第1505話 谷の下での戦い 後編


 風音さんのブラックホールと、ヨッシさんと彼岸花さんの2人でのダイヤモンドダストでの攻撃中。ブラックホールは吸い寄せられるけど、それ自体に大したダメージはないし……ダイヤモンドダストも昇華魔法としては威力は控えめ。

 でも、ブラックホールで完全に身動きを封じた状態で、ダイヤモンドダストの直撃を受け続けたら、かなり違うはず! 問題は、ダイヤモンドダストは自分達の視界すらも邪魔してしまう事か。


<行動値を6消費して『獲物察知Lv6』を発動します>  行動値 117/123(上限値使用:6)


 まだ地味に前に発動した効果が残ってたけど、もうすぐ切れそうだから、更新しとこ。擬態の個体へも矢印は元々見え辛いのに、ダイヤモンドダストの中へと続いているから、余計に分かりにくいんだよな。

 でもまぁ、ダイヤモンドダストの中へ続いているのさえ分かれば、問題なし! ブラックホールから抜けられてないみたいだし、もう『凍結』の状態でろくに動けないんじゃね?


「ケイさん、ケイさん! 獲物察知での様子はどうですか!?」

「アルマジロは5体全部、ダイヤモンドダストのど真ん中だな。多分、『凍結』も『凍傷』も入ってるから、結構HPは削れてると思うぞ」

「おぉ! この様子、神秘的ではあるけど、敵の状態が見れないのが厄介です……」

「その分、状態異常が凶悪なんだから、文句はなしだぞ?」

「それは分かってるのさー!」


 この自分達への視界の悪さも発生するというのが、高確率な状態異常の対価だろうしね。便利な部分があれば、それ相応に不便な部分もあるのは仕方ない。仕方ないんだけど……。


「これ、普通の水を流し込めば、そのまま凍ったりしない? ほら、氷の中で冷凍されてるみたいな感じでさ」

「おー、ケイさん、面白い事を言うね! 魔法の水じゃ無理だろうけど、天然の水を流し込めば出来るかも!? 彼岸花、それって可能!?」

「……生成量を大幅に増やした冷気でなら、集めれば結構凍らせるけど……この範囲は厳しいと思うよ? でも、ダイヤモンドダストで試した事はないから……この場合だと分からないかも?」

「ふふーん! 分からないって事は、試す価値はありって事だね! ラジアータ、この近くに水場ってなかった? あったら、そこから水を持ってきて流し込んで――」

「近くにはなかったな。まぁあったとしても、今は諦めろ」

「えー! なんでさー!?」


 言い出したのは俺だけど、今すぐやるのは現実的じゃないんだよなー。面白い可能性ではあるから、どこかで実際に試してみたいとこではあるけど……。


「……もうすぐ、効果が切れるから」

「ケイさん、もうそろそろお願いね!」

「ほいよっと! リコリスさん、やるぞ!」

「へ? あ、もう切れちゃうの!? ケイさん、生成規模は!?」

「谷を全部、水で満たすつもりで最大量の生成! 北半分を俺がやるから、リコリスさんは南半分をよろしく!」

「おぉ!? そこまでの規模は、何気に初だよ!? でも、了解! 『並列制御』『アクアクリエイト』『アクアクリエイト』『並列制御』『水の操作』『水の操作』!」


 小さな谷とはいえ、それでも結構な広さはある。ここを全て水で満たせば、結構な大きさと深さの湖になりそうだしなー! 俺としても、この規模を活用するのは初めてだよね。


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値10と魔力値20消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 113/123(上限値使用:6): 魔力値 298/318

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値20と魔力値20消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 93/123(上限値使用:6): 魔力値 278/318

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 うへぇ、すげぇ生成量! とりあえず片方はダイヤモンドダストが消えて、再び見えてきた谷の底! もう片方は、谷の上空で生成開始!


「おぉ! ケイさんも、リコリスさんも、生成位置が似たような感じなのです!?」

「この規模だと、離して生成するなら似たような感じになるのかな?」

「多分、そうなんだろうね。あ、生成した水にアルマジロが呑み込まれたよ」

「これ、上側の水までいるのか?」

「……さぁ?」

「生成した本人が、疑問そうにするなよな!?」


 いや、そう言われても……ぶっちゃけ、この水って量が多過ぎて、どの程度まで満たせられるかって目測が狂うんだよなー。

 おっと、先に操作してしまおうか。上の方が落ち始めたし、制御下にはちゃんと置いておかないと。

 

<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値を2消費して『水の操作Lv10』は並列発動の待機になります>  行動値 91/123(上限値使用:6)

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値を4消費して『水の操作Lv10』は並列発動の待機になります>  行動値 87/123(上限値使用:6)

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 よし、これで制御下には置けたし、リコリスさんの操作する水との隙間がないようにも調整は出来た。この大量の魔法の水、普通に生成した時よりも消えるのは遅いのは特徴だよね。サヤと対戦した時に押し流す用途で使ったけど、この生成量の場合はあえて操作せずに使うってのもあり!

 それはそうとして……今度は、雲海の中みたいな光景から、透き通った湖に変わりましたなー。うん、地味にこれってすげぇ。


「おぉ、あっという間に湖の誕生なのさー! これまた、絶景なのさー!」

「あはは、やっぱり凄い量の水だね」

「地形を変えられるのは、とんでもない影響力かな!」


 いやはや、普段使いするには多過ぎる生成量だけど、それを全開で使ったら新たな地形すら誕生するんだね。まぁ操作を解除すればこの水は消えるから、一時的なものでしか……ん?


「なぁ、リコリスさん。この状態でアルマジロを水面まであえて泳がせて、そこで水を消すってどう思う? 落下ダメージ狙いでさ」

「っ!? よく、そういう発想が出てくるね!? でも、それは普通にあり! この高さからの落下なら、かなりのダメージは期待出来るし!」

「だよなー。おし、サヤとラジアータさんのサンダーボルトで生き残って、その上で水面まできたら、その方向で!」

「ふふーん! その落下作戦、了解!」


 5体とも『凍結』や『凍傷』になってて、HPはもう半分くらいまで減っているし、継続ダメージも入っているから……正直、そこまで生き残るとも思えないけど――


「……気軽に、エゲツない手段が次々と出てくるもんだな」

「……それが……グリーズ・リベルテ……らしさ?」

「……まぁ、そうかもしれんな」

「風音さん、十六夜さん、今のはケイだけの話だからな。俺らまで、その非常識さの中に入れないでくれ」

「おいこら、アル!? 誰が非常識だ、誰が!」

「ケイ以外、誰がいる?」

「いやいや、操作を切るだけの話だし、誰でも思いつく手段だよな!?」

「ケイさん、そんなに謙遜しなくていいよ! 同じ水の操作Lv10持ちの私でも、空中まで打ち上げるくらいまでは考えた事はあっても、谷で水面以外の逃げ道を塞いだ上で、そこから落とすって発想はなかったからね!」

「フォローしてるつもりなんだろうけど、追い討ちだよな、それ!? そもそも謙遜はしてないから!」


 てか、過程が少し違うだけで、水の操作を使っての落下ダメージ狙いって部分は同じじゃん!? でも、まだ数が少ないLv10の操作持ちかつ、同じ水属性のリコリスさんに言われたら、否定もしにくい――


「あ、ゆっくりとだけど泳ぎ出したのさー!」

「まだ窒息にはなってないみたいかな?」

「でも、『凍結』で動きは盛大に鈍ってるし、『凍傷』で継続ダメージも入ってるから……水面に辿り着くのには、時間がかかりそうだね」


 おっと、ブラックホールとダイヤモンドダストの効果が切れたから、鈍くても動き始めたか。……色々と言われはしたけど、手段自体は有効だし、もう気にするのはなしで!

 というか、その前に別の手段も叩き込むんだしさ! こっちはこっちで、割とエゲツない手段なんだけど……俺の発案じゃないのに、俺の案にされたりしない? えぇい、今はそれはいい!


「サヤ、ラジアータさん、サンダーボルトを頼んだ!」

「うん、任せてかな! ラジアータさん、合わせてもらっていい?」

「あぁ、問題ない。狙う必要のない的だし、生成位置を合わせるくらいは楽なものだ」

「あはは、確かにそれはそうかな! 『略:エレクトロクリエイト』!」


 サヤが生成した電気に、ラジアータさんが電気の生成を重ねて昇華魔法『サンダーボルト』が発動! 俺とリコリスさんの操作する水へ、次々と雷が落ちて……水を通じて5体のアルマジロのHPを削っていく。

 いやはや、範囲内でのランダムな落雷を全て当てられる状態なんだから、これはこれでエゲツないよなー? ランダム性があるが故に単発のダメージが高めだから、土属性での雷属性の軽減が入っていても、それなりのダメージになってるもんね。ダメージは減っても、完全無効化にはならないからこそ、こういう手段も生きてくる!


「……リコリス、ケイさん、負荷は大丈夫?」

「ふふーん! この程度の落雷、操作には支障なーし!」

「全く負荷がない訳じゃないけど、なんとかなる範囲だなー」

「……それなら良かった」


 多分、普通の昇華程度の水の操作であれば、あっという間に操作時間が無くなりそうな勢いではあるけどね。この辺は、流石、Lv10の操作なだけはある!


「……大技が……次々と……出てくる!」

「……格上とはいえ、雑魚敵相手に遠慮ない攻撃だな。まぁ、油断すれば死んでいるのは俺らの方かもしれんし、無難ではあるか」


 いや、今の風音さんと十六夜さんの反応は、絶対別の方向性だよな!? 風音さんは魔法好きだから、盛大に派手にぶっ放してるのに興味を持ってるだけですよねー!?

 それに対して十六夜さんは戦略としての評価だよな? うーん、こういう部分に個性って出てくるもんだね。


「あ、1体、麻痺したかな!」

「2体目の麻痺も出たね」

「おー! 麻痺した方が、泳ぐよりも水面に上がるのが早いのさー!?」

「ケイ、リコリスさん、別に浮かばせた訳じゃないよな?」

「今は何もしてないぞー。アル、なんでも俺のせいにするなよ!」

「ケイさんに同じ!」


 隙あらば、俺が何かをしたかのようにしてくるもんな!? 今の状況なら、落下させる為にわざと浮かせたみたいに言われても不思議じゃないし!


「ありもしない事を、捏造したりはしねぇよ。この場合なら……変に力を入れない方が、自然と浮き上がりやすかったかもな」

「変に足掻く方が、溺れやすいしね。あ、全部のアルマジロが窒息になって……浮かび始めたよ」

「ふっふっふ! 『窒息』になって、HPもどんどん削れ始めたのさー!」

「思ったより、麻痺にはならなかったな。まぁそれでも、HPの3割は削れたから良しとするか」

「十分な成果かな!」


 サンダーボルトでの落雷は終わったけど……結構効いてた気がする割には、HPが残ったもんだな? まぁ水を伝って5体に分散していたから、本来の威力よりは弱まってたんだろうしねー。もし、土属性でなければ……多分、サンダーボルトまでで終わってたかも?


「ねぇ、ケイさん! このままだと普通に『窒息』で終わりそうだけど、さっきの落下を試していい!? 折角の機会だし!」

「別にいいけど……落下の前に死ぬ可能性もあるぞ?」

「だから、やっていいなら大急ぎで!」

「それもそうか。それじゃ、水の操作は解除で!」

「はーい! よーし、いっけー!」


 ほぼ同時に大量の水の操作が解除になって、水面まで浮かび上がっている最中の瀕死のアルマジロが5体、地面への落下に切り替わっていく。正直、残り僅かなHPだと落下ダメージがどの程度になるかが分からないんだけど……まぁ試しにやってみたい気持ちは分かるし、別にいいだろ。


<ケイが成熟体・暴走種を討伐しました>

<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>

<ケイ2ndが成熟体・暴走種を討伐しました>

<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


 1体目が地面に激突して、残りのHPが全て無くなり――


<ケイが成熟体・暴走種を討伐しました>

<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>

<ケイ2ndが成熟体・暴走種を討伐しました>

<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


<ケイが成熟体・暴走種を討伐しました>

<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>

<ケイ2ndが成熟体・暴走種を討伐しました>

<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


<ケイが成熟体・暴走種を討伐しました>

<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>

<ケイ2ndが成熟体・暴走種を討伐しました>

<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


 続けて、2体目、3体目、4体目と次々に地面へ激突してポリゴンになって砕け散って――


<ケイがLv13に上がりました。各種ステータスが上昇します>

<Lvアップにより、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>

<ケイが成熟体・暴走種を討伐しました>

<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


<ケイ2ndがLv13に上がりました。各種ステータスが上昇します>

<Lvアップにより、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>

<ケイ2ndが成熟体・暴走種を討伐しました>

<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


 おっ、5体目が死んだとこでLvが上がったか! へぇ、格上相手だったとはいえ、この人数でこれだけの経験値が入るって良いね!

 かなり一方的に仕留めた気がするけど……それは上手く作戦がはまったからであって、敵としては強かったんだろうなー。うん、冗談抜きで最初の一連の攻撃で壊滅する可能性もあるだろうしさ。もし、他に考えてた方法で、1体ずつ引っ張ってきて倒そうとしてたら、どうなってた事やら……?


 何はともあれ、門番らしきアルマジロ5体の撃破は完了! さーて、それじゃ谷の下まで降りて、洞窟の入り口とやらを見に行きますか!





【ステータス】


 名前:ケイ

 種族:同調激魔ゴケ

 所属:灰の群集


 レベル 12 → 13

 進化階位:成熟体・同調激魔種

 属性:水、土

 特性:複合適応、同調、魔力強化、魔法耐性、属性強化


 群体数 356/12150 → 356/12400

 魔力値 278/318 → 278/322

 行動値 87/129 → 87/131


 攻撃 121 → 123

 防御 206 → 209

 俊敏 148 → 150

 知識 350 → 356

 器用 412 → 420

 魔力 514 → 523



 名前:ケイ2nd

 種族:同調激強ロブスター

 所属:灰の群集


 レベル 12 → 13

 進化階位:成熟体・同調激強種

 属性:なし

 特性:打撃、斬撃、強靭、堅牢、同調


 HP 17000/17000 → 17000/17450

 魔力値 152/152 → 152/154

 行動値 119/119 → 119/121


 攻撃 504 → 512

 防御 464 → 472

 俊敏 395 → 402

 知識 116 → 118

 器用 156 → 159

 魔力 77 → 78


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