか分からないし、片っ端から触っていくしかないね!」
「……そう沢山は、混ざってなさそうな気もするよ?」
「彼岸花、言うだけ無駄だ。可能性が0でない限り、リコリスは試していくぞ」
「もちろん、その通り! こういう意外な時に、ひょっこりとレアなのが出るんだよ!」
とりあえず、リコリスさんがどんどん触れていってるし、今回は俺も触れていきますか。もしこれで混ざってる個数が多ければ、いいんだけどなー。
◇ ◇ ◇
みんなが混ざっている2個目の入手の確認をした結果……レナさんとサヤが確保した以外にも、5個ほど混ざっていたのが判明した。合計7個、回収したUFOが別物の落下物があった訳だ。
ちなみに拾ったのは、リコリスさん、アル、ハーレさん、ヨッシさん、十六夜さん……そこにレナさんとサヤを加えて、合計7人である。
「……うー! なんで、ここで出るのが『蜜柑』なの!? 質、それほど良い物でもないし!」
「文句を言うな、リコリス。出なかった俺よりはマシだろう?」
「そりゃ、そうだけどさー!」
思ったよりも混ざっていた個数は多かった。だけど、肝心の中身がよかったかといえば……非常に微妙。
「……クオーツの部品も、機械の砂も無しか」
「……良いもの……少なかった」
「サヤさんに出た『仲間の呼び声』が1番の当たりってとこだね。何気に、トレード不可な『進化の輝石』の入手率が高いのが気になるけど……」
「あー、それは確かに? 今回ので、ヨッシ、十六夜さん、風音さん、彼岸花さんが引いたんだしな」
俺も、今回ではないけど引いてるし……現状では使用頻度がそう多くないのに、これだけ出てくる事に何か意味があるのか?
「はい! 成熟体の私達には不要かもしれないけど、進化階位が低い人達ではそうじゃないかもしれません!」
「それは確かにあるかもね? 3枠目で使えなくもないから、完全に死蔵になる訳でもないし……」
「扱いが悩ましいところかな?」
「まぁ、確かになー」
あくまで、俺ら基準での不要品扱いだしね。条件が変われば、価値も変わるのは当然ではある。それは理解しているんだけど……。
「せめて、トレードさえ出来れば文句もないんだけどなー」
「確かに、それが可能なら俺が引き取るんだがな? 進化階位が低い内なら、十分使えるだけの性能はある訳で……いや、待てよ? なぁ、ケイさん……『進化の輝石』を強化するって方向性はあり得ると思うか?」
「……へ? え、桜花さん、それってどういう……?」
「あれだよ、機械の砂の用途としてだ。あれで『Ⅱ型』の武装や、黒の異形種の肉体補填に使える可能性はあるだろ? そこに加えて、進化の輝石を属性の元にして、後付けの外部武装なんてのもあり得るんじゃないか?」
「なるほど、そういう可能性か! 確かにあるかもしれない?」
死蔵状態の進化の輝石が、武装に変わるか! 絶対にそうなるとは断言出来ないけど、面白い可能性なのは間違いないな!
「それ、確かにあり得るかもねー。リコリスさんのモノクルを見てたら、特にそう思うかも?」
「はっ!? 私のこれ、もう後付けの外部武装じゃん!?」
「言われてみれば、確かにそうだな?」
「……武器ではないけど、装備ではある?」
なるほど。そう意識はしてなかったけど……あのリコリスさんの片眼鏡は、間違いなく道具だ。俺が持ってる翻訳も、レーダーも、機動妨害も、どれも後付けの装備にはなる。となると……。
「必要なのは……『Ⅱ型』の武装そのものの構造か?」
「あれを壊さずに、無力化する必要があるのかもな。なるほど、その為の機動妨害なのかもしれん」
「出来るだけ、壊さずに止める為の手段って事かな?」
「まだ予想の域は出ないけど、試してみる価値はありそうだよね?」
「ふっふっふ! UFOから、機能をぶん取りまくってやるのさー!」
まだあくまで、可能性だけの話。でももし、本当にそんな要素があるのだとすれば……機械の砂を温存していたのは正解か?
いや、仮に本当に武装が作れたとしても、どの程度のどういう代物かは分からないし――
「……自分で……使うのじゃ……なかったり?」
「およ? あっ、そっか! 味方に引き入れた黒の異形種に渡すなんて可能性もあるかもね!」
「……まだ確定情報にするには、情報も、条件も足りてなさ過ぎるぞ。過度な期待は――」
「いいの、いいの! 十六夜さん、こういう時は好き勝手に妄想を膨らませておけばいいんだよ! その中に、答えに繋がる道があるかもしれないからね! ねぇ、ケイさん?」
「まぁ、妄想と言ったらアレだけど……色々と試すのは、予想を立ててこそだしなー。実際、黒の異形種の肉体に使えるかってのも、同レベルの話だけど……思った以上の反応はあったしさ?」
あれだって、根拠は何もなかった話ではある。要素を組み合わせて、推測に推測を重ねた結果に過ぎないけど……それが実際に、クエストの進行に影響してるもんな。
十六夜さんの過度な期待は控えた方がいいって主張も分かるけど、こうやってあるかもしれない可能性を探るのは重要な事だしね! もし、結果が外れたとしても、推測してみる事に価値がある!
「……それもそうだったな。だが……どちらにせよ、今出来る事は限られてくるか」
「まぁそれはそだなー。それじゃ、そろそろ探索を再開していきますか!」
「あ、ケイさん! いきなりだけど、交代お願いね! そろそろ、余裕がなくなってきたし!」
「ほいよっと!」
さーて、リコリスさんと交代して、川底の探索を再開っすなー! まだクエストに動きがない以上、俺らに出来る事はUFOとその落下物を探していく事だしね。
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