第1529話 次の動き方


 ジェイさん達、青の群集の一団は去っていった。まぁ俺らが持ってきた落下物、後で回収しに来るつもりでいるっぽいけどなー!


「まぁ余った落下物は渡すのは……あー、十六夜さん、そっちに渡す方法を考えた方がいい?」

「……いや、もう下手に隠しておくのはやめておいた方がいいだろう。誰にどう持っていかれるか、読めなくなってきたしな。……流石に直接受け渡すのは手間がかかり過ぎるから、余った分はここに放棄で構わん」

「それもそだなー。なら、その方向でいきますか」


 転移して持っていけるのなら随分と楽にはなるだろうけど、それは出来ないんだから仕方ない。今の時点で近くにいるなら直接渡せるけど、それも無理そうな感じだし……後で回収出来るように隠したところで、無意味になってきてるしなー。


「おー! これ、いいね! 空に澱んだ黄色い矢印が出てるし、雰囲気的にモノクルって感じ?」

「……モノクルをかけたトカゲ?」

「ん? どうもレンズが元より小さい気がするが、サイズ調整がされているのか?」

「ラジアータ、その通り! 取り出して使用してみたら、パッとサイズが変わってね! 勝手に浮いてるし、これはいい感じ!」

「なるほど、そういう仕様か」


 ふむふむ、モノクルをかけたトカゲとは妙な感じな気もするけど……これ、本当に見た目通りのレンズっぽい使い方だな。モノクルって、確か片眼鏡だっけ?


「リコリスさん、それって瘴気の様子も見える?」

「うーん、分かんない? この辺、既に使われた後のはずだから、薄っすらな瘴気は見えてないよ!」

「あー、そういう問題もありか……」


 UFOはこの付近に転移してきて、すぐに墜落した感じだったぽいしな。UFO自体も瘴気を利用して転移をしてきて……って、ちょい待った。


「ふと思ったんだけど、クオーツがしてくれる改造って、要はUFOが持ってる機能だよな?」

「そうだろうが……ケイ、それがどうした?」

「場合によっては、転移先を指定出来る機能とか手に入ったりしない? もしくは、黒の異形種を引き寄せる機能とか」

「っ!? それ、ありそうかな!?」

「あったら、どっちもとんでもないね」

「もしあるなら、探す価値はありそうなのさー!」

「だよな!? 可能性、あるよな!?」


 それなりに使用制限はかかりそうだけど、探索を進めていく上でどんどん便利なアイテムが追加になってくる可能性は高くなってきた。もう闇雲に探す段階は抜けてきたのかも?


「……その辺の話は後だ。先にUFOを破壊しておくぞ。『アースクリエイト』『岩の操作』!」

「あ、それもそだな。十六夜さん、任せた!」

「……壊れてしまえ!」


 おー、巨大な岩がUFOを押し潰して、原型を留めなくなって、謎の砂へと変わっていっている。これ、本当にどう使うんだろ? 次にクオーツと接触出来た時に、忘れずに確認しとかないとなー。


「ケイ、この残った砂みたいなのはどうするのかな?」

「あー、どうすっかな?」


 ハーレさんにまとめて持っておいてもらうか? いや、それよりも分散させて持っておいて方がいい? 用途がまだ分からないから判断し難いんだけど……まず、こっちを確認しとくか。


「ハーレさん、この謎の砂ってトレードは可能?」

「ちょっと試してみるのさー!」

「ほいよっと。あー、出来るっぽいな」

「そうみたいなのです!」


 俺へとトレード画面を出してきて、その中に入れてこれたから、トレード可能なのは確定。いつでも持ち主を変えられるのなら1人に纏めて……いや、急な状況の変化にも対応出来るようにしておいた方がいいか。だとすると……ソロよりは、固定PTの方がいいな。


「曼珠沙華の誰か、この謎の砂を持っといてくれ」

「はいはーい! それじゃ私が持っと――」

「リコリス、待て! 勝手に決めるな!」

「えー、なんでさ!? 私達の中なら、一番UFOの中に入りやすいのは私だよね? あの中で使う可能性があるなら私がベスト! 彼岸花でも入りやすいとは思うけど、さっきみたいに中で誰かとバッタリ遭遇したらマズいでしょ?」

「……それは、そうかも? ラジアータ、ここはリコリスに託そう?」

「……理屈で考えた上でそうなるなら、仕方ない。任せるぞ、リコリス」

「ふふーん! それでよろしい!」


 ラジアータさんが不服そうではあるけど、まぁ理由としては納得なんだよな。実際、俺がUFOの中に入った時は身動きが取りにくかったんだから、同じサイズくらいのラジアータさんだと同様の状態になるのは簡単に予想は出来るしさ。なんなら、殻の分だけ俺よりも動きにくいかも?


「よーし、謎の砂は完了! ラジアータ、持ってきた落下物を頂戴! サクッと2個ずつ、もらっていきましょう!」

「……私とリコリスは、3個だよ?」

「あ、そうだった! ケイさん達の方のもあるんだったね!」

「……ラジアータ、分かりやすいように少し距離を取って置いておけ。各自で取っていくのが楽だろう。俺が持ってきたのは、ここに置いておく」

「あぁ、助かるぜ、十六夜さん。俺が持ってきたのは……このバオバブの木の南側に置いていくぞ」

「ほいよっと! それじゃ各自、落下物の回収をしていくぞ!」

「「「「おー!」」」」

「……何が……出るかな?」

「……クオーツの部品が出ればいいんだがな」


 あー、確かに次に改造する為の素材が足りない状態だし、最低限でもそこは確保しておきたいよなー。ハーレさんとリコリスさんが持っている、あの謎の砂は改造の素材に出来るかは不明だし……もし仮に素材に出来たとしても、クオーツとの通信を行うにはクオーツの部品が必須だしね。最低でも1個、出てこーい!



 ◇ ◇ ◇



 みんながそれぞれに落下物を回収していった結果……うん、ちょっとこれは予想外。目立って良いアイテムが手に入った訳じゃないのは残念だけど、まさかこうなるとは……。


「クオーツの部品、出過ぎじゃないかな?」

「俺、アル、ラジアータさん、風音さんで4つは流石に多いわ!」

「ふっふっふ! 多くて困るものでもないのです!」

「いやまぁ、そりゃそうだけど……」


 出てくれとは願ったし、同じ物への改造が可能なら、複数持っておくのもありだとは思うけども! それでも、一気に4個は出過ぎじゃね!?


「というか、特に色違いって訳でもないんだな?」

「ん? そういや、俺が最初に手に入れた時は色合いが少し違ってたような……? あれ? でも、今回は特に何も違いはなかったぞ?」

「もしかして、最初だけ特別に変化してただけかな?」

「あー、そうかも? イベントの演出進行の鍵だったしなー」


 あの時だけ、取り損ねないがないように見た目が少し変わってた可能性はあるかもね。今は単純なランダムに変わって、見た目で判断出来なくなってる可能性もある。


「……桜花さん、これだけクオーツの部品が出てきて、トレードも可能なら、市場に流れてはいないか?」

「あー、流石にまだ手放す奴は少ない……いや、自力で確保するのを諦めた人なら可能性があるか? よし、少しその方向で探ってみよう」

「……あぁ、頼む。俺らの方でも情報は探っておく」

「そういや、『縁の下の力持ち』ではクオーツの部品の確保はどんなもん?」

「……何人か、手に入れているな。入手確率自体はそう低くはないようだが……肝心の墜落したUFOとの遭遇の方が難しいようだ」

「あー、なるほど。確かに、そこは運任せの部分だしな……」


 リコリスさんが改造で手に入れた『採集機探知装置』は『侵食』での察知手段に近いみたいだけど……これで墜落してるUFOって探せないもんかね?


「んー、墜落してるUFOの反応ねー? 拾えそうな予感はするけど、実物の反応がないと分かんないかも!」

「ですよねー!」


 このダダ漏れになってるの、早く直してー!? くっ、今は連休中だし、どんなに早くても連休が終わってからか。まぁ今は、それは置いといて……。


「とりあえず、実際に『侵食』での察知との違いを確認してみるしかないけど……リコリスさん、そのレンズってトレードは可能?」

「ん? あ、そういやどうなんだろ? 彼岸花、ちょっと試させて!」

「……うん」


 改造前のクオーツの部品ならトレードは出来たけど、改造後の今のアイテムだとどうなってるかが重要だよね。俺の持ってる翻訳のアイテムも、ちょっとトレードが出来るか確かめてみるか。


「サヤ、ちょっと俺も試させて」

「え? あ、うん。分かったかな!」


 という事で、サヤとトレード画面を開いて、インベントリから『意思感知式翻訳装置』を選択して……あ、ダメだ。これ、トレード画面に移せないようになってるのか。


「翻訳のはトレード不可になってるな」

「こっちのレンズも無理っぽいねー! これ、誰が改造するかも考えた方がいいかも!」

「だなー」


 翻訳はその場にいる全員が対象になりそうだから、誰が持ってても問題なさそうではある。いやまぁ、まだ使った事がないからハッキリと断言は出来ないけど……。

 でも、『侵食』と同じ効果が見込めるレンズの方は向いてない人がいるのは間違いないな。少なくとも、移動に専念してほしいアルより……ん?


「ずっと使いっぱなしに出来るなら、このレンズをアルに確保してもらうのもあり? それなら、わざわざ俺らが指示出す必要もないよな?」

「……確かにそれはありかもしれん。リコリスさんが既に手に入れているんだし、移動に専念したい時は全面的に任せればいいだけだしな」

「ふふーん! 確かにそれはありかも!」


 曼珠沙華と常に一緒に動ける訳じゃないのは、弥生さんとシュウさんに負けた件で実感済みだから……そういう意味でも複数個、持っておくという選択肢もありなはず。


「……ケイさん、そもそも複数、同じ物への改造は可能なのか?」

「クオーツとの交渉自体は可能だったんだから、交渉次第ではいけると思う。ただ、時間制限もありそうだから、初めからそのつもりで交渉しないと駄目かも……」

「それは大事だけど、それ以上にまだ持ってない機能を手に入れるのが先なのさー!」

「あはは、まぁ優先順位はそっちが上だよね。落下物を探すレーダーがあるのは確定なんだから、それは確保しておきたいし……」

「ですよねー!」


 うん、そこはハーレさんとヨッシさんの言う通り。先に手に入れるべきは、2個目の『採集機探知装置』じゃなくて……名前、なんだっけ? あぁ、思い出した! 『紛失サンプル探知装置』か! そっちを手に入れるのが優先だな!


「……もう……『侵食』の進化の軌跡は……不要? ……結構……出てたけど?」

「あー、とりあえずリコリスさんの持ってるレンズが完全に代用になるかの確認からだな。同等以上の性能があるなら、曼珠沙華と一緒に行動中には不要かも?」

「ふっふっふ! 私の役割が大きくなってきたね!」

「調子に乗るなよ、リコリス。……狙われるぞ?」

「狙われるって、誰に!?」

「……他のプレイヤー? 妨害するには、良い的かも?」

「はっ!? それは確かにそうかも!?」


 なるほど、そういう視点では考えてなかったけど……確かに有効な手段ではあるな。『侵食』での察知は誰が使ってるかは……死んだ後だから見た目からでは分からないけど、モノクルを付けていれば察知手段を持っているのは一目瞭然だしね。

 もし交戦に入るかもしれないと分かった状態で、その姿を見たとすれば……潰しに動くのはあり得るかも。少なくとも、まだUFOとの距離があって、戦闘が避けられない状況になれば、俺なら最優先でそういう人を狙う! となれば……。


「リコリスさん、出来るだけアルのクジラの上からは離れないようによろしく! ここなら守りやすいしなー」

「集中的に狙われたくはないから、よろしく! あ、戦闘中には外しておくのもあり?」

「ありだけど……それはあくまで、最終手段にしてくれ。UFOの動向が分からなくなるのは困るしさ」

「あ、それもそだね! うん、了解!」


 さて、落下物の確保と、次の動き方自体はこれでいい。ここから、またUFOを探しながら――


「あっ! 南西の方にUFOが動いたね! ……これ、ちょっと遠いかも?」

「どうもそのUFO、群雄の密林へと向かってきてるみたいだな」

「ん? 桜花さん、侵食での察知なしでも分かるのか?」

「あぁ、光学迷彩で消えてない様子だし、目視出来る距離だからな。これ、『Ⅱ型』の方みたいだぞ」

「あー、なるほど。まぁそこは俺らには割り込みようもないし、何か成果があったら報告をよろしく!」

「おう! さて、ここで大暴れしようって馬鹿な真似をしてるUFOは、どうなる事やら?」


 まさかの強襲みたいだけど……まぁ灰の群集の不動種の並木へ挑むとは、自滅しに行くようなもんだよなー。強い人は結構出払ってそうではあるけど、それでも結構な人がいるだろうから墜とされるのは時間の問題だろ。

 あー、でも逃げられたり、過剰攻撃で大破って可能性はあるのか。……それはそれで、仕方ないのかも?


「あ、そうだ。曼珠沙華に確認したいんだけど、昨日の全壊したUFOはあれからどうなった?」

「ふふーん! あれならしっかりと埋め立てたよ!」

「……谷から少し東に行った所に埋めたよ」

「容易には掘り起こせないはずだ。……ケイさん、何か気になる事でもあるか?」

「あー、そのレンズに反応が出ないかなーと? ほら、クオーツが砂になるくらいに機能停止させてたなら……あれ、まだ結構原型が残ってる状態じゃん?」


 万が一、あの状態でも僅かに機能が残っているのだとすれば……何かある可能性はある。それが何かは、正直分からないけどさ。

 それに、あの谷の近くなのであれば……翻訳を試しに行くのもありだろ。またあのアルマジロを突破しないといけないかもしれないけど……今度は言葉が途切れる事はないはず!


「……まだ、あれは完全な全壊じゃない?」

「んー、確かにあの砂の様子を見てたら、それは怪しく思えてくるかも?」

「一度、確認に戻るのもありかもな。あの近くなら、翻訳を試せる可能性もあるだろうよ」

「そうそう、そっちも狙い! みんな、どう?」


 UFOの動きを見ながらにはなるけど、行動方針としてはありだと思うんだけど……さて、どういう反応だ?


「はい! それでいいと思います!」

「私も賛成かな! あのアルマジロ、ちょっとリベンジしたいし!」

「サヤ、引きつけ切れなくてガッカリしてたもんね。うん、私もいいと思うよ」

「ま、黒の異形種から色々聞くのも、本当にあのUFOが全壊じゃないのかも、気になるとこではあるしな。その方針、賛成だぞ」

「……うん……賛成!」

「……多少の無茶をしてでも、探る価値はあるだろうな」

「ふふーん! それじゃ私達、曼珠沙華が道案内だね!」

「谷の近くまでは、道案内は不要だろうがな」

「ふっふっふ! それでも埋めた場所を知ってるのは、私達だけだから!」

「……威張る事でもないよ?」

「ともかく、出発! 谷のとこまで戻るよー!」


 反対意見は特にないし、次の目的地は決定! まぁ道中でUFOの反応を拾ったり、落下物を見つけたらそっちに動く事もあるだろうけどなー。


 

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