第1552話 川の中の捜索


 俺、サヤ、曼珠沙華が川の中。アル、ヨッシさん、ハーレさん、レナさん、風音さん、十六夜さんが川の上という形で役割分担をしながら、上流へと進んでいく。


「川の中、全然見つからないなー」

「落下物すら、見当たらないかな……」

「むぅ……ここまで何もないとは思わなかった!」

「敵なら、ちょいちょいいるんだがな……」

「……避けて、逃げていってるけどね」


 探索を始めてから少し経ったけど、まだこれといった成果は出ていない。リコリスさんとの交代は上手く出来ているんだけどな。

 うーん、これはハズレか? 敵は格下ばかりで、交戦状態に入らないのはいいんだけど……肝心の物がないんじゃ意味がないか。


「ケイ、さっぱり見つからないなら、移動速度を少し上げるか?」

「その方がいいかもなー。リコリスさん、速度を上げてもいけるか?」

「思ったより負担はなかったし、問題なーし!」

「それじゃ、そうしますかね」


 という事で、少し移動速度を上げてみる。どの程度の負荷がかかるか分からなかったのと、周囲を確認していく時間を確保する為にゆっくり進んでいたけど……その辺の感覚は大体掴めたし、多少は速度を上げても何とかなる範囲だな。

 今は俺が水を動かしている番だから、上流に向けての移動を速めて――


「およ? あ、UFOが近くに降りてきてるね。十六夜さん、他の人達の反応はどう?」

「……一気に同じ方向へ動き出したな。数は……かなり多いか。灰の群集の割合が多いのは、まぁ場所を考えれば当然だな」

「んー、それじゃほぼ間違いなく争奪戦になっちゃうねー。ケイさん、これはスルーにしとくよ」

「ほいよっと!」


 レナさんに上の判断は任せたし、軽く今のを聞いただけでも俺もスルーが無難だと思う。灰の群集の人ばかりでの乱戦になれば、仕留めて排除ってのも難しいからなー。

 まぁ灰の群集の占有エリアの隣のエリアなんだから、灰の群集の人が多いのも当然の話だけどね。何気に、仕留められる他の群集の人よりも、同じ灰の群集の人ばかりの方がやりにくそう――


「あっ! 落下物が流されてきてるよ! 2個!」

「おっ、マジか!」

「確かに、流されてきてるかな! ねぇ、ケイ? あれ、誰が取るのかな?」

「あー、そういやそこは決めてなかったっけ……」


 どちらかというと、落下物より墜落したUFO狙いだったから、気にしてなかったんだよな。2個とか半端な個数、どう処理したもんだ?

 そもそも、今誰が、どれだけ個数を確保した状態だっけ? 優先順位を付けようにも、その辺の部分がもう分からなくなってきた……。


「んー、その辺の中途半端な個数は、近くの人が確保でいいんじゃない? 大元がどこなのか、それ自体が分かんないしさ」

「はいはーい! レナさんの意見に賛成!」

「確かに、どこから流れてきてるかは分からんしな。同じ人が拾って、獲得が不可なら落ちた場所は同じと考えられるか……」

「……取れないのが増えたら、UFOの墜落場所に近いかも?」

「あー、そういうやり方はありだな」


 移動させても同じUFOから落ちた落下物は、1人1個までって制限はあるもんな。その制限を逆手に取って、UFOの墜落位置を探るってのは良い案かも? よし、それなら……。


「サヤ、とりあえず今回のは2つとも拾ってみてくれ! その2個、そもそも出所が同じか確認してみたい」

「分かったかな! ……2個とも確保になっても、いいんだよね?」

「問題なーし! いいよね、彼岸花、ラジアータ?」

「……色んな場所から流れてきてるなら、それはそれで貴重な情報」

「まぁ駄目だと言う理由はないな。その確認は必須だろうよ」


 これまでの探索とは大きく違ってくる部分なんだから、変に遠慮はしなくていいだろ。それで分かる情報もあるんだから、尚更に!


「……分かったかな! それじゃ、取ってくるね」

「頼んだぞ、サヤ!」


 この結果が分かるまでは、移動は中断だね。今のうちに、近くに他にも落下物がないかどうかを見回しておこうっと。


「ねぇ、ケイさん?」

「ん? リコリスさん、どうかした?」

「今更ではあるんだけどさ。発光で周囲を照らしてもらえない?」

「あー、その方が見やすい?」

「ううん、別に今のままでも見つけられなくもないんだけど……ほら、落下物はガラス容器みたいじゃない? 光が反射して、見やすくなったりしないかなーって期待?」

「……なるほど、それは確かにありかも。おし、ならサヤが確保した後に、一旦交代してくれ。それで明かりを用意するから!」

「はーい! よろしくねー!」


 俺の生成してる水だから透き通ってて、視界的には十分だと思ってたけど、意図的に光の反射を起こして探しやすくしようって手段はいいね。飛行鎧に組み込んでる懐中電灯モドキで、あちこち照らして回るのもありだな。


「あっ! 2個とも、入手になったかな!? クオーツの部品と機械の砂って……どういう確率なんだろ?」

「へ? え、その2つ!?」

「それ、すごい確率じゃない!?」

「……大事な素材だけど、そんな事もあるんだ?」

「少なくとも、別々に2機のUFOが落とした落下物が流れてきているのは確定か。それとは別だが、内容がそれなのは驚くな」

「本当に、この内容はビックリしたかな!」

「ですよねー!」


 どっちも低確率ってほどではなくとも、探索を進める上では重要になってくるアイテムだしな。というか、機械の砂が出てくるって事は、全壊して回収されたUFOがチラホラある証拠でもあるか。

 まぁ回収したUFOが、川の中に絶対に墜落してるとは限らないけどさ。でも、川の中に落下物があるのはこれで確定! しかも複数のUFOから落ちているのもだな!


「サヤ、次に見つけた時も拾ってみてくれ! それで拾えなければ、同じUFOから落ちた落下物かが分かるからさ」

「うん、分かったかな!」

「ふふーん! こうして少しでも見つかると、楽しくなってくるよねー!」

「まぁ確かにな。それはいいんだが……ケイさんに明かりを頼んだんだから、のんびりしてんなよ、リコリス」

「分かってるって! はい、ケイさん! 一旦交代ね! 『アクアクリエイト』『水の操作』!」

「ほいよっと!」


 何度か交代は既にやったし、慣れた様子でリコリスさんは俺の水と川底の間に水を生成して、すぐに操作下に置いて、川底へと広げていく。操作の制御下になってない生成直後の水が問題なだけだから、もう操作されてし問題ないな。

 という事で、俺の水は解除して……それと同時に押し除けていた濁った川の水が戻り始めるけど、すぐにリコリスさんの生成した水で満たされていく。どうしてもここで水位に変化が出るけど……まぁ些細な範囲だから、問題なし!


「はい! 引き継ぎ、完了! それじゃケイさん、明かりをお願いね!」

「任せとけ!」


 という事で、明かりの準備をやっていこう! 結構な距離を照らし出せた方がいいから、大元は明るい方がいいか。


<行動値上限を5使用して『発光Lv5』を発動します>  行動値 110/130 → 110/125(上限値使用:6)

<行動値上限を6使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します>  行動値 110/125 → 110/119(上限値使用:12)


 よし、これで懐中電灯モドキの発動は完了。照らしていくのは、進行方向である上流でいいだろ。その上で、左右に照らす方向を動かしながらってとこ?


「リコリスさん、こんなもん?」

「うん、バッチリ! てか、ラジアータも同じ手段を取ったら? コケも岩もあるんだし、発光と光の操作を用意すれば出来るよね?」

「……確かに真似ようと思えば、真似られる内容だな。ケイさん、使わせてもらってもいいか?」

「おー、いいぞ!」


 こういう手段は持ってそうな気がしてたんだけど、意外とそうでもなかったっぽいね。もう今は味方なんだから、真似られるものはどんどん真似てもらって構わないよな! 


「あ、これを真似るなら、閃光もセットで取るのを推奨だぞ!」

「……『閃光』か? まぁ纏光で使った事はあるが……何に使うんだ? ケイさんが勧めるのなら、単なる目潰し用とは思えないんだが……」

「ん? この手段、知られてそうだけど……並列制御で光の操作とセットで使えば、レーザー攻撃になるぞ」

「ほう? そういう組み合わせで攻撃が出来るとはな。それは光魔法の『レイ』とは別物か?」

「全く別物だし、光魔法が出てくる前から使ってるからなー。まぁ出が速過ぎて、狙いを付けるのが難しかったりはするけど……」

「……もしかして、シュウさんもそれは使える?」

「あー、どうなんだ?」


 この手段……確か、フラムやアーサーの前では使った事はあるような気がする? シュウさんは光属性持ちだし……使ったの、見た事あったっけなー? うん、忘れた。


「まぁシュウさんは使おうと思えば使えるだけのスキルは持ってるし、他にも真似て使ってる人はいるから、知られてると思った方がいいかも?」

「なるほど、俺らが自分達だけでは見落としていた類いのコンボ技か」

「そうそう、そういう感じ!」


 灰の群集で見つけたの、俺だけど! まぁ紅焔さんが火を光源代わりにしたアレンジバージョンとか使ってたし、発想の元は、火を着ける為の太陽光の収束だしね。

 色々と使い道はあるから、使い方を知っておいても損はないはず!


「はいはーい! ラジアータの脱線、そこまでね! それじゃ、上流へ向かって移動再開!」

「だなー。あ、ラジアータさん、試し撃ちは……人がいないところをお勧めしとく。それ、下手に使うと火事が起きかねないしさ」

「水中で火事の心配ってのも、妙な話だな。……ここで試すのは駄目なのか?」

「俺は別にいいけど……みんな次第?」

「私の水の操作に思いっきり影響が出そうだから、却下で! 狙いがどうとか以前に、絶対にレーザーって時点で負荷はかかるよね!?」

「それも含めて、試してみたいんだが?」

「却下、却下! 光の操作は応用スキルなんだし、影響度合いが読めないから、今は絶対に駄目!」


 あー、言われてみれば確かにそうか。前々から使ってた手段だから影響度合いとか考えてなかったけど、Lv10とはいえ水の操作の分類は通常スキルだから……あのレーザー攻撃だと、操作時間を大幅に削る可能性はあるな。威力自体、かなりエゲツないし……。


「ラジアータさん、俺もそれはやめといた方がいい気がしてきた。かなりエゲツない威力をしてるから、どうなるかの予想が出来ん!」

「……それ、もしかして競争クエストの時に、私の氷塊を解かした方法?」

「……へ? あー、そういやそうか!」

「……やっぱり! あの手段、何なのか今まで分かってなかった!」


 言われて思い出した! あれか! 彼岸花さんを最初に見た時って、氷解の奥に隠れてたんだっけ。それを破る為に、火属性の代わりに使ったのがこのレーザーだったよ。


「……ラジアータ、あれは驚異的な威力だよ? 多分、ここでは使わない方がいい」

「彼岸花がそう判断するなら、相当危険なんだろうな。それなら、流石に今はやめておこうか」

「ふふーん! それでよろしい! それじゃ進んでいくよー!」


 深く考えずに使ってきてたけど、あのレーザー攻撃の現状での威力を正しく把握しとくべきかも? 成熟体まで育って、ステータス自体が前とは大きく違うんだし、その影響も出てる可能性はあるよな。

 でも、やるとしたら今じゃない。まぁどこかで機会があれば、試してみるって事にしとこ。今はともかく、先へ進むのを優先で!


「あっ、また落下物があったかな!」

「早いな!?」


 移動を再開して、まだ数メートルくらいしか進んでないんだけど……これ、もう少し先に進めば、もっとあるんじゃね?


「リコリスさん、もう少し先まで進んでくれ。もしかすると、すぐ近くに結構な数があって、その端で止まってた状態だったのかも……」

「その可能性、ありそうだよねー! それじゃ、もうちょい進んで……あー!? UFO、沈んでるじゃん! 落下物も大量!」

「少し手前で止まってしまっていただけのようだな。これは……『Ⅰ型』か」

「……識別してみるね。……『採集機Ⅰ型』で、状態は『重度破損』!」

「っ!? 全壊してないヤツかな!」

「おっし、大当たり! アル、当たりが出たぞ!」

「聞こえてる。それは、どうする? 川の外で引き上げるか? 今、この辺は人が少ないから、持ち上げてきても大丈夫そうだが……水中で処理してくれても構わんぞ?」

「あー、どうすっかな?」


 引き上げようと思えば、手段はどうとでもある。俺やラジアータさんの岩で持ち上げてもいいし、彼岸花さんの氷塊の操作でもなんとかなるだろう。

 でも、人目が少ないとはいえ、どうやっても目立つはず。それに落下物が結構な量もあるから……。


「この落下物、なんで全然拾われてない? この量なら、レーダー持ちの誰かが反応してる可能性はありそうだけど……」

「全くの手付かずみたいかな? でも、さっきまで近くにいた私達でも気付かなかったし、上手く見つけられなかっただけかもしれないよ?」

「この濁りの中じゃ、見落とすかもねー! レーダー持ち自体、どのくらいいるのか分かんないし!」

「あー、まぁそんなもんか?」


 夕食時とかの人目が少ない時に墜落して、そのまま放置になってた……にしては、ちょっと時間が経ち過ぎてる感じはするんだけどな。たまたま、レーダー持ちがいなかっただけというのも……なんか違和感?


「はい! 川の中に、直接転移してきてる可能性はありませんか!?」

「……あ、その可能性があるか!?」


 なるほど、海にも普通にUFOが出てきているみたいだし、水中に直接って可能性は十分考えられる。いざ、反応を追ってきてみても、川の中なら既に転移で逃げた後だと思った可能性はあるはず!


「落下物だけを回収する為では、この濁った中を探索しなかった人が多いのかな? 私なら、多分避けそうだし……」

「確かに、手段を持ってるかどうかにもよるもんな」


 俺らは水の操作Lv10持ちが2人なんて状態だったから、今の視界の良さで探せてるもんな。今は濁っているだけだけど、少し前は悪天候そのものの可能性もあるし……下手すると落雷で川に入るのが危険だったのかも?


「十六夜さん、桜花さん、ちょっと情報確認を頼みたい。ここの広野エリア、少し前の天候って分かる?」

「それなら、何かの役に立つかと思って調べておいたぞ。ケイさん達が向かう30分くらい前まで、かなりの雷雨だったそうだ」

「……『Ⅱ型』に雷が落ちて、墜落なんて光景もあったそうだ。迂闊に川に入れば……危険だったかもしれん」

「なるほど、情報サンキュー! ここで放置されてる理由は

、なんとなく分かったわ!」


 今は川の濁りと増水だけで済んでいるけど、少し前までは川はそもそも探索が困難な状態だった訳だ。察知している人はいたとしても、下手に手を出すより、他を狙った方がいい状態だったんだろうね。

 色んな条件が重なった結果、無理して手を出す程の価値はないとしてスルーされてたか。これ、川の様子が落ち着いてから再探索のつもりの人もいるかもなー。

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