第1500話 演出を見てから
今回のイベントの演出が終わって、色々と事情は見えてきた。謎な部分もまだあるけど、これはもうほぼ確定だろう。
「今回のイベント、どう考えても次の共闘イベントの事前のものだよな!?」
「ケイに同意だな。既にクオーツの通信装置から、信号を送られた後だし……今のUFOの正確な目的はともかく、別部隊が襲ってくる可能性が非常に高くなったか」
「だよなー!」
アルがすんなり同意してくれたし、みんなも頷いているし、そういう認識になるよね! 週末にある小規模なイベントだとばっかり思ってたけど、全然そんな事はなかったよ! ガッツリとワールドクエストが動き出してるしさ!
「でも、これといったクリア条件がないかな? クエスト欄にも、特に表示されてないし……」
「あくまで、前兆のイベントって事なんじゃない? 連休に合わせた宝探しイベントでもあるみたいだしさ」
「そうかもなー。まぁ追加の演出がどこかであるかもしれないし……その鍵になりそうなのは、これかー」
墜落したUFO……いや、『採集機』か。それに俺が手に入れていたこの謎のレンズっぽいのを繋げなきゃいけないんだもんな。あー、さっきは『???』だったのに、今は『惑星浄化機構・長距離通信装置』に表示が変わってるね。やっぱり、これがクオーツの一部なんだな。
「……ケイ、そのレンズらしき物が『惑星浄化機構・長距離通信装置』で合っているのか?」
「ちゃんとその名称に変わってるから、その認識で問題ないぞ、十六夜さん」
「ちょ!? ケイさん、今の演出で名称が変更になったアイテム、持ってんの!?」
「おう、持ってるぞ。あれ? 紅焔さん、その話は聞いてなかった?」
「あー、聞き流してたかもしれん。こっち、今UFOがあちこちに降りてきててな! どこに向かえばいいのか、混乱してたんだよ!」
「え、マジで!?」
なんでハーレさんがそれに気付いて……って、そうか!? アルの樹洞の中にいたんだし、それにそろそろ効果が切れてる頃合いか!? 今が22時半を過ぎたくらいだから、そうなっててもおかしくない。
「ハーレ、もしかして察知の効果は切れてるの?」
「アルさんの樹洞の中に入った頃に切れてたのさー! でも、ケイさんの持ってるそれの確認が終わってからでいいと思ってたのです! その間に、UFOに大きな動きがあるとは予想外なのさー!」
「あ、そうなんだ。まぁあの状態で分かっても、動くに動けなかったもんね」
「確かになー。紅焔さん、そのUFOの大量出現ってどんなもん?」
「あー、あちこちに散らばって降りていったの観測しただけで、具体的な動きがある訳じゃねぇよ。今は俺が『侵食』で察知をしてるんだが……どこに向かえばいいのか、情報が多過ぎて混乱しててなー。選択肢が多いってのも、考えもんだな……」
「……なるほど、そういう状況か」
UFOの動く状況が見えているからこそ、どこに向かえばいいのかで混乱するとは皮肉な状態だな!? それにしても、降りてくるUFOが増えてくるとは……何かきっかけがあった?
いや、そのキッカケってクオーツの部品が関係してたりする? 信号が送られたって言ってたし、クオーツの部品を拾った時点で何かがあった可能性も考えられるな。そういう部品を探せという指示が出たとか……?
「疑問なんだが、『採集機Ⅰ型』とか『採集機Ⅱ型』とかの情報は出てきたが……その母艦はいないのか?」
「……先ほどの演出では、何も言及はなかったな。いないとは思えないが、どういう事だ?」
アルと十六夜さんの疑問も確かにそうなんだよなー。攻撃してくるっぽい『採集機Ⅱ型』の存在はまだ確認出来てないけど、それらを束ねる母艦は存在していてもいいはず?
てか、ここにきてSF感が一気に増してきてるね? いやまぁ、クオーツが出てきてた時点でオンライン版のモンエボのストーリーにSF要素があるのは分かってた事か。
「……グレイ達でも……察知出来て……いない? ……全力が出せないなら……そういう可能性も……ある」
「……確かに、その可能性はあるか。現に、UFOも察知し難いようだしな」
「母艦の方が性能が高くて、隠れ切ってるとかかもしれないよなー。アル、その辺はどう思う?」
「……可能性としては十分あるな。既に着陸している可能性も……いや、流石にそれはないか?」
「あー、てっきり宇宙にいるかと思ったけど……降りてる可能性もあるのか。あれ? それだと、月にでも隠れてるって可能性もある?」
「おー!? それ、ありそうなのさー!」
「……採集機だけ送り込んでの高みの見物か。否定は出来ん可能性だな」
「だよなー!」
思いつきで言ってみたけど、この惑星の外にはおそらくクオーツの力は及ばない。この星の衛星として月があるのは分かり切ってるし、今のUFO相手でも上手く察知出来てないのであれば……母艦が月にいる可能性は排除出来ないか。うん、そこにいられたら、どうやっても対処出来ないけど!
「母艦の存在に気付いた時には、もう手遅れかな?」
「……次の共闘イベントの敵なら、こっちの様子を伝える存在は必要だよ?」
「えー! それって手出しが出来ないとこにいられて、情報だけ持ち帰られるとか嫌な演出になりそうな予感がするんですけどー!」
「リコリス、まだそうなると決まった訳ではないぞ?」
「まぁそりゃそうだけどさー。何かの手段で、情報が伝わるのはほぼ確定じゃない? そうじゃないと、次に繋がんないしさ」
「そう考えるのなら、もう手遅れという可能性もあるがな。止められなかった信号は、既にあるぞ」
「あー! そういやそうだ!? ぐぬぬ、そうなるとサンプルを何も回収させないってのが、今回のイベントの趣旨!?」
「……多分、そういう事。具体的な内容を知らせない為の、UFOの撃破」
その結果、母艦が一旦引き上げて……増援を連れて本格的な調査に戻ってくるのが次の共闘イベントの内容なのかも? 少なくとも、機械人にとっては想定外の状況なんだろうし……。
「はっ!? よく考えたら、今まで拾った物って結構危なくないですか!?」
「危ないって何が……あ、進化絡みのアイテムやスキル強化の種か!?」
あれらって、設定上では精神生命体の力の発現方向を定める手段のはず。機械人に精神生命体そのものを知られないようにした方がいいみたいな内容もあったし、回収されるとかなりマズいアイテムかも?
「よく考えたら確かに危なそうだけど、グレイ達の反応ってそこは気軽そうだったかな?」
「……ただの杞憂か、強大な力を持つ精神生命体であるが故の油断か……俺としては後者だと思うがな」
「十六夜さん、その根拠は何かな?」
「単純な話だぞ、サヤ。プレイヤーとNPCを両方含んだ上で、未だ機械人と接触していないからだ。直接の接点は、奴らによって滅ぼされた時のみで、具体的な脅威度は誰も知らん。クオーツにしても、知っているのは相当昔の情報だろう」
「あ、確かにそれはそうかな!」
なるほど、確かに実際に遭遇していないのであれば……その力量を見誤るという可能性は高いか。実際、監視の目からすり抜けてサンプルを集めているんだし、甘く見ていい状態ではないけど……まぁゲームのストーリー上の都合もあるだろうしね! なんでもかんでも、『精神生命体のままの、各群集の長が全て片付けました』じゃ話にならないし!
「ま、確かにな。何かしら理屈を付けて、長達の参戦はさせないだろうよ」
「ふっふっふ! ゲームである以上、それが最大の理由な気がします!」
「ですよねー!」
えぇい! 昨日の今日だからまだ直ってないのは仕方ないけど、この口に出る誤動作はどうにかならんのか!? あー、もう今は夜だし、明日からは連休だし……当分は無理か? 無理だよなぁ……。
「ケイさん、ドンマイなのさー!」
「また声に出てるんかい! ……はぁ」
癖じゃなくて不具合の可能性が高いって分かったら、このダダ漏れ状態って嫌になってきてるんだけど!?
「……ケイさん……どうかしたの?」
「いや、俺って前々から声に出る癖があったじゃん? あれ、癖じゃなくて、VR機器の不具合じゃないかって言われて、手動でフィードバックを送ったんだよ。でも、何にもその後の反応なし……」
「……そっか……。……その手のは……結構……反応は遅いよ? ……ゲームが……関係してる時は……再現の為に……まず運営に……話がいくから……。……そこから……再現の為の……環境を整えて……テストになる」
「風音さん、詳しいな!?」
「……そういう確認は……やってる仕事の……1つだから」
「あ、なるほど」
風音さん、耳が聞こえなくて医療用のVR機器を持っているって話だっけ。そういう人が主にやる、色んなテスターの仕事があるって話だけど、俺も送ったフィードバックってそっちで再現確認がされるのか!
「……ちなみに……それでも再現性が……低い場合は……ケイさんの方に……サンプリング用の……業務用の……VR機器が……届くこともあるよ?」
「あー、確かにそれっぽい事は書いてた――」
「っ!? ケイさん、業務用のアレが我が家に来るの!?」
「おいこら、ハーレさん!? その可能性はあるけど、いくらなんでも食いつき過ぎだ!」
「ハーレ、落ち着いて?」
「あぅ!? ……ふぅ、色々とびっくりしたのさー!」
「そりゃ、俺の台詞なんだけど……」
もしそうなったとしても、使うのは俺であって、ハーレさんではない訳で……うん、冗談抜きで食いつき過ぎ。
「ハーレ、そんなに業務用のVR機器に興味があるのかな?」
「うん! だって、あれならフルダイブの時間制限は気にしなくて済むのさー!」
「……その認識……正しくない」
「えっ? そうなの!?」
「……業務用のVR機器でも……個人認証で……制限解除がないと……時間は変わらない……。……通常使用での……再現データを……取る場合では……時間の制限解除はないよ?」
「あぅ!? そうなんだ!?」
ふむふむ、その辺は全然知らなかったな。業務用のVR機器だとフルダイブの時間制限は気にしなくていいって印象があったけど、正確には個人認証の制限解除が必須なのか。学校にあるアレは……あー、アカデミック用のアカウントがどうこうって説明は聞いた事があったような?
「……その話題、まだ続くのか?」
「はっ!? 十六夜さん、ごめんなさい!」
「すまん、流石に脱線し過ぎてた……」
「……いや、話題を戻してくれれば、謝るまでは必要ない」
ふぅ……そう言ってもらえるとホッとするね。まぁともかく、今のは冗談抜きで脱線し過ぎだし、本題に戻していくとして……。
「そういえば……明確には言ってないけど、察知方法のヒントも出てたよな?」
「……確かに出ていたな。桜花、演出が終わってからのそっちの様子はどうだ?」
「察知方法については、『侵食』が効果があると気付いた連中は結構出てきている様子だな。骨の竜の目撃情報は既に広まっていたから、さっきのヒントで点と点が結びついたみたいだぜ」
「……やはりか」
「まぁそうなるよなー。そろそろ変質進化用の進化の軌跡の入手は厳しくなりそう?」
「……そうなりそうだな。ろくに手に入れられないまま、そういう状況になるのも悔しいが……」
「あー、それは確かに……」
時間的に、探索を終えて引き上げてきた人はまだ少ないだろうし……それより前に、演出の中で大々的にヒントを出されたらどうしようもないか。
「いやいや、ケイさん、桜花さん、俺は逆にこれからがチャンスだと思うぜ?」
「へ? え、紅焔さん、それってどういう意味?」
「……紅焔さん、もしかして成熟体以外のプレイヤーが思った以上に多いのか?」
「正解だ、桜花さん! 森林深部を出てくる時に見かけてたんだが、灰のサファリ同盟がオオカミ組の護衛付きの捜索部隊を編成しててよ? その時は行動範囲が被らないだろうからってスルーしてたんだが……多分、入手量的に余ってくる可能性はあるぜ?」
「あー、そういう……って、それって灰のサファリ同盟が大量所持するだけ……でもないか? あそこなら、余れば出してくる?」
「そういう事だな! 誰にでも無作為にはばら撒かないとは思うけど、情報入手の可能性が高いとこ……つまり、ケイさん達『グリーズ・リベルテ』や俺ら『飛翔連体』へ優先的に回してくる可能性はある!」
「……桜花さんから見て、紅焔さんの意見はどう判断する?」
ありそうな可能性だとは思うけど、ここは商人としての経験が豊富な桜花さんの意見も聞いてみよう!
「可能性は十分過ぎるほどあるな。俺が既に『侵食』の進化の軌跡を集めている事にも気付いている頃合いだろうし、ケイさん達や紅焔さん達と組んでいるのは、探ればすぐに推測も出来るだろうよ。ただ、無条件ではないだろうな」
「あー、まぁそりゃそうだろうなー。どういう条件を出してくると思う?」
「そりゃ……ぶっちゃけ、灰のサファリ同盟の持ってる情報次第だな。今は本拠地の魔改造やら、例のeスポーツ関係やらで、普段よりも探索に回ってる人数が少ないそうだから、意外と情報を把握出来てない可能性はあるぜ?」
「……なるほど」
色々とバタバタしている真っ最中だから、探索に回っている人達は少なめで、進化階位が低い人も多いって状態か。しかも、全員が全員、灰のサファリ同盟のメンバーという訳でもないだろうから、具体的な動きは予測も難しい――
「あ、ラックからフレンドコールなのさー!?」
「このタイミングで!? あー、思ったより動き出しが早かった?」
「そんな気がします! とりあえず出てもいいですか!?」
「いいぞ。流石に無視する訳にもいかないし、向こうの状況も聞いてみてくれ」
「はーい!」
さて、今の灰のサファリ同盟はどういう動きをしてくるんだろうね? eスポーツ勢を誘導する例のサイトがどうなってるかも気になるし……ギンは夜にはログインするって言ってたし、eスポーツ勢のも兼ねて初心者講座に関わってそうではあるんだよな。あと、一応……アイルさんもか。
イベントの演出があった事で、色々と動きが変わってくるだろうけど……どうなるものやら? 場合によっては、そろそろ情報秘匿も解除していいのかもなー。
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