第1539話 これからの動き方
飛翔連隊の合流を待っている間に、レナさんへとeスポーツの大会で感じた事を伝えていく。その辺をライブラリが加味して、何かを仕掛けている可能性があるから、警戒した方がよさそうではあるけどさ。
トラブルになりそうな要因が、一部のeスポーツをしているからって偉ぶってる事そのものなのはなー。根本的に人としての問題なのは、どう対処したものなんだろうね……。
「おーし、到着だ、到着! おっす、レナさん!」
「あ、来たね、紅焔さん! 他のみんなも!」
話をしながらレナさんのPTへの加入は済ませておいたけど、これからの話を進めるのは全員揃ってからって事になってたからなー。飛翔連隊の紅焔さん、ソラさん、ライルさん、カステラさん、辛子さんが桜花さんの樹洞の中に入って、樹洞の入り口は閉じられたのも確認! よし、これで話が進められるね。
「よーし、これで揃ったみたいだし、話を聞かせてもらいましょうか! ケイさん、今ってどんな状況?」
「一応、この機械の砂に関するイベントを進めてるとこになるな」
いきなり常闇の洞窟に行くと言っても意味が分からないだろうから、砂の実物を見せながら順番に説明していこう。可能なら、今の常闇の洞窟への人の行き来の状態が分かるとありがたいんだけど……まぁそれは話が進んでから確認だな。
「およ? この砂……何?」
「UFOの残骸だなー。昨日の時点で、これは?」
「UFOなの、これ!? 昨日では、こんなの存在すら分かってないよ!」
「まぁ途中でアナウンスがあって、正式名称の『情報組成式物質構成素子』が出たのも今日の昼からだしな」
「およ!? これの名前、そんななんだ!? へー、物質構成……情報組成式って事は、用意したプログラムに応じて形を変えるとかなのかも? これがUFOを形成してたなら、再起動させれば、UFOが操作出来たりする? でも、今のままじゃ単なる砂だし……あっ! さては、これの再起動の宛があるね?」
「おぉ!? レナさん、正解なのさー!」
「あ、やっぱり! だから、一旦戻ってきて、こうして打ち合わせにしてるんだ? 飛翔連隊もそれに加わるから、合流ってところ?」
「わっはっは! まぁそうなるな!」
「そっか、そっか。なるほどねー」
レナさん、あっという間に俺らの置かれた状態を把握してしまってるよ。まぁ状況的に推測出来るだけの情報があったからこそだろうけど……だからこそ、ジェイさんが強引な手段を使おうとしたのかもなー。あー、あれはなんとか逃げ切れて、マジで良かった。
「それで、この砂をこれからどうするの?」
「遠隔での分析は不可能だから、クオーツと直接接触できる場所へ持って来いってさ。だから、常闇の洞窟へ行く予定なんだけど……」
「あっ! もしかして、いつかの金属塊!? あの、瘴気が滲み出てきてて、修復させた!?」
「そうそう、そこ。まぁいくつか場所があるし……ただの接触だけで終わりそうにない予感がするってみんなが集まってきた感じだなー」
「んー、まぁ素直に解析して終わりとは、確かに思えないよねー。ゲームの展開的に!」
「ふっふっふ! こういう時は、何かの異変がセットで出てくるものなのさー!」
「だよねー! うん、良いタイミングで遭遇出来たもんだね!」
いやはや、本当に凄いタイミングでレナさんが来たもんだよ。少しでもズレていたら、今、この場には間違いなくレナさんはいなかっただろうしさ。まぁそれはいいとして……。
「それでなんだけど……桜花さん、ちょっと確認。今の常闇の洞窟って、人の動き具合はどんなもん?」
「一応、それとなく情報収集はしてみたが……広い地下空間かつ、転移場所がそこそこあるから、探索場所として人気がある感じだな。そのまま普通に探索を進めるとこと、2つの転移地点で行ったり来たりを繰り返すのに分かれてる様子だ」
「あー、そんな感じか」
「……『縁の下の力持ち』からも、補足情報を入れておく。何人かが先行して常闇の洞窟に潜っているが、それなりに人は入っているそうだ。時折、UFOも墜ちてくるから、意外と人気はあるようだな」
「先行してくれてる人がいたのか!? それは助かる! でも、意外と人気なのは厄介だな……」
UFOが転移してくるのさえ判明しているのなら、あの洞窟内では通常時よりも動ける範囲は狭まるもんな。これまでの経験則からダメージを受けてから洞窟内へ転移してくる事も多そうだし、結構狙い目の場所なのかも……。
「俺らも常闇の洞窟へ行くのは候補に挙げてたけど、人が多そうだったから、候補から外したんだよなー」
「……僕に合わせてくれたんだよね」
「対人戦になると、逃げ道がかなり限られますからね。ですが、今回はこれだけのメンバーですし……ソラは無理に戦わなくても大丈夫でしょう」
「ま、最悪、ケイ1人で全部押し流せるしな」
「ちょ!? アル、無茶を言うな!?」
いやまぁ、確かに今の水の操作でなら、常闇の洞窟でなら戦闘可能な範囲を水没なんて真似も実行出来るだろうけど……。
「ふふーん! ケイさんがしないと言うなら、私がやるまでだよ!」
「……私の冷気で満たすのでも、いいよ?」
「いやいや! 確かにリコリスさんや彼岸花さんも出来るだろうけど、変に戦闘をするのは無しで! 出来れば、他の人に悟られないように動きたいから!」
対人戦になる可能性は想定しておいた方がいいんだろうけど、初手から皆殺しにして動く気もないから! いや、灰の群集の人達ばっかだろうし、死にはしないか。……尚更、厄介じゃね?
「んー、でもそれは難しくない? 新エリアの方で動いているのを知られてるケイさん達が、いきなり常闇の洞窟に現れたら……もうそれだけで何かあるって言ってるようなもんだよ?」
「……ですよねー。レナさん、何かその辺で妙案はない?」
人が少なければ良かったんだけど、そういう訳ではないというのが痛いな。まぁ何も知らないまま、無策で常闇の洞窟に入るよりはマシだったとは思うけど……。
「かなり厳しい気がするけど……少なくとも、アルマースさんの小型化は必須だね。その上で、ケイさんの岩と風音さんの闇で隠れながらやり過ごす? でも、獲物察知までは誤魔化せないし……あ、そういえばこれはどうだろ? 桜花さん、十六夜さん、常闇の洞窟の全域で人が多いの?」
「正直、そこまでは分からん。今の状況で情報を得られた先は、かなり限定的だからな。余ってた落下物と交換で得た情報だから……俺よりは、十六夜さんの方が分かるかもしれん」
「……俺らの方でも、まだそこまで調べ始めて時間は経っていない。少し時間をもらえれば、人が少ない場所を偵察してきてもらうが……レナ、そういう場所の心当たりはあるのか?」
「うん、まぁね! ほら、金属塊のある行き止まりのルートって、海水と陸が混ざってくる場所もあったじゃない? その辺なら、人も少ないかなーと?」
「あー、あったな! そういう場所!」
というか、そういう場所で俺らは共闘イベントを進めてましたよねー!? なるほど、確かにあそこなら他より行き来するのが面倒な場所にはなってくるから、人気が少ない可能性は高いか。
「……確かに、そういう場所は少なからずあったな。ケイ、その辺を偵察してきてもらうから、少し時間をもらっていいか?」
「構わないけど……そこまで時間はかけられないぞ? このメンバーで動けるの、18時が限界だろうしさ」
「……もう少しで、17時か。なら、偵察は17時までで、それまでの調査範囲で人気が一番少ない転移地点から進むのでどうだ?」
「それくらいが無難なとこだろうなー。みんな、それでいい?」
これで絶対に大丈夫……という確信はどこにもないんだよなー。人気が少なそうな場所を狙って動いている人は間違いなくいるだろうし、そういう人からこそ隠れたいんだけど……その決定的な手段が思いつかん!
ある程度は『縁の下の力持ち』のメンバーに下調べを頼むとしても……転移地点になってる群集拠点種の分体のすぐ近くだから、休憩の真っ只中に遭遇なんて事もあり得るんだよな。場合によっては、そこで待ち構えている人がいる可能性だって……って、そんな事を考え出したら先に進まんがな!?
「おう、問題ないぜ! なぁ、みんな!」
「まぁ実際に行ってみないと、どうなるかは分からないしね。僕はその方針でいいよ」
「私もソラに同意です。下調べは『縁の下の力持ち』の方がしてくれるのですし、それ以上の事は成り行きに任せればいいでしょう」
「いざって時は、戦えばいいだけだしね!」
「いやいや、いっその事、事情を話して味方に引き入れるってのもありじゃねぇか? ほぼ確実に灰の群集ばっかなんだし……ケイさん、そういう方向性はどうよ?」
「あー、味方にするのか……。ちょっと、その方向で考えさせて」
辛子さんがサラッと言ったけど……確かに問答無用で戦闘に入る必要性はないのか。誰かがいるとしても、灰の群集の人ばかりなんだから、交渉の余地はあるはず。
おそらく、大きく何かが動くとすれば……演出を含んだ進行になる可能性は高い。情報的にはかなり進めている内容になるだろうから、最初から弾く事を考えるよりは、協力を持ちかけて……それこそ大勢を味方に引き入れて、見守るのもありか?
「十六夜さん、人気が少ない場所じゃなくても、人が多い場所を探ってもらう事は出来る? いっそ、大々的に広めながら味方を増やして、みんなで見守る流れを作るってのもありな気がしてきた」
「……方向性がまるで真逆だが、確かにそれもありかもしれんな。レナもいるなら、目立たせた方がいいかもな」
「およ? んー、まぁそういう流れになれば、他の人が下手に出し抜くのは難しいし、変な動きも抑えられるね。うん、目立つのさえ許容するのなら、割と妙案かも?」
おし! レナさんからしても、この真逆の手段はありか! 俺らが目立つのなんか今更な話だし、隠れて動くのが困難かつ、戦闘を避けたいのならこの方向性が一番良さそうだな。だけど……これは聞いておこうっと。いつもの事だからで済ませたら駄目な気もするし……。
「って事なんだけど……サヤ、この方向性でいけるか?」
「……え? なんで私に聞くのかな?」
「あー、この前の俺との対戦の時に、変な目立ち方をしたのが……まぁちょっと気になって?」
「っ!?」
あー、思いっきり顔を逸らされたんだけど……やっぱり、まずかった? あの時、嫌な思いをさせちゃった可能性があるし、聞いておいて正解だったかも。
距離がある場所で目立つのならまだしも、今回はそう広くない場所で目立つ可能性が高いし……そういうのが苦手なサヤに無理はさせられないからね。
サヤがこういう反応なら、アルの樹洞にでも退避してもらうか……この手段自体を避けた方が――
「ケイ! 私は大丈夫だから、そのまま進めて大丈夫かな!」
「……へ? え、でもそんな風には見えな――」
「これ、目立つ事への反応じゃないから……」
「およ? およよ? あー、そっか。あの時に、そうなっちゃったんだね」
んー? サヤの声にどんどん力が無くなっていく反面、どんどん顔を背けられているような気がするんだけど……。なんか、レナさんも思いっきり覗き込んでる状態だし――
「うん、ケイさん! サヤさんは問題ないね! だから、常闇の洞窟では目立たせる方針で進めていくよー!」
「えっ!? ちょ!? それって、サヤは大丈夫――」
「大丈夫、大丈夫! あの反応は別の理由だし、その理由が分からないなら、今は変に突っ込まない方がいいよ! 特にケイさんは!」
「はい!? え、それってどういう――」
「だから、今はまだ突っ込んじゃ駄目な内容! 十六夜さん、人気の多い場所を探っちゃって! その方向で進めて、みんなを巻き込んでいくからねー!」
「……了解だ」
ちょ!? 思いっきり、レナさんに流れを持っていかれたんだけど……何がどうなってんの!? マジでサヤ、大丈夫なのか?
「……ケイ、さっきのは無自覚か?」
「無自覚って、何が!? サヤに変に負担をかけたくないから、心配しただけなんだけど!?」
「……なるほど、無自覚からの不意打ちになってるんだな。サヤの方は、あの時のあれでかなり意識が変わったようだが……」
「えーと、アル? マジで何の話……?」
「誰かさんが、無自覚って話だな。まぁこういうのは当事者が一番気付いてなかったりするもんだが……あんまり言い過ぎると別の意味でサヤに負担がかかるから、これ以上は何も言わんぞ」
「いやいや、サヤに負担がかかるのは駄目だろ!?」
「だから、その話はここまでで打ち切りにするんだよ。レナさんも言ってただろ、今はまだ突っ込むなってな」
「……へ?」
確かに言ってたけど……俺がサヤの心配をするのが駄目なのか? それ自体が、妙な負担になり得るから……今、こうやってアルが強引にでも話題を終わらせようとしてる? それなら、俺が変にこの話題を続けようとしない方が――
「ねぇねぇ、ケイさん! 目立つって方針はいいんだけど、クオーツと接触した後に具体的に何が起こると思う!?」
「あー、ただの分析だけで終わる可能性もないとは言えないけど……何かしら、試しに動かしてみるだろうなー。それが暴れる可能性は……否定出来ないけど」
リコリスさん、露骨だけど話題転換をありがとう! 俺からじゃ、今の話をどう終わらせていいのか分からなかったしさ……。
サヤ、手で顔を隠して蹲ってるけど……本当に大丈夫なんだよな? 俺が変に話題を続けなきゃ、妙な負担にはならないんだよな? アルやレナさんの言葉、信じるぞ!
「あはは、だよねー! 私の予想としては、そこでちょっとしたボス戦と見た!」
「……こういう時は、失敗展開はあり得るよね」
「無事に再活性化に成功して、戦闘はない可能性もあるがな。まぁそれは実際にやってみるしかあるまい」
「ですよねー」
ともかく、今は待ちの時間だな。……サヤが落ち着く為にも、多少の時間は必要みたいだしさ。一体、俺の行動の何が原因なんだろうね……。
ここ最近、サヤがたまに妙な反応をしてる気がするけど、その理由がさっぱり分からん! アルがさっき言ってた無自覚って、俺の今の状況の事か……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます