第1499話 今回のイベントの演出
俺が手に入れた謎のアイテムが、イベント演出の開始の可能性を考えて使用を躊躇している間に、なんか演出が始まったんだけど!?
「ケイ、使ったのかな?」
「いやいや、まだ使ってないから!」
流石に使うなら、使うと宣言してからやる! でも、その前に始まっちゃったんだから――
「……入手してから、一定時間の経過で自動的に始まるか?」
「……もしくは、ケイさん以外の誰かが同じ物を手に入れて、使ったか?」
「……どっちでも……いい。……今は……演出に……集中!」
十六夜さんと彼岸花さんの開始の条件の推測を、風音さんがばっさり切り捨てたな!? いやまぁ、クオーツの姿が現れてきてるんだし、言ってる事はその通りか。うん、落ち着いて演出を見ていこう。多分、それで何がキッカケで始まったかも分かるはず。
[っ! 奴ら、我の一部の回収を!?]
おっと、なんだか慌てた様子だけど、クオーツはどうした? クオーツの一部の回収って……あ、もしかして、この謎のレンズっぽいの、クオーツの部品!?
『おいおいおい、なんか妙な信号が出てたが、ありゃなんだ!?』
『既に止まってはいますが、今のはなんでしょうか?』
『クオーツ、何か知っているか? そもそも、今観測しているヤツらの存在を広めるなと言っていたが……』
[……知らぬなら、知らぬままの方はいいと思ったのだが……どうやら、そうはいかないようだな……]
ふむふむ、それぞれの群集の長のセキ、グレイ、サイアンの姿も現れて、クオーツの状況説明を求めている状況か。こりゃ、UFOの存在には気付いてたけど、長のところで情報を止めるようにクオーツが根回しをしてたっぽいね。不自然に思っていた部分、割と正解な状況か?
『あぁ、説明をしてもらわないと困る。既に同胞達の中で、この謎の飛行体との接触も観測しているからな』
『切羽詰まった様子で教えるなって言われたから、とりあえずはそうしたけどよ。これ、隠そうって方が無茶だろ!』
『……不本意ながら、そこはセキに同意しましょう』
『おいこら! サイアン、どういう意味だ、それは!』
『クオーツ、説明していただけますね?』
『おい、無視すんな!?』
[……この状況、もはや隠し切るのは不可能か。分かった、今の状況を我が分かる範囲で説明しよう]
ふむふむ、やっぱり隠そうとしたのが限界になったからこそ、この演出が始まったっぽいね? クオーツの最初の一言から考えると、誤魔化し切れなくなった要因はこの謎のレンズっぽい何かなのかも?
[……そなたらの知覚をすり抜けて、この惑星へと来ているものの存在は、既に気付いているな?]
『まぁな。精神生命体の力を使い過ぎないように抑えてるとはいえ……どうやってこいつらは掻い潜りやがった!?』
『未だに生命反応は拾えていませんが……これは無人機でしょうか? 無機物だけですので、妙に反応が拾い辛いですし……』
『……無人偵察機……ではないな? これはクオーツの産みの親の一部か?』
[……あぁ、正確には少し違うが、グレイの読みが概ね正解だ]
『っ!? これ、あの機械人の野郎どもに関係してるのか!?』
『その可能性も考えてはいましたが……奴らはこの星を放棄したのではないのですか?』
『確か、そういう話だったよな! 思い通りにいかず、クオーツを放置してどっか行きやがったって話だったろうが!』
『いや、異変を察知すれば戻ってくるという話もあっただろう。……察知されたのか?』
この星に元々いた生物を瘴気で滅ぼして……それからどれだけ経ってるのかは分からないけど、地球すらも滅ぼしていった奴らだもんな。設定上では、そういう危険な連中のはず。
[いや、察知して来た訳ではなさそうだし、何故このタイミングで戻ってきているのかは分からん。だが、今の奴らがしている事は、この今の星のサンプルの採集だ。来ているのは末端も末端、人格すら用意されていない使い捨ての採集機でしかなく……その程度だから、我の力で採集地の座標だけ書き換え、別の星と誤認させようとしていた]
『……ほう? 私達にそれを説明しなかったのは、どういう理由からだ?』
[……我にとってもだが、そなたらにとっても奴らは仇敵だからだ。だが……いや、だからこそ、この地で争いを行わせたくなかった。そなたらが何も知らず、ただ自力で遭遇したのを破壊しただけならば、原生生物の驚異程度の認識で済むからな]
『俺らに、あの野郎どもと戦わせねぇようにしたかったってか? おい、クオーツ! そりゃ、ちょっと身勝手が過ぎるんじゃねぇか! あの野郎どもが、俺らに何をしたと思って――』
『セキ、落ち着きなさい! そういう反応を危惧したからこその、クオーツの判断でしょう!』
『……悪い』
まぁセキってどう考えても、頭に血が昇りやすいタイプだもんなー。精神生命体に頭も血もないけど、感情はあるんだから、ブチ切れて無茶な力の行使くらいは簡単にやってしまいそう。
『私達に伏せるつもりでいたようだが……もうそれが無理になったという判断でいいのか? 何故、そういう事態になった?』
[……すまぬ。我の部品の一部が回収され、そこから我の記録の外部への送信を許してしまった……]
『……何?』
『おいおいおい! さっきの信号は、それか!? あれは中身に何が入ってやがる!?』
[……惑星の再生状況を示す信号だ。今の姿へと進化した際に、不要な機能は切り離しておいたのだが……それを回収され、解読されたようだ]
『……惑星の再生状況を伝える信号ですか。送られたのは具体的に、どの程度の状態だという信号なのでしょうか?』
[奴らの想定より、遥かに進んでいる状態のものだ。……サンプルの入手と合わせれば、想定外の状況になっていると判断するには十分過ぎる程のな]
おーい!? それ、結構ヤバい情報が漏れてませんかねー!? てか、やっぱりこの謎のレンズっぽいのはクオーツの部品っぽいな!? これ、データの保存用の物だったりする?
『待てや、クオーツ! なんでそんなもんを、破壊せずに残しておいた!? テメェ、ボロボロだっただろうが!』
[我とて、残したくて残しておいた訳ではない! 奴らに何一つ、くれてやる気などない! だが、まだ完全に力を掌握し切れていないのだ!]
『セキ、その程度にしておけ。一度、クオーツを精神生命体として引き上げたとはいえ、安定化の為に力を抑えた形に留めたのだから、何事にも限度が出てくる。そもそも浄化に特化させたのだから、破壊する力は弱いぞ?』
『そうですよ、セキ。ここに、精神生命体の力を万全に発揮して大丈夫な者はいませんからね』
『ぐっ!? そりゃ、そうだがよ……!』
あー、そういやクオーツも安定させるのを優先して、力自体は抑えめに調整してたんだっけ。そもそも『惑星浄化機構』という機械そのものを依代にしてるから、その身体を構成する部品って丈夫になってそう?
不要な部分だから壊そうと思っても、壊せるだけの力が無かったのかもなー。だから、せめて自分から切り離しておいたら……それをあのUFOに回収されてしまったって流れか。
『ひとまず、状況は分かった。クオーツ、これから奴らがどう動いてくるかは分かるか?』
[……正直、読み切れん。だが、我の存在を把握した上で、この今の惑星の情報を持ち帰らせる訳にはいかん! 別の惑星だと誤認させるのは、失敗に終わったからな……]
『となりゃ、あのうじゃうじゃウザい飛んでるのを全部落とせば――』
『セキ、精神生命体の力は行使するな』
『……おい、何を言ってやがる、グレイ! 持ち帰らせる訳にはいかねぇなら、始末するしかねぇだろうが!』
『目的の話ではない、手段の問題だ。過剰な力の行使は、人の身に戻るのを捨てる事になるぞ』
『……てめぇがそれを言うか、グレイ!』
セキ、一気にUFOを壊滅させる気だったのかよ! いやまぁ、確かにそれが手っ取り早いだろうけど……力の行使のし過ぎは良くないって話だもんなー。まぁグレイも使い過ぎになりかけてた時があるんだから、セキの反応も分からなくもない。
『確か、【機械人】は生命になる事が目的という推測でしたね。なるほど、それであれば【精神生命体】の存在も察知される訳にはいきませんか』
『あん? サイアン、そりゃどういう意味だ?』
『単純な話ですよ。少しでも魂が生まれていれば、私達であればクオーツのように精神生命体へと引き上げる事は可能です。そこから肉体を得るのは、今まさに私達がこの星でやっている事ですしね。……私達の存在こそ、【機械人】にとって最重要な要素ですか』
『……そういや、そういう話もあったか。ちっ、面倒な!』
うーん、セキもグレイもサイアンも、それぞれの群集の長は精神生命体のままで動いてるしなー。この3人が直接手を下すと、変に勘付かれる可能性もある訳か。
『なら、どうすりゃいい!? いくらなんでも、放置って訳にはいかんだろうが!』
[あぁ、それだけは出来ん。我の方で力の流れを見ていて気付いたのだが、どうにも【黒の異形種】が採集用の飛行体を察知している様子がある。……その力の法則を使えれば、地に降り立っている者達でも排除し切れるかもしれん]
『……【黒の異形種】ですか。確かに妙な力は感じますが……あれらは一体何が目的なのでしょう?』
『敵か味方か……今はハッキリしない状態か。だが、何か妙な力が発現しているのは確かなようだな』
あ、これって『侵食』への変質進化を使えってヒントか!? なるほど、ここで察知方法の匂わせが出てくるとはねー。このヒントが出る前に把握してた俺ら、何気に凄い?
[そなたらは、先ほど送られた我の信号を遮断する事は出来るか?]
『どのようなものかさえ分かれば、大した力を使わなくても遮断は可能ですね』
[ならば、惑星全体から遮断を頼みたい。後はこの地に降り立った者達で対処を頼みたいのだが……]
『ちっ、結局そういう流れかよ。おい、クオーツ! 結局、協力を求める事になるなら、最初っから伏せようとしてんじゃねぇ! 余計、ややこしい事になってんじゃねぇか!』
[す、すまぬ……。だが、我とてそなたらに不要な手間をかけさせたくは――]
『クオーツ、セキの今の言葉は気にしなくていい。どうせ、最初から頼ってもらえなかった事に拗ねているだけだ』
『誰が拗ねてるって!? おい、グレイ! 適当な事を言ってんじゃねぇ!』
あー、なるほど。悪態を吐いてるように見えるけど、それはすぐに頼ってもらえなかった事への裏返しの様子なのか。まぁセキって直情的ではあっても、そういう部分では素直じゃなさそうだしなー。
『しょうもない状態は無視するとして……皆さん、状況は伝わっていたと思います。青の群集だけでなく、他の勢力の皆さんに協力求めましょう。敵は我らが仇敵、【機械人】の採集機の破壊をして下さい』
『もう奴らが採集してるもんは、どうすんだ? 結構、争奪戦になってるようだがよ?』
『伏せておいたのに、いきなりこちらの思うように動けという方が無茶だろう。その辺は、報酬として各自で好きに使ってもらえばいい』
あ、協力して動くようにしろとは言わないんだね。ある程度の捜索が進んでからこの演出が始まるように調整してるっぽいし、運営は確実に味方同士でも争奪戦になるのを想定してるよな! まぁたまにはそういうのもいいけどさ。
『だが、これに関してだけは無視出来ん。クオーツ、お前の部品はどれだけ回収されている?』
[……分からん。既に切り離して、接続も切っているからな。だが、それを使えば、奴らの今の目的を探れるかもしれん。我自身が直接接続するのはリスクがあるが、落とした奴らの採集機に繋げられれば……何かしらの情報を得られる可能性はある]
『最低限、通信機能はぶっ壊しとけって事か! その上でなら、奴らの情報をぶん取れる訳だな!』
『通信に使っている信号帯が分かれば、私達の方で遮断は可能ですので、絶対に壊す必要もないですけどね』
『いやいや、そこはぶっ壊してる方が安全だろうが!』
あー、うん。理屈としてはセキの言うように通信機能を壊した方がいいんだろうけど、ゲーム的な仕様としてはサイアンの方で処理はしてくれて、そこまで正確に壊す必要もないって事か。
それで……この謎のレンズっぽいのは、接続の中継点になるクオーツの一部って認識でいいのかな? 何気に重要なアイテムっぽい?
[……あぁ、そうか。我……いや、奴らの言語を使用しているから、そなたらには我の部品が分からないかもしれんな。我が翻訳をしておくので、通達を頼めるか? 合わせて、我の持っている奴らの採集機の情報も渡しておこう。……あまり情報は持っていないし、古いものにもなるがな]
『少なくても、古くても、情報があるのなら、何も無いよりはいいでしょう。それらの通達はお任せ下さい』
[これらになる。受け取ってくれ]
『……確かに受け取りました。所属関係なく、全員がアクセス出来るようにしておきますね』
『【採集機Ⅰ型】……おい、【Ⅰ型】って事は、他の型もあるのかよ?』
『よく見ろ、セキ。その情報も既に一緒に渡されている』
『あ、マジだ。採集のみが【Ⅰ型】で、戦闘機能付きが【Ⅱ型】になってんのか』
『情報を確認出来るように調整は完了しましたが……何が起こるか分からないので、皆さん、ご注意下さい』
<規定条件を満たしましたので、ワールドクエスト《脅威の来訪・発覚》を開始します>
<識別情報に【採集機Ⅰ型】と【採集機Ⅱ型】が登録されました>
<緊急クエスト【謎の飛行物の落とし物】での採集アイテム『???』の名称が『惑星浄化機構・長距離通信装置』に変更になりました>
<墜落した【採集機Ⅰ型】及び【採集機Ⅱ型】にて、『惑星浄化機構・長距離通信装置』の使用が可能になりました>
あ、これ、ワールドクエストとして開始になるんだ? ここからが本番って事なのかも? というか、俺が持ってる謎のレンズって、通信装置なのかよ! 記録装置くらいかと思ったら……いや、信号を出してたみたいだし、再生状況の進捗も保存されてたなら、両方を兼ね備えるのかも?
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