第1530話 他の状況の確認
相変わらずのUFOの出現頼りな状況ではあるけども、曼珠沙華が昨日埋めたUFOに何かがある可能性かもしれないので、そちらに向かって移動開始! 目立たせるのが目的ではないので、今は盛大に光らせるのはなしで!
周囲の確認の為に、俺が獲物察知を使ってはいるけども……あー、こういう反応か。
「ケイ、周囲の状態はどうだ?」
「ジェイさん達が俺らと当たるのは避けて、迂回してさっきの場所に戻ってるなー」
「……本当にさっきの余った落下物を回収しに戻ってるのか」
「そうっぽいなー。てか、何気に俺らの進行方向にいたとは……」
またぶつからないように迂回してくれてるけど、それって俺らの反応を拾ってるからこそだよなー。そして、今は獲物察知の妨害はしてないと……。
でも、急に反応が現れたから……うん、これは目視で俺らの動きを監視されてたっぽい。ちょっと嫌だな、この動き。
「……ジェイさん、俺らがどこに向かっているか探ってるかも?」
「まぁそれくらいはやってくるんじゃねぇか? 俺らがジェイさん達の持ってない手段を持ってる可能性は、勘付かれてただろ」
「そうなんだよなー」
次に遭遇した時は平和的にとか言ってたのに……って、この状況ならまだ次になってないとか言われそう。まぁあれこれ仕掛けてくるジェイさんの言葉だし、そのまま間に受けない方がいいんだろうけどさ。
「はい! リコリスさんの方はどうですか!?」
「んー、何気に私は『侵食』の察知をまだ使った事がないから、いまいち差は分かんない! 聞いてる感じの反応はあるんだけどねー」
「はっ!? そうなるんだ!?」
「うん、そうなるの! あ、でも移動してきたら薄っすらと瘴気があるのは見えてきたよ! 左右で見え方が違うから、差異は分かりやすいかも?」
「おぉ!? そうなんだ!?」
ふむふむ、片目だけのレンズだからこそ、そういう見え方になるんだね。コケでは無理だけど、ロブスターの操作時なら片目を瞑るのは可能だもんなー。
アルが持っていれば便利かとも思ったけど、これはハーレさんに持っておいてもらうのもありか? いや、流石にまだそれを決めるのは気が早過ぎるな。
「あっ! さっきのUFO、反応が消えたね?」
「マジか! 桜花さん、そっちはどんな状況?」
さっきのUFOといえば、群雄の密林の方に出たらしきやつだよな。今反応が消えたって事は、転移して逃げたか……もしくは墜落させたかのどっちかのはず。……あれ? 桜花さんからの反応がない?
「……桜花? ……今は……対応出来ない?」
「あー、悪い! すぐ近くに墜ちてきててな! しばらく無理だ!」
「あ、そういう状況か」
「状況が落ち着いたら、何があったかは伝えるからよ!」
「了解っと」
どうやら、思った以上に慌ただしい様子。下手にそういう状態で、俺らに気を取らせ過ぎるのも悪いから落ち着くまで変に声をかけるのはやめとこ。
さて、周囲にこれといって目立つ変化もないし、谷までの移動にはまだ時間がかかるし、紅焔さん達の状況も聞いとくか。時々、慌ただしいような声は聞こえてたけど、こっちも色々あったから確認出来てないしなー。
「紅焔さん、そっちの様子はどう?」
「わっはっは! こっちは『Ⅱ型』のUFOを墜としたぜ! 今から、内部に入ってクオーツと接触するところだ!」
「っ!? マジか!?」
それ、ナイスタイミングじゃん! 俺らの方は『Ⅱ型』はまだ一度も遭遇してないんだけど、紅焔さん達の方で出てたか。
「今、僕らは『望海砂漠』にいるよ。『砂時計の洞』に入ろうとした直前に、近くに降りてきてね」
「どうやら、この『Ⅱ型』の方はダメージを受けても逃げないようですね。受ける攻撃は大したダメージではありませんし、相手はしやすいかもしれません」
「でも、少しでも加減を誤ると大破させちゃいそうだよね?」
「あぁ、それはカステラに同意だ。最優先で狙うべきは、砲塔や駆動用のエンジンらしきものだな。おそらく、この辺が自爆の起点みたいだぞ」
ふむふむ、ステルス主体の『Ⅰ型』とは全然違って、攻撃性能のある『Ⅱ型』は逃げはしないのか。でも、過剰攻撃で自爆するって話も聞いてたから……完全に全壊させずに無力化するのって結構大変そうかも?
「……『Ⅱ型』は砲塔やエンジンが剥き出しで見えているのか?」
「おう! 思いっきり見えてるぜ! 推進力は、あれだ! ロケットのエンジンっぽいヤツ!」
「もしくは、スラスターかい?」
「砲塔は……下部に機関銃、左右にミサイルという感じでしょうか。SF的な感じなので、現実の物とは少し違いはありますが……機能的にはそのようなものかと」
「あー、そういう感じか」
紅焔さんとライルさんの説明を合わせれば、武装がいくつかある、風か何かを推進力にするUFOになるんだね。一応、『採集機』という名前も付いているから、採集機能もあるんだろうけど……聞いてる限り、かなり攻撃的な機体っぽい。
「紅焔さん達は、どうやって墜としたんだ?」
「まず、エンジンを潰して、動きが鈍ってから武装を破壊した感じだね。自爆してくるとは聞いていたから、慎重にやったらなんとか墜とせたよ」
「動きが速くて、捉えにくかったけどさー。まぁ動きは直線的だったから、僕と辛子が突っ込んで、破壊した感じ」
「そうなるな。動きを鈍らせてからの武装破壊は、そう手間でもなかったが……」
「あー、そんな流れか」
ふむふむ、攻撃性能と機動性があるから、そこを無力化すればいいんだな。その無力化をせずに破壊すれば、UFOそのものが自爆して台無しになる訳か。
「ちっ! 墜ちてもまだシールドか何かが生きてんのか!? 中、入れねぇじゃねぇか!」
「紅焔、強引に突破しないでよ?」
「ん? あー、墜としたけど、まだ完全に無力化出来た訳でもない?」
「どうやら、そのようですね。これ、まだ自爆の可能性があるのでは?」
「ちょ!? ここまでやって、それは勘弁!?」
「自爆させずに、どうやって中へ入るかが問題か……」
てっきり、もう中に入れる段階なのかと思ったら全然そうでもなかった様子。『Ⅱ型』は破壊しやすいっぽいけど、ただ単純に破壊させれば済む訳じゃないのが厄介なのか。
うーん、目の前にある訳じゃないから、どこをどうすればいいのか……さっぱり分からん! こういうのは実際に見ないと、どこにどういう弱点があるかも探れない――
「あっ! みんな、こっち! ぶっ壊した推進部、シールドの影響はないっぽいよ!」
「っ! カステラ、ナイス! とりあえず、そこを突き破るぞ!」
「紅焔、慎重にね。ここで自爆されたら、台無しだからね」
「分かってるっての! 心配し過ぎんなよ、ソラ!」
おー、どうやら突破口が見つかりそうな予感! とりあえず、中に入れるまでは下手に口出しせずに待っておくとして……。
「十六夜さん、『縁の下の力持ち』で『Ⅱ型』との遭遇情報ってあったりしない? もし、何か参考になる情報があるなら欲しいとこなんだけど……」
「……遭遇情報そのものは結構あるが、どれも自爆されて終わっている状態だな。むしろ、飛翔連隊が今やっている件が気になるところだ」
「あー、そんな感じか。……無事に墜とすの、割と難しい?」
「……速い機動力に追いつく事自体は出来るみたいだが、ピンポイントで攻撃を当てるのが難しいみたいでな。たまに組んで動く事はあるとはいえ、俺らは連携精度は微妙だから……その辺は連携のものなんだろう」
「なるほどなー」
『縁の下の力持ち』にも実力者はそれなりにいるだろうけど、1人で対処するような相手にはなってない訳か。『Ⅰ型』は光学迷彩でのステルスと転移での逃亡、『Ⅱ型』は攻撃性能と機動性を持つって形で、完全に差別化されてるんだね。どっちを狙うのがいいのか、何とも言い難いっすなー。
「十六夜さん、質問です! 『Ⅱ型』の武装、実弾ですか!? それともレーザー的なやつですか!?」
「あ、それは気になるかな!?」
「確かに、その違いって大きいよね」
「あー、そうか。どっちの可能性もあるのか」
むしろ、UFOと考えるならレーザー的な攻撃手段の可能性は高い気もする?
「……武装に関しては、両方のパターンがあるみたいだな。機体ごとに違う可能性があるという話が出ていたが……」
「十六夜さん、多分それは違うぜ! どっちにも切り替えられるってのが正解だ!」
「……何? 紅焔、それはどういう事だ?」
「そのままの意味だよ! 俺らは実弾も、レーザーも、どっちも受けたからな!」
「切り替わる条件は分かりませんが、実弾の銃撃やミサイル、レーザーによる連射と溜めた太い一撃、どれも確認しています。射出口は実弾とレーザー、どちらも同じ場所からとなりますね」
「……切り替え式か。ケイ、これはどう見る?」
「んー、レーザーの方が魔法攻撃の判定になってそうな気がする?」
「あっ! 実弾が物理攻撃で、レーザーが魔法攻撃になってるのはありそう!?」
「……物理だけなら、魔法型が有利になりそうだもんね」
「確かにそういう可能性は考えられるか。となれば、『採集機Ⅱ型』はバランス型の敵に相当するのかもしれんな」
「……なるほど、あり得る見解だな」
パッと思いついた可能性だけど、曼珠沙華から同意が得られたなー。ダメージが大した事がないのは、ただ単に成熟体に至っているのが理由な気がするし――
「おっし! 後部に穴が空いたぜ! 『小型化』! UFOに突入だ!」
「紅焔!? カステラ、辛子、一緒に行ってくれるかい? ライルと僕で、周囲の見張りはしておくから!」
「待て、ソラ。今、この場に人が少ないとはいえ……交戦の可能性もあるぞ?」
「それは分かってるけど、索敵は僕が一番適任だしね。その心配が現実にならないように、手早く済ませてきてくれるとありがたいよ?」
「相変わらず紅焔は先走るし、変にここで言い合う方が時間かかるね!? 辛子、早く突入して素早く終わらせる方が正解だよ!」
「……それもそうだな。ライル、万が一の時は防衛を任せるぞ!」
「えぇ、任されました。死守してみせますよ」
紅焔さんの先走り癖は、相変わらずですなー。まぁ手早く済ませてしまえば、それだけ心配の種が減るのも事実だし……てか、今の望海砂漠って人は少ないんだね。
まぁ砂漠は色々と特殊だから、わざわざ狙いに行くには微妙なのかも? あそこは黎明の地での陸の北端でもあるから……折角、拾ったUFOの反応が海の方なんて事もあり得るもんな。そうなれば適応も切り替える必要があるから、探す場所としては人気はないのかも?
だからこそ、戦いたくないソラさんがいる飛翔連隊にとっては狙い目の場所なんだろうけどね。実際、人が少ない状態でUFOを墜とすって事が出来てるんだしさ。
「あー、あちこちパネルが光ってんな!? これ、どうすりゃいいんだ!?」
「ケイさん達が入った時、どうだった!? あんまり聞こえてなかったんだけど、探ってたんだよね? 何かヒント、ない!?」
「赤いパネルだけが光ってたぞ、カステラさん! ただ、同じ基準で考えていいかは分からんけど……」
どちらも『採集機』とはいえ、動き方は全くの別物。でも、ヒントになり得る情報はこの程度しかないのも現実なんだよなー。ここは共通であってくれ!
「ヒント、ありがと! それで……どう思う、辛子?」
「他に情報はないんだ。ケイさん達が見つけたUFOと同じな事に賭けてみるしかねぇだろ!」
「だよなー! おっしゃ、赤いパネルだけ残して、他はぶっ壊せ!」
「あー、やっぱりそうなるよね! 紅焔、威力は加減してよ! ここで自爆とか、絶対嫌だから!」
「爆発しそうなもんは特に見当たらないが……まぁ勢い余って、赤いパネルまで壊す訳にもいかんからな。抑えろよ、紅焔」
「だー! 分かってるわ! ここまできて、ミスってたまるかっての! 通常攻撃でなら、大丈夫だろ!?」
「うん、それで問題なし!」
「威力が足らなさ過ぎって事は……なさそうだな。むしろ、スキルを使えば、完全に過剰攻撃か」
「内部、思った以上に脆くねぇ!?」
ふー、なんとか『Ⅱ型』のUFOの内部破壊が始まったみたいだね。それにしても、通常攻撃であっさり壊れるとは……本当に脆いな? 外部ほど、内部の強度は高めてないだけ?
いや、焦って壊せば台無しになるって罠になってる気もするなー。墜とす時点から慎重さを要求されてるんだし、そういうギミックだと考えた方が良さそうかも?
「てか、赤いパネルってどこだ!?」
「緑だったり、黄色だったり、色々なのがあるけど……どこだろ?」
「なんだかレーダーみたいなのもあるな? こりゃ、ケイさん達が得た改造の元になってる機能か?」
まぁクオーツが改造してくれた物は、UFOにあったデータを元にした物だからな。本来のその機能があるのは、特に違和感はないけど……。
「それ、もしかして通信機能だけ破壊出来れば、それ以外の機能は引き出せる?」
「はっ!? それはある気がします!」
「ケイ、簡単に言うが……どれが何に対応してるかは分からんぞ?」
「いやまぁそうなんだけど、可能性としては面白くない?」
「まぁ確かに、狙った物をピンポイントで取れるならありだとは思うが……」
それが難しいのは、まぁ否定はしない。確実に通信機能だけは破壊しておく必要があるんだし、どれがどう対応しているのかを探るのは……現状では現実的な手段じゃないか。
「あー、赤いパネルは発見したけど……ケイさん、破壊は抑えめにしてやった方がいいか?」
「いや、今のは気にせず思いっきり破壊してくれ、紅焔さん! ソラさんが変に交戦状態に巻き込まれるリスクは作りたくないし!」
「おっし! そういう事なら了解だ! サクッと済ますぜ、カステラ、辛子!」
「了解!」
「おう!」
とりあえず、今は『Ⅱ型』なら段階的に破壊していけるというのが分かっただけでも大成果だろ! これで赤いパネルさえ残しておけば、『Ⅰ型』と同様にクオーツが情報を引き出してくれるならいいんだけどね。
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