第1496話 落下物の場所へ向かって
どうもUFO自体を飛んでいる時に捕捉が出来ていれば、攻撃を受けて転移で消えてからでも落下物の位置は分かるようである。まぁかなり遠くまで位置は捕捉出来るんだから、現地に辿り着く前に消えたら探すのが大変になるし――
<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
おっと、発見ボーナスが出たって事は敵のお出ましか。
「みんな、下かな!」
「水月さん達の前に、サイなのさー!」
なるほど、俺らに襲いかかってきた個体じゃなくて、地面を走っていた水月さん達に襲いかかった個体か。……交戦が避けられるかどうかの心配をしてたけど、やっぱりこういう事態は起こるよな。
「ガストさん、この状況はどうすんの? 俺らは先に行った方がいい? それとも待った方はいい?」
「あー、ケイさん達はそのまま進んでくれ! 共闘はあくまで他の群集との戦闘での話だから、ここで足を止めさせる理由にはならねぇからよ!」
「……なるほどね。アル、そのまま進んでくれ!」
「了解だ!」
「すぐに仕留めて追いかけるから、後で会おうぜ! あ、間に合わなかったら、俺らへの配慮はいらんからな!」
「ほいよっと!」
あくまで今の協力関係は、協力が出来る部分だけという事なんだな。急いで移動する必要がある以上、自分達の雑魚戦で足止めをさせる訳にもいかないか。逆に俺らが足止めを受ければ、倒す手助けも借りられない訳だけど……そこはまぁ仕方ない。俺としてもそういう足止めのさせ方は嫌だしね。
俺らが落下物を確保するまでにガストさん達が追いつけば、協力関係に則って山分け。そうでないなら、俺らが手に入れられる分だけ手に入れる。それで数が無くなってしまえば……運がなかったという事で!
「獲物察知を使って、可能な限り戦闘は避けていく! 他のプレイヤーの動向も探りたいからな!」
「分かったかな!」
「ケイさん! 向きはあっちねー!」
「ほいよっと!」
ハーレさんが指し示しているのは……この原野エリアの南東方向か。どのくらいの距離があるのかはまだ分からないけど、ともかく交戦を避ける為にもこれを使おう!
<行動値を5消費して『獲物察知Lv5』を発動します> 行動値 124/129
おー、まだまだ未進出の人が多いLv帯のエリアだと、黒い矢印の反応も多いな!? ただ、基本的は陸地の方に伸びてるから、空中を移動している限りでは交戦は結構避けられ……いや、そうでもないか。
「アル、左前方、まだ結構距離はあるけど、空中に敵の反応あり! 交戦にならないように距離を保ちつつ、迂回してくれ!」
「了解だ! 右側から回り込んでいくから、距離が近付き過ぎないように調整は頼むぞ!」
「任せとけ!」
反応は俺にしか見えてないんだから、位置の誘導は俺の役目だよな! 他の反応も見ながら、交戦にならないように距離を保っていかないとね。
全体的に見通しはいいし、敵の密度はそこまで高くないから、ちゃんと見てさえいれば交戦は避けられそうだ。
おっと、後ろで止まってたガストさん達の反応が動き出したし、もう撃破を済ませたか? いや、戦ってたサイっぽい反応は消えてないから、拘束だけして、その隙に逃げている可能性もあるな。まぁ状況的にそういう判断も……。
「……ん? 南の方に、青の群集の集団の反応があるな」
「……それ、大丈夫かな?」
「今、引っかかってきたとこだから、なんとも……? あー、北上してるから、向かってる方向は違うな? いや、でもこれは見られると厄介か。アル、高度を上げてくれ!」
「おうよ!」
「彼岸花さん、俺らの霧の偽装で隠してくれ。雲だと思わせて、誤認させる! 風音さん、小さくなってアルの上に移動!」
「……分かった。それは任せて。『アイスクリエイト』『氷の操作』!」
「……うん……隠れておけば……いいんだね? 『小型化』!」
おー、俺らの周りが冷気に包まれて、霧の中にいるような感じへ変わっていってるな。あの青の群集の集団の動きを見る限りでは、まだ『侵食』での察知手段をもっている様子ではない。
だから、俺らの動きを隠せば、変に悟られる事なく移動が出来るはず。獲物察知を使われたらバレバレだけど、すぐ側までやってきて襲ってくる可能性も低いだろ。
もし仮に俺らの動きを不審に思ったとしても、よくて追跡に留めるはず。自分達で見つける手段を得ていないのなら、俺らが落下物を見つける時まで、襲いかかるメリットはないからな。
それに少し離れた後ろには赤のサファリ同盟も控えているんだしね。反応が見えれば見れるほど、下手な手出しは出来んだろ!
「ケイさん、ちょっと角度がズレ始めたのさー! 軌道修正、お願いします! こっち!」
「ほいよっと! ただ、敵の方がこっちに近付き気味だから、もう少し待ってくれ! アル、このまま真っ直ぐで! 角度を戻せば、戦闘になりそうだ!」
「急がば回れってか! 了解だ!」
最短距離で進みたいけど、それをすれば戦闘での時間ロスが発生するからな。飛行種族が相手だと、足止めしたとしても追いかけてこられる可能性もあるから、避けるのが――
「私達で倒してこよっか? その方が手っ取り早い――」
「リコリス、それは無しだ」
「えー、なんでさー!」
「彼岸花が偽装しているのを失念し過ぎだ。それに、ここの敵のLv帯は高いぞ? 甘く見ていると、変に邪魔になる」
「ぶー! Lvが高いと言っても、雑魚敵でしょ! そこまで――」
「もし、フィールドボスが出てきたらどうする? 『獲物察知』は万能じゃないし、擬態持ちからの奇襲もあり得るからな」
「……ラジアータの言う通りだよ? 私達だけの時ならいいけど、今は大人しくしておこう?」
「むぅ……わかりましたよーだ! うー、もどかしいなぁー!」
うーん、リコリスさんの意見も分からなくはないんだけど、今は極力戦闘は避けたいからなー。おっと、そろそろ方向を戻してもいいかも? てか、このまま真っ直ぐ行くと、別の敵との遭遇しちゃうしな。
「ハーレさん、そろそろ方向を戻すけど、この位置からだとどの方向?」
「あっちなのさー! 結構近付いてきてるのです!」
「ほいよっと! アル、軌道修正をよろしく!」
「おう!」
さて、とりあえずこれで離れた場所にいた敵との交戦は避けられただろ。彼岸花さんの生成した冷気が俺らの発見もし辛くしてるだろうから、もう少し距離を詰めても……いや、危ない橋を渡るのは無しだな。
えーと、結構移動してきたし、他の敵の反応も見ていくか。
「あー、チラホラと他のプレイヤーの反応が出てき始めたな。赤の群集、青の群集、灰の群集……それに無所属もか。全部の反応があるけど……」
「それ、大丈夫なのかな?」
「どのくらいの人が、『侵食』での索敵手段を持ってるんだろ?」
「んー、急いで動いている人は……そういないか? あー、でも1人で凄い勢いで動いてる灰色の矢印があるな」
「もしかして、ベスタさんですか!?」
「……可能性としては、否定出来ないなー」
迷いのない素早い動きっぷりで、俺らと同じ方向を目指してるっぽいんだよね、この反応の人。ソロでこの場所に来ている事を考えれば、ベスタという可能性はかなりある気がする。
ただ、ソロの実力者が必ずしもベスタかというと……そうでもないんだよな。よし、可能な範囲でそれっぽい人を探ってみるか。
「十六夜さん、ここの原野に来てる『縁の下の力持ち』のメンバーはいる?」
「……1PTほどいるにはいるが、座標的にはかなり遠い位置だな。ここでUFOが出た報告はしたから、向かっては来ているが……ソロでは聞いていない。おそらく、それは俺らのメンバーではないな」
「……なるほど」
んー、そこで該当する人がいないのなら、俺らとは協力関係にないソロの誰かっぽいな。……やっぱりベスタの可能性は高い?
「桜花さん、ベスタの動きって分かる?」
「いや、今日は情報共有板への書き込み自体が全体的に少ないから、ベスタさんの書き込みもさっぱりだな。まとめの更新も鈍いし……俺ら以外にも手段を見つけて、本格的に動き出している集団はいくつかあるかもしれん」
「……ですよねー!」
ベスタどころか、他の人達の動きもさっぱり不明かよ! いや、俺らだって現状は他の人から見れば分からない状態だろうし、そこはお互い様なのかも?
少なくとも、赤のサファリ同盟が『侵食』での索敵方法には辿り着いているんだから、俺らだけの特権だと自惚れない方がいい。
「……ケイさん、目に見えるように動かない人もいるかも? 一直線に動けば、どうしても目立つよ?」
「まぁそれはそうなんだけど……だからこその偽装だしなー」
「……それは分かってる。でも、手段はそれだけじゃないよ?」
「……警戒しとく」
彼岸花さんの言う通り、素直に一直線で進むのは目立つ手段ではある。俺らの場合はどうやったってアルの巨体が目立つから、隠れながら進むという手段を取ってないだけだしなー。
俺らとは違う条件なら……ある程度の距離を詰めてからは、敢えて周囲に見つける手段を持ってる事を悟られないように、遠回りをして進むなんて手段も考えられる。
鉢合わせした人達の戦闘中に、漁夫の利狙いで隠れるなんて事も出来るだろ。……ここのエリアに集まってる人達は、そういう事が出来る人達だろうしさ。
「あー、水月さんがなんて共闘を申し入れてきたか、つくづく実感するわ!」
「ま、お互いに近過ぎたのもあるだろうが……敵になり得る相手を考えれば、そうもなるか」
「……相手にしたくない相手は、いくらでもいるからな」
赤のサファリ同盟との遭遇があのタイミングではなく、これから後のタイミングだとすれば……本当、戦闘が避けられないパターンも考えられる。本当、もう誰とどういう形で遭遇するか分かったもんじゃない……ん?
「あ、ソロの灰の群集のプレイヤーの動きが止まった? ハーレさん、もうすぐ到着か?」
「うん! そろそろ偽装を解いてほしいのさー! このままじゃ下がまともに見えません!」
「あー、そりゃそうだ。彼岸花さん、解除を頼む」
「……分かった」
さて、俺らを隠していた冷気が消えたね。これで下の様子が見えやすくなったけど……おー、目の前に小規模な岩山か。動きを止めたソロの灰の群集の人は、反応を見る限りでは岩山の反対側にいるっぽい?
「落下物は、見えてる岩山の向こう側なのさー! 多分だけど!」
「なるほど、あそこか。思いっきりそこで止まってるな、ソロの人。アル、岩山を超えたら高度を落としてくれ!」
「了解だ!」
今はかなり高度を上げているから、ちょっと地上の様子が分かりにくいね。雲に偽装する為の冷気で俺らの視界も塞いでしまってたけど、こういう地形だとは思わなかったし……ハーレさんが多分と言っているのは、その岩山の反対側をまだ目視出来てないからだな。
それほど険しい岩山でもないけど、ここって何気に一直線で進むには進みにくい地形かも……。落下物の察知は出来てるけど、迂回してる人達もいる? どうもそういう感じの反応は見えるし、こういう地形って高低差も問題で、落下物の正確な位置が把握し辛い――
「ケイ、灰の群集のソロの人以外に近付いてきてる人はいるか?」
「あー、青の群集の集団が岩山の隙間を進んできてるっぽい? それ以外はまだ遠いから、何とも言い難いけど……。てか、ガストさん達はどう通ってくるんだ?」
一直線に進むには、空中を移動するか、強引にでも岩山を登ってくるしかない地形だよな。岩の操作持ちの人でもいれば、まぁ何とか進んでこれるか? あー、ガストさんの風の昇華で吹っ飛ばしながらって手段でも――
「ふぅ……やっと追いついたぜ」
「おー! ガストさんが追いついてきたのさー!」
「まぁ近くにはいたんだがな? 冷気で遮られて……って、それはいい。この先、どうなってんだ?」
あ、そうか。下から進んできてたら、先の様子がどうなってるかさえ分からない状態か! なるほど、ガストさんが上から偵察をしに来たんだな。
「落下物は、この岩山の向こう側だとさ」
「……なるほど、岩山を越える必要がありそうか。それに……誰か、灰の群集のプレイヤーがいやがるみたいだな。ありゃ、ベスタさんか?」
「さぁ? まだここからじゃ見えないしなー」
もう少しで岩山の頂上部分を通り過ぎるから、そこまで進めば様子も見えるはず! 高度は結構下げてきているし、俺らはこのまま岩山を越えられるけど……。
「ガストさん、赤のサファリ同盟は全員でこの岩山は越えられる? 厳しそうなら、俺らの方で乗れる岩でも用意する――」
「土の昇華持ちなら来てるメンバーの中にいるから、心配はいらねぇよ。ただ、どういう地形になってるかの確認に俺が飛び上がってきただけだしな」
「無用な心配だったか。まぁ先客は1人だけみたいだし、移動に問題なさそうならサクッと進んじゃう?」
「おう、そうするか!」
というか、土の昇華持ちの人がいるのなら、ここまでの移動も空中を飛んでくればよかった……あー、戦闘スタイルにもよるのか? 普段から大勢を乗せて飛ぶのに慣れてなければ、そういうのはやりにくいってのもあるかも……。
そういう意味では、常に移動をやってくれるアルがいるって、かなりありがたいんだよな。まぁその分だけ目立つし、目立つからこそ動きに制限もかかる事もあるけどさ。
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