第1509話 今回の成果
洞窟から逃げ出る結果になるとは思っていなかったけど、まぁ実際にそうなってしまった以上は仕方ない。成果なしどころか、大成果だったしなー。
他のみんなは落下物を回収している最中だけど……このUFO、墜落というか、原型を留めてないんだけど……俺の持ってる『惑星浄化機構・長距離通信装置』を使う余地ってある? うーん、壊れ過ぎてて駄目な気がする。結構大きいけど……中を探る余地もないしさ。
まぁその確認は後にして、俺はギンとの勝負の決着がどういう判定になるか……って、ギンの方からフレンドコールがきた!? ……こっちの情報はまだ何も知らないのに、なんで向こうから? まぁとりあえず出てみるけどさ。
「俺の負けか、ケイ?」
「……さっきのアナウンスを演出として認めるなら、そうなるなー」
「だー! くっそ、もう決着かよ! この連休中、全体を使っての勝負のつもりだったんだが!?」
「あー、なるほど。期間はそういうつもりでいたのか」
「いくらなんでも、1時間もかからず終わるとは思ってねぇよ!」
「……ですよねー!」
うん、俺も流石にこの時間で終わるとは思ってなかった。いやー、まさかあの洞窟の中で、あんな事になるとは欠片も思ってなかったしなー。
「それで……ケイ達がきっかけなら、アナウンスで出てきた『???』とやらの正体は分かってんのか?」
「まだ俺らも手に入れた訳じゃないから確定じゃないけど、まぁどういう代物なのかは予想がつくなー」
ほぼ確実に、黒の異形種との会話を成立させる為の道具なのは間違いない。それを手に入れて、どう使うかまでは知らないし、それだけとも言い切れないけど……。アイテム名が伏せられてるくらいだし、なんかその入手時にも演出がありそうな予感?
「その情報、開示する気はあんのか? ラックさんから聞いたが、群集内でも情報を秘匿し合うような動きのイベントってのは珍しいんだろ?」
「まぁなー。どうするかは悩ましいとこではあるんだけど……俺だけで動いてる訳じゃないから、ここでどうとは決めかねるぞ?」
「あー、そりゃそうか。まぁ新参の俺としちゃサッパリな部分だから、そこの判断はケイ達に任せるわ。ともかく、俺らの負けで一区切りも付いたし、今日はそろそろ終わりにすっかなー」
「そもそも、明日が大会なのに、モンエボで油売ってていいのか?」
「その辺は平気だ! むしろ、うちの部は大会前日に詰め込み練習は禁止なんだわ。競技用のゲーム、触るの自体の禁止でなー」
「あー、そうなのか」
何かで聞いた事があるな? 大会前日だからこそ、変に怪我や疲労を残さないように休んで、パフォーマンスを引き出せるようにするとか? それは普通のスポーツだったと思うけど、eスポーツでも疲労云々は一緒なのかも? ……いや、それだと別のゲームとはいえ、遊んでる事自体がどうなんだ?
「たまには別のもんを始めるってのも、息抜きになっていいもんだぜ? 折角なら、その中でケイに勝ちたかったんだが……流石に一日の長は簡単には埋まらんか」
「一日程度の差じゃないけどな!?」
「わっはっは! まぁな!」
いくらギンが相手とはいえ、始めたばかりでそう簡単に負けてたまるか! あー、でも黒の異形種とUFOがセットで存在していれば、進化階位の差は関係なく進められたのかも?
うーん、会話で展開が変化してそうな流れではあったけど、始めたばかりで状況をあまり理解していない新参では、なんか全く違う展開になりそうな気もする?
「さて、それじゃ俺はそろそろ……の前に、これは伝えとくか」
「ん? 他にも何かあるのか?」
「まぁな。アイルさんから伝言だ。『本当に、今まで色々とごめんなさい』だとよ」
「……あー、うん」
「おいおい、反応が薄いな?」
「いや、もうその言葉、何度聞いたかなーって思ってな……」
本当、何回聞いたんだろ? その割にはどんどん状況がおかしな方向へ、何度も変わってきた覚えしかないんだけど……アイルさんの謝罪の言葉とか、信用ならないんですけど。
「……無自覚に色々やらかしてるとは聞いていたが、俺が思ってる以上か?」
「ギンの想定がどこまでかによるけど……まぁかなりやらかしてるなー」
顧問の喜多山先生に先手を打たれてなければ、もう明日の大会には参加出来ない状況になるくらいにはやらかしてるしね。そういやそういやレナさんが説教してくれるとか言ってたけど、あれってどうなったんだろう?
「なるほど、それを見越してのレナさんのあの説教か」
「ギンは、その説教を見てた?」
「おう、見てたぜ。いや、見せられたというべきか……? いやはや、まさか妬みを妬みだと自覚せずに、嫌がらせで仕事の邪魔をして、損害賠償請求を受けさせた裁判の話を聞かされるとは思わなかったぞ」
「ちょい待って!? どういう説教の仕方!?」
その話の具体的な内容が気になるんだけど! 実体験を交えてとか言ってたけど、まさかの裁判沙汰!?
「マンション持ちってすげぇよな、レナさん。今のは、そのマンションに引っ越してくる事になった自営業のご夫婦の経験談らしいぜ? どこから聞きつけたのか、引っ越した後でも嫌がらせが続いたから、レナさんの知り合いの弁護士さんが対応したんだと」
「マジかー。そりゃまた、大変な事もあったもんだ……」
妬みが原因みたいな言い方をしてたし、何かしらのクリエイターさんなのかね? そんなの、そのご夫婦さんが悪い事をした訳じゃないのに……とんでもなく迷惑な話だよなー。
あ、そうか。俺の状況と完全に同じ訳じゃないけど、本人に非がない事でもおかしな事になるって実例として挙げたのか! アイルさん自身が妬んできてる訳じゃないけど、周囲の要因は妬みそのものだし……。
「そんな例を出されて説教されたのでアイルさんは絶句してたし、流石に今回は懲りたんじゃねぇか? そっちの部員の連中の動きと、同じようなもんは感じただろうしよ」
「そうだといいんだけどなー」
くっ、アルバイトの件さえなければ、徹底的に距離を取ってしまえば終わりなのに、そういう訳にもいかないのが厄介過ぎる! ちょっとは周りに与える影響を自覚してくれ、アイルさん!
「それじゃ俺はこの辺で終わりにするわ。またな、ケイ」
「ほいよっと! またな、ギン!」
という事でフレンドコールは終了! なんか後半は個人的な話題になってた気もするけど……いや、そもそもが個人的な勝負の話か。
「ケイ、勝敗はどうなったかな?」
「俺らの勝ちだな! あと、ギンはもうログアウトするってよ」
「おぉ! 勝ったのさー! 明日の事を考えたら、この時間でログアウトも不思議じゃないです?」
「もう23時にはなってるもんね」
「あー、もうそんな時間か」
普段ならもう終わりにするくらいの時間だし、そりゃギンも終わりにするよなー。あ、夕暮れにもなり始めたとこか。
「そういや、ケイ……今日はいつまでやるんだ? 具体的な時間は決めてなかっただろ?」
「へ? あ、そういや決めてなかった!?」
「まぁ明日は土曜だから遅くても問題はないんだろうが……まだしばらくイベントは続きそうだし、無理はしなくてもいいとは思うぞ」
「あー、それは確かに……」
明日のハーレさん希望のeスポーツの大会予選を見るのなら、区切りが付いた今のタイミングで終わらせるのが無難? 日付が変わるくらいまでならやってもいいけど、その時にキリがいい状態になるかは分からんしなー。
「……時間なら、都合のいいとこまででいいよ?」
「元々、ちょっと活動時間にズレがあるみたいだしね! 色々と済んだ後だし、ここで解散でも問題なーし!」
「今日は、弥生さんやシュウさんとも戦う事もなさそうだしな」
「ケイさん達が明日用事があるってんなら、俺らの方もここで解散でも問題ねぇぜ! アルマースさん、そっちで何が起こったかの説明はしてくれるよな?」
「あぁ、俺は特に何もないからな。残って状況の説明するくらいは可能だぞ」
曼珠沙華も紅焔さんもこう言ってくれてるんだし、今日は下手に無理をしない方がいいのかもなー。ここまででも確実に進展はあったんだし、イベントの期間はまだ続きそうだし、無理に夜更かしする理由もないか。
「……俺らはそもそも、時間に縛られるのが嫌な奴も多い。終わる時間でとやかく言う事はないな」
「ケイさん、群雄の密林でも引き上げてきてる連中は出始めてるからな。無理に合わせる必要はねぇぜ?」
「……用事があるなら……無理は禁物!」
みんなして気を遣ってくれてる気がするけど……そもそも、俺の希望の内容ではないんだが!? これ、ハーレさんの希望に合わせた事だよな!?
「ハーレ、どうする? 今日はここまでにしとく?」
「あぅ!? まだやりたいけど、でもあっちも見たいし……連休だからフルダイブの時間も気にしなきゃだし……はっ! 休日はケイさんが寝坊しやすいんだった!? 今日はもうやめておきます!」
「おいこら、どういう納得の仕方だ!?」
「……でも、確かにそれはそうかな?」
「そういう傾向、あるもんね?」
「ちょ!? サヤとヨッシさんまで!?」
フルダイブの時間制限を気にしなきゃいけないのは確かだけど……寝坊の心配をされるのは不本意なんだが!?
「ところで、ケイさん達って明日は何やんの? リアルで遊びに……は無理だよな?」
「ふっふっふ! eスポーツの大会の予選を見に行くのさー! さっきケイさんが話してたギンさんが出るやつ!」
「あー、なるほど! 例の新設するeスポーツに関する共同体にはケイさんのリア友がいるって話だったし、そういう繋がりか! それなら納得だぜ!」
本当はハーレさんがギンに部活勧誘をされてるからって理由の方が大きいんだけど、まぁそこまで詳しく言う必要もないか。俺とギンの縁繋がりでもあるんだから、紅焔さんの認識が決して間違ってる訳でもないしな。
「まぁそういう事情だから、今日は早めに終わらせてもらうわ! あ、でもその前に、誰が何を確保したか教えてもらっていい?」
それを確認せずに、終わりに出来るか! まだ自分の分も確保も済んでないし、明らかに余ってる分もあるから、その処置も考えないと……。
「はい! 私は『進化の軌跡・侵食』を手に入れたのです!」
「俺も同じく『進化の軌跡・侵食』だな」
「アルとハーレさんはそれか!? 使った分の補充が出来るのはありがたいな!」
アルの分はラジアータさんが使ったんだし、使用分は回収し切った事になるんだね。これ、思った以上に出るのかも?
「俺は『進化の軌跡・打撃の極意』を手に入れたが、これは要らん。彼岸花、リコリス、使うか?」
「……ううん、使わない」
「ステータス的に、私達には物理系のスキルはいらないよー!」
「まぁそうだろうな。俺は既に持ってる特性だし、これは桜花さんに進呈しよう」
「おっ、良いのが手に入りそうだな」
ふむふむ、そりゃ物理も魔法も両方いけるのはバランス型か支配進化の系統に限られるもんなー。魔法と操作に特化してる場合では、一時的に特性を得られたとしても無用の長物か。
既に打撃の特性を持ってるラジアータさんにとっても、理由は違っても同じ事。まぁ不要物は桜花さんに渡すって約束になってるんだし、決して無駄にはならないか。
「……持ってたり、噛み合わないのは、持ってても仕方ない。私が手に入れた『進化の軌跡・氷の純結晶』も微妙――」
「はいはーい! 彼岸花、それは私が欲しい! 昇華相当なら、水と組み合わせて十分使えそうだし!」
「……それなら、リコリスにあげるね」
「やったー! 『進化の輝石・水』を引いて、ガッカリしてたとこなんだよねー! 水属性持ちの私に、どう使えってのさ!」
「……『進化の輝石・闇』も……使い所に……困る」
「あー、リコリスさんも風音さんも、使い捨てじゃない『進化の輝石』を拾ったのか。……これ、本当にどう使ったもんだ?」
「……持ってる属性だから……余計に……困る」
「だよね、だよね! 別枠で新キャラを作れば使い道も無くはないんだろうけど、トレード不可枠なのが扱いに困るー!」
そうなんだよなー。進化の輝石での一時付与のスキルLvがもっと上がるなら使い道もあるんだけど、現状の育成状態でLv3のスキルじゃ微妙過ぎて……まぁそれはいいや。
「サヤ、ヨッシさん、十六夜さんはどうだった?」
「私は『転移の実』が出たかな」
「あ、実の方も出るんだ? 私は『刻浄石』だね」
「……なんだかすまんな。俺は『スキル強化の種』だ」
「おぉ!? 十六夜さんが大当たりを引いたのさー!」
「マジか! いいな、十六夜さん!」
やっぱり出る時は出るんだな、『スキル強化の種』! 現状では、これがどう考えても一番の当たりだよなー! イベント進行用のアイテム、旨みがあるとも言い難いし……。
「残るはケイだが……『惑星浄化機構・長距離通信装置』とやらは、このUFOに使えそうか?」
「……どこに使ったらいいんだ? これ、どう考えても壊れ過ぎてて、駄目っぽい気がするんだけど? そもそも、このUFOって『採集機Ⅰ型』と『採集機Ⅱ型』のどっち!?」
ステルス機能も完全に壊れているっぽいけど、根本的に原型を留めてないから判断しようがないわ!
「えっと……識別してみたけど、『採集機の残骸』としか表示されないみたいかな?」
「壊れ過ぎたら、どっちか判別出来ないのかも?」
「あー、そういう……。壊して墜落させるにしても、全壊しない程度に留める必要がある……って、難易度が上がったな!?」
「どの程度の威力まで耐えられるのかが、分かりません!」
「成熟体のプレイヤーがオーバーキルで確実にその場に墜としていくのを防ぐ為かもな。逃げる猶予を作っておいて、その先で墜落するようにさせるのかもしれん」
「あー、そういう可能性はありそう……」
うーん、成熟体だけがプレイヤーじゃないからこそ、他の進化階位の人でも拾えるように機会を作るのはあり得るかも……。くっ、オーバーキルにならない程度かつ、逃げる隙を与えないように破壊しろって、本当に難易度が高いな!?
まぁUFOの撃墜にチャレンジするのは明日にして、今は俺の分を取得してしまおう。ザッと見た限り、色違いの物はないし、みんなの取得の中にもなかったから……黒の異形種との会話を可能にする『???』は無かったんだろうね。
まぁ途中で爆発してたんだし、予備パーツも無かったって事だろうから、そこは仕方ない。それもまた明日探せばいいさ。
ともかく今は普通に取得するとして……さて、何が出ますかねー? 希望としてはもちろん『スキル強化の種』だけど……どうなる事やら? あんまり欲しいと望み過ぎると物欲センサーが出てくるし、心を無にして引くのみだ!
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