第1536話 再びの接触
オリガミさんの『断風』のチャージが終わり、UFOの上部が切り開かれていく。おー、俺が入って確認したUFOよりも、中はスッキリとしてますなー。あちこち崩れた様子もなく、色んなパネルが光っていて、かなり無事なのがよく分かる!
「おぉ! これ、前のと全然違うのさー!?」
「『Ⅰ型』とはサイズからして、全くの別物だけどなー」
「そういう意味じゃないのです!? ボロボロ具合の差なのさー!」
うん、その辺の違いは分かってて言ってる。まぁそれはいいとして……俺が改造した物を持つ事にはなったから、とりあえず中へ入っていこう。
「あー、崩れてこそいないけど……根本的に広くはないな」
「流石に、それは仕方ないんじゃないかな? 『Ⅱ型』って精々、自動車くらいの大きさだし……」
「まぁそうだよなー」
サヤのクマとは、単純に『Ⅱ型』にはサイズ的に入れないんじゃないか? それこそ、今みたいに上から覗き込むのが限界な気がするんだけど……。
「このサイズは、今しているように上部を破壊する事が前提なのでしょうね。破壊自体は、そう難しいものでもありませんでしたし」
「ですよねー!」
どの種族でも入れるようにと考えると……今度は最低限の大きさがアルのクジラを超えてくるん事にもなるもんな。流石にそれはどう考えても大き過ぎるし、墜とすのも、その後の探索も大変になり過ぎるか。
今くらいの自動車サイズで、一部を壊して覗き込む方がよっぽど現実的だよねー。うん、実際に入ってみるとそういうのは実感するもんだ。
「……それで、あちこち光っているパネルはどうする? 飛翔連隊の時は、赤いパネルだけ残して、他は破壊していただろう?」
「そうだな……。いっそ、他のパネルも残したままクオーツと繋いでみる? 実際、どの程度あの破壊に意味があったかは分かってないしさ」
「……なるほど、それもありか」
「はいはーい! その場合のリスクとしては、どんなのがある?」
「……増援が来るかも?」
「それならそれで、その増援も捕まえて、改造の材料になってもらうってのもいいんじゃねぇか?」
「おっ! それいいね、ラジアータ! みんな、どうするー?」
「……みんなで……大量捕獲?」
「……悪くない案だな」
「このメンバーであれば、複数の『Ⅱ型』の無力化も不可能ではありませんね」
墜落したUFOの残骸を回収しにきていたのを考えると、増援が出てくる可能性は高いしなー。もし出てくるとすれば攻撃手段を持つ『Ⅱ型』の方だろうけど……実際、どんなもんなんだろうね?
「ケイさん、本当にやってみますか!?」
「クオーツに怒られる可能性もありそうだけど、試す価値はありだよなー。アル、もし増援が出てきたら、指揮はよろしく」
「おう、その辺は任せとけ!」
どの程度の数が出てくるかは不明だけど……そもそも、増援が来るかさえ確定ではないけど、やってみるしか確認する術はない!
「はい、ケイさん!」
「ん? トレード……って、機械の砂か!?」
「私達は手が空いてるか分かんないから、委ねておくのさー!」
「あー、そりゃそうだな。おし、任せとけ!」
「よろしくなのです!」
この砂を実際にクオーツに確認してもらうって目的もあるんだから、そりゃ俺が持っておかないと駄目ですよねー! ハーレさん、ナイス判断!
まぁまずはクオーツの部品をインベントリから取り出して……よし、赤いランプが緑色の明滅に切り替わったから、通信が始まったな。
[接続を確認……いや、待て!? その機体、色々と機能が生き過ぎだ! くっ! 不正アクセスを探知され、緊急アラートを起動されたか!?]
おー、色んな光り方をしてたパネルが赤一色に変わって、警報まで鳴り始めたね。あ、警報は止まった?
[大急ぎで遮断はしたが、異常は探知されたはずだ! その場所にいくらか、敵が向かう可能性がある!]
「あ、ほんとだね! えーと、1……2……3……うん、3機ほど降りてきてるよー!」
「3機か。ケイはそのまま、クオーツと話を続けてくれ。グリーズ・リベルテで1機、曼珠沙華で1機、残りのメンバーで1機、無力化するぞ!」
「分かったかな!」
「はーい!」
「了解!」
「……うん! やるよ、リコリス、ラジアータ!」
「加減を誤るなよ、リコリス」
「分かってるって! ラジアータこそ、ミスんないでよ!」
「……オリガミさん……指揮を任せて……いい?」
「……俺らには向いていないからな」
「あまりそういうのはしたくないのですが……まぁ今回は仕方ないですね。まずは距離を詰め、エンジンから破壊を行います! 過剰な火力ですと、簡単に全体が爆発するようなのでご注意を!」
さーて、本当にやってきた増援の相手はアル達に任せて、俺はクオーツと話を続けていきますか。……この状態、普通に会話が進んでくれるのかな? まぁともかく、試してみるしかないな。
「クオーツ、話は続けられるか?」
[いや、その前に余計な機能は潰してくれ。先ほどは我が通信を遮断したが、あれは一時的な処置に過ぎん。物理的に潰してしまわねば、どれだけの数を呼び寄せる事になるか分からんぞ]
「あー、そうなると……今のこの通信用のパネル以外は、全部ぶっ壊した方がいいのか?」
[あぁ、そうしてくれ。そうでないと、話をしようにも出来ない状態だ]
「了解っと。それじゃ破壊するけど……力加減はした方がいい?」
[……改造を望むならば、その方がいいだろうな]
「……なるほど。なら、加減した方が良さそうだなー」
改造が出来なくなるのでも構わなければ全力で破壊して問題なさそうだけど、それじゃ困るからね。どの程度の力加減で壊れるのかが分からないから、とりあえず何も強化をせずに、ロブスターのハサミを叩きつけてみるか。
「……この程度で、あっさり壊れるのか。あー、思った以上に脆いな」
いや、物理型の成熟体の攻撃だからって可能性もあるのかも? 未強化であっても、他の進化階位と比べれば桁違いの威力はあるはずだしなー。
まぁともかく、この程度で壊れるのなら、スキルの使用は無しだな。どう考えてもスキルを使えば、過剰な威力になるし……いや、いっそ操作系スキルで一気に……うん、そっちでやるか。
<行動値1と魔力値2消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 124/125(上限値使用:4): 魔力値 320/322
<行動値を2消費して『水の操作Lv10』を発動します> 行動値 122/125(上限値使用:4)
夜目と発光しか使ってない状態だし、この広くない空間の中で飛行鎧や水のカーペットを使うのも微妙。
という事で、加減しやすいように小さな水の球を生成して、勢いが付き過ぎない程度に、勢い付けてパネルにぶつけていく。
「よし、力加減はこんなもんか!」
使い慣れてる水の操作だし、Lv10だから細かな加減もやりやすいね。ロブスターで殴って破壊していくのでもありだろうけど、これでも十分いける! ただまぁ、調子に乗って加減を誤らないように注意しないとなー。
◇ ◇ ◇
加減を誤らないように、次々とパネルを破壊していく。外ではみんなが、それそれにUFOを相手にしているけど……まぁ声を聞いてる限りでは、苦戦している様子は欠片もないね。防御してる様子もあるから、増援は全部『Ⅱ型』っぽいなー。
むしろ、俺が離脱してる分、グリーズ・リベルテが1番手間取っている様子だけども。でもまぁ、手間取ってるだけで苦戦というほどではなさそうか。
「これで、ラスト!」
という事で、こっちのパネル破壊も完了! これでやっとクオーツとの話が再開出来そうだ。
結局全部のパネルを破壊しなきゃいけないなら、クオーツに繋ぐ前に破壊した方がいいのか? いや、増援のUFOからも改造や落下物が手に入るなら、あえて呼び寄せるのもありだな。まぁその辺の確認は後回しとして……。
「クオーツ、もう話は出来るか?」
[……周囲の状況が決して良いとは言えんが、まぁ我の通信は捉えられてはいない様子だし、汝の仲間が対応しているのなら問題はないか。流石に状況が状況だったから、これの情報の精査はこれからになるが……]
「まぁそれは仕方ないか」
うーん、機能を潰してからじゃないとデータの確認はしてくれないのか。そういう意味では、機能を活かした状態で接触するメリットはないっぽいね。
「ところで、ちょっと聞きたい事があるんだけど……それは大丈夫?」
[情報の精査に少し時間がかかるから、その間で良ければ話を聞こう。……あまり時間はかけられんがな]
ふむふむ、やっぱりクオーツとの接触には時間制限があると考えた方がいいんだろうね。それなら、回りくどいやり方はせず、直球で聞いてしまうのが正解だな。
「この砂、俺らが使う事は可能?」
[……それは『情報組成式物質構成素子』か。使うとなれば、構造を定義し、再び活性化する必要があるが……あいにく、我はその為の情報を持っておらん。少し、解析させてもらうぞ。これは……ふむ、こういう状況か]
クオーツの部品から機械の砂に向けて光が出ているけど……これ、どういう状況なのかをスキャンでもしてる? まぁクオーツが作られた時の最新技術だって話だったし、情報がないのなら調べるしかないのは仕方ないか。
[なるほど、これは遠隔での解析は厳しいな。これまで確認した採集機にも、その再定義の手段は存在していなかったし、現状では再活性化は不可能だ]
「あー、そうなると……どうすればいい?」
[我に直接届けてもらう必要がある。……そうだな。常闇の洞窟にある、我の末端であれば接触は可能だ]
「……なるほど、常闇の洞窟か」
まさか、またあそこに行く機会が出てくるとはね。まぁクオーツの一部っぽいのはあの中で見た事があるし、直接受け渡すのならあそこになるのは必然か。
[もし、持ってこれるようであれば持ってきてくれ。それが分析出来れば、使用どころか一撃で無力化する手段が見つかるかもしれん]
「あ、そっか。再活性化が出来るなら、意図的に不活性化も出来るのか!」
ふむふむ、何気にUFOに対する特攻武器を手に入れるチャンスだったりする? あー、でも特攻で無力化したら……改造、出来なくね?
[……よし、この採集機の情報の精査は完了したぞ。これであれば……機動機能の無効化か、防衛装置の無効化が可能そうだな。おそらく、この内容は共に動いている仲間へ伝えているが……詳しい内容の説明は必要か?]
「いや、その内容なら聞いてるから説明は不要だな。機動機能の無効化への改造で頼む!」
[了解した。すぐに改造をするから、少し待て]
へぇ、同じ連結PTにいるメンバーへ伝えた情報は、ちゃんと把握してるんだね。まぁ同じ内容のやり取りをする必要がないんだから、これはありがたい処置かも?
「ふふーん! 『Ⅱ型』のUFO、3機とも捕獲完了!」
「しっかりと固めておけよ、リコリス」
「当然ですとも! あ、どうやって捕獲しておくのかと思ったら、ヨッシさんの氷じゃなくて、アルマースさんの根で巻きついてるんだ?」
「今はケイが離脱中だから、これが手っ取り早いんだよ。それにしても……オリガミさんのとこは、破壊が早かったな」
「まぁ私は2回目ですし、2人もこれだけの実力者が一緒なら当然ではありますね」
「……オリガミさん……指示が的確」
「……流石の実力者だな」
おっと、どうやら増援のUFOは3機とも無力化は成功したっぽいね。こっちも改造待ちだし――
「あー!? 全然、落下物がないのです!?」
「……ハーレさん、流石にそれは仕方ないと思うよ? 元々、集めてた機体ではないみたいだし……」
「あぅ……期待してたのに、残念なのです……」
あらら、増援からは全く落下物は手に入らないのか。うーん、ますます増援を出させるメリットが薄くなってきたな……。
「ケイ、こっちは済んだけど、そっちはどんな感じかな?」
「今、クオーツに改造してもらってるとこ」
「あ、そっちもあと少しで終わりかな?」
「まぁなー。それと、機械の砂についても聞いてみたけど……遠隔じゃ解析し切れないから、直接渡しに来てくれってさ」
「……え? そうなのかな!?」
「それって、どこで渡すの?」
「常闇の洞窟の中だとさ。ほら、行き止まりの転移地点のとこに、瘴気が溢れ出してた場所とかあったじゃん。多分、あそこ」
「おぉ!? また常闇の洞窟に行く機会がきたのさー!?」
<『惑星浄化機構・長距離通信装置』を改造して、『採集機・機動機能停止装置』を獲得しました>
おっと、みんなに説明してたら改造が終わったな。これ、手に入れたけど……今の状態を見てみれば、『Ⅱ型』の無力化には必要なさそうだよね。まぁ『Ⅰ型』の転移を封じるのが、1番の用途になりそう。
[改造はそれで完了だ。……近くにある増援に来た採集機は、我が下手に触れると察知されかねん。そちらには接触しないが、理解を頼む。それと既にこの採集機のデータは削除したから、破壊も頼んだぞ]
「え、ちょ!? 増援は内容すら確認すらしてくれねぇの!? あ、切れた……」
えー、増援のメリット、全然なくね? まさか、クオーツが確認すらしてくれないとは思わなかった……。
「ケイ、もしかしてこの増援の捕獲は無意味だったのかな?」
「……どうも、そうっぽいなー。下手に触れると察知されかねないから、接触しないってさ」
「ま、そういう仕様だって事が分かったし、それで良しとしておけばいいだろ。無駄足だって分かったのも、十分な成果だぞ」
「ですよねー! それじゃ、こっちのも含めて全部破壊だ!」
アルの言う通りではあるけども、完全な無駄足になったのはちょっと悔しいとこだよなー。はぁ、まぁこれも確かに成果だし、次は最初から赤い通信用のパネル以外は破壊しとこ。
「こうなったら、思いっきりぶっ壊せー! だりゃー!」
「……砂だけでも……残らない?」
「……おそらくクオーツが関与してない破壊では、無理だろうな」
砂が残るとすれば、俺がいるこのUFOのみか。まぁともかく、鬱憤晴らしのつもりで……最大まで水を追加生成して、盛大に潰して破壊してしまえ!
あー、今回のは無駄があり過ぎだったよ! まぁ成果もあったけど……今度は常闇の洞窟か。すぐに済むもんなのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます