第1538話 目立つのは仕方ない
<『始まりの森林・灰の群集エリア1』から『群雄の密林』に移動しました>
ちょっと無駄に注目を浴びてしまっていた森林エリアから、群雄の密林へと転移は完了! こっちの人の様子は……あー、ここもそれほど人は多くないね。
でも、不動種の並木の方を見てみれば、流石にそれなりに人はいる様子。まぁここにもUFOが降りてきた事もあるんだし、情報収集も兼ねて留まっている人もいるのかもね。
「さて……アル、どうやって目立たずに進む?」
「考えるだけ無意味だし、そのままさっさと上から進むぞ」
「……ですよねー」
うん、どう考えてもアルを隠しながら進むとか無理だよな。彼岸花さんが同行している時なら、雲に偽装して上空からって手段もあったけど……先に戻ってもらってるから、それは不可能だしね。そのまま普通に進むしかないなー。
「聞き耳を立てられてるかもしれないから、静かに進むのです!」
「その方が良さそうかな?」
「そうみたいだね」
周囲の様子を伺ってみれば……まぁ俺らに向いてる視線は多いっすなー。何をしにこの場に戻ってきてるのか、その辺を気にされてそうな気がする。まぁ当たり前な反応だとは思うけどさ。
「およ? ケイさん達、どうしたの?」
「ちょ!? レナさん、急に引っ張らないで!?」
「おっす、レナさん、ダイクさん」
何事もなかったかのように、アルのクジラの上の飛び乗ってくるレナさんと、レナさんに葉っぱを掴まれて引っ張られてきたダイクさんである。……うん、まぁレナさんならこの状況でも堂々と近付いてきますよねー。
「レナさん! eスポーツ勢の方……特に例のサイトはどうですか!?」
「他の群集の代表者からの紹介コメントはもらったし、もう後は専用の共同体を結成して、公開するだけにはなってるねー。ラックさんは夜には手が空くって言ってたから、仕上げるのはそれからだね。それまでは宝探しをやるつもりでログインしてきたんだけど……なんか出遅れちゃって? ダイクは全然、内容を教えてくれないしさー」
「レナさん、今回は一緒に動かなくていいって言ってたじゃん!? 俺、灰のサファリ同盟と一緒に動いてるし、レナさんがそっちに合流するんじゃなけりゃ、下手な事は言えない……って、ぎゃー!?」
あ、思いっきり葉っぱを掴んだまま振り回されてる。なるほど、ダイクさんはレナさん相手にでも、灰のサファリ同盟の調べた内容を迂闊に喋らないようにしてるのか。それで……うん、こういう扱いになってるんだね。
「こんな感じで、ダイクが全然教えてくれなくてさー。わたし、結構な時間を使って、イベントにもまともに参加せずにサイトを作ってたのにさー。扱い、酷くない?」
「あー、まぁそれは分かるけど……流石に今回は、あちこちが秘匿してるから、ダイクさんの判断も仕方ないかと思うけど……」
「理由は分かるんだけど、納得出来るかは別なんだよねー」
「ぎゃー!? 振り回さないでー!? てか、レナさんが灰のサファリ同盟の探索に混ざれば、普通に言えるんだけど!?」
「大規模過ぎるとこに、後から混ぜてもらうのも微妙なんだよねー。んー、まぁ夜まではこの状態でも仕方ないかー」
「ん? あ、そっか。レナさん、ギン達と一緒にやってたんだよな」
「そうそう! さっきまでわたしもサイトを作ってたから、他の人達が不在でも問題なかったんだけど、いざ作り終えたら暇でさー」
「……なるほど」
ギンもアイルさんも、今まさにeスポーツの大会の真っ只中だろうしなー。いや、そろそろ時間的に大会自体は終わった頃か? まぁどっちにしろ、レナさんの手が空いてしまってるのには違いないな。
「だから、灰のサファリ同盟とやろうって!? 昨日、一緒に動いてたじゃん!?」
「いやー、ちょっと昨日は暴れ足りなくてねー。あ、ケイさん、弥生達とは会った? 今日は動くって言ってたし、狙ってこなかった?」
「曼珠沙華が戦いを挑んでいって、まぁ色々とあったとこだな」
「おー、やっぱり遭遇してた! それでここにいるって事は、弥生達に負けて壊滅して戻ってきた?」
「いや、そういう訳ではないんだけど……」
「およ? そうなんだ?」
あー、これってどこまでなら言っても大丈夫なんだ? というか、そもそも足を止めて長々と話してる場合でもない気がする……。
「んー、ねぇケイさん? わたしもそっちに参加してもいい?」
「はい!? え、レナさん、本気!?」
「およ? ちょっと驚き過ぎじゃない?」
「いや、だってギン達や灰のサファリ同盟と一緒に動いてたんじゃ?」
「それは昨日の話だし……そっちを待ってたら今日の夜までどころか、明日の昼間も完全に暇になっちゃうんだよねー。だから、鞍替え?」
「ちょ!? レナさん、マジで言ってる!?」
「うん、本気も本気。灰のサファリ同盟の今の進捗は全然知らないし、こっちの新エリアで大暴れしたいならこっちかなーって?」
「いやまぁ、確かに灰のサファリ同盟は『黎明の地』をメインで捜索してるけどさ!?」
「そう、そこ! そういう部分が、今のわたしには物足りないの!」
「うぐっ!?」
なるほどなー。レナさん、ついさっきまでサイトの作成をしてたから、のんびり探索よりも、大暴れする機会がある方を望んでる状態なのか。とはいえ、俺らの次の目的地って常闇の洞窟なんだけど……流石にそれは言えないしなー。
「おーい、ケイさん? レナさんと名前が出てたが、何かあったのか?」
「あー、レナさんが俺らに混ざりたいって言ってきててさ」
「ほう! レナさんがか!?」
桜花さんが俺らが中々合流してこないのを気にして声をかけてきたけど、これはどうすればいいんだろうね?
「レナさん、こっちの新エリアで大々的に動きたいみたいなのさー!」
「あー、eスポーツ勢関係で色々動いてたけど、その手が空いたからか。でも、肝心の昨日一緒に組んでたのは、今頃ちょうど不在だろうし……レナさんの主張も、分からなくもないな」
ふむふむ、ハーレさんが簡潔に伝えたい内容から、桜花さんが大体の状況を察してくれたみたいだね。これ以上の内容はレナさんに伝わってしまうから、PT会話では詳しく伝えられないから、察してくれるのは助かる!
「……さっきまでならよかったが、今、このタイミングでとはな」
「……ちょっと……タイミングが……悪い?」
「んー、別に引き入れちゃってもいいんじゃない? レナさんなら、好き勝手にあちこちに吹聴はあり得ないと思うけど」
「まぁそういう事は嫌いな人だからな。それに、今の状況は絶対に面白がるだろう」
「……間違いなく、頼りにはなるよ」
うん、それは俺も分かってる。この様子では誰も特に反対意見はなさそうだし、さっきまでオリガミさんが臨時でPTにいたりもしたんだから……レナさんのメンバー入りも大丈夫か。あ、でも、まだその決断は早いな。
「飛翔連隊の意見はどう? そっちが問題なさそうなら、とりあえずレナさんを桜花さんのとこに連れていこうかと思うんだけど……」
「俺らの方は問題ねぇぜ! てか、常闇の洞窟に行くなら、俺らも合流していいか?」
「あー、それは構わないけど……そんなに大人数、必要?」
「わっはっは! どうも素直に、クオーツに機械の砂を渡して終わりとも思えなくてよ! あそこならソラが対人戦に巻き込まれる可能性も低そうだし、晩飯までの行動はあそこで一緒にやろうや!」
「あー、そういう理屈か。それじゃ、詳しくは桜花さんのとこに集まって相談って事でいい?」
「おう! それでいいぜ!」
「なんかまたシレッと決めてるけど……みんなはそれでいいかい?」
「まぁ気になるかどうかと言われりゃ、気になるのは間違いねぇしな」
「そろそろ、イベントが大きく動きそうだしね! 賛成ではあるよ!」
「確かに、素直に渡して解析で済むとも思えませんしね。私も賛成です」
「って事だ! 俺らも移動するぜ!」
また紅焔さんの独断に近かったみたいだけど……まぁそれに納得するのも含めて、いつも通りって感じだね。メンバーが嫌だと思う方向には独断先行はしてないし、なんだかんだで後から意思確認はしてるし、紅焔さんが考えなしで動いてる訳でもないんだろうなー。
「レナさん、協力メンバーの許可は出たから、とりあえず着いてきてくれ。これからやる事の説明をするからさ」
「およ? その言い方、なんか気になるねー?」
「おわっ!? 雑に放り投げなくてもよくね!?」
あー、思いっきりダイクさんが雑に投げ捨てられて、素早く水のカーペットの上に乗っかってるけど……やけにスムーズだし、妙に慣れた感じの動きだな。まぁダイクさんがレナさんに雑に扱われるのは、今に始まった事じゃないか。
「ダイク、ここからは別行動ねー! あ、昨日の勝負、同じ条件でもう一回やっとく?」
「……なんかすぐ負ける気しかしないから、遠慮しとく。俺は灰のサファリ同盟の方に戻るから!」
「うん、それでいいよー! さーて、それじゃ桜花さんのとこに行こっか。確かメンバーは、ケイさん達と飛翔連隊と曼珠沙華、風音さん桜花さん、十六夜さんとその繋がりで『縁の下の力持ち』がいるんだっけ?」
「まぁそうなるなー。ついさっきまで、オリガミさんも一緒にいたけどさ」
「え、オリガミさんも一緒にいたの!? ……あー、もしかして本当に大きな何か見つけちゃってるー?」
「その話、合流してからでいい? 全員、とりあえず集まってくるからさ」
「およ? 飛翔連隊まで集まってくるの? それはまた、面白そうな状態になってそうだね? 曼珠沙華の3人や、風音さんが戻ってきてるのを見て違和感はあったけど……うん、それじゃ話を聞くのを楽しみにしとくよ!」
あー、曼珠沙華や風音さんの動きを掴んでいたからこそ、俺らに参加出来るかどうかを聞いてきたのか!? 最初は弥生さん達との戦闘で壊滅した可能性も考えたけど、俺がそれを否定したから……より疑念が増したって可能性もありそうだね。
一緒に動くって提案してくれて、ある意味よかったのかも? レナさんに疑念を持たれた上で、競い合う状況になってたら色々としんどかったかもしれないしさ。
◇ ◇ ◇
レナさんを連れて、無事に桜花さんの樹洞の中へ到着。……目立つ可能性は考えていたけども、レナさんの姿を見た瞬間に視線を逸らす人が多かったのはちょっと誤算だったなー。
「桜花さん、こんにちはー! 仲間に入れてもらいにきたよー!」
「……全然、隠す気ねぇのな、レナさん」
「およ? 隠す理由、どこかにある?」
「いやまぁ、それはないけどな……。でも、『渡りリス』……そこに『ナチュラルポート』の管理人ってまで肩書きが出てきた相手に、変に目を付けられるのを避ける奴が多いのは、俺らとしては利点か」
「わたしの知名度は、いくら利用してくれても構わないからねー。ケイさん達、結構集られてたみたいだし?」
「あー、まぁ確かにそれは助かるかも?」
俺らはどうやってもアルが目立つけど、それ以上にオフライン版の経験者にとってとんでもない影響を持つレナさんに悪い心象を持たれるのは……うん、単純にやばいな。オンライン版での活動だけでさえ、『渡りリス』なんて異名が付いてるくらいだし……知名度的にはレナさんって最強クラス?
「……レナ……有名人」
「本当は、『ナチュラルポート』の影響度は使いたくはなかったんだけどねー。まぁこういう状況になった以上は、上手く使うまで! あ、そうそう。ケイさん達って、午前中はeスポーツの大会を見てきてたんだよね? どんな感じだった?」
「……その話、今必要なのか?」
「別に必須じゃないけど、飛翔連隊がまだ来てないでしょ? 十六夜さん、話を進めるなら、全員が揃ってからの方がいいと思わない?」
「……まぁ確かに、それもそうか」
飛翔連隊まで合流するのは、ついさっき流れで決まったものだからなー。合流まで少し時間がかかるのは、まぁ仕方ない。それまでの間に、伝えられる事は伝えておいた方がいいか。
「正直なところを言うと……全体的なレベルは低いなー」
「およ? そうなんだ?」
「多分、高校生のみの大会だからなのさー! 本気でやってないとこも混ざってそうなのです!」
「お遊びで出てきただけって感じのとこもあったよね?」
「うん、あったかな! 人数が足りてなさそうな部もあったかな!」
「そっか、そっか。部活動だから、部によって大きく戦力に偏りが出たりもするんだね。ギンさんが上澄みだけを見て判断しない方がいいって言ってたの、そういう部分かー」
「ギン、そんな事を言ってたのか?」
「うん、言ってたよ。その上で……プライドだけは妙に高いのもいるから要注意とも言ってたね」
「……なるほど」
ギンに直接真意を聞いてみないとはっきりしない部分ではあるけども……もしかして、大した実力が伴ってないのに、eスポーツをしているってだけで偉ぶってる層がいる? 注意点として挙げているなら、そういうのはいる可能性もあるか。
「レナさん、それって例の流入してきてるっていうeスポーツ勢の話? あのライブラリの好き勝手にさせないように、群集で受け皿を作るって事になってるんだよね?」
「そうだよー! リコリスさん、なんか気になる点でもある?」
「んー、ライブラリが何か仕掛けてそうな予感がしてねー。群集が対応に動く事、推測出来ないとも思えないし?」
「……用意した策に対して、トラブルの火種を用意してそう」
「プライドだけが高い連中だと、作られた流れに上手く乗るかは怪しいからな。まぁそうだと気付かず、流される可能性も高そうだが……」
「あ、そっか。後から手は出さないみたいな事は言ってても、先に何かを仕込み終えてるって可能性はあるし……うん、その辺は警戒しておくよ」
何事もないのが一番だけども、既にライブラリは好き勝手にやりまくった後だもんな。その整理として用意する群集での受け皿だけど……色々と警戒しておいた方がいいんだろうね。今のイベントとの相性、最悪過ぎるけどさ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます