第1492話 乱入クエストの影響
黒く染まったイブキの乱入なんて事もあったけど、あっさりと撃破は完了。こういう時、イブキとは高頻度で遭遇するけど……ほんと、謎によく遭遇するよなー。
「イブキさん、全然抵抗せずに死んでいったね? ねぇ、ケイさん……仕留められる事が目的だったって可能性はない?」
「あー、確かに抵抗はなさ過ぎたけど……まぁ大丈夫じゃね? 彼岸花さん、あの状態で死んだらどこに出る? この河口域の中でランダムリスポーン?」
「……ううん、他の新エリアのどこかに飛ばされるはずだよ。無所属は、新エリアではずっとそういう仕様だし……」
「リスポーン位置の設定や、転移の実や種を使わないと、特定の場所への移動って難しいんだよねー。黎明の地とこっちの行き来、本当に面倒だったしさー!」
「まさしく、昨日問題になってた部分だからな」
「……なるほど」
さっき仕留めたイブキが、どこに飛ばされたかは不明か。こっちの新エリアって、群集での転移が凄い便利な状態なんだな。
そう考えると……無所属としては、どうやっても1ヶ所くらいは安定して転移が出来る場所が欲しいのかも? eスポーツ勢の流入で混乱が起きている真っ最中だろうけど、それとは別枠で動きに注意しておいた方がいいか。
「あ、十六夜さん。ちょっと聞くんだけど、『縁の下の力持ち』で、無所属の人に伝手があったりしない?」
「……個人的に伝手がある奴はいるが、それをどうこう言える権限は誰にもないぞ」
「いやいや、別に文句を言うつもりはないから! ただ、現状の無所属の動きを知れる人はいないかなーって話。どうも、あの黒く染まった状態は『侵食』での索敵と同じような効果があるっぽいしさ」
「……尚更、そういう情報は得られない気もするがな。まぁダメ元で聞いてみよう」
「頼んだ!」
さっきのイブキはあっさりと仕留めてしまったけど……どうにか生かして情報を探った方がよかったか? いや、でも明確に『乱入クエスト』を進めようとしている相手と協力関係を結ぶのもなぁ……。
「悪い、ヨッシさん。……今になって、イブキを仕留めてよかったのか不安になってきた」
「……あはは、まぁ倒す判断も理解は出来るんだけどね」
「そうなんだよなー。生き延びる事がメリットになってた可能性もあるし、さっきのはリスクがあり過ぎ――」
「リスクというなら、俺らに索敵手段があるのをバラしたのもマズくないか? その情報を持って、誰かと組まれたら厄介だぞ?」
「……へ? あ、しまった!?」
やばっ! 生かす理由の方が思い付かなかったから一蹴してしまった条件だったけど、その反応をする事自体がリスクじゃん!?
「……よし、イブキがそこに気付かない事を祈ろう!」
「……おいおい、随分と楽観的な判断だな」
「だって、今更取り消せないじゃん。これからイブキを探して、口止めの為に味方へ引き入れるってのも無しじゃね? それとも、アルに何か妙案でもある?」
「いや、ねぇな。そもそも、あの状況で命乞いの為に出した条件を受けるのは反対だし、明らかに『乱入クエスト』を進めてる相手を仕留めた事には文句もねぇよ。ただ、リスクの把握はしとけってだけだ」
「……なるほど。まぁそりゃそうだ」
下手に楽観視はせず、リスクはちゃんとリスクとして受け入れておけって話だな。うん、そこはちゃんと理解しておこう。どっちにしてもイブキが群集所属の誰かに接触するなら、索敵方法を手に入れる事には変わりないもんな。
「彼岸花さん、ちょっと確認。無所属に索敵手段があるなら、群集と協力して動こうって人はそれなりにいる?」
「……今回は難しいラインかも? 黒く染まる必要があるなら、群集との接点を持つ人は……多分、積極的には動かない。動くとしたら、元々そういう人達を含めた集団でだと思う」
「……なるほど」
そうなると、灰の群集に入ってくる前のコイコクさん達みたいな集団なら積極的に協力する可能性はありそうだ。分裂してインクアイリーの構成メンバーで、まだ群集に移籍をしていない人達ではそういう動きも……。
「ちょい待った!? オリガミさんなら、マルイさん達と協力して動くのもあり得るか!?」
「あ、それはあり得る! というか、ほぼ確実に動いてるだろうね!」
「予定さえ合っていれば、オリガミさんならやるだろうな」
「……やっぱりかー」
リコリスさんとラジアータさんも納得している内容だし、本当にそう動いている可能性は高そうだな!? いや、それでも索敵手段を持つ集団が1つある程度の話!
「ねぇ、ケイ? 私達も羅刹さん達に話を通してみるのはどうかな?」
「あー、それもありといえばありだけど……あそこはあそこで、灰のサファリ同盟との縁もあるからな。そっちで既に手を組んでる可能性もあるしさ。それに、傭兵として転移の権利を持ってる羅刹に、下手に『乱入クエスト』を進めてくれとも言えないし……」
「あ、傭兵の権利を失いかねないからかな?」
「そうそう、そういう事!」
どう考えても、システム的に群集と敵対する流れだもんなー。そもそも、傭兵の権利を持ってる無所属のプレイヤーが新しい『乱入クエスト』を受けられるかどうかの時点から怪しいし……。
それ以上に『灰の群集の無所属支部』として動き始めたのを、こういうイベントで自分達の利益の為に動かすのは抵抗もある。せめて、灰の群集として動いている時じゃないと……。
「……今回のイベント……それぞれの立場があるから……色々と難しい?」
「そうなんだよなー。下手に探りを入れ辛いのが厳しい……」
もういっそ、群集全体に索敵方法を公開してやろうか? それなら変に気兼ねせず……いや、でもそれはそれで恨みを買いそうだし、『侵食』の進化の軌跡持ちの人が付け狙われる事にもなるもんな。
それこそ、少し前まで俺らがいたUFOの出現場所みたいに争奪戦が発生するよね。情報の性質上、デマも多く流れそうだし……下手な情報開示は、過剰な混乱を招くだけかも。
「……こっちのメンバーも駄目だな。伝手自体はあるが、下手に口を出すのはリスクがあるって認識だ」
「あー、やっぱり?」
「……もう少しUFOの探し方が広まってきてからならいいが、今の時点では可能な限り、秘匿した方がいいって意見が多いぞ。無所属で灰の群集と繋がりがある人は、他の群集にも伝手を持ってる事が多いから、尚更にだ」
「ですよねー!」
色々と探るのは……せめて、もう少し自然に情報が広まってからか。その前に『乱入クエスト』の条件を達成されたとしても……まぁそれはそれで仕方ないのかも――
「あ、『侵食』の索敵効果が切れたな」
「はい! それじゃ私が――」
「ハーレさん、それは待った!」
「えー! ケイさん、なんで止めるのー!?」
「いや、命名クエストが終わってからの方がいいかなーと? ほら、そこが終わるまでは下手に移動も出来ないだろ」
「はっ!? 確かにそうなのさー!?」
「……あと5分……ここで待つ?」
「その方が気兼ねなく動けるしなー」
曼珠沙華の3人はあんまり命名クエストには参加出来てないって話なんだから、この機会は逃したくもないしね。さっき、落下物を手に入れたばかりなんだから、そこまで焦る必要もないだろ。
「……気を遣ってくれて、ありがとう」
「どういたしましてっと。それに、この先は……単純に強いしな」
「ふふーん! 私ら、戦力としては頼りにしてくれていいからね!」
「……そもそも、このまま北上するのか? 東にも西にも進めるだろう?」
「あー、流れ的にそのまま北に来てたけど……そうか、別に北でなくてもいいのか」
ラジアータさんに言われなければ、そのまま『名も無き未開の海岸』へ向かうつもりになってたよ。ふむ……どこに向かうか、この時間でちゃんと決めてしまおうか。
「みんな、ここから先はどうする? ラジアータさんの言う通り、海岸以外にも進めそうだけど……」
「……東は原野……西はジャングル。……Lv帯は……どっちも高め。……それと……かなり広いらしいよ?」
「ほう? 風音さんがエリア情報を知ってたのか」
「そうっぽいなー。原野とジャングルか……」
どっちに進んでも海岸には面してそうだけど、広いとなれば面していない場所の方が多いか。原野は峡谷エリアの安全圏から出た場所もだった気がするけど、バオバブの木がある荒野と草原の中間みたいな場所だっけか。
青の群集の占有エリアになったサバンナエリアと似たような感じではあったよなー。……サバンナと原野、何か違う要素があるのか?
「……原野は……平原に近いそう? ……複数のエリアの特徴を……内包してるエリア……っていう話」
「規模なジャングル、オアシスみたいな場所、洞窟や岩山や谷なんて報告も聞いてるぜ? ジャングルの方は、まぁ群雄の密林とそこまで変わらんらしいけどな」
「あー、そういう違いか!」
なるほど、なるほど。こっちの新エリア側にも、色んなエリアの要素を内包しているエリアがあって、それが原野って名称になってるんだな。
いやー、風音さんと桜花さんがエリア情報を知ってて助かった! 判断していく上で、必要な情報があるのはありがたい。
「見通しがよさそうなのは、このまま北に進んだ海岸な気がするけど……あ、原野も場所次第では見通しはよさそうかな?」「ジャングルは……どう考えても見通しは良くないよね。でも、落下物を探すのならいいのかも?」
「……判断が難しいところ。何を重視するかが、重要かも?」
「私達は海でも陸でも対応出来るから、お任せで!」
「俺らはケイさん達の判断に任せよう」
「ほいよっと」
曼珠沙華の3人は、特にどの場所に行きたいかという主張はないんだね。まぁ任せてくれるというのであれば、俺らで決めていきますか。
「風音さんと十六夜さんは、どこへ行きたいって希望はある?」
「……海は……遠慮したい。……海水の中は……制限が多い」
「……俺はどこでも構わん」
「なるほど、そういう感じか」
風音さんの主張は……うん、まぁ分かる。風音さんの龍は、どう考えても海には向いてないもんな。
十六夜さんはどこでも合わせられるんだろうし、実力的にもどこでも問題ないんだろうなー。となれば……。
「海は進めない訳じゃないけど、今回は避けとくのが無難だとして……原野かジャングルの2択――」
「はい! それなら色んな場所がある原野に行きたいのです!」
「……食い気味にきたな、ハーレさん。まぁ俺も別にそれでいいけど……サヤ達はどう?」
「私も原野で大丈夫かな!」
「折角の新エリアなんだし、色々な要素が見れる方が捜索しながらでも楽しめるかも?」
「ジャングルなら群雄の密林で見ているし、今回は原野でいいだろ。見通しの良さで、傾向を探るのもありだろうよ」
「おし! それなら進む先は、東の原野で!」
「「「「おー!」」」」
思ったよりすんなり決まった。判断材料になるエリア情報があったのが大きいし、行き先が決まったなら移動をしていきますか!
「……原野になったか。さて、人はどの程度いる?」
「……行ってみないと……分からない?」
「ふふーん! 誰がいようとも、ぶっ飛ばすまで!」
「リコリス、過剰に攻撃的にはなるなよ? 進出するエリア的に、相手も間違いなく強いぞ」
「……状況次第では、情報交換も出来る? いきなり攻撃は、やめておいた方がいいかも?」
「あ、そっか。んー、そこは彼岸花の言う通りだね!」
なるほど、確かにここから先に進もうという人は今のトップクラスまで育っている人達になってくるもんな。Lvは進化の形態によって、俺ら『グリーズ・リベルテ』みたいに低め人もいるけど……その分だけ、補うものはあるからね。
奪い合いの戦闘が避けられない可能性はあるけど、逆に交渉で戦闘を回避出来る事もあるかも? 少なくとも、誰かの後を追いかけてくるタイプの人は明確に減るだろうし――
<命名クエスト『命名せよ:名も無き未開の河口域』が完了しました>
<『名も無き未開の河口域』を改め『ウワバミの口』へと名称が変更になりました>
げっ! 命名クエストが終わったけど……よりによって、それになるのか!? マジか……。てか、命名クエストって結構な頻度でネタ選択肢になってる事があるよなー!?
「ケイ、ドンマイかな?」
「多数決の結果だし、仕方ないのです!」
「まぁそりゃそうなんだし、ケチつける気もないけど……そこに投票したハーレさんに言われるのは納得いかないんだが!?」
「ふっふっふ! それが多数決というものなのです!」
「釈然としねぇ!?」
いや、理屈ではその通りだってのは分かるんだけど……気分的な問題だな、これは。うん、気にするだけ無駄な内容だ!
「さてと……気を取り直して、アル、東に向けて出発――」
「いやいや、その前にハーレさんの進化だろ? 東の端まで行く間に、何かあるかもしれんしな」
「あ、それもそうか」
ちょっと落ち着け、俺! 少し考えたら分かる事だし、そもそもエリア名にヘビ関連のものが入ったって、実際にヘビが出てくる訳じゃないんだから問題ないだろ!
……我ながら、なんで今回はこんなに過剰反応してるんだ? ヘビ自体、苦手生物フィルタでなんとか我慢出来る範疇なのに、名称だけで反応し過ぎじゃね?
「ケイ、なんだかストレスでも溜まってるのかな?」
「……あー、もしかしたらそうかも?」
サヤに言われて思ったけど、今日の放課後とか思い当たる件が思いっきりあるし……昨日にeスポーツ勢の流入の件も含めて、ちょっと苛立ってるのはあるのかも?
それに……今回は味方に対しても情報の秘匿をしてるからなー。普段と違ったやり方だから、妙なストレスを感じてるような気もするよね。イブキの登場で無所属の動向も無視出来なくなってきたし……うーん、でも大々的に情報を公開するのは混乱を招きそうだからやりたくないし、難儀なもんですなー。
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