第1522話 墜落したUFO
十六夜さんが察知しているUFOの動きも気になるけど、それ以上にサヤが見つけた既に墜落済みのUFOの方が最優先! 少し離れたバオバブの木が連なる場所へ、急げー!
「おぉ! あちこちに落下物が散乱してるのさー! こっちの方から落としながら、あそこに墜落してる感じっぽいのです!」
「マジか!? なら、誰もまだ見てない可能性もあるな! アル、急げ!」
「分かってる! というか、ケイ! 赤の群集の一団の動きはどうだ!?」
「あー……ちっ、俺らの方へ方向転換してるな。ちっ、なんか勘繰られたか」
「やっぱり、そういう動きが出てくるか」
うーん、まぁ確かに察知したUFOを追いかけて動いている最中に、明確に動きが変われば気にもするよなー。でも、これで少なくとも赤の群集の一団は、このUFOの事を知らない可能性が出てきたね。
知っているのなら、破壊が可能でも不可能でも、わざわざ俺らを追いかけてくるメリットはない。他のUFOの動きがある時なら、尚更に。となれば……。
「曼珠沙華! 赤の群集の一団の相手、任せていいか!?」
「ふふーん! 任せなさーい!」
「……弥生さんとシュウさんの可能性があるもんね」
「そうでなかったとしても、足止めくらいはしておこう。そういう交戦はありだな?」
「やり方は任せる! ただ、弥生さんとシュウさん以外の場合なら、交戦の意思なしのパターンに要注意で!」
「……交渉もありだね? リコリス、ラジアータ、いい?」
「あぁ、それで構わん。別に誰に対してでも大暴れがしたい訳ではないからな」
「それもそだねー! 問答無用で仕掛けるのは、弥生さんとシュウさん相手だけで!」
どっちにしても弥生さんとシュウさんがいるなら戦闘は不可避だけど、そうでないなら交渉の余地はある。曼珠沙華が相手を引き受けてくれるなら、その間に色々と確認しておいて――
「……その戦闘、俺も行こう」
「……十六夜さん、どういうつもり?」
「どういうつもりも何も、単純に人数が足らんだろう? 別に彼岸花達の邪魔をするつもりはないが、集団で動くからこそ、標的以外は俺の方で抑えさせてもらう」
「……それなら……もう1人でも……多くいた方がいいね」
「っ!? 風音さんまで来るの!?」
「ふむ……。流石に集団で動く以上は、そっちの意向も考慮すべきか」
「……十六夜さん、風音さん、これだけは約束して。弥生さんとシュウさんだけは、私達に譲って!」
「……もちろん、そのつもりだ。あくまで、その他を止める為だからな」
「……邪魔は……しないよ?」
「それなら、問題なーし!」
「むしろ、戦いやすくなってありがたいな」
ふむふむ、曼珠沙華に十六夜さんと風音さんがサポートに付く形になったか。まぁ人数差があるから、こういう割り振りが無難なのかもね。
「あ、ケイさん! アルマースさんの下の岩、解除していくから!」
「ほいよっと! なら、明かりは消しとくか」
目立ちまくっている明かりだけど、もう目の前に見えている墜落したUFOを確認するのには必要ないだろ。いや、少し光量を抑えて照らす程度は欲しいかも? でもまぁ、再発動が必要だし、やる事は同じだな。
<『発光Lv5』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 119/119 → 119/124(上限値使用:7)
光らなくなった俺のコケが、リコリスさんが広げていた岩が消滅して、次々と地面へ落下していく。まぁだからといって、群体が駄目になってる訳じゃないけど……これだけ地面にあるなら、控えめの光量で十分だろ。
<行動値上限を3使用して『発光Lv3』を発動します> 行動値 119/124 → 119/121(上限値使用:10)
よし、夜目もあるし、明かりとしてはこれで十分! 飛行鎧に組み込んだ懐中電灯モドキは、一度操作対象の光がなくなったから、発動は解除になったけど……まぁなくてもいいか。
「よーし! それじゃ出発!」
「さて、弥生さんとシュウさんがいるかどうか……」
「……行ってみないと、分からない」
「……死んだら……どこで……合流?」
「……それは、死んでから考えればいいだろう。そもそも、必ず戦闘になるとも限らんからな」
「……それも……そうだね」
「ふふーん! 勝てばそういう心配は要らないもんね!」
「そこは同意だな」
「……リコリス、出して」
「了解! 行くよー!」
俺が明かりを用意し直している間に、曼珠沙華と十六夜さんと風音さんは赤の群集の一団への対処の準備を済ませていたね。さて、本当にどうなる事やら?
「任せたぞ、曼珠沙華! 十六夜さん、風音さん、無茶はするなよ!」
「いってきまーす!」
「……行ってくる!」
「機会が来たか、そうじゃないのか……そこが重要だな」
「……まぁ、適度にやらせてもらおうか。俺と風音さんは、死んでまで無茶をする理由もないしな」
「……それも……そうだね」
この状況なら、弥生さんとシュウさんがいたとしても、それ以外のメンバーとは戦闘は回避出来る可能性もあるか? まぁそういう状況になったとしても、十六夜さんが対応してくれそうではあるし、任せておこうっと。
「アル、UFOの前まで降りてくれ! 俺らは俺らで、そっちを探っていくぞ!」
「了解だ! ……それにしても、思ったよりもデカいな」
「バス……ううん、翼を退けた小さめの飛行機くらいの大きさはありそうかな?」
「なんか、細長い形なのさー! でも、飛行機や新幹線よりはもう少し幅がある感じなのです!」
「あちこちに穴は空いてるけど、中に入れそう?」
円盤の形をイメージしてたけど、意外とそうでもなさそうなんだよなー。ツルツルした質感の金属で、細長い印象。流線型って言うんだっけ、こういうの。新幹線や飛行機の先端部分みたいな感じ。翼は……元々、なさそうだな。
んー、例えるなら……ラグビーボールを押し潰したような形状? サイズ的には、アルより少し小さいくらい。
「流石にアルは……入れないか?」
「無理だろうな。サヤも厳しいんじゃないか?」
「……そうみたいかな?」
「あー、思ったほど高さはないんだな……。それほど厚みはないのか」
あちこちに壊れたような様子が見えるけど……色々と部品が欠落してない? 何か別の物が繋がってた部分が千切れ飛んだような穴があるしさ。
「とりあえず、ケイとハーレさんとヨッシさんで中を探ってこい。折角見つけた、全壊してないUFOだしな」
「探索は任せたかな!」
「任されました!」
「そうなるなー。あ、そうだ。これ、どっちだ?」
識別情報に追加されてるんだし、Ⅰ型かⅡ型かは分かるはず。武装っぽいものはないけど、壊れて残ってないだけかもしれないしね。
<行動値を5消費して『識別Lv5』を発動します> 行動値 114/121(上限値使用:10)
『採集機Ⅰ型』
状態:重度破損
ふむふむ、識別情報はこんな風に出てくるのか。破損具合がどの程度かも表示されているとはね。……完全に駄目になってたら、この『重度破損』が『全壊』とかになるのかもなー。
「ケイ、どっちかな?」
「これは『採集機Ⅰ型』の方だな」
「おー! ステルス機能で隠れてた姿は、これなんだ!」
「あ、そっか。そういう事になるよね」
「ま、全部同型だったらの話だがな」
「同じ『Ⅰ型』なら、同じ見た目な気もするけどなー。おし、それじゃヨッシさん、ハーレさん、中を見に行くぞ!」
「「おー!」」
大型種族だと中へ入れないというのは欠点だけど……破壊しようと思えば、出来るのか? そうじゃないとソロでの探索が厳しくなるし……後で壊せるかどうか、試してみますかね。
◇ ◇ ◇
アルのクジラから降りて、墜落しているUFO……『採集機Ⅰ型』の内部へと入ってきた。外に散らばっていた落下物の回収は、この状況では後回しで!
俺らに近付いてきていた赤の群集の一団は、弥生さんとシュウさんを含む赤のサファリ同盟のPTで確定だな。曼珠沙華の3人が弥生さんとシュウさんを相手に大立ち回りをやって、他のメンバーと十六夜さんと風音さんが睨み合っている状況らしい。
具体的な話を聞ける状態じゃないから、戦闘中の音声からの推測でしかないけども。でもまぁ、足止めという意味では成功っぽい!
「みんな、何か見つかったかな?」
「うー!? なんか色々なパネルはあるけど、どれも点かないのさー!?」
「完全に動作しなくなってるね、これ」
「動力、完全に死んでるっぽいもんなー」
うーん、明らかにSF風な宇宙船の中だけど、廃墟感が凄まじいんだよな。まぁ実際、盛大に壊れてるんだから、廃墟で間違ってもないんだろうけど……。
だー! 何気に内部もあちこち崩れてるから、そう広い訳じゃなさそうなのに、探りにくい! 俺より、ハーレさんのリスや、ヨッシさんのハチの方がスムーズに動けてるんだよなー。小型の種族の強みは、こういうとこか。
「はっ!? ヨッシ! ケイさん! こっちに明かりが生きてるのがあるのさー!」
「え、本当!?」
「よし、それか! あー、崩れてるのが邪魔……」
なんとかロブスターのハサミで邪魔な瓦礫を押し上げて、進むルートを確保して……おっ! 確かに赤く光ってるパネルがあるな! ……赤って、警告色だから不穏な雰囲気でもあるけどさ。
「ケイさん、早く、早く! 多分、ここでクオーツの部分を使うのです!」
「私やハーレには反応してないし、多分あれが必須っぽいよね」
「急かすなら、邪魔な瓦礫の撤去を手伝ってくれね!? 壊し過ぎたら台無しになりそうだし、加減しながら慎重にやってるんだからな!?」
隙間をスイスイと進んでいけるリスやハチほど、俺の移動は楽じゃないんだけど! ……これ、見つけるべき物がどういう物なのかさえ分かれば、むしろ外から盛大に解体しながらの方が楽な気がするぞ!?
「おし、なんとか抜けた!」
ふぅ、こんな手間取り方をするとは思ってなかったわ! でもまぁ、目の前には赤く光っているパネルがあるし、とりあえずクオーツの部品を取り出して――
<『惑星浄化機構・長距離通信装置』を『採集機Ⅰ型』に接続しますか?>
おっと、インベントリから取り出したら、こういうメッセージが出てくるのか。ふむふむ、自分で使用する訳じゃないんだな。これ、接続の有効範囲ってどの程度なんだろ? んー、まぁ今はそっちはいいか。
「UFOに接続するかどうかの確認が出たから、とりあえず繋いでみるぞ」
「はーい!」
「あ、クオーツの部品も赤く光ってるね」
色々と気にはなるけど、まずはどうなるかをやってみよう! おー、パネルもクオーツの部品も色が緑に変わって、同じタイミングで明滅し始めたな。こういう演出は、データへのアクセス中なのかも?
[接続の開始を確認した。情報を精査するから、少し時間をくれ]
「クオーツ!? あー、直接処置しにきてくれるのか」
[これは我にしか出来ぬ事だからな。損傷が酷いが……生きているデータを引き上げていこう]
「おー! クオーツ、ファイトなのさー!」
そりゃクオーツの部品なんだし、そこは任せる部分になりますよねー。うーん、でもこういう流れになってくるなら、どういう情報が出てくるかは確定って訳でもなさそう?
[……これは!? 奴ら、一体何を分析している!?]
「あー、どういう情報が出てきた?」
[まだ正確には分からん。だが……瘴気に関する分析、それもそなたらとの関係についてだ。こんなもの、報告させる訳にはいかん!]
ちょ!? 思った以上にヤバい情報を分析されてるっぽいんですけど!? くっ、宝探しイベントではあるんだろうけど、本格的に探りを入れてきてる内容でもあるっぽいな!
[このデータは消させてもらうが、念の為にそなたらで完全に物理的に破壊してもらえるか?]
「それはいいけど……何か使えそうな物ってないか?」
破壊するべき対象だってのは分かったけど、何か他に報酬でもありませんかねー? UFOからは何かしらのアイテムが手に入るようにもなってるんだし、何かありそうな気はするんだけど……。
[……そうだな。ここにあるデータから使えそうなのは……ほう? これは瘴気を用いて、言語を介さず翻訳を行うシステムか。奴らめ、対話などする気もないだろうに、何故このような……]
ちょ!? それ、もしかして昨日、黒の異形種と意思疎通をした手段なんじゃね!? 瘴気を使って、直接の会話をせずとも意思疎通が出来るって、とんでもないな!?
[これならば、今そなたが持っている我の部品を改造してしまえば使えるが……必要か? ただ、今ある通信機能は使えなくなるが……]
「必要だ! それ、思いっきり重要な道具だし!」
[……そうか。ならば、すぐに改造を施そう。少しだけ待て]
よし! 手元にあるこのクオーツの部品を改造して、今のこの機能は使えなくなるっぽいけど……リコリスさんがもう1個持ってるから、なんとかなるだろ! 少なくとも、黒の異形種との意思疎通を可能にする手段が手に入るチャンスを逃す訳にはいかん!
<『惑星浄化機構・長距離通信装置』を改造して、『意思感知式翻訳装置』を獲得しました>
おっ! どうやら改造が終わったっぽいね。パネルとクオーツの部品の緑色の明滅は止まって、パネルは光らなくなって、改造が済んだクオーツの部品は青く光り出してる状態だな。
[完成だ。それが何かの役に立てばいいが……ここにはこれ以上のデータはない。既に情報は全て削除したが、採集機自体の破壊は任せるぞ]
「おうよ! そこは任せとけ!」
まさか新しいアイテムが改造した後で手に入る物だとは思わなかったけど、それでも重要なアイテムの入手には成功! でも、瘴気で『意思感知式』って……あー、そうか。瘴気自体が知性のある生命の負の感情から発生するものだって設定があったし、そこから意思を読み取っているのかも?
まぁこの辺はゲーム的な都合もありそうな気がするし、深く考えなくてもいいや。とりあえずここから出て、クオーツに頼まれた通りにUFOを破壊していきますか!
これ、破壊してもいいんだよな? 多分、他の誰ももう情報は引き出せなくなってるし、問題ないはず!
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