第1518話 昼から集まって
eスポーツの大会の観戦を終え、昼飯の冷やし中華を食べ終えて……自室からVR機器を持って、客間へと移動してきた。昼から部屋の鍵の設置があるから、昼間からはこっちでやるのはいいんだけど……。
「……なんで晴香まで、こっちに来てるんだ?」
「この部屋、随分と使ってないし、設備点検をしておくのさー!」
「……サヤとヨッシさんが、泊まる時の為にか?」
「うん! 夜にモンエボが出来るように、ちゃんと確認しておくのです!」
「あー、なるほど……」
というか、泊まりにきた日でも普通にモンエボはやる気なんだね。まぁそれは抜きにしても、お客さん用の布団のチェックくらいはしておくべきか。
前に使ったのって……いつだっけなー? 何年か前に父さんの親戚の人が、何かこっちの地方に用事があって、その時に泊まって行った時以来?
まぁこの部屋は我が家で唯一の和室だから、割と人数に関しては融通が利く。若干、物置になってる部分もあるから、その辺はサヤ達が来るまでに片付けとかないとなー。
買い替えてもう使わなくなったけど、捨てずにそのまま置いたままの物がいくつかあるし、処分する良い機会なのかもね。
「はっ!? 布団が2組しかありません!?」
「いや、2組あれば十分じゃね?」
「私の分がないよ!?」
「……自分の部屋から持ってくれば良くね?」
「あ、それもそうだった!」
晴香、サヤとヨッシさんが泊まる時はこっちの客間で一緒に寝る気か! いやまぁ、それはそれで別にいいんだろうけど……とりあえず、敷布団には問題はなさそうだな。
てか、なんで俺は妹と敷布団を並べて敷いているのやら? いやまぁ、ちゃんと使える状態かは予め確認しておいた方がいいとは思うけどさ!
フルダイブって、その辺の床に単純に寝っ転がっただけじゃやらせてくれないからなー。ある程度、身体に負荷がかからないような環境じゃなきゃダメっていう……。
「えーと、有線接続……有線接続……この部屋、どこだっけな?」
家のどの部屋にも、ホームサーバーに繋がる端子は壁に埋め込んでるけど……普段使わない部屋だから、どこに接続口があるのかが分からん!
「こっちの机のとこ!」
「あー、そっちか」
大体がコンセントと併設してあるけど、机の横にあったか。和室に合わせたローテーブルが窓際に置いてあるけど、その側ですなー。
「あー、ここは2口か。晴香、フルダイブする時は自室だな」
「……それしかなさそうなのです」
安定性の確保の為、フルダイブの接続は基本的に有線接続のみ。フルダイブ以外のAR表示機能なら、無線接続でも出来るけど……まぁこの辺は技術的な制約らしいから、仕方ないっすなー。
自室にも配線はされてるけど……まぁそっちは1口だけだから、客間に2口あるのは良い方か。とりあえず、予備のケーブルでVR機器と接続していきますか。
「おー、エアコンはちゃんと効いてきたのさー!」
「みたいだなー」
客間に入ってから入れていたエアコンも、動作に問題はなしっぽいね。もしエアコンが壊れてたりしたら、夏の真っ只中じゃ地獄だもんなー。今からだと時期的に買い換えるのも大変だろうし、無事に動いてくれて何より。
「ふっふっふ! それじゃ、晩御飯までこっちでフルダイブなのです!」
「いや、そこまで時間はかからんと思うけど……」
「途中で部屋まで戻しに行くの、面倒だもん!」
「あー、まぁそれは確かに……」
俺の部屋の鍵の取り付けは14時頃に来て、1時間もかからないとは聞いているけども……同じ業者の人が食洗機の取り付けも行うって話だもんなー。まぁ確実に19時までかかることはないけど、わざわざ途中でログアウトして戻るのも煩わしいか。
「おし! やっていきますか!」
「うん! まずは合流なのさー!」
「あ、どこ集合?」
「それはログインしてから決めるのです! アルさんがいるかどうかでも変わってくるし!」
「それもそだなー」
さて、それじゃVR機器を被って、敷布団の上に寝っ転がって……普段とは環境が違うから、少し周辺環境のスキャンの時間があるのは仕方ないか。……よし、判定は問題なし! それじゃ、フルダイブを開始していこう!
◇ ◇ ◇
見慣れた、いつものいったんのいるログイン場面へとやってきた。さて、今の胴体部分には何が書いてある? えーと……『緊急クエスト【謎の飛行物の落とし物】が開催中! 中にはレアアイテムも!?』か。レアアイテムが落ちるって、ここで明確に断言してくるんだな。期間については明確に決まってないとは言われたし……あー、これは聞いとこ。
「いったん、ログアウト中に新しい演出って何かあった? もしあるなら、見ておきたいんだけど……」
「特に今は何も発生してないね〜!」
「あー、ならいいや。ログインするから、サクッとログインボーナスをくれ」
「はいはい〜! こちらになります〜」
いつも通りにログインボーナスを受け取って……ふむ、いったんの返答的に、ログインしてないタイミングでは新しい演出はなくても、イベントの進行そのものがある可能性はありそうだ。
いくつか段階を経て、全体的なイベントの演出があって、その果てに今回のイベントが終わるって形になりそうだよね。となれば、まずやるべきは昨日拾った『惑星浄化機構・長距離通信装置』を壊し過ぎてないUFOに使うとこから? なかなか、難易度が高そうだけど……あー、それは既に終わってるって可能性もあるのか。
「スクショの承諾はお願い出来るかな〜?」
「あー、それは後でやるよ。今は合流優先で」
「了解だよ〜! それじゃどっちでログインかな〜?」
「コケでよろしく!」
「はいはい〜! 今日も楽しんでいってね〜!」
まずはほぼ同時にログインしたハーレさんと合流して、アルがいるかどうかから確認だな。現在時刻は、十三時半。少しくらい情報を探りたいし、それくらいの時間はあるだろ。
◇ ◇ ◇
今日は夜の日。ログインした場所は、昨日ログアウトした原野の谷の上だけど……まずはこれだな。星空は明るいけど、見通す為にはこれが必須!
<行動値上限を1使用して『夜目』を発動します> 行動値 131/131 → 130/130(上限値使用:1)
よし、視界良好! 昼の日ほど明るく見えないのは今に始まった事じゃないし、必要とあらば明かりは用意すればいい。でもまぁ周囲の状況を確認してからだなー。
「……グリーズ・リベルテからは、ケイが一番乗りか」
「おっす、十六夜さん。アルはまだいないのか?」
十六夜さんが声をかけてきたけども、他にプレイヤーの姿はなし。こんな場所なんだから、アルがいれば一目瞭然のはずだけど……。
「……少し前に顔は出していたが、昼飯を食べてくると離れて、まだ戻ってきていないな」
「あー、なるほど。十六夜さんは何をしてんの?」
「……あの谷に近付くプレイヤーがいるかどうか、見張っているところだ。既に2PTほど、壊滅していたぞ」
「マジっすか……」
十六夜さんの姿しか見えないと思ったけど、そういう確認をしてたとはなー。いつから確認してるかは分からないけど、2PTを壊滅させてるって……何気に恐ろしいな、あの洞窟の前を守ってるアルマジロ集団!
てか、見つける事自体は他のPTでも出来てるんだね。まぁいかにも怪しい場所なんだから、探りに行こうと思うのは変な話でもないか。
「十六夜さんは、今日の午前中はやってた?」
「いや、俺はアルマースとほぼ入れ替わりにログインしてきた状況だな。ここにいたのは、『縁の下の力持ち』のメンバーから情報を仕入れている最中で、まだ移動をしてないだけの話だ」
「あー、なるほど」
極端に俺らとログインのタイミングがズレてる訳でもないんだな。でも、十六夜さんが現状把握をしやすい状況なのは――
「とう! あ、ケイさんと十六夜さんだけですか!?」
「……飛翔連隊は既に動き出しているが、まぁそれ以外は桜花と風音の2人が並木にいる程度だな」
「おー、そうなんだ!」
俺の方が少し早かったけど、ハーレさんも無事にログインしてきたな。……忘れないうちに、これを貰っとこ。
<ケイが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
<ケイ2ndが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
よし、これでいい。っと、そうしてる間にサヤとヨッシさんもログインしてきたね。
「あ、ケイ! 今日は先だったのかな?」
「俺もさっきログインしたとこだから、そう時間は変わらんけどなー」
「あれ? 十六夜さんはいるけど、アルさんはまだいないんだね?」
「十六夜さんから聞いたけど、アルは昼飯中だとさ」
「あ、そうなんだ」
「飛翔連隊はもう動き出してるってー! はっ!? ログインボーナス!?」
「忘れないうちに貰っておかないとかな!?」
「あはは、勿体無いもんね」
俺は既に確保済みだから、そこは問題なし! アルは少し待てば来そうだけど、曼珠沙華の3人はどうなってるんだろ?
えーと、フレンド登録はちゃんと昨日やっておいたから、ログイン状態を確認して……まだ3人とも不在か。
「十六夜さん、曼珠沙華の3人とは何かあった?」
「……いや、何もないな。まぁ予定の時間までは、まだ少し時間もある。焦る必要もないだろう」
「まぁそりゃそうだ。あ、桜花さんや飛翔連隊がもう動いているなら、連結PTにはなってる?」
「……あぁ、なっているぞ。ケイ達がPTを組んでくれれば、連結は可能だ」
「なら、先に組んだ方が色々な情報の確認はやりやすそうだな。サヤ、ヨッシさん、ハーレさん、ほれ!」
「あ、うん! 分かったかな!」
「PT申請だね」
「ふっふっふ! 今日も活動開始なのです!」
<ケイ様の率いるPTが結成されました>
<ヨッシ様がPTに加入しました>
<ハーレ様がPTに加入しました>
俺とサヤでPTを結成して、そこにヨッシさんとハーレさんが加わる形で結成完了! あとは……あ、十六夜さんがPTの連結申請を出してくれたね。
<十六夜様のPTと連結しました>
<紅焔様のPTと連結しました>
よし、まだちょっとメンバーがちょっと足りないけど、昨日と同じメンバー構成には出来そうっすなー。
「おっす、ケイさん! 予定時間より、ちょっと早めだな!」
「まぁなー! 紅焔さん、そっちの調子はどう?」
「いやー、昨日と大して変わらずって感じだぜ。何度かUFOに攻撃を仕掛けるチャンスはあったんだが、ありゃ『Ⅰ型』も『Ⅱ型』も厄介だ!」
「『Ⅰ型』には僕と紅焔で昇華魔法を当てたんだけど、それでもその場に撃墜は出来なかったからね」
「……え、マジで? それ、丈夫過ぎない?」
「まぁ丈夫は丈夫なんでしょうが……撃墜前に、必ず転移で逃げ切られてしまいますね」
「あの一撃は確実に墜ちたとは思うが……どこに墜ちたかが不明だ」
「墜落したUFOを探してるんだけど、まだ見つけられてない感じ!」
「……あー、自分達で墜としても、確保出来ない流れなのか」
うーん、今のを聞いた感じだと自分達で下手に墜とそうとするだけで無駄手間か?
「紅焔さん、その件で関係情報が手に入ったぜ。ケイさんも丁度良いタイミングだし、一緒に聞いてくれ」
「おっ! 桜花さん、助かるぜ!」
「どういう情報?」
既に桜花さんは情報収集に動き出してる様子だけど、何やらUFOの墜落絡みの新情報があったっぽい。連結PTにしたばかりだけど、本当に良いタイミングだったのかも?
「雪山の中立地点の洞窟……正確には『ニーヴェア雪山・氷結洞』の内部。より具体的に言えば、赤のサファリ同盟の本拠地へとUFOが転移してきたそうだ」
「なっ!? ちょ、よりによってあそこかよ!」
「あー、そういう事ってあるのか……」
UFOに洞窟内への転移があるのは昨日のうちに分かってた事だけど、まさかそれが赤のサファリ同盟の本拠地で起こるとは……。まぁあそこは、システム的に設定されている本拠地って訳でもないもんなー。そういう事が起こっても、別におかしくはないか。
「紅焔さん、これはある意味ラッキーだと思ってくれ」
「ちょ! タイミング的に、俺らが墜としたやつっぽいのにか!? これから取りに行っても、どうにもならない――」
「逆に考えてくれ。どうやっても目立つ場所に墜ちたからこそ、こうやって情報が出ているんだ。早い者勝ちの争奪戦の構図は変わってないし、秘匿されてもおかしくない情報だからな」
「うぐっ!? そりゃ、そうだがよ……」
桜花さんの言う事も分かるけど、紅焔さんの複雑な心境も分かる! 折角墜としたと思っても、その成果が他の人のものになるとか……正直、ガッカリだよな。
「はい! 逆に、私達の目の前にいきなり墜落してくる可能性もありますか!?」
「おう! その可能性は十分なほど、出てきたな! ただまぁ、悪い情報もある」
「……悪い情報だと?」
「……破損が……酷過ぎる……状態。……赤のサファリ同盟は……ほぼ出払ってて……占有はされてないけど……UFO自体は……駄目になってる……そうだよ?」
「……要は、壊し過ぎた訳か」
「あー、まぁ絶対に目の前に墜としてやろうと思って……よし、分かった! 今後は最大威力で墜とすのはなしだな!」
「おそらく、その方がいいだろうな。まぁ、クエストの進行材料にはなってないのだけは確定だ」
要は、昨日俺らが骨の竜から受け取ったUFOの残骸と同じような状態になってるか。オーバーキルをすればああいう状態にはなるけど、自分達の目の前には堕ちない仕様になってるっぽいね?
この辺、進化階位によって大きく差が出ないように調整されてる気がするし……ただ単に墜とせばいいんじゃないのは厄介な要素だね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます