第1504話 谷の下での戦い 前編


 原野エリアにある小規模な谷の中で、不自然に配置された擬態した複数の敵。それらを撃破する作戦は決まったし、サヤとハーレさんが先陣を切って突っ込んでいる最中だ。


「はっ!? サヤ、あれ!」

「見えてるかな! ケイ、洞窟の入り口が見えるかな! これ、多分当たり!」

「よし! ナイス、情報!」


 敵を引きつける為に下へ降りていってる最中だけど、そっちまで行けば、本命の存在は確認出来たっぽいね。具体的のどの程度の規模の洞窟かは入ってみるまで分からないけど、それでも存在の確定は大きい!


「ハーレ、動き出したみたいだから、牽制はお願いかな!」

「了解なのさー! 『看破』!」


<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>

<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


「『看破』!」


<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>

<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


 おっ、発見報酬が出たし、一部の岩壁が動き出したな。でも、なんだか動きが遅い?


「『看破』!」


<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>

<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


 ハーレさんが看破をすれば、動き出すっぽいな。しかも、初手から魔力集中を発動してきてるのかよ!


「『看破』!」


<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>

<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


 てか、どれも黒の暴走種かよ! って事は、ここで誰も戦っていない? 場所が場所だし、誰もまだ挑みにきてないのか……。


「『看破』!」


<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


 うーん、『看破』の効果で、風景に同化して見えたのは薄まって存在は分かりやすくはなったけど……元々、岩っぽい表皮になってて、視認しにくい状態かよ! しかも、どれも微妙に見た目が違うし……いや、でも目を離さなければ見失う事もないし、少しでも動いていれば俺でも位置は把握出来る範囲だ!

 それにしても全部が黒の暴走種とはね。誰も見つけてないのか、挑んでないのか……返り討ちにあってるのか、気になるとこだな。


「ふっふっふ! 着いてくるがいいさー! 『連速投擲』!」

「アル、ハーレさん達の上へ移動! そこまで移動したら、十六夜さんと一緒に防御に回ってくれ! 妙に移動速度が遅いけど、嫌な予感がする!」

「了解だ! 特性『鈍重』を持ってる可能性がありそうだな」

「……チャージの妨害を防ぐ特性か。地形的に防御は必須かもしれん」

「サヤ、ハーレさん! チャージ攻撃には要警戒で! 引き付ける事と避ける事に専念してくれ!」

「分かったかな!」

「了解なのさー!」


 既に岩壁にいたトカゲが銀光を放ちつつ、丸まっていってるし……谷といっても傾斜がきつ過ぎるほどではないけど、それが逆に厄介な可能性! てか、この丸まる挙動って、本当にトカゲか!? どうもカメもちょっと形が違うような気がするし……よし、不安要素は潰しておこうか。


「曼珠沙華、岩壁にいる3体の識別を頼む! 俺は底にいる奥の個体をするから、ヨッシさんは手前のを!」

「……分かった。私は左端、リコリスはその手前、ラジアータは右端で! 『識別』!」

「はいはーい! 『識別』!」

「どうも、トカゲの挙動には見えんしな。『識別』!」

「だからこその、確認だね! 『識別』!」


 トカゲとカメって判断は、あくまでサヤとハーレさんの見立てであって、確定情報じゃない。しかも、擬態の最中のものだから、間違っているという可能性もある。

 どれもが丸まってチャージを始めている状況になってきたし、ここは正体をはっきりさせた方がいい!


<行動値を5消費して『識別Lv5』を発動します>  行動値 118/123(上限値使用:6)


『激突オオイワマジロ』Lv20

 種族:黒の暴走種(激突大型種)

 進化階位:成熟体・黒の暴走種

 属性:土

 特性:突撃、擬態、大型、鈍重、一撃強化


 オオイワマジロ……これ、大型の土属性のアルマジロか!? あー、確かにトカゲやカメにも見えるけど、鎧っぽい皮の部分を岩に変えたアルマジロっぽい! なるほど、丸まっての攻撃はアルマジロだからこそか!


「重要なとこを確認! 各自の識別内容、アルマジロか!?」

「うん、アルマジロだよ!」

「……こっちもアルマジロ」

「トカゲやカメかと思ったのに、これはやられたね! 私の方もアルマジロ!」

「俺もだな。特性に突撃もあるし、丸まって転がっての攻撃がメインか」

「やっぱり、全員そういう内容か! アル、十六夜さん! そいつら、全部同じ構成の可能性が高い! チャージ攻撃での一点突破狙ってくる感じ! チャージは止められないし、多分戻ってくるから、受け止めるんじゃなくて、軌道を逸らす感じで!」

「嫌な構成だな、おい!? ともかく、了解だ!」

「……ふん、地形を利用した連続攻撃か」


 ほんと、地味に地形を利用したギミックっぽくなってるよな、これ! そのまま岩壁に突撃して埋まるとは思えないから、下手に躱しても岩壁を転がり上がってから、勢いをつけて戻ってくるだろ!


「……ケイさん……アルマジロは……泳げるよ?」

「げっ!? そういやそうか!?」


 くっ、水攻め作戦はカメの方が泳げない前提で考えてたけど……って、別に問題なくね? 泳げたとしても、水面まで出てこれなきゃ結局は窒息になる訳だし――


「サヤ! 攻撃が始まったのさー! でも、危機察知に反応が出ないのです!?」

「っ!? これ、元々標的を定めてないのかな!?」


 ちょ!? サヤ達を狙って一斉に攻撃するのかと思ってたけど、見当外れの方に向かって転がり出した!? ちっ、Lvがかなり高めとはいえ、雑魚なのに厄介な事を仕掛けてきやがるな!


「サヤ、横からなのさー!」

「っ!?」

「……『アースクリエイト』『土の操作』!」

「十六夜さん、ありがとー!」

「助かったかな! これ、攻撃が読みにくい!」


 まさか、谷の中を縦横無尽に転がりまくってくるなんて想像してなかったわ! なんとかサヤが引きつけようと谷の中に留まりつつ、回避しようとしてたけど……危機察知に引っかからないのは厄介だな!?

 プレイヤーならまだしも、普通の雑魚敵が危機察知回避の攻撃を仕掛けてくるなんて考えんわ! でも、十六夜さんは上手く軌道を逸らしてるね。溝のある土を生成して、レールみたいな方法でやるとは!


「サヤ! そのまま留まるのは危ないだけだから、空に上がれ! アルマジロ達の攻撃が止まるまで、下手に手出ししない方が良さそうだ!」

「分かったかな! 『略:突撃』!」

「はっ!? 跳ねてきたのさー!?」


 ちょ!? 転がる軌道を変えて、上へジャンプしてくるなんてあり!? いや、でもこれは防げる範囲だ!


「させるかよ! 『並列制御』『アクアウォール』『アクアウォール』!」

「アル、ナイス!」


 やっぱり、今のタイミングくらいなら防御は間に合ったね。ただ、眩い銀光を放っているから、複合魔法の『アクアプロテクション』でギリギリ勢いを削げた程度か。


「これ、チャージと連撃の応用連携スキルか?」

「……多分、そうだね。最初にチャージしてたし、今のアルマースさんの防御や、十六夜さんの攻撃逸らしで銀光が強まってた。両方の性質があるから、ほぼ確実」

「ですよねー」

「『並列制御』『アクアウォール』『アクアウォール』! 跳ねてきてるのは防いじゃいるが、凶悪過ぎねぇか!?」

「……『並列制御』『アースクリエイト』『アースクリエイト』『アースクリエイト』『並列制御』『土の操作』『土の操作』『土の操作』! ……思った以上に、厄介だな」


 本当、攻撃性が高いな、このアルマジロども! 


「でも、初手から大技を使いまくりだし、ここが一番のピークじゃね?」

「……ケイさん……油断は……大敵だよ?」

「まぁそりゃ分かってるけど、再使用時間はどうしようもないよなー!」


 これだけが攻撃手段ではないだろうけど、こういう攻撃は初見殺しなだけ! ……いきなり、全員で突っ込むような作戦にせず、突っ込むのを必要最低限にしつつ、防御役を2人用意しててよかった。そうじゃなけりゃ、混乱状態で嬲り殺しだろ。


「想定とは違った敵だったけど、手順自体は大きく変えずにいくぞ! アルマジロ達の攻撃が止まったら、風音さん、ブラックホールを展開! アル、十六夜さん、あとラジアータさん! ブラックホールの影響が届いてない個体を、吹っ飛ばして効果内に!」

「……うん!」

「なるほど、バラついたのは俺らで調整か」

「……了解だ!」

「あぁ、任せておけ」


 サヤとハーレさんが想定ほど引きつけられない結果になったけど――


「……ケイ、ごめんかな。もっと、引きつけ――」

「いやいや、今のは想定外だから気にすんな! 直接狙ってこないのは流石に仕方ないし、あの状況から死なずに戻ってきただけで十分な成果だって!」

「冗談抜きで、死ぬかと思ったのさー!」

「……うん、それもそうかな」


 なんかサヤが悔しそうなのは分かるけど、今のは一歩間違えれば、本当に死んでいてもおかしくない。5体の格上のアルマジロ達から、応用連携スキルを受けまくるとか……マジで殺意が高いしさ。

 でも、サヤ的にはそれが分かってても納得いかないって気持ちなんだろうね。そういう悔しい気持ちは分かるから、なんともフォローの言葉が出しにくい……。


「おー、アルマジロの動きが止まりそう?」

「よし! 風音さん、よろしく!」

「……任せて! ……『ブラックホール』!」


 さて、影響下に入ったのは……2体か。まぁ全部が転がっていたんだし、バラバラの位置にいたんだから仕方ないな。


「アルは左上、十六夜さんは右下、ラジアータさんは左下を狙ってくれ!」

「おうよ! 『アクアインパクト』!」

「……了解だが、これはまるでビリヤードだな。『アースインパクト』!」

「どっちかというと、ゴルフ辺りじゃないか? 『アースインパクト』!」


 この状況をビリヤードやゴルフに例えてくる!? んー、どっちもそれっぽい気もするけど、違うような気もするし……って、特に重要じゃないよな、そこ!


「というか、このアルマジロ達、自分達でダメージを与えあってるよねー。防御して落下した時もだけど……結構、アホなの?」

「……そういう、攻撃パターンなだけ。リコリス、捨て身は厄介だからね? 油断は大敵!」

「はいはーい。それでケイさん、ここからは? カメやトカゲじゃなかったけど、変更するの?」

「いや、特に変更なしで! 別に爬虫類でなければ『凍結』や『凍傷』が効かない訳じゃないんだから、そのまま予定通りいく!」


 多少、効果が落ちる可能性はあるけど……それは特効ではなくなるだけの話だからね。実は氷属性を持ってたとか、魔法耐性を持ってたとかじゃないんだから、変更する理由はない!


「って事で、ヨッシさん、リコリスさん、『ダイヤモンドダスト』の発動をよろしく」

「……任せて。ヨッシさん、私が合わせるから、そっちから先に発動して。ブラックホールは魔法も吸い込むけど、昇華魔法は一定の範囲を維持し続けるから、気にせず使っていい。でも見えにくくなるから、ブラックホールから少し位置は離して」

「了解! 『アイスクリエイト』!」


 ほほう? ブラックホールって、周囲の敵だけじゃなく魔法も吸い込むんだ? いやまぁ、昇華魔法なら特に気にする必要もないみたいだし、アブソーブ系のスキルとはまた別物なんだろうね。


「……それじゃ、いくよ。『アイスクリエイト』!」


 一気に谷の底を覆い尽くすように、白い冷気が広がっていく。上から降り注ぐ太陽光がキラキラ反射して、なんか幻想的な風景が誕生したな!?


「おぉ! 岩山の上から雲海でも見ているような気分なのさー!」

「あー、確かに?」


 2人での発動の『ダイヤモンドダスト』だから、ヨッシさん1人で発動してきた今までの規模とは段違いだしなー。谷という地形も相まって、かなり凶悪な事になってるね。


「彼岸花さん、これだけで仕留め切れると思う?」

「……多分、無理。『ダイヤモンドダスト』は、威力自体は控えめだし……でも、動きは完全に封じたはず」

「ふふーん! 動けない間に私とケイさんで水に閉じ込めて、それで終わりだよ!」

「それでも出てくるようなら、俺が『サンダーボルト』を叩き込むだけだ」

「ラジアータ、相手は土属性だよ? 効き、悪いよね?」

「ダメージじゃなく、麻痺目的だから問題はない。それに1撃ずつのダメージが減った分は、数で補うだけだ」

「っ! ラジアータさん、それ、私も一緒にやっていいかな!?」

「ん? そりゃ1人より2人で発動した方が威力は上がるし、俺はいいが……ケイさん、どうだ?」


 あー、サヤはここでさっきの悔しさを挽回したいのかもね。まぁ無理な事を言ってる訳でもないし、格上の5体を確実に仕留める為ならありな手段だな。下手に仕留め損なうよりも、オーバーキルの方がマシ!


「よし、その案は採用! サヤとラジアータさんで『サンダーボルト』の発動も組み込みぞ!」

「っ! ケイ、ありがとかな!」

「どういたしましてっと。リコリスさん、操作は耐え切れるよな?」

「もちろん! 操作Lv10は伊達じゃないからね!」

「ま、そりゃそうか!」


 2人で発動する雷の昇華魔法を流すとなれば、相当な負担はかかるはず。でも、それを耐えられる可能性があるのがLv10の操作系スキルだよな!

 さーて、『ダイヤモンドダスト』の効果が切れ次第、トドメを刺す為に動いていきますか!

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