第1532話 急な遭遇
紅焔さん達の方で大きな成果が出て、謎の砂が正式名称に切り替わったり、採集機も『Ⅰ型』と『Ⅱ型』で可能な改造が大きく異なってくるという事も判明した。型が違うだけあって、機能そのものが違うんだろうなー。
「はい! 急いで谷に行った方がいい気がしてきたのさー!」
「それは俺も同感だなー。曼珠沙華、案内は任せるぞ!」
「……うん、任せて!」
「アルも、移動を早めによろしく!」
「おうよ! 色々と確認すべき事が増えてきたしな。晩飯までには、その辺をはっきりさせておきたいとこか」
「だなー」
思ったよりも時間が経ってて、今は16時過ぎ。曼珠沙華が全壊したUFOをどこに埋めたのかは俺らも知らないから、一緒に活動している間に……って、ちょい待った。
「てか、全壊したUFOって曼珠沙華が埋めたあれだけ?」
「……もっと……ありそう?」
「確かに、あれだけなはずはないかも?」
「他にもありそうだけど……どうなってるのかな? 残骸、意外と見ないし……」
「だよなー? 桜花さん、その辺って情報はない?」
群雄の密林の方に『Ⅱ型』が出現してたのは、そろそろ落ち着いてないかな? もし落ち着いているなら、その辺も含めて情報が知りたいんだけど……。
「あー、こっちに出たUFOは過剰攻撃で自爆されて木っ端微塵になったな。残骸の1つが俺の前に落ちてきたから確保したが……これ、例の砂に変える事が出来るのか?」
「さぁ? それ、アイテムとして回収は?」
「残骸のままだと、無理みたいだな」
「……なるほど。残骸が残ってるなら、何かの手段で分解出来そうな気がするけど……」
「その手段は、まだ不明ってか。全壊したUFOの残骸は、基本的にその場に放置されてるって話ではあるぜ? 砂まで分解ってのは、そもそもまだろくに知られてないみたいだ」
「まぁそりゃそうだよなー」
跡形もなく砂に変わるなんて、実際に見てみないと想像もしてなかった部分だしさ。実際にそうなってしまえば、UFOがその場にあった事すら不明なんだから、尚更に。
「……問題は、どうやって全壊した残骸を『情報組成式物質構成素子』にするかだよね?」
「その名前、長過ぎるんですけどー! 『機械の砂』でいいじゃん! 正直、覚えてられないし!」
うん、まぁそこはリコリスさんに同意。こういうのは、なんとなくの雰囲気でどういうものかさえ分かってれば問題ないし!
「リコリスが覚えられんのはまぁ仕方ないとして――」
「別に覚えられない訳じゃないんですけど!? 呼ぶのがややこしいだけであって――」
「そこは本題ではないからどうでもいい。問題は彼岸花の言う通り、残骸をどうやって『機械の砂』へと変化させるかだな」
「ちょ!? ラジアータ! 私が覚えられないってのは、取り消しなさーい!」
「こっちに意識を向けている場合か? 今の察知担当が、油を売っててどうする?」
「ぐぬぬ!?」
思いっきりリコリスさんから苦情が出てるけど、ラジアータさんは完全にスルー……というか、言い負かされてますなー。いやまぁ、確かにラジアータさんの言う通りではあるんだけどさ。
「それで、実際に反応はどうなんだ?」
「ちょいちょい降りてきてるのはあるけど、近くにはない感じだねー。あ、そうそう。薄い瘴気も、しっかり見えてるよー! 『侵食』の代わりとしては、遜色ない感じ! ……多分!」
「なるほどな」
ふむふむ、リコリスさんの今の感想を聞く限りでは、このレンズは『侵食』での察知の代用になりそうだ。『多分』が付くのは、リコリスさん自身が『侵食』を使った事がないからだろうし、問題ないだろ。ただ、同等の性能があっても入手難度が高めなのが問題だよね。
クオーツの部品自体は個数が手に入ったけど、全壊してないUFOを確保するのは……『Ⅰ型』での改造を得るには、『Ⅱ型』を破壊せずに無力化が重要なのかもなー。
「……ケイさん、またクオーツとの接触が必要なのかも?」
「多分、そうなんだろうなー。紅焔さんが、実物の砂を持ってこいとも言われたんだし、そこでまた何か進展があると考えた方がいいかも……」
「その為にも、『Ⅱ型』をそろそろ見たいのです!」
「『Ⅱ型』はまだ見てないし、重要な情報になりそうかな?」
「だよなー。ポッと、出現してくれない――」
「っ!? 目の前、瘴気が渦巻き始めた! 何か出てくるよ!」
「っと、話してたら異常発生か! アル、止まってくれ!」
「了解だ!」
明らかにリコリスさんが言ったのは、何かが転移してくる兆候! 乱入クエストを受けた無所属のプレイヤーか、黒の異形種か、本命の墜落しかけのUFOか……さて、何が出てくる? って、瘴気で黒く澱んだ風属性での緑色の龍って……またイブキ……いや、これは違う!?
「おや、ケイさん達の前に出ましたか」
「おぉ!? オリガミさんなのです!?」
「そうみたいだな」
まさか、ここでオリガミさんの登場ときたか。こうして転移してきたとなると……乱入クエストを受けてきている? いや、でも傭兵だったのに、今のを受けられるのか?
オリガミさんって、確か正式に灰の群集の傭兵として動いてたよな? その権利で、灰の群集の占有エリアへの転移は出来るはずだけど……。
「……オリガミさん、乱入クエストを進めてるの?」
「彼岸花さん、それにリコリスさんとラジアータさんが一緒でしたか。灰の群集に移籍したとは聞きましたが……随分と馴染んだようですね」
「……質問に答えて!」
「本来なら答える理由は皆無ですけども……まぁマルイさん達がお世話になっていますし、お答えしましょうか。えぇ、乱入クエストは進めている最中ですよ」
「……なんで、傭兵になってるのに受けられるの?」
「おそらく、私が一度黒の統率種まで至っているからでしょうね。無所属である事だけが条件ではないようですよ?」
「あー、そうなるのか……」
「どうやら、ケイさんには思い当たる理由があるようですね」
「まぁなー」
黒の異形種である骨の竜が語った内容では、接触する相手は『自分達に近いバランス』を選んでいるんだったもんな。黒の統率種まで至れば他のプレイヤーとの意思疎通が出来なくなる程だし、黒く染まればそれだけバランスは黒の異形種に近くなる訳で……単に群集所属だと、無所属よりも黒く染まりにくいだけなのかもね。
「さて、私としてはここで皆さんと戦う意志はないのですけども……どうします?」
「あー、良い機会だから情報交換とかどう? ぶっちゃけ、今の乱入クエストの詳細が知りたいんだけど……」
「……情報交換の内容次第ですね。マルイさん達に有利な情報が得られるのであれば、多少の情報開示は構いませんよ。今回は群集が大々的には動いていない影響で、かなり探索に難航しているようですし……」
「よし、きた! 俺らは情報を色々持ってるから、その案に乗った! 良いよな、みんな?」
「飛翔連隊はケイさんの判断に任せるぜ!」
「……俺も異論はない」
「……貴重な……情報源!」
紅焔さん、十六夜さん、風音さんからの同意は得られたし、他のメンバーも頷いているから大丈夫そうだね。イブキ相手だと交渉って話には出来なかったけど、オリガミさんならそれが可能だ! このチャンス、逃してなるものか!
「では、私の方から情報を話させていただきますね。ケイさん達は、それに見合うと思った情報を教えていただけると助かります」
「ほいよっと!」
どの程度の情報を教えるかは、俺らの方に委ねてくれるんだね。これは信頼されていると考えるべきか、それとも試されていると考えるべきか……。
オリガミさん、決して油断していい相手ではないからなー。まぁとりあえず、様子を見ながらどうするかを考えようか。
「さて、既に乱入クエストがある事そのものは判明しているようですが……それは彼岸花さん達が情報源ですか? どの程度、把握しています?」
「情報源はその通りだな。『乱入クエスト:転移先を確保しろ』ってのが、新エリアで命名クエストが終わってないエリアを対象に発生してるのは把握してるぞ」
「なるほど、概要は既に知っているのですね。となれば、知りたいのはその進捗状況や進め方の辺りですか」
「そうそう、そんな感じ」
それ以外にも何かあるのであれば、知りたいとこだけどなー。例えば、あの黒の異形種の溜まり場についてとか。
「そうですね……。そこまで把握しているのであれば……ここまで踏み込んでもよさそうですね。今回の乱入クエストは受注先が複数存在しています」
「あー、そうきたか……」
「今のに驚かないところを見ると、どこかの黒の異形種と接触しましたか? 接触があったとは聞きましたが、それがケイさん達ですか?」
「まぁなー。俺らが会ったのは、骨の竜だけど……オリガミさんも遭遇してる?」
「えぇ、それは黒の異形種の派閥の1つのリーダー個体ですね。比較的、温厚なタイプの黒の異形種ですよ」
気になる部分だったけど、まさかこんな形で繋がってくるか。まぁ黒の異形種は一枚岩ではないと言ってたし、乱入クエスト自体は黒の異形種から受けるって話なんだから、変な話ではないよな。
「おぉ!? あの骨の竜って、そういうタイプなんだ!?」
「ここでオリガミさんと繋がってくるのかな!? え、もしかして、オリガミさんはあの骨の竜から乱入クエストを受けてるのかな?」
「私がクエストを受けた黒の異形種の一派が、その骨の竜という形になりますね。他にもいるようですが……まぁまだ私もそちらには遭遇出来ていませんけども」
「……オリガミ、質問をいいか?」
「なんでしょうか、十六夜さん?」
「……その黒く染まった状態でなら、黒の異形種との意思疎通は可能なのか?」
「えぇ、可能ですよ。より黒くなれば、それだけ明瞭に話を聞き取れますし……そうなれば、勝手にUFOの方が引っ張ってくれますのでね。まぁ中々、墜落させる加減が難しいんですけど……」
ちょ!? サラッと言ってるけど、黒く染まってる状態なら勝手に引き寄せられたりするのかよ! なんというか、それって宝探しイベントとしては反則的な状況じゃね!?
「はいはーい! オリガミさん、黒く染めるのはどうやってるの? 絶対、自分から他のプレイヤーを襲いに行くタイプじゃないよね?」
「まぁそれはリコリスさんの思っている通りですね。流石にそういう手段で黒く染めたいとは思いませんので、瘴気の渦で転移を繰り返して黒く染めていますよ。UFOに引っ張られた際にかなり薄れるので、黒の統率種まで至るのは難しいですが……」
「あ、そんな感じなんだ!」
ふむふむ、瘴気を使った転移を繰り返す事で黒く染まるのはこれまで通りか。新情報としては、UFOに引っ張られて強制転移になった際に薄れる事ですなー。
「それ、イベントの探索には良さそうだけど……クエストの進捗状況にはどう影響があるんだ? 群集所属のプレイヤー以外に仕留められる事で進むんだよな?」
「えぇ、ケイさんのご懸念の通り、UFOのせいで薄れた分は進捗に含まれないので、乱入クエストを進める上では思いっきり邪魔されてますね。まぁ私は乱入クエストの進行より、今のイベントでのUFOの位置を探る為にやっていますので大した影響はありませんけども……」
「あー、そういう……」
なるほど、マルイさん達にUFOの位置を教える為にやってる感じなのか。でも、安定した発見方法ではないから、安定した探り方を知りたいのかも? だからこそ、俺らとの情報交換なんだな。
「マルイさん達、今はどんな状態?」
「新エリア側でないと私がこの状況を活かしきれないので、こちらの方にはいますが……今、宝探しは難航中ですね。最初の頃は私が見つけた落下物を順当に拾い集めていたのですが、その動きを周囲に悟られたようで……毎回、乱戦になってしまっていまして……」
「あー、それって完全に目を付けられてるじゃん……」
『侵食』での察知方法とは全く違う手段だけど、これも明確に落下物の場所を探り当ててるもんなー。マルイさん達を追いかければ、おこぼれが狙えるとなって……その結果が乱戦か。うーん、中々それは厄介な状況……。
「……それ、もうオリガミさんが合流して、追い払った方が良いような気がするよ?」
「私も彼岸花に同意! それ、完全にカモにされてるじゃん!」
「明確に当たりを取りに行くPTがいるのなら、狙われるのも仕方ないとも思うがな……」
「えぇ、それは私も承知しています。なので、今の手段は切り上げて合流を考えていたところでして。もし可能なら、PTで探索する際に見つけやすい手段を教えていただけるとありがたいのですが……」
ふむふむ、なるほどね。オリガミさんの狙いは、俺らが探している方法を教えてもらう事か。これまでとはアプローチの方法が全く違うから、俺らの探り方を1回から見つけるよりは楽だよなー。
「オリガミさん、UFOを墜落させた後に中に入ったりは?」
「……全くしてないですね。墜落寸前のUFOには、引っ張られる事がありませんでしたので……。『Ⅱ型』はすぐ全壊してしまいますし……」
「それなら、俺らが持ってる情報は役立つかもなー。基本的には『侵食』の変質進化を使って探るのは分かってるよな?」
「えぇ、それは把握しています。ですが、どうしてもそれでは運任せになるので……」
「まぁそりゃそうだ」
俺らだって、最初はその運任せでの探索をしてたし、今でもそれをやめている訳でもない。ある意味、落下物の位置を探るという手段ではオリガミさんのこれまでのやり方が最大効率だったのかもね。
「オリガミさん、クオーツの部品を持ってたりしない?」
「『惑星浄化機構・長距離通信装置』ですか? 1個は持っていますが……これ、何に使えるんです?」
「例えば、リコリスさんのトカゲがしているモノクルとかなー」
「……妙な物を付けているとは思いましたが、これがクオーツの部品と関係あるのですか?」
「ふふーん! これ、『侵食』での察知と同じ効果があるからね!」
「……なるほど、今の私の状態と同じ効果をアイテムで得ているのですか。『例えば』という事は、1つではないんですね?」
「いくつか種類があるんだけど……その辺を教えるから、少しの間、協力しない?」
「……まず、その内容をお聞きしましょうか」
「よし、きた! なら、説明していくぞー!」
採集機の『Ⅰ型』は転移で逃げるから難しいだろうけど、『Ⅱ型』ならオリガミさんの手を借りれば、全壊させずに確保が出来るかもしれないしね!
オリガミさんにとっても悪い話じゃないだろうし、黒く染まった状態でのUFOからの引き寄せを上手く使わせてもらおう! まぁ運任せの要素は強いけど、試してみる価値はあるはず!
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