第1510話 今日は終了


 もう今日は終わりにする流れにはなっているけど、これを済まさなければ、そういう訳にもいかない! さーて、今回の落下物、俺の分は何が出る!?


<『レーズン』を20個獲得しました>


 おー、こんなのも出るのか。うん、まぁ食べ物も色々出てきてたし、予想出来る内容ではあったけど……俺、ドライフルーツは苦手なんだよ!


「……ハーレさん、これはやる」

「なんか、微妙に嫌そうな反応だけど……あー!? これ、ケイさんが苦手なやつだー!?」

「ハーレ、何が出たのかな!?」

「敵のヘビって訳では……なさそうだね?」

「ケイ、何が出た?」

「……レーズン20個。俺、ドライフルーツは苦手なんだよ……」

「あー、そういや前にそんな話もしてたな」

「ふっふっふ! 私は大好きだから、遠慮なく貰っておくのです!」


 今日最後の入手が一番のハズレとか、ガッカリ過ぎる……。いやまぁ魔力値の割合回復のアイテムが20個とか性能はいいし、食べやすい小さなサイズだし、決してハズレとは言えないんだけど……個人的な好き嫌いの問題はどうしようもないよな……。


「あー! スキル強化の種が欲しかったー!」

「ケイ、ドンマイかな! また明日、頑張ろ?」

「まだイベントは続きそうだし、そうするしかないなー。あ、全員に聞くけど、明日はどうする?」


 タイミングが合ったらみたいな話は軽くしたけど、ここでちょっと話し合っとく方がいいだろ。それに、まだ残ってる落下物をどうするかも考えないといけないし……。


「俺は……そうだな。午前中に、ちょっと用事を済ませてくるか」

「ん? アル、なんか用事があった?」

「自動車の免許の更新だ。流石にこれはどこかで行かなきゃマズいし、まぁケイ達が不在なら、丁度いいタイミングだな」

「おぉ! アルさん、免許持ちなんだー!」

「……あれ? 免許の更新って……アルさん、実は誕生日が近いの?」

「ん? まぁ近いといえば近いな」


 あ、そうか! 自分ではまだ自動車の免許は取れないけど、あれって誕生日が有効期間の基準って聞いた覚えはある! その更新が必要なタイミングって事は、必然的に誕生日が近いという事にもなるのか!

 そういや、前にアルに誕生日を聞いてみようって話題に出たまま、そのままスルーになってたような? 聞いたっけ? いや、聞いた覚えがないし、多分聞いてないな。いや、でも今聞くのはどうなんだ?


「ケイ、何を悩んでんだ?」

「あー、アルの誕生日を聞いていいものかどうか……?」

「別にその程度なら、気にしねぇよ。8月13日だ」

「おぉ! ヨッシとサヤの間くらいなのさー!」


 思った以上にあっさり教えてくれたな!? アルって結構、リアルの情報は出さないようにしてる感じもあるのに、ちょっと意外……。


「……免許の更新、土曜日って出来た?」

「……日曜はやっているはずだが、土曜は休みだった気がするぞ?」

「げっ、マジかよ。あー、どこかで有給を取って行く気だったから、そこまでは確認してなかったな……」


 ちょ、まさかの受付側が休みとかあんの!? アルの予定、早くも破綻してますがな!? いや、でもここで彼岸花さんと十六夜さんに言われてよかったのかも?


「はい! どこかで有給を取るって事は、昼間にいる日もありますか!?」

「ん? まぁそうなるが……そうだな。いっそ、次の大型アップデートの日にでもしてくるか」

「え、もう来週だよね? そんなに直前で大丈夫?」

「一昔前ならともかく、今なら前日とか当日とかでない限りは問題ないぞ。というか、根本的に仕事でも車を使うしな」

「……その手の労働基準法違反の企業は、大小問わずに大体が消滅したからな。随分と楽になったもんだ」

「……なるほど」


 うーん、この手の話題は、実際に就職した事がない学生にとってはよく分からない部分なんだよな。まぁ教師がちょいちょい、授業の合間で話したりするのは聞いた事はある程度か。あと、父さんや母さんからも軽く聞いた事があるくらい?


「……よくも悪くも、昔とは時代が変わったよね」

「それはそうだよねー! 私が学生の頃とか、政治家の裏金問題とか、政治腐敗が凄かったもん! 失われた30年とか、散々言われまくってたしさー!」

「確かに、あれは酷かったからな。だがまぁ、技術革新が大きく世界を変えたか」

「……日本から、フルダイブの実用化は大きかった!」

「そうそう! あと、AIの急速な発展も凄かった! まぁまだこの辺は発展途上だけど!」

「過剰過ぎる円安からの、日本の中小企業の大逆転劇だったからな」


 この辺は、俺らが小学生の頃の話か。うーん、あの頃って何か大騒ぎになってた感覚は覚えてるんだけど、具体的にどんな変化があったのかは実感としてはよく分かってないんだよなー。


「……まぁ今の学生組には、ピンとこない話だろうな」

「話には聞くけど、実感としてはそうなるかな? あ、でも、ヨッシはそうでもないんじゃない?」

「……まぁそうだね。お父さんの転勤、そういう流れに関係してのものだしさ」

「あ、そうなのか」

「ふっふっふ! ヨッシのお父さんは、支社長としての栄転なのさー!」

「ほう? ヨッシさんの引っ越しって、そういう理由だったのか」

「あはは、パワハラ満載のブラックな事をしまくってた人の代わりにって流れではあるんだけどね」

「……なるほどな。でもまぁ、この時代の変化で出世したなら、正しく評価されたって事だろうよ」

「うん、そこは自慢出来るところだね。……引っ越しだけは寂しかったけど、まぁ今はこうしていれるし!」

「サヤとも知り合えたのさー!」

「私も、みんなと会えて良かったかな!」


 いやー、ヨッシさんの引っ越しの裏にそういう流れがあったとは……。かなり距離の離れた地方から地方への引っ越しだから、何か理由がありそうな気はしてたけど、まさか支社長に抜擢されてたとはね。何気に凄いな、ヨッシさんのお父さん。

 というか、笑ってそれを話題に出せるようにもなったんだな、ハーレさん。うん、その変化も嬉しいとこではあるもんだ。


「って、話が脱線し過ぎじゃね!? 結局、明日はどうなんだ?」

「んー、その辺は適当でいいんじゃない?」

「……リコリス、行き当たりばったりだと一緒に動けないよ?」

「そりゃそうだけど……それじゃ、具体的にどこかで待ち合わせ時間でも決めとく?」

「それがいいだろうな。折角、この場に全員が転移してこれる状態にしているんだし、それを使うのもありだろうよ」

「あ、それは確かにそうかもねー! ラジアータ、いい案を出すじゃん!」

「……みんなで……ここから……明日も探索?」

「……ふむ、悪くはない案だな」


 ほほう? このラジアータさんの案、結構いいかもね? まだまだこの原野の探索はし切れてないし、折角の転移も活用が出来る。明日には弥生さんやシュウさんも動き出しそうな気もするし……。


「みんな、どうする? 明日、ここから探索の再開でいくか?」

「それ、賛成なのさー!」

「うん、それがいいかも? 時間は14時くらいからで、それまでは自由にって感じが良さそう?」

「私も賛成かな! 桜花さんが取りまとめてくれれば、合流まででも連結PTは組めるかな?」

「午前中に少し出かける用事があるが、それが済んでからなら俺は問題ないし、そういう流れで構わんぞ。あー、だけどその場合は飛翔連隊はどうすんだ?」

「桜花さん、俺らなら今日と同じで別行動でいいぞ! ソラが対人戦を避けたいのは変わらんから、別働隊であちこち移動させてもらう! どっちにしても、午前中にちょいちょい用事があるのは俺らも一緒だしよ!」

「だそうだぜ、ケイさん? 風音さんは、まぁいつも通り俺のとこだよな?」

「……うん! ……14時からなら……時間的にも……大丈夫!」

「……『縁の下の力持ち』は、元々ソロの集まりだ。14時からなら俺の都合的には問題ないし、どうとでも調整は出来る」


 ふむふむ、午前中は俺らだけでなく、他の人にもチラホラと用事があるみたいだけど、昼からなら問題ないっぽいな。


「それじゃ、ラジアータさんの案を採用でいきますか! 明日14時を目処に合流して、ここから探索を再開! 動き方は今日と一緒で!」


 よし、みんな頷いているから、明日の予定はこれで確定でいい! 明日の午前中にeスポーツの大会の予選を見る件については……ログアウトしてからハーレさんと相談すればいいか。


「それで……この残ってる落下物、結構あるけど……どうする? 紅焔さん達、取りに来る?」

「行けるなら行きたいんだが……そこ、流石に遠くねぇか?」

「ケイさん、その落下物を持ってくる事は出来ないのかい?」

「あー、どうなんだ?」


 元の形状が分からないくらいボロボロになってるUFOと一緒に、あの黒の異形種の棲家になってる洞窟から持ち出してこれたんだから、他のエリアに持っていける可能性はあるはず。でも、転移でそれが出来るかは……分からんな!


「……転移で持って帰るのは、不可能だぞ」

「あー、そっちで試してる人がいた?」

「……あぁ、他のメンバーに渡せるかどうかを試してな。エリアの移動は可能だが、転移では持ち運べない事は確定だ。……少なくとも、通常の手段ではな」

「通常の手段……あー、通常じゃない、瘴気を使った転移なら可能性はある?」

「……可能性だけだがな」

「それはやめておいた方がいいだろうな。瘴気を使った転移は、出口が指定出来ん」

「そもそも、群集所属になった今だと、あの転移自体が出来ないんじゃない?」

「少なくとも、『纏瘴』程度では無理だろうな」

「あー、そっちの問題もあるのか……」


 うーん、瘴気での転移を使って持ち運ぶのは現実的ではないっぽいなー。となれば、自力で持ち帰るくらいしか……いや、でも転移ではなく、普通に戻ってると目立つか。


「……よければ、桜花の元まで俺が運ぼう」

「へ? え、いいのか、十六夜さん。結構な手間だぞ?」

「……『縁の下の力持ち』の所属メンバーにも渡してやりたいし、その程度は別に構わん。桜花、そのまま持ち込むのは問題ないな?」

「おう、問題ないぜ! なんなら、自分で1個くらいは開けてみたいし、俺から十六夜さんへの依頼って形でもいいぞ?」

「……今回は協力関係だ。追加報酬は特にいらん」

「おっ! そりゃ助かる!」


 ふむふむ、こりゃどうも十六夜さんが持っていってくれそうな流れだね。協力関係を結んでいる『縁の下の力持ち』のメンバーにも手に入れられる状況に出来るのなら、決して悪い案ではないか。


「……ただし、うちのメンバーにはしっかりと渡してやってくれ。あと、飛翔連隊の分もだな」

「おっ! 俺らの分もあんのか!?」

「……協力関係なのだから、当然だろう? だがまぁ、流石に全員分には足りなさそうだから、早い者勝ちにはなるだろうが……」

「ちょ!? そこ、早い者勝ちかよ!? こっちの状況どうすんだ!?」

「僕らは既に回収済みだから、紅焔次第だけど……すっぱり諦めて桜花さんにとこに行くかい?」

「ぐっ! 他の連中が来て乱戦になった以上、それも手か!?」


 紅焔さん達の方では落下物からドラゴンが出てきて、その相手をしてたっけ? 他の群集の人が近付いてきてるとも言ってたけど……結局、乱戦になっての奪い合いになってるのか。


「今、下手に紅焔が乱戦を諦めると、それはそれで不自然に思われるのではないですか?」

「僕らはもう戦ってないけど、それを無視してでも1人で戦ってるしね、紅焔」

「何かあったと勘繰られるのがオチか」

「僕らだけ、先に戻るかい? その方が、紅焔も離れやすいだろう?」

「それはいいですね、ソラ。そうしましょうか」

「ソラの案に賛成!」

「たまにはそういうパターンもありかもな」

「ちょ!? マジで置いていくのかよ!? おいこら、待てや! こっちは会話中……って、取らせるかよ!」


 なんだか紅焔さんだけが違う動きをしてるみたいだけど、まぁ周りから見て置いていかれた状況だと分かれば、確かに紅焔さんが離れやすくはなるかもねー。意地にならずに、タイミングを見計らって紅焔さん自身が離脱出来ればだけど……。


「……ケイ、落下物を渡してくれ。『アースクリエイト』『岩の操作』!」

「ほいよっと!」


 さーて、それじゃ十六夜さんが生成したお椀型の岩の中へ、俺の水から移動させて……。


「あ、このUFOの残骸はどうする?」

「……使い道はあるのか?」

「さぁ? でも、ここまで壊れてたら、どうにもならなくね?」

「……確かにそうだな。なら、ここに捨てていく……いや、痕跡は残さない方がいいか?」

「あー、それはそうかも……」


 他のUFOが、壊れたUFOを回収しにくるって可能性も……いや、それならこれ自体が呼び寄せる為の道具になり得る? あー、その辺は試してみたいけど、今からするには時間が――


「ふふーん! それなら、埋めて隠し……あ、ここ岩場だ!? 掘り起こせない訳じゃないけど、やりにくいよ!?」

「ケイさん、そのUFOは近場の地面にでも俺らで埋めてこよう」

「……呼び寄せられるかは、明日、集まってから試すのでどう?」

「あー、それがいいか。よし、それじゃUFOの残骸は曼珠沙華に任せた!」

「任せなさーい!」


 また勝手に声に出てたっぽいけど、時間がかかるって風音さんも言ってたし、もうしばらく我慢っすなー。とりあえず、余った落下物は十六夜さんに、UFOの残骸は曼珠沙華に任せて、今日は終わり!

 明日はここで合流するとこから再開予定だし、俺らはここでログアウトでもいいや。あ、サヤとヨッシさんに、この後リアルで明日の相談をするって言っておきますか。



 ◇ ◇ ◇



 みんなに挨拶を済ませて、いったんのいるログイン場面までやってきた。胴体部分は……『緊急クエスト【謎の飛行物の落とし物】が開催! 各地に落ちた、何かを探せ!』のままか。クエストの進捗に合わせて、ここの表記が変わったりはしてないんだな。……ちょっと探りを入れてみるか。


「いったん、今のイベントの期間って決まってないのか?」

「期間では区切ってないからね〜!」

「……となると、何かしらの終了の演出の鍵がある?」

「そこも含めて、イベントをお楽しみください〜!」

「……なるほど」


 イベントフラグそのものをプレイヤーで探し出せって事か。ただまぁ、今の状況でも段階を踏まないと手に入らないアイテムがあるみたいだから、ある程度の時間経過は条件に含まれてそうだよな。

 今まで、進行が早過ぎるって運営の反応もあったりしたし、何かしらの調整は入れてそう。まぁこの様子だと、入手数の上限とかは決まって――


「ちなみに、一部のアイテムに関しては入手数に上限があるので、その点はご了承下さい〜!」

「ん? 入手上限があるアイテムって……あ、もしかして『スキル強化の種』か!?」

「それも上限が設定されているアイテムになるね〜」

「それもって事は、他にもあるのか」


 まぁ際限なく手に入っても厄介なアイテムだから、入手数に上限があるのは仕方ないのかもなー。他に何が該当するかは……また明日にでも考えよ。とりあえずサヤ達と明日の予定を決める必要があるから、そっちをしていこう。


「いったん、ログアウトを頼んだ」

「はいはい〜! またのお越しをお待ちしております〜!」


 さーて、今は23時半だけど……まぁ明日、何時くらいにどう集まるかを決めるだけだし、そんなに時間はかからんだろ。




――――――


『Relay:Monsters Evolve ~ポンコツ初心者が始める初見プレイ配信録~』の最新章が昨日で終わったので、こちらは明日も更新します。

それで、こちらも第39章は終わり!


色々とあって疲れているので、そこからしばらくお休み期間に入ります。

まだ本調子に戻り切っていないのと、猫が亡くなった際に書き溜めも減っているので、その補充もするので今回は少し長め。


連載再開の予定は、7月8日(月)からです。

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