第1526話 合流先へ移動


 合流方法を考えてた最中に動きがあったから、予定は急遽変更! リコリスさんの見える範囲にUFOが墜落しているなら、最優先はそっちだ!


「ケイ! 水流を出せ!」

「ほいよっと! あ、水流の操作じゃなくて、移動操作制御の方で大量の水を出して水流を作るぞ? 多分、あっちの方が現象は同じでも、速いからな!」

「サラッと無茶を言うな!? だがまぁ、任せるぞ!」

「任せとけ!」


 最早、あの規模だと水流というよりも津波なんだろうけど……まぁそこは特に気にする必要はない! 気を付けるべきは、下手に敵を巻き込んで、強制解除になる事か。


<行動値を6消費して『獲物察知Lv6』を発動します>  行動値 115/121(上限値使用:10)


 ここからリコリスさんの元までは……あー、結構敵はいるな。出来るだけ上空を通って、巻き込まないようにしないといけないか。まぁ進行方向にプレイヤーはいなさそうなのは、運が良かったかも?


 あ、そうだ。思いっきり移動していくなら、これは解除しとこ。多分、同時に操作するのは無茶な事になりそうだしさ。


<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 115/121 → 115/127(上限値使用:4)


 飛行鎧、解除! 俺はアルを流していく大量過ぎる水に専念するととして……。


「風音さん、小型化してアルの上へ! 十六夜さん、みんなが落ちないように固定を任せた! ついでに落下物の運搬も!」

「……うん! ……『小型化』!」

「……了解だ。『並列制御』『アースクリエイト』『アースクリエイト』『並列制御』『岩の操作』『土の操作』!」


 よし、風音さんは小さくなってアルのクジラの上に飛び乗ったし、十六夜さんが土で残ってた落下物を全て覆って、その上からみんなの固定もしてくれたから、準備はこれで問題なし!


<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅱ』を発動します>  行動値 115/125 → 115/125(上限値使用:6)


 生成量は、無茶苦茶多い方で! ……よし、どんどん生成されていく水の上にアルが触れたのを確認。さーて、やっていきますか!


「……派手にやるもんだな」

「……十六夜さん……固定は……負荷は……大丈夫?」

「……速度が出る分、負荷は多いだろうが……まぁ不安定なものには慣れている。よほど動きが乱れまくらない限り、大丈夫だ」

「……それなら……大丈夫そう」


 なんだか俺へのプレッシャーが結構ある気がするけど……ともかく、夜空を流れていこうか! 出来るだけ、地面からは離れるように操作して……規模こそとんでもなく広いけど、操作感自体は大差ないはず! ……よし、上空までは上がってこれた。

 ここから思いっきり流していくために、一旦後方の流れを作ってから……ある程度のところで折り返して、一気に津波を作り上げて――


「おぉ!? 夜空に向かって、流れていってるのさー!?」

「……あはは、これってものすごく勢いが出るパターンだよね?」

「ヨッシ、大丈夫かな?」

「……急ぐし、まぁこれまでもこういう事は何度もあったから、大丈夫だよ」


 あ、勢いがありすぎてヨッシさんが苦手なパターンになるのか!? いや、アルがちゃんと流れに乗ってくれて、俺が波を乱したりしなければ、速度は出ても揺れまくる事はないはず!


「わー!? 津波が迫ってくるのさー!?」

「アル、ちゃんと乗りこなせよ!」

「無茶振りをしてくれるな!? だがまぁ、やるだけやってやるっての! 『自己強化』!」

「いやっほー! 夜空の波乗りクジラ、出陣なのさー!」

「あ、今回は船じゃないんだね?」

「パターンがいつもと違うかな?」

「船の名称、思い浮かばなかったのさー!?」


 まぁサーフィンをする船なんていないんだし、名前が出てこなくても仕方ないだろうね。……ないよな、サーフィンをする船? そもそもクジラなんだから、船でもないけどさ。


「ちっ! 水流の操作には単に身を任せてればよかったが、こっちは少しでもミスれば呑まれるぞ!?」

「どんどん加速させるから、呑まれるなよー!」

「おい、待て!? この手段、想像以上にヤバい代物になってねぇか!?」

「大丈夫、大丈夫! 呑まれた時は、解除して解放するだけだから!」


 という事で、進行方向とは逆向きにも波を作り出して、徐々に勢いが落ちてくる波の勢いを、更に強めていくまで! んー、流れがある前提の水流の操作と違って、意図的に流れを生み出し続けないと、結構早い段階で勢いは失われていくのは発見かも?

 でもまぁ、この規模の津波は上空でなら制御出来そうだね。これ、対人戦で大規模攻撃にも使えるかも? あー、でも操作時間の削れ具合ってどんなもんだろ? 今は移動操作制御だから、そこら辺はよく分からん!



 ◇ ◇ ◇



 夜空に流れる津波に乗って、リコリスさんの元へと移動中。でも、これは流石に無視出来ないか。


「前方にフクロウ! 風音さん、当たらないように対処を頼んだ!」

「……任せて! ……『アースインパクト』『アースインパクト』!」

「ナイス!」


 よし、真上へとフクロウを叩き上げてくれたから、下手に当たらずに済んだ。アルは体勢を保つのが結構大変みたいですなー。

 時々、バランスが崩れかけるのを十六夜さんが岩の生成量を増やして重量で調整してくれてるからね。そういう状態だから、無理に回避行動を取るよりも、敵の方を退けてしまう方が確実! 


「ヨッシさん、大丈夫か? 思った以上に揺れてるけど……」

「あ、うん。意外と大丈夫。揺れるにしても、もっと無茶苦茶な時もあったし、その時より安定してるしね」

「『スチームエクスプロージョン』で吹っ飛ぶ時よりは、遥かにマシなのです!」

「その分、アルに負担がいってるみたいかな?」

「まぁアルは頑張ってくれ!」

「軽く言うよな、ケイ!? 一瞬で吹っ飛ぶのと違って、下手に集中力が途切らせられ……おわっ!?」

「……アルマース、大丈夫か?」

「また助かったぜ、十六夜さん。こりゃ、どこかで要練習だな……」


 ふむふむ、どうしても水流の操作とは流れ方が変わってくるから、波乗りをするにはコツが必要になるっぽいね。

 んー、アルのバランスを保つ必要がなく、ただ無秩序に流すだけでいいのならもっと簡単に出来るけど……安定した移動手段として使うのなら、それなりに慣らしは必要かもなー。


「おー! なんか、凄い光景が見えてきた!」

「おっ、リコリスさん! なんか静かだったけど、そっちはどう?」

「今、UFOの目の前に辿り着いて、これから中に入るところ! ケイさん達、もう目視が出来る距離まで来てるし、周囲の警戒をよろしくー!」

「ほいよっと!」


 どうやら、あっという間にUFOの近くへとやってきていたらしい。他の群集の人の反応も特にないし、普通に一番乗り――


「っ!? ケイ! 少し様子がおかしいかな!?」

「わー!? UFOの先、プレイヤーがいるっぽいのさー!」

「はい!? え、でもそんな反応は……って、獲物察知の妨害か!」


 ちっ! 進行方向の先だから、反応が途切れているのに気付けなかった!? サヤとハーレさんの目視確認が間違ってるとは思えないから、そういう状況になるのは、獲物察知が妨害されている時――


「はっ!? アルさんに攻撃が――」

「よう、ケイ。こりゃ、随分と派手な真似をしてるな?」

「っ!? スミ!?」


 ちょ!? 投げた小石から『コケ渡り』で移動してきたのか!? 今のタイミングで、そういう芸当をしてくるって事は……サヤとハーレさんが見つけたのは、スミのいる青の群集の一団かよ!


「アル、波から離れて、みんなと下に降りてくれ! スミは俺が相手をする!」

「なっ!? おい! ちょっと待――」

「おう! 『旋回』!」

「ちっ!」


 おわっ!? 旋回で強引に波から抜け出し……いや、それくらい強引でいい! そうじゃないと、スミを振り落とせないし、俺がやる事の規模的にも下手に巻き込むだけだしな!


「おい待て、灰の暴走種! 別に俺は戦いに来たって――」

「その呼び方、するなって言ったよな! 呑まれろ!」

「くっ! 『コケ渡り』!」


 ちっ、近くにコケ付きの石を投げて、コケ渡りの擬似転移で回避したか。でもまぁ、その程度で逃すかよ! スミのいる場所を起点に、2つ目の大量の水を生成!


「っ!? がぼっ!?」


<ダメージ判定が発生しました。あと2回の発生で『移動操作制御Ⅱ』は強制解除になります>


<ダメージ判定が発生しました。あと1回の発生で『移動操作制御Ⅱ』は強制解除になります>


<『移動操作制御Ⅱ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 115/125 → 115/127(上限値使用:4)


 すぐに3回分のダメージ判定は出たけど、その間に思いっきり地面に向けて流してやった! 水は消滅しても、地面に叩きつけられて――


「『アースクリエイト』『砂の操作』!」


 ん? 聞き覚えのある声で砂が生み出されて、スミの落下の衝撃を殺している様子だけど……これ、ジェイさんか。


「青の群集の一団の、本隊が登場かな?」

「そうみたいなのさー! アルさん、速度は落とせますか!?」

「いや、すぐには無理だな。少しUFOの周りを旋回して、安定させないと地面に突っ込みかねん」

「流石に墜落するのは嫌だもんね」


 ふぅ、なんとかアルも無事に体勢を立て直せそうでよかった。……強引に水で勢いを殺す事も出来るけど、今はそうしない方がいいかもね?

 スミは俺らとの戦闘を望んでた風ではなかったし……まぁ狙いはどう考えても、目の前に見えている墜落したUFOか。そりゃ、狙いにきますよねー!


「スミ、だから言ったでしょう? ケイさん達に、奇襲に見えるような攻撃は控えるようにと……」

「……ちっ。ジェイ、今の程度なら、自分で切り抜けられたんだがな」

「切り抜けられても、そのまま戦闘に流れ込んでも困るだろうよ。違うか、スミ?」

「あー、分かったっての。今のは俺の判断ミスだ。それでいいか、斬雨?」

「おう、いいぜ。さーて、ケイさん達、ちょっと話でもしねぇか?」

「主に、そこにあるUFOに対してどうするかという話し合いですね」


 うーん、まぁ狙いは思った通り。だけど、スミとジェイさんと斬雨さん以外の姿が見えないのは……どこかに隠れているからか? 獲物察知が妨害されている状態だから、周囲の状況が分からん!

 でも、確かあれは味方の分まで妨害してたはずだから……リコリスさんが既にUFOの中を探りに行ってるのはバレてないはず。だとすれば、ここは話に乗るように見せつつ、時間稼ぎが最適解か。


「あー、その前にはっきりと確認しときたい。戦闘の意思はないって事でいいんだよな、ジェイさん?」

「えぇ、その認識で構いません。あの移動の勢いの中、どうやって対話に持ち込むか悩んでいたとこに、スミが突っ込んでいっただけですしね」

「その結果が、さっきの返り討ちだけどな」

「うるせーよ、斬雨! でもまぁ、懐までは飛び込めるのは分かったぜ」


 あー、まぁさっきのは、流石にあそこまでの接近を許したのは油断だったかも……。戦闘するつもりだったのなら、あの状況はかなり危険な踏み込まれ方をした訳で……ふぅ、臨機応変な対応が難しいのは、さっきの移動の欠点か。その辺、何かしらの改良の余地ありだな。


「ねぇ、ねぇ! サヤ、あそこの岩、なんか変じゃないですか!?」

「どの岩かな? ここ、岩山の岩場みたい感じだけど……」

「左下のあそこ!」

「あ、本当かな。少し色合いが他と違うし、ちょっと周囲から浮いている様子かな?」


 なるほど、そこが他のメンバーが隠れいる場所か。てっきりジェイさん達はもっと南に反応があった青の群集の一団かと思ってたんだけど、まさか獲物察知の妨害をしながら進んでいたとはね。これ、メリットあるの?


「ジェイさん、獲物察知の妨害をしてるのはなんでだ?」

「いえ、これは単に『侵食』での察知を妨害出来ないかと試してみただけですよ。まぁどうやら、失敗したようですけどね」

「……『侵食』での察知の妨害ねぇ?」


 確かに、試してみたい可能性ではあるけども……俺らがここへ来た事で、失敗だと判断した? いや、待て。今のイベントの状況で、他のプレイヤーの反応を見る必要がある試し方なんかするか?

 今のジェイさんの返答、何か違和感がある……。もう妨害しているのがバレているのに展開を続けているのも変だし、サヤやハーレさんが岩を見抜いているのに、それに対する反応も薄い様子に……って、これ、時間稼ぎか!?


「リコリスさん、要注意! そっちに誰か行ってる可能性が――」

「へ? わっ!? カメレオン!? これ、譲らないからね!」


 ちっ! やっぱり、俺らを足止めしている間にUFOを探る算段だったか!? でも、リコリスさんが先に入っててくれてセーフ! 中の状況は分からないけど、それでも完全に出し抜かれるのだけは防げたか。


「……そちらも、既に潜り込んでいましたか。さて、ケイさん……どうします? ここでUFOを取り合いましょうか?」

「落下物なら分け合えそうだけど、UFOはそうもいかないもんな」

「えぇ、そうなります。そして、それが分かっているという事は、少なくとも1つは回収している訳ですね」

「それは、そっちもだろ」

「まぁ否定はしません」


 この状況、一体どうする? UFOの中に、ジェイさん達は何人送り込んでいる? リコリスさんだけで凌げるなら任せたいけど、下手に中の状況を聞くのは邪魔しかねないよな。

 かといって、ここで潰し合って上手くいくかは……正直、分からん! リコリスさんに戦ってもらって、妨害を破ってもらうか? それで人数差が分かれば、動きを決めやすくもなるけど……そう甘い相手じゃないよな、ジェイさんは。

 即興で作戦を立てるタイプじゃないから、これは用意していた対応パターンのはず。UFOの中に、先客がいた場合の作戦を用意していても不思議じゃない。


 まったく、嫌なタイミングで嫌な人に遭遇したもんだよ。UFOで改造を得るのは完全に早い者勝ちだから、諦めるか奪い合うかの二択しかないもんな……。これ、どう動けば出し抜ける?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る