第1525話 次の探索へ
俺らが得た翻訳アイテムとは全く別物で、落下物を察知するレーダーをシュウさん達が持っているとはね。予想していた可能性ではあるけど、実物を目にすると……欲しくなってくるもんだな。
「……そうなると、青の群集にはこれと同じ物を持ってる人がいそうだね」
「あー、確かにそうなるかも?」
こういう手段があるのなら『縁の下の力持ち』から情報漏洩があった可能性は極めて低くなったか。全く可能性が無くなった訳じゃないけど、あの青の群集の一団がシュウさん達と同じ手段を得ている考えた方が筋は通る。何より、味方を疑う必要が無くなるしさ。
「……俺らの方から情報漏洩の心配は、必要なさそうだな」
「ですなー」
「おや、そういう心配をしてたのかい? ……なるほど、ソロの集まりなら個別に伝手はあるだろうし、心配する理由は――」
「っ!? ねぇ、それってケイさん達が私達と情報交換するのも不味くない!? ちゃんと了承、取れてる!?」
「……へ? あっ!?」
しまった!? 勢いに任せて情報交換をやってしまったけど、この場にいるメンバー以外の了承は取ってない!? 弥生さんのその心配、マジで――
「……その辺は心配いらん。ケイさん達と協力して動くとなった時点から、うちのメンバーは了承済みだ」
「……駄目なら……止めてる」
「流れがイマイチ分からんが、飛翔連隊としてもケイさんの決定には従うぜ! 必要な事だろうしな!」
「曼珠沙華も同じく!」
「……方針は、任せるよ?」
「あ、全然問題なしか」
危ない、危ない! 俺らが直接得た情報だからって、一緒に協力してる人達の意思確認を怠るのは駄目だよな。……まぁなんか思いっきり白紙委任されてるっぽいから、結果的には問題なかったようだけどさ。
「ほっ、それなら良かったよ。シュウさん、今回は強引だったしさー!」
「……まぁ僕らとしても、思いっきり襲われてはいるからね。これくらいの強引さは、大目に見てもらいたいとこだけど……」
「あー、まぁ結果オーライって事で!」
確かに半ば強引に情報交換に押し切られた感はあったけど……結果的には、損をしている状態ではない。むしろ、『縁の下の力持ち』への情報漏洩の疑惑が解消出来たくらいなんだから、有益ですよねー!
それに、青の群集にも同様の手段を持っている人がいる可能性が分かったのも大きい。タイミングの問題もあるんだろうけど、下手に隠して味方へ落下物を受け渡すのは難しくなったと考えた方がいいな。
「ちなみにケイさん、そっちの翻訳はどういうアイテム名だい? 僕らの方のレーダーは『紛失サンプル探知装置』という名前なんだけども……」
「あー、『紛失サンプル探知装置』って事は、失くしたって扱いになるのか……」
勝手にやってきて、勝手にあちこちでサンプルを集めて……いや、向こうからすれば故郷の地の異変調査って事になるから、勝手をしてるのは俺らの方になるのか?
うーん、仮に立場的にそうなったとしても、プレイヤーの精神生命体になった経緯やクオーツの憤りを考えると、なんかそれはイラッとするな。まぁ今はそこは置いておくとして……。
「こっちのは『意思感知式翻訳装置』って名前だな」
「……意思感知式? 言葉をそのまま訳している訳じゃないのかい?」
「あー、多分? まだこれは一度も使ってないから、実際にどんなものかは分からんけど……」
「……なるほど。まぁ確かに、使ってないなら分からないのは仕方ないね」
ぶっちゃけ、黒の異形種の骨の竜と対話した時と同じようになるとは思うけどなー。頭の中に直接響く、テレパシーみたいなあれだよね。
「さて、情報交換はこんなところで終わりだね。これ以上は……お互い、秘匿情報に触れかねないだろう?」
「……だなー」
何気に他にも情報を持ってると言ってるけど……これ、本当に情報を持ってる? 今みたいに同意させて、俺らが隠してる事があるって探ってたりしない? ……黒の異形種との対話の内容を、色々と詮索してこないのは助かるけどさ。
まぁ下手に掘り下げて変な方向になっても面倒だから、そのまま乗っかってしまおうか。さーて、そういう方向でいくなら、これからの動きは……。
「それぞれに落下物を確保して、そこから別の方向に……あ、十六夜さん、ここにくるまで察知してたUFOの反応はどうなってる?」
「……既にUFOの反応自体は消えているが、落下物の反応は残っている状態だな。だが、反応が移動しているから……誰かが持ち運んでいるようだ」
「あー、そうきたか……。運ばれた時って、どこまで反応を追えるんだ?」
「……分から――いや、今、反応が消えたな。ある程度移動すれば、追跡は無理のようだ」
「マジかー」
うーん、流石に持ち出されたのを追跡し続けるのは不可能なんだな。それをしようと思えば、それこそシュウさん達の持っているレーダーを使うしかない訳か……。
「別々の方向に進んだ方がお互いにやりやすいだろうし、僕らはそっちを追いかけようか。ケイさん達もその方がいいだろう?」
「まぁ、そうなるなー」
ランダムリスポーンになった曼珠沙華の3人とも合流しないといけないんだから、シュウさん達と一緒に行動するのは控えておきたい。俺らだけなら休戦や共闘も可能だろうけど……曼珠沙華が一緒な時はどう考えても無理だしね。
「そういう事なら、シュウさん達に先に回収してもらうのがよさそうかな?」
「ですなー。シュウさん、それでいい?」
「問題ないよ。手早く回収して、持ち運んでいる物を探しに行こうか。状況次第では……弥生、いいね?」
「交戦も交渉も、了解だよ!」
「……ふん。よく弥生さんが了承したもんだな、この作戦」
「俺らはともかく、弥生さんのは大暴れが大前提だし……半ば強盗じゃない?」
「そうなるかは、相手次第ですよ? ラピス、ディー、どちらかと言うと戦闘の機会を抑える為の方針なのもお忘れなきように」
「……分かっている」
「へーい。さーて、回収、回収!」
ほほう? 弥生さんの戦闘、今回のイベントでは全面的に解禁なんだ? シュウさんが一緒に動いているからこそだろうし……よく、俺らとは戦闘にならなかったな!? いや、強行策を用意しているだけで、元々は交戦の予定にはしてないのか……? うーん、曼珠沙華を連れてきておいて正解だったのかも?
まぁいいや。とりあえずシュウさん達が落下物を回収し終えてから、俺らも回収していこうっと。
◇ ◇ ◇
シュウさん達が落下物を回収し終えて、すぐに南へと立ち去っていった。それからすぐに俺らも回収したけども……。
「あー、今回はさっぱりか……」
「あはは、まぁそういう事もあるかな?」
「まぁそうだよなー」
誰もレアアイテムを手に入れる事なく、無難な食材やら進化の軌跡を手に入れた程度。改造に使用したから、クオーツの部品が新しく手に入ればよかったんだけど……流石にそう都合よくはいかないか。
「ケイさん、ケイさん! これからどう動きますか!?」
「あー、どうすっかな? 十六夜さん、察知の効果時間の残りはどの程度?」
「……もうすぐ切れるから、切れたらグリーズ・リベルテの誰かがやってくれ」
「まぁそうなるか。それは了解――」
「はい! 私がまたやってもいいですか!?」
「……いいけど、今回も纏浄で相殺するか?」
「ううん! 死んで、アルさんの木から復活してくるのさー! 共生進化に戻す為にログアウトして、その後に効果がちゃんと残るか、確認なのです!」
「あー、確かにそれはやっておくべき確認――」
「……それなら、『縁の下の力持ち』で確認は取れている。ログアウトしても効果時間に影響はないぞ」
「あぅ!? 既に確認が終わってたのです!?」
なるほど、ハーレさんが試そうという理由も分かるけど、その程度の内容であれば既に確認済みか。まとめはろくに機能してないだろうけど、『縁の下の力持ち』がそういう役割を果たしてくれるのはありがたいもんだねー。
「まぁ機会があれば、試すよね。午前中に時間はあったんだしさ」
「普段が共生進化なら、自動的にそうなりそうかな?」
「確かにな。まぁ気兼ねなく死ねて、気楽だろうよ」
「だなー。あ、ハーレさん、リスポーン位置の使用回数だけは気を付けておけよ! 死んだ後に回数が無くなってるのに気付くと、悲惨だからな」
「あぅ!? それは確かに悲惨なのです!?」
頻繁に死ぬ訳じゃないから、普段は残り回数はそれほど気にしない。だからこそ、今回みたいに確定で死ぬような状況では回数の確認を疎かにしないように――
「話しているところで悪いんだが……少しいいか?」
「ん? ラジアータさん、何かあった?」
「あぁ、落下物を見つけてな」
「おぉ!? ナイスなのさー!」
「そういう事だから、俺の方へ合流出来るか? 位置的には、そこから西の方になるが……」
「見つけてるなら、そっちに向かうのがよさそうだなー」
えーと、ラジアータさんの現在地は……西側だけど、そこそこ距離はあるか。ん? ラジアータさんって、そもそもこんな離れた位置にランダムリスポーンしてたっけ?
シュウさんと弥生さんに仕留められた後、大雑把に位置は確認したけど……もうちょっと近かった気がするんだけど?
「……ラジアータ、『侵食』を使った?」
「あ、そういやさっき死んでたよね! 会話の邪魔しちゃ悪いと思ってたから、静かにしてたけど!」
「あぁ、その方が無駄も抑えられるからな。ランダムリスポーンで少し遠くはなったが、すぐに見つかったからそれだけの価値はあっただろう」
「いつの間にか、進化してたんかい! いやまぁ、いいけどさ」
別行動中に探索してくれとお願いはしてたんだから、その成果を得る為にも必要だったのかもなー。ちゃんと成果として落下物が見つかっているんだし、悪い結果ではないよね。
彼岸花さんが俺らより北西、リコリスさんが南西にいて、ラジアータさんがその更に西側という感じか。んー、途中で拾えそうなら拾って、それが無理ならラジアータさんのとこで合流が無難かも。
「ケイさん! 私が進化するのは無しですか!?」
「あー、今はその方がいいかもなー。ラジアータさんのとこに落下物があるなら、無理に次を探すと変に優先順位が狂うし……次に探す機会で頼むわ」
「はーい! ラジアータさん、個数はどうですか!?」
「人数分、ギリギリってところだな。誰かが回収して、残った分があった感じだ」
「はいはーい! ラジアータ、それを持って移動してくるのはどう? 落下物を察知する手段があるみたいだけど、移動してたら狙うのは避けてくるんじゃない?」
「……そうか? むしろ、俺単独だと奪ってくれと言ってるようなもんだろう?」
「ふふーん! それはほら、ケイさん達のさっきまでの移動手段で派手に……あ、私がいないんだった!?」
あー、俺らがまた大きく目立つようにして、合流の邪魔をさせないって方法か。まぁ俺だけでも成立させられなくもないけど……ちょっと手間がかかるのは間違いないな。あー、十六夜も土の昇華を持ってるんだから、同じ事は可能ではある?
「……別に、ラジアータが落下物を持って、戦闘を避けて動くだけでいいだろう? 逃げ回るだけなら、どうとでもなるはずだ」
「簡単に言ってくれるな、十六夜さん。だがまぁ、ただ突っ立って待っているよりは、動く方が合流は早いか」
ふむふむ、確かにそれはありな手段だな。こっちにも余ってる落下物は結構あるし、曼珠沙華の3人分は持っていきたいとこだしね。
俺らの持ってる翻訳アイテムや、シュウさん達の持ってるレーダーがどの程度、手に入っているかにもよるけど……『侵食』での察知だけなら、それほどリスクにはならない――
「ケイさん、俺はここにある落下物を持って、そっちに向かう。それでいいか?」
「いいけど……無茶はするなよ? もし囲まれたら、手放してもいいからな」
「……いや、それは聞けないな。やるからには全力で死守させてもらう」
「ちょ!? そこまでする必要は――」
「勝算無しで言っている訳じゃねぇよ。ケイさん、そっちに落下物は何個残っている? そう少なくはねぇだろ?」
「へ? えーと、まだ20個くらいは……あー、なるほど。俺らもこれらを持っていけばいいんだな? それでラジアータさんが見つけた分は、見逃してもらうって手段か!」
「あぁ、そうだ。問答無用で襲われない限り……いや、仮に襲われたとしても、戦闘無しで確実に手に入るのが別にあるなら交渉の余地はあるだろうよ。俺らとしても損失はない分だしな」
「だなー。よし、そうしよう!」
もしレーダー持ちなら、他の多くの落下物が近付いてくる様子は分かるだろうし、俺らが持っていくのは曼珠沙華の分を除けば余り物。渡したとしても、損失は皆無!
「……まぁ必ず交戦になる訳でもないし、無事に合流したいかも?」
「それはそだねー! ふふーん! 一気に2個、手に入れるチャンス!」
「……リコリス、私達は急いでラジアータの方に向かうよ? ……私達じゃ獲物察知で周囲の状態も探れないし、ラジアータだけに任せるのは駄目」
「むー、1人で動くとそういう部分は厄介なんだよねー。まぁ仕方ないし、ラジアータを守りに行きましょうとも!」
「早く来てくれ。リコリス、荷運び役は任せるぞ」
「ちょっと待って!? 荷運び役、やらせる気なの!?」
「移動は、リコリスの担当だろう?」
「それはそうだけど!? うがー! なんか急いで行く気、なくなってきたんですけど……」
「……リコリス、文句は言わない」
「……はーい」
うん、まぁ本人達が渋々ながらでも納得してるならこれでいいか。とりあえず、俺らは俺らでここにある落下物を持って移動して――
「あー!?」
「っ!? リコリス、そっちにUFOか!?」
「ラジアータ、正解! ステルスはほぼ機能してないし、距離も近いし……これ、多分この先に墜落する!」
「ちょ!? このタイミングで、そうなる!? あー、予定変更! 集合場所、リコリスさんのいる場所で! リコリスさん、落下物はこの際どうでもいいから、UFOの内部を探りに行ってくれ!」
「はいはーい! 可能そうなら、サクッと改造にしちゃうね!」
「そのつもり! リコリスさん、頼んだ!」
「お任せあれ!」
すごいタイミングでUFOの墜落になってきたけど、クオーツの部品を持っているリコリスさんの目視可能な範囲ってのは運がいい! 他の人の動きがどうかは不明だけど、改造を狙う大チャンス!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます