第1523話 UFOの破壊


 UFOの中で、黒の異形種との意思疎通の手段はゲット! これ、堕ちてるUFOによって、得られるアイテムが変わってくるとかありそうだな? まぁその辺の事を考えるのは後にして……。


「サヤ、アル。曼珠沙華の方はどんな様子?」

「弥生さんとシュウさんと、曼珠沙華の3人が戦ってるかな?」

「まだどっちも死んでないみたいだが、ド派手にやってるぞ」

「あー、まだ交戦中か」


 連結PTのメンバー表示で見ても、曼珠沙華の誰も死んでないのは確認出来るし、十六夜さんと風音さんに至ってはHPは少しも減ってないもんな。まぁそう簡単に決着になる組み合わせではないか。


「おし! それじゃ、そっちの戦闘が続いてる間に、このUFOを壊すぞ!」

「はーい! まずは、中から脱出なのさー!」

「生き埋めはごめんだしね」

「え、壊すのかな?」

「そもそも、ケイ? 中で何がどうなった? クオーツと会話してたみたいだが……」

「えっ!? アルさん、見てないの!? それなら、サヤも!?」

「うん、何かあったのは分かったけど、具体的に何があったかまでは見えてないかな」

「マジか!?」


 あー、近くにいるPTメンバーになら届いていると思ってたけど、意外とそうでもなかったっぽいね。……こりゃ、直接赤く光ってたパネルを見てなきゃ駄目だったか?


「クオーツとの通信、外まで通じてなかったのかも?」

「そうっぽいなー。とりあえず、クオーツの部品を改造してもらって、黒の異形種との意思疎通が出来るようなアイテムは手に入れた! 詳細は後で話すけど、クオーツからこのUFOを完全に破壊するように頼まれてるから、そっちを先にやる」

「なるほど。壊すように頼まれるのか」

「それなら、早く済ませる方が良さそうかな?」

「出来れば決着が付くまでにやりたいとこだな」


 落下物の数自体は、弥生さんやシュウさん達の分を含めても大丈夫なだけの数はある。……曼珠沙華が勝つか負けるかは分からないけど、決着が付けばそれ以上戦う意味はないはず。少なくとも連戦は避ける可能性が出てくるだろう。

 UFOを壊した理由は聞かれるかもしれないけど……まぁ何を手に入れたかは伏せておくとしても、壊す事を依頼されたという部分は伝えても問題ない。もし、同様の手段を既に見つけていたとすれば、情報交換というのもあり――


「ケイさん、早く、早く!」

「って、もうハーレさんは外かよ!? リスだと、こういう場所からの脱出は早いな!?」


 くっ! 上部に空いてる小さな穴から出て、外から覗き込んでるんだもんな! ヨッシさんも同じ穴へと飛んでいってるけど……あの穴、ロブスターで通れるのか? 


「あ、ここに小さい穴があるのかな? ケイ、ここは狭いけど通れそう?」

「もう壊すのは決定済みだし、強引に穴を広げるのでもいいかもなー。サヤ、ちょっと下がっててくれ!」

「あ、うん。分かったかな」


 ハーレさんと入れ替わって、サヤが穴から中を覗き込んできてたけど、変に巻き込んでも嫌だしね。さて、どういう方法で穴を広げるか……?

 ロブスターでぶん殴る……それだと周りもそのまま崩れそうだし、生き埋めになりそうだな。よし、岩を追加生成しつつ、穴を内側から強引に押し広げてつつ、支えて崩れないようにしていくか。


<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 120/121(上限値使用:10) : 魔力値 319/322

<行動値を19消費して『岩の操作Lv4』を発動します>  行動値 101/121(上限値使用:10)


 俺が通れる穴を確保しつつ、岩を追加生成! おー、ギシギシと軋みを上げてるな!? 飛行鎧で飛んで、穴のすぐ側まで近付いておいて、すぐに脱出出来るようにしとこ。


「……よし、今!」


 通れるだけの大きさに広がったし、即座に脱出! おー、岩の操作で支えてるけど、完全に崩壊したな? まぁ脱出は間に合ったし、生成した岩は消して……いや、これで叩き潰せばいいか。更に追加生成して、大きな岩にして――


「そのまま、叩き潰すのかな?」

「まぁ折角発動したし、行動値が勿体ないからなー。思った以上にボロボロだから、これで十分壊せるはず!」


 という事で、UFOの外壁部分を取り込んだ岩で、思いっきり殴りつける! おー、なんか思ったよりもあっさりと潰れた……?


「もう破壊完了か? 何度も攻撃を受けても逃げられるくらいの強度があった割には、随分と脆いな……」

「それ、俺も思った。妙に手応えがないような……」


 昨日の全壊してたUFOでも、もう少し硬さがあった気がするんだけど……うーん、謎? しかも、なんか砂みたいになって形が崩れて、UFOの形が影も形もなくなっているんだけど……この演出も、全壊してたUFOとは違うとこだな?


「あれじゃないかな? 光学迷彩みたいに、強度を保つ為の機能があったとか?」

「はっ! シールドとかありそうな気がします!」

「もしかすると、クオーツがデータを消した際に、そういう機能も完全に無効化してるのかもね」

「この残った砂みたいなのがUFOの最小の構成部品で、その構成そのものを崩したのかもしれんな」

「あー、そういう要素はありそうな気がする」


 昨日の全壊していたUFOと違う点は、壊れる前にクオーツが接続していた部分だしな。クオーツが色々な機能を切った結果、砂のような残骸だけが残った――


「はっ!? この砂、採集出来るのさー!?」

「はい!? え、これ、アイテムになるのか!? あ、残りは消えた?」

「多分、私が採集したからなのさー!」

「……マジか」


 まさか、この残骸の砂が採集出来るとは思っていなかったんだけど……それも採集機から入手可能になったアイテムの1つなのか?


「ハーレ、どういうアイテムが手に入ったの?」

「分かりません! 名前は『???』だもん!」

「え、名称不明なアイテムなのかな!?」

「またそのパターンか!?」

「現状では、使い道が不明なアイテムときたか……」


 うーん、UFOを構成していた材料っぽいけど、そんなものを一体何に使うんだ? 用途なんてどこにも……いや待てよ? そもそもこのUFOとクオーツは……製造元は一緒なんだよな? となると、クオーツがこの砂を使えば、何かしらの道具を作れる可能性があるのか?


「確かに、その可能性はありそうだな。次にクオーツと接触する時があれば、聞いてみればいいんじゃねぇか?」

「ですよねー」


 普通に声に出てたのは気にせず……もしかすると、改造したクオーツの部品の代わりになる可能性もあるかも! これ、何気に全壊させずに、UFOの機能を少しでも残した状態でクオーツに接触させるのが重要になって――


「わっ!? これ、避け切れ――」

「……リコリス!?」

「彼岸花、避けろ!」

「……っ!」

「あっ!? リコリスさんが死んだのさー!?」

「……彼岸花さんもかな」

「あー、流石にそうなってくると厳しいな……」


 ちょっと戦闘している場所が離れているから分かりにくいけど、大量の水が消滅すると同時に、そのすぐ側にあるバオバブの木が2本折れたから……盛大に叩きつけられて仕留められたっぽいな。

 トドメを刺したのが弥生さんかシュウさんなのかは、ここからじゃ分からないけど……3対2でも曼珠沙華が負けるのか。やっぱり、弥生さんとシュウさんは無茶苦茶、強いなー。


「あははははははははははははははは! あと、1人!」

「ちっ! こりゃ、無理か!?」


 あー、うん。弥生さんの高笑いが、ここまで思いっきり聞こえてきた……というか、声が思いっきり近付いてきてるよなー!?

 

「あははははははは! これで! 終わり!」

「っ!? ブラックホールか!? くそっ!」


 あ、ラジアータさんが見える距離まで来たと思ったら……ブラックホールに捕まって、ヤドカリの殻が大型化している弥生さんのネコの顎で噛み砕かれた!? そこから爪での連続攻撃を受けて……コケが削ぎ落とされて、ポリゴンとなって砕け散っていった。……うん、エゲツない倒され方。


「あははははははははははははははは!」


 相変わらず、この高笑いは怖いな!? ……ちょい待った。この位置関係で、この状況ってマズいんじゃ――


「あ、次の獲物、見ーつけ――」

「弥生! そこまでだよ!」

「はっ! あ、シュウさん、止めてくれてありがと。危うく、ケイさんに襲いかかるとこだったよ!」


 危なっ!? 完全に俺の方を見て、獲物とか言ってたし、襲いかかってくる寸前だったっぽい! 


「シュウさん、助かった! ……でも、俺を狙ってるって話だったんじゃ?」

「流石にあの3人を相手にした後では、消耗してるからね。ケイさんへのリベンジは、全力の時に改めてやらせてもらうよ」

「そうそう、そういう事! そういうつもりでいたのに、危うく襲いかけて……危なかったー!」

「……あー、そういう……」


 俺を狙う事自体は否定しないんですねー。いや、冗談抜きで今回は曼珠沙華に足止めを頼んでおいてよかったのかも?


「……ごめん、負けちゃった」

「うがー! あのネコ夫婦、連携精度が上がってない!? 風で超加速した弥生さんの爪での一撃、ヤバすぎるんだけど!」

「あの連携をなんとか崩さない事には、勝ち目は薄いか……。だがまぁ、一度真っ向から戦えたのはよかったぞ。勝つ為の道筋を考えやすくなった」

「今度こそ、絶対に勝ーつ!」

「……何度でも、挑む!」


 あ、負けたばっかだけど、次のリベンジをもう考えてるのか。これ、何度負けても、最終的に1回でも勝つ事が目標になってる感じなのかも?


「……ところで、合流はどうする?」

「ケイさん達のとこまで、各自で移動でいいんじゃない?」

「あぁ、それがいいだろう。バラバラにランダムリスポーンしたし、迎えに来てもらうのは我儘が過ぎるからな」

「……なら、各自で移動だね。ケイさん、それでいい?」

「問題なし! 移動中に、何かないか探っといてくれ! もし何か見つけたら、こっちから向かうから!」

「……分かった!」

「はーい! さーて、何か見つけるぞー!」

「何かあればいいんだがな」


 ふぅ、まぁ負けた事で盛大に悔しがってる様子ではないのはよかったかもね。この様子なら、合流するのもそう難しい事でもなさそうだし――


「ケイさん、あの3人との合流の算段は出来たかい?」

「あー、まぁね。てか、シュウさんは待っててくれたんだ?」

「今はもう、特に争う理由はないからね。そこに転がってる落下物も、奪い合う必要はない個数はありそうだし……ケイさんとしても争う気はないんだろう? さっきのは、あの3人……今は『曼珠沙華』だったね。曼珠沙華の希望に合わせただけの事だろう?」

「まぁそうなるなー。曼珠沙華との同行の条件が、その希望通りにする事だしさ」


 シュウさん、こっちの思惑は完全にお見通しか。昨日会ったルストさんやガストさんから話は聞いてるだろうし、その程度は分かってて当然ですよねー。

 でもまぁ、それで今は戦闘せずに対話が出来るのなら、俺らとしてもありがた――


「それで……UFOの破壊をしていたようだけど、クオーツからは何に改造してもらったんだい? 何も残っていないという事は、接触したんだろう?」

「……それが分かるって事は、既にシュウさん達もどこかで改造してもらってる?」

「そういう事だね。さて、ここからはそれを前提とした提案だ。お互いに知っている内容で、情報交換といかないかい?」


 少なからず、この情報交換がある可能性は考えていた。でも、完全に先手を取られたなー。素直に応じてもいいんだけど……ここはちょっと駆け引きといきますかね。


「既にある落下物を探知する手段なら、俺らとしては情報の旨みはないんだけど……?」

「……なるほど」


 あ、少し考え込むようにシュウさんが黙ったな。ふむふむ、この反応……シュウさん達が他のUFOで改造して手に入れたのは、既に落ちてる落下物を探知する手段か! ハッタリを仕掛けてみたけど、そういう改造パターンがあるとはな!


「……ケイさん達は、既に2個目の改造品を手に入れたという事かい?」

「さて、どうだろなー?」


 本当は今回が初めてだけど、そこまで素直に言う必要はない! 得た手段が同じ物だと思ってくれたのなら、この駆け引きは俺の勝ち! みんな、話に合わせて静かにしてくれてるし、このまま情報だけ貰ってしまおう!


「……なるほど。ハーレさんが、随分と大人しいし……ケイさん、UFOはさっきのが初めてだね? ふむふむ、その代わり、UFO以外の何かの情報を持っているね? 用途が分からなかったから選ばなかったけども、翻訳機能にでも関係している何かかい?」

「っ!?」


 ちょ!? ハーレさんが静かにしてるって状況から、そういう読みをしてくる!? いや、確かにハーレさんならこういう状況なら、説明に加わってくる事もあるけど、必ずしも毎回そうなる訳でも――


「そこでハーレさんを見たら、図星だと言ってるようなものだよ?」


 あ、しまった。つい、ハーレさんの方を見て……うん、出し抜き合い、今回は負けっぽいなー。こりゃ、素直に情報交換をした方がメリットがありそうかも?


「あー、今回は負け。確かに翻訳関係で情報を持ってはいるけど……それを教えるかは、交換する情報次第だな」

「まぁそれはそうだろうね。でもまぁ、少なくとも改造に選択肢があるのは……知らなかったんじゃないかい?」


 うぐっ!? あー、もうシュウさん相手に駆け引きはキッツイなー! 今回、仕掛けたのは俺の方からだけどさ。


「はい! お互いにUFOの中で得た情報を交換というのでどうですか!? それ以上の情報は、それを聞いてから決めるのさー!」

「まぁこのまま探り合いをしていたら、時間が無駄にかかるだけだね。ケイさん、僕はハーレさんの提案でいいけど……どうだい?」

「あー、俺の方もそれで問題なし。情報自体は知りたいしさ」

「なら、決まりだね。今度は変な駆け引きは無しでいこうか」

「ほいよっと」


 まぁ普通に情報交換をしようと思っても、お互いに探り合おうとはしてただろうし……てか、よく考えたら、探りを入れてきたのはシュウさんが先だったよな!?

 そもそも、情報交換の提案から始まってるんだしさ。曼珠沙華と戦闘をしながら、俺らがUFOの破壊をしてたのを把握してるって……相変わらず、とんでもないわ!


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