第1494話 赤の群集の一団との接触
新エリアの『名も無き未開の原野』へ到着して早々に、UFOの反応と赤の群集の集団の反応を見つけた。大急ぎでUFOの反応がある方向に進んでいるけど……。
状況次第では戦闘になる可能性があるし……あー、とりあえず様子見だな。今はまだ、どうとも決めかねる。
「ケイ! その赤の群集の人達、どの方向かな!?」
「あー、右斜め前にある森の中から! 木々で隠れてて姿は見えないけど、10人程度!」
「あそこかな!? あれだと、向こうは気付いてない?」
「向こうが獲物察知を使ってない限りは……俺らが気付かれてる可能性は低いとは思う。あー、でも観察力がある人がいれば、分からん!」
UFOに気を取られて、俺らへの警戒が薄れていて気付かれてなければいいんだけど……あんまり楽観視すべきじゃないな。赤の群集でこのエリアまで来てるとなれば、知ってる人の可能性も高いし……いや、待てよ? もし知ってる人なら、俺らと合わせて20人くらいなら――
「あ、止まった?」
「はっ!? あれ、ガストさんなのさー!」
あー、知ってる人の可能性が高いと思ったけど、ガチで知ってる人だった! しかも俺らに向けてガストさんが飛んできてるから、存在にも気付かれてたか!?
まぁ赤のサファリ同盟相手じゃ、気付かれて当然か。でも、この状態で近付いてくるってどういう狙いだ? 戦闘を避けるのが……いや、いくらなんでもこの時点でその判断は早計過ぎないか?
「……赤のサファリ同盟!」
「出たね、赤のサファリ同盟! ガストって人は、モンエボで増えた新参メンバーって話だっけ?」
「あぁ、確かそのはずだ。この状況で一人で突っ込んでくるとは、良い度胸――」
「曼珠沙華の3人! 赤のサファリ同盟だからって、いきなり交戦はなしだからな! リベンジ対象はシュウさんと弥生さんがいると確定した時だから!」
もう既に臨戦態勢に入ってるけど、戦う気ならガストさんだけで近付いてくるなんて状況にはならないだろ! 他の人はもう先に進んでいるし……マジで何が狙い?
「……分かってる。リコリス、ラジアータ、多分今回は戦闘狙いじゃないし、抑えてね?」
「はいはい。下手に暴れて、入ったばかりの灰の群集で居場所を無くしたくないしねー」
「……仕方ないか。ルストさんとやらによれば、今日は弥生さんもシュウさんも出ていないようだしな」
ふぅ、なんとか臨戦態勢は解いてくれたけど……警戒心までは解いてないか。まぁそれは俺も解いてないし、みんなも同様だから……ガストさんの狙いが分かるまではこれでいい。
アルも移動を止めてはいないし、足止めはされる気もない。もし、交渉に見せかけた足止めが狙いなら……悪いけど、その時はガストさんを仕留めさせてもらう!
「おー、殺気立ってんな? 少し交渉に来たんだが……アルマースさん、枝に止まっても?」
「……ケイ、どうする?」
サラッと近くまで飛び上がってきたけど……ガストさんめ、風に乗って速度を上げてきたな? 今の距離の詰め方、襲われないと確信があってこその動きだろ。
この様子なら、本当に交渉だけが目的っぽいけど……念には念を入れさせてもらおうか。並んで飛ぶんじゃなく、アルの木に止まろうってのは戦意はないって表明だろうし、これくらいなら呑むだろ。
「……条件付きでなら、いいぞ」
「ほう? とりあえず、その条件とやらを聞かせてもらおうか」
「俺の土の操作で、足枷をさせてもらう。変な動きがあれば、袋叩きを覚悟してもらおうか」
「……ま、状況的にその警戒は仕方ねぇな。弥生さんやシュウさんへリベンジを狙ってる3人衆も一緒みたいだし、ある意味俺の身の安全の保証の為か。いいぜ、ケイさん。やってくれ」
「……ほいよっと。まず、アルの枝に止まってくれ」
「おう!」
予想通りではあるけど、随分とあっさり受け入れたな? まぁ交渉とやらがどういう内容かにもよるけど、とりあえず拘束させてもらおうか。
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 128/129 : 魔力値 315/318
<行動値を3消費して『土の操作Lv7』を発動します> 行動値 125/129
アルの木の枝に止まったガストさんのタカの足を、石で固めていく。……よし、これでいきなり逃げ出す事は出来なくなった。
「サヤ、ハーレさん、ヨッシさん。ガストさんのキノコが離れないように警戒しといてくれ。遠隔同調があるからな」
「……分かったかな!」
「了解なのさー!」
「了解!」
「おいおい、随分と警戒し過ぎじゃねぇか? ……そんなに、『侵食』での察知を隠したい――」
「っ!?」
「なるほど、今使ってるのはハーレさんか。動物系だと視線が読みやすくて、分かりやすいもんだな」
ちっ! この少しのやり取りだけで、ハーレさんが索敵中なのを見破られた!? しかも、予想はしてたけど、やっぱり『侵食』での索敵方法を把握してる!
「……ガスト、赤のサファリ同盟はどういう狙いで動いている?」
「ほう? 十六夜さん……なるほど、『縁の下の力持ち』と協力関係を結んでいるのか。ルストから、その情報はなかったが――」
「……聞いた事に答えろ。死と引き換えに、情報を探りにきたと判断するぞ。交渉と言いながら心理戦を仕掛けるなんて真似、ウィルに毒されたか?」
「そういうつもりじゃねぇんだが……毒されてんのか、これ!? やべぇな、無自覚でやってたぜ……」
なんか心理戦を仕掛けてきてるように思えたのって、ウィルさんの影響なのかよ! てか、俺らとルストさんが遭遇した件は、全部筒抜けかー。まぁルストさんなんだし、その辺は気にしてないけどさ。
「えーと、交渉が目的なら、本題に入ってくれない? ぶっちゃけ、これ以上心理戦になるようなら……そっちの3人を抑えられそうにないしさ」
「……その方が良さそうだな」
曼珠沙華の3人……特にリコリスさんとラジアータさんは、いつでも攻撃が出来るって様子だしね。おそらく、彼岸花さんも止める気はなさそうだし……俺だって、交渉の名目があるからこそ抑えられているだけだからなー。
ルストさんからシュウさんと弥生さんが今日は出向いていないという情報を聞いているから、赤のサファリ同盟が相手でも抑えられている状態。……その情報がなければ、もう問答無用で戦闘が始まってるだろ。
「殺気が凄まじいし、用件は単刀直入でいくぜ。俺らは、ケイさん達と戦う意志はない」
「……まぁそんな気はしてたけど、なんでまた?」
「ケイさん達が相手となれば、こっちも色々と無事じゃ済まないからだ。……あの謎の飛行体の察知手段を持っているかどうかで状況も変わったんだが、どう見ても知ってそうだしな」
「へぇ? 赤の群集では、あのUFOを飛行体って呼んでるのか」
「UFO……? なんでUFO……あ、未確認飛行物体か! 確かにありゃ、現状ではUFOだな!」
えーと、そういう反応? いやまぁ、そこは正直どうでもいいような内容ではあるけども!
「……その手段を知らなければ、どうしていた?」
「ま、当然な疑問だな、十六夜さん。その場合は俺も知らないフリして、適当に情報交換をして終わりのつもりだったぜ。まぁ動きからして、知らないってことは無いとは思ったが……」
「くっそ、まんまと引っかかった訳かよ……」
「あぅ……ごめんなさい……」
「あー、ハーレさんを責めてる訳じゃないからな。そこは気にするな」
そこを悟られないように、ガストさんのキノコの警戒を頼む相手にハーレさんも混ぜたのが逆に仇になったっぽいし……今回のは俺の判断ミスだ。この状況でハーレさんがUFOの行き先を気にせずにいろって方が無茶振りだった……。
「……知った上では、戦わないという判断か?」
「あぁ、そうなる。幸い、今回は弥生さんとシュウさんは探索に出てないから、そっちの……あー、曼珠沙華だったか? そっちの3人も無理に戦いはしないだろ?」
「……まぁそうなるね」
「私としては戦ってもいいんだけどねー」
「ケイさんが止めろというのであれば、それに従いはするがな」
「……なるほどな。ケイさん、どう判断する?」
「まぁ俺としても、ここで赤のサファリ同盟と戦うのはパスしたいけど……」
でも、ここで『はい、そうですか』と受け入れても大丈夫なのか? 戦闘を避けたいという狙い自体は同じでも、この時点でそれを申し入れてくるのは……ちょっと気が早過ぎない?
「……なんで……今の段階で……その提案?」
「それは俺も聞きたいとこだな。まだUFOの位置まで辿り着いてないのに、奪い合いになるかどうかも分からない現状で……その提案は不自然だよな? ガストさん、その辺を聞かせてもらえないと返答は出来ないぞ」
「わっはっは! そりゃ当然の疑問だし、聞いてくるとは思ってたぜ! 本題はそこだしな」
やっぱり、まだ何かあるっぽいね。……うーん、さっき十六夜さんが言ってたけど、ガストさんは本当にウィルさんのやり方に毒されてません?
ガストさんってこういう心理戦を仕掛けてくる印象って、そこまでなかったんだけどなー? いやまぁ、それなりに駆け引きをしてくる人ではあったとは思うけども……。
「このタイミングでの接触……なるほど、狙いは共闘か?」
「アルマースさん、正解だ」
まぁ考えられる内容としては、そんなとこだよなー。ここまでの流れは、共闘をしても大丈夫なだけの情報を持ってるかどうかの確認だな。まぁ情報漏洩の心配が必要なイベントなんだし、意図自体は分かるけど……。
「試されるのは、あんまり良い気分ではないよなー」
「ん? そうは言うが、ケイさんだってこの状況ならこれくらいはするだろ?」
「……まぁ否定はしない」
というか、出来ない! 動き出しが赤のサファリ同盟の方が早かっただけで、俺も同じ考えに至ってた可能性は高そうだしさ!
「……共闘? 誰と戦うの?」
「あー、UFOを追いかけてる俺らと赤のサファリ同盟以外の集団? そういう認識でいいんだよな?」
「あぁ、その認識でいいぜ、ケイさん。赤のサファリ同盟は、ケイさん達に今見えているUFOからの落下物の回収が済むまでの休戦と共闘を申し込む。対象は、俺ら以外の全てのプレイヤーだ。これには赤の群集も灰の群集のプレイヤー、どちらも含むぜ」
「なるほど、そう来たか」
同じ群集のプレイヤーは仕留める事が出来ないけど、他の群集のプレイヤー集団と組めばそれも可能にはなるもんな。……この判断を、さっきの森の中にいる時に即座に下して、すぐに俺らへ話を持ってくるってとんでもないな!?
「あー、もしかしてシュウさんは探索に出てないだけで、作戦立案はしてる?」
「いや、今回の案は水月さんのものだな。シュウさんと弥生さんは今、ルアーさん達と一緒にレナさんとラックさんがの作ってる例のサイトの打ち合わせに行っている」
「この案、水月さんのものなのかな!?」
「……例のeスポーツ勢に向けてのサイトの件か」
「……いない理由、それだったんだ?」
てっきりシュウさんが裏で作戦立案をしてるのかと思ったら……水月さんの立案だったのは想定外だったんだけど!? ……って事は、ここには水月さんも来てるのか。
「水月さんがいるなら、アーサーくんやフラムさんもいるの?」
「アーサーはいるが、フラムは足手まといだから留守番だな。まぁ情報収集と『進化の軌跡・侵食』の確保を担当しちゃいるが……既に索敵手段を見つけた以上、あんまり役には立ってないか」
「あいつ、そういう立ち位置か……」
やってる事は桜花さんと同じなんだろうけど、思いっきりガストさんに戦力外って言われてるよ。まぁその判断は正しい気がするけども!
「それで、ケイさん? どうするよ?」
「あー、俺の一存では決められないから、少し相談させてくれ」
「おう、そりゃ当然の判断だな!」
グリーズ・リベルテだけなら俺の独断でも決められるけど……今回はそういう訳にはいかないしね。ちゃんとみんなの意見を聞いて決めないと!
「ケイさん、俺らはそっちとは無縁そうだから、そっちの判断で決めてくれ!」
「ほいよっと!」
まぁこの場にいない飛翔連隊については、今の紅焔さんの言葉をそのまま受け入れるので問題なし! 共闘しようにも、どうしようもない部分だしね。
「……共闘は……問題ないよ」
「……俺も賛成だ。他の集団との乱戦も考えられるし、赤の群集との共闘は決して悪い手段ではないだろう」
風音さんと十六夜さんは賛成か。まぁこの2人は反対するとは思ってなかったし、問題はなさそうだ。ただ、共闘に反対しそうなのは……。
「……リコリス、ラジアータ、どうする?」
「んー、どうしよっかな? 共闘そのものはいいんだけど……赤のサファリ同盟とってのがねー」
「気に入らないという気持ちはあるが……モンエボからの加入メンバーの割合も多そうではあるぞ?」
「あー、それもそうだよね……。ここで我が儘を言って、ケイさん達を困らせるのは不本意だし……」
「……それなら、今回は受けるのでいい?」
「んー、思うところは色々あるけど、まぁ今回はそれでいいでしょう!」
「だな。ケイさん、そういう事だ。俺らも賛成という事にしておく」
「ほいよっと!」
曼珠沙華には色々と葛藤はあったようだけど、どうやらそれは呑み込んでくれたっぽい。ある意味、弥生さんとシュウさんが不在で助かった部分かもね。
「私はもちろん賛成かな!」
「私もなのさー! まさか水月さん発案だとは思わなかったのです!」
「あはは、そこはびっくりだよね。でも、だからこそ一緒にやりやすそうかも?」
「確かにな。シュウさんの発案なら曼珠沙華も納得してなかっただろうし……俺も賛成だぞ」
「ですよねー! よし、満場一致で賛成だな!」
本当、水月さんからの発案だからこそ、曼珠沙華が色々と呑み込んでくれたって側面もありそうだよな。
「おし、どうやら共闘は成立みたいだな」
「しばらくの間、よろしくな、ガストさん!」
「おう、よろしくな! さて、それじゃ合流……って、大して離れてねぇか」
まぁ交渉中もアルがしっかりと移動しててくれたから、特に赤のサファリ同盟の一団からは離れてない状態だね。さっきは森の中だったから見えなかったけど……確かにクマとイノシシの姿は見えるから、水月さんとアーサーはいる様子。
他には氷属性の龍だったり、羽の生えたヘビだったり……見覚えのある人もいますなー。でも、何人かは知らない人もいるっぽい? まぁ赤のサファリ同盟の全員を知ってる訳じゃないし、そういう事もあるよね。
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