第1491話 確保した落下物


 UFOが近過ぎるほど、近くに出現して……結果的には逃げられた。でもまぁ、全員が落下物を確保出来たんだし、今はよしとしよう! 確保した物の確認は、大急ぎで混み始めたあの場を離れ切ってから……!


「おし、北の端まできたぞ。ここまで来れば、とりあえずは大丈夫だろ」

「アル、移動サンキュー!」

「ま、いつもの事だがな」


 ふぅ、なんとかあの場からの離脱は成功! 凄い勢いで人が集まっていってるけど……そりゃまぁ人が多い状態で、明確に出現したのが分かれば、ああもなるか。

 正確な個数は数えられなかったけど、俺らが全員回収してもそれなりに個数はあったから……多分、まだ20個くらいはあるんじゃね? まぁさっきの場所には、それ以上の人数がいそうだけどさ。


「おぉ!? 凄い人数なのさー!?」

「……予想以上に、先ほど出てきたUFOは分かりやすかったからな。ケイ達が注目されていた上に、あの出現の仕方では……こうもなるだろう」

「ですよねー!」


 そこはまさしく十六夜さんの言う通り。あのUFO、光学迷彩が不完全にしか機能してなかった上に、思いっきり煙が上がってたもんな。それが注目されてた俺らのすぐ近くに出てきたんだから、人が集まるのは不可避なもんだよ。


「はいはーい! 人が群がってる理由は正直どうでもいいから、何を手に入れたか報告していこー! ちなみに私は『転移の種』!」

「っ!? リコリス、『転移の種』だと!? 『転移の実』じゃなくてか!?」

「うん、そうそう! 使い捨てじゃない、『転移の種』! いやー、これは大当たりじゃなーい? ほら、羨ましいでしょう、ラジアータ! ほらほら、何が出たか言ってごらん?」

「……ちっ。俺は『瘴気石+20』だ。……これはどうやっても自分じゃ使い物にならんから、桜花さん行きだな」

「成熟体になっていれば、確かに無用の長物か。まぁ俺としちゃ使い道はどうとでもなるから、引き取らせてもらうぜ」


 今回、リコリスさんとラジアータさんの手に入れた物の落差が半端ないな!? 『瘴気石+20』も決して悪い物ではないけど……未成体のフィールドボスの誕生用だから、どうしても微妙だよなー。それに対して……『転移の種』が出るのは凄い情報だね。


「……転移の種……2個目の入手が……可能なのは……大きい?」

「1日1回しか使えないにしても、任意の場所に自由に転移出来るのは大きいよな!」

「……そうでもないよ、ケイさん。PTで動くなら、全員が持ってないと使いにくい」

「あー、まぁ難点としてはそこか……。確かに一緒に動くとなると、全員分が欲しいとこではあるよな」

「ふふーん! そこは『転移の実』ででも代用してもらうしかないね! もしくは、彼岸花とラジアータも引き当てなさーい!」

「まったく、運任せだというのに無茶を言ってくれるな、リコリス! ……それで彼岸花は何を手に入れた?」

「……私も『転移の種』。持ってないの、ラジアータだけ」

「おいおいおい!? いくらなんでも偏り過ぎじゃねぇか!?」

「イェーイ! やったね、彼岸花! ラジアータは除け者だー!」

「……喧嘩を売ってるのか、リコリス」

「ふふーん! 色々いつも言われてるんだから、仕返しですよーだ!」

「いいだろう、その喧嘩は買ってやる!」

「……2人とも、程々にね?」


 なんだかリコリスさんとラジアータさんが喧嘩を始めちゃったけど、まぁ今はスルーしておこうか。喧嘩の仕方がド派手であっても、周りへの被害は出なさそう……でもないか?

 この辺ってもう河口の水の上だから、下手すれば電気の流れ弾が……あ、下に氷が広がってるから、彼岸花さんが流れ弾を防いではくれてるっぽいね。なら、大丈夫だな。


「はい! 私には『瘴気珠』がきたのさー! +20のやつ!」

「おー、成熟体でのフィールドボス戦が出来るな。……ちょっと強化され過ぎだけど」

「成熟体のフィールドボスはLv16以上だったかな?」

「すぐには使えなさそうだけど、そのうちどこかで使えそうではあるよね?」

「ま、これはハーレさんがそのまま持っておいて、そのうち使うのでいいんじゃねぇか?」

「だなー。ハーレさん、しっかり持っといてくれ」

「はーい!」


 まだ少し出番には早いけども、中々に実用的な物も手に入ってますなー。さて、俺も自分が手に入れたものを確認していきますか!

 入手のアナウンスは出てたけど、慌てて動いてたからまともに見てないんだよなー。だから、ログを辿って確認していこう。


「俺が手に入れたのは……あ、『進化の軌跡・侵食』がきた!?」

「おっ、いいじゃねぇか。ケイが使った分の補充になったな」

「だなー! これはありがたい!」


 『縁の下の力持ち』経由で手に入る事は分かってたけど、それが実際に手に入ったのは本当に助かる。もう少しすれば、今出ている効果も切れるしね。


「……俺も、ケイと同じ『進化の軌跡・侵食』が入手になった。まだ軽率に判断を下すにはサンプル数は少ないが、それほど悪い入手率ではないのかもしれん」

「十六夜さんも拾えたのか! そりゃいいな!」


 UFOや落下物の捜索に使えるんだから、入手率が高めなのは結構ありがたいかも? あー、でも使える人が多ければ多いほど、奪い合いになる可能性も上がってくるのか……。

 いや、UFOの索敵に関しては遠距離から可能だけど、既に落ちた後のものだとそうでもないかも?


「ヨッシ達はどうですか!?」

「私は、『進化の軌跡・樹の小結晶』だったかな! これは使い道がないだろうし、桜花さんに渡す分になりそう?」

「私も『進化の軌跡・水の小結晶』だから、サヤと同じ扱いになるね」

「おぉ!? 確かにそれはそうなりそうです!」

「全員が全員、良いものが出るとは限らないんだなー」

「ま、こういう内容ならそうもなるだろうよ」

「ですよねー! それで、アルはどうだった?」

「俺は……『進化の軌跡・光の欠片』だな」

「あー、それはハズレ過ぎる……」

「いや、トレードが出来る分だけマシかもしれんぞ? 使わないトレード不可アイテムよりはな」

「それも一理あるかもなー」


 インベントリに余裕はあるとはいえ、トレード不可の『進化の輝石』とか手に入ってるもんな。あれ、マジでどこで使えばいいんだよ? 

 うーん、3rdでも作る時があれば属性を持たせる為に使うか? でも、今のところ3rdを作る予定もないんだよなー。……ほんと、トレード不可の不要物が一番のハズレかも?


「ハズレがあるのは仕方ないのさー! 風音さんはどうでしたか!?」

「……『進化の軌跡・闇の純結晶』だけど……いらない」

「持ってる属性に被ってきたのさー!?」


 うーん、ここで自分が持ってる属性と被るって事態になったか。そりゃ闇属性を持ってる風音さんにとっては、必要ないものだよな。


「……誰か……使う?」

「ケイ、貰っておいたらどうだ? 何かの機会で使うかもしれんぞ」

「あー、まぁそういう機会もあるかもしれないけど……貰っていいのか? 物としては、まだまだレアなんじゃ――」

「……問題ないよ。……ケイさんは……侵食も使って……くれているし……その対価?」

「協力関係にしてるんだから、そこは考えなくてもいいんだけど……まぁそういう事なら遠慮なく!」

「……うん。……どうぞ」

「サンキュー、風音さん!」

「……どういたしまして」


 ササっと取引画面を操作して、俺の元へと『進化の軌跡・闇の純結晶』がやってきた! いつ使い所があるかは不明だけど、まぁ手札が広がったと考えればいいや。


「……全員の入手の確認は終わったが、ここからどうする?」

「あー、どうすっかな? 完全踏破は乱れた状態になったし……」

「あの場所から再開は無理そうだが……ケイ、そもそも侵食での索敵の効果は残りどの程度だ?」

「えーと……あと5分もないな。次に誰が使うのか考えないといけないかも?」

「はい! 『獲物察知』以外での様子が知りたいので、私が使ってみてもいいですか!? 『危機察知』でいけるのか、確認したいです!」

「……まぁそこの確認は必須か」


 うーん、この手段で誰でも察知は出来るようになってると思うから……多分、大丈夫なはず? あー、ソラさんの『鷹の目』は『獲物察知』の名前違いの性能だったはずだし、別スキルの参考情報にはならないか……。

 いや、俺らだけじゃないんだから、これは聞いてしまえばいい話だな! 博打が必要ならやるけども、やらずに済みならその方がいいしさ。


「十六夜さん、『縁の下の力持ち』でその確認をしてる人っている?」

「……いや、現状では確実に効果が見込める『獲物察知』での使用のみだな。まだ『進化の軌跡・侵食』の数が少なくて、試そうにも物がない」

「あー、そういう問題か……」


 うーん、まだまだレアアイテムなんだから、そういう事情があるなら博打も出来んよな。となれば……。


「よし、ハーレさん! 次は任せた!」

「任されました!」

「その進化は、俺の樹洞の中でだな?」

「だなー。絶対に見られないようにしとかないとマズいし……」


 迂闊に誰かに侵食への変質進化の様子を見られる訳にはいかない! 数がまだまだ少ないとはいえ、UFOの位置を察知出来る人は少ない方が俺らに利点は大きいんだしさ。


「あ、その場合、ハーレの復活はどうするのかな? 共生進化、解除になるよね?」

「はい! 『纏浄』で解除を狙ってみてもいいですか!?」

「おー、いいぞ。ただ、死ぬまでが早いから……試すなら、急げよ?」

「それは当然なのです!」

「間に合わなかった場合は、ログアウトして共生進化に戻す感じ?」

「多分、そうなるのさー!」


 まぁ流れとしては、順当にやればそんなもんか。問題は『危機察知』が俺の『獲物察知』と同様の効果を得られるかだけど……こればっかりは実際に試してみないとなんとも言えん! ぶっちゃけ、本来の『獲物察知』とはまるで効果の出方が違うから――


「ちょ!? そこ、瘴気の渦が濃くなってるんだけど!」

「え、急になんでかな!?」

「UFOはいないよ!? 反応は出てるの!?」

「いや、矢印は出てきてない!」

「おいおいおい、そうなるとこりゃ別の転移か!?」

「多分な! リコリスさん、ラジアータさん! 喧嘩はやめて、戦闘に備えてくれ! 何か、出てくるぞ!」

「へ? え、何事!?」

「ちっ、これは乱入クエストか!」

「……そうかも?」


 ここで考えられる可能性は、そうなってくるよなー! 名前としては『乱入クエスト:転移先を確保しろ』だっけ? 命名クエストが終わってないエリアが対象なんて話も聞いたけど……投票段階であっても、対象になってくるのか? うーん、分からん! あ、何かが転移して……って、おい!?


「わーっはっは! さーて、どこに出た……げっ!?」

「どういう確率をしてるんだろうな、イブキ!」

「そりゃこっちのセリフなんだけど!? やべぇ、この位置でこのメンバーはやべぇ!?」

「……逃がさない。……『ブラックホール』!」

「げっ!?」


 毎度、毎度……なんでこう目の前に転移してくるかね、イブキは! 風属性で緑色の龍の体表が黒く澱んでいるし、白いカーソルも黒く染まってきてる状態だから……どう見ても、乱入クエストを進めてる真っ最中か。なら、即座に仕留めてしまった方が――


「ケイさん、待て待て待て! 俺もここで殺されるのは不本意だし、ここは取り引きといこうじゃん!」

「……それだけの情報があるってか?」

「そうそう! 今の俺を味方に付ければ、今起きてるイベントの攻略に役立つぜ! UFOの位置が掴めるし――」

「それならもう手段を見つけてるから、乱入クエストを進めさせない方がメリットだな。命名クエストがあと少しで終わるのに、邪魔されてたまるか」

「うげっ!? 色々ともう筒抜け……って、インクアイリーの彼岸花3人衆がなんで……ちょ!? 灰の群集になってる!?」


 おー、イブキの焦った様子が伝わってくるけど……無所属では今、どういう事態になってるんだろうね? ちょっと気になりはするけど……まぁここでイブキを生かして帰すなんて理由はどこにもないか。


「……私たちはもう、灰の群集の『曼珠沙華』。ラジアータ、エレクトロエンチャント。リコリス、仕留めるよ。イブキさんはあちこちで戦闘を仕掛ける人だから、下手に残すのは危険!」

「珍しく対人戦でやる気だな、彼岸花。まぁ色々と噂は聞いてるし、それは同意だ! 『白の刻印:増幅』『エレクトロエンチャント』!」

「大暴れする人には、問答無用! 雷の付与と風属性相手にその指示って事は、これだね! 『アースクリエイト』!」

「……邪魔はさせない。『アイスクリエイト』!」

「ぎゃー!?」


 おー、地面に展開していた風音さんのブラックホールを突き破るように、大量の槍状の氷が地面から突き上がっていきますなー。これ、昇華魔法の『アイシクル』だっけ?

 昇華魔法を構成している片方の土属性って、風属性相手には効きにくいはずだけど……白の刻印で強化した『エレクトロエンチャント』で無理矢理に弱点化させてるね。氷属性は風属性に対して有利だし……いやー、こりゃエゲツない威力ですなー。


「毎回、毎回、なんでこうなる!? 俺、何かした!?」


 あ、でも流石に魔法に耐性を持つ龍なだけあって、今の攻撃でも生き残ってるか。……何かしたって、どう考えても敵として出てきてるじゃん。命名クエストがもうちょっとで終わるのに、変な不安要素は残せるかっての!


「サヤ、トドメは任せた!」

「色々と気にはなるけど、とりあえず倒させてもらうかな! 『連爪刃・閃舞』!」

「ちょ!? 気になる部分があるなら、もう少し話を……ぎゃー!」


 サヤの応用連携スキルでの連撃が綺麗に決まり、イブキは断末魔を残してポリゴンとなって消えていった。ふぅ、これで黒く染まった状態はリセットされるだろうし、命名クエストへの悪影響もないだろ。


 それにしても……さっきのイブキの反応は色々と気になる。あの黒く染まった状態では『侵食』で索敵してる状態と同じように見えてるっぽい?

 そうなると乱入クエストを受けている無所属勢は、邪魔な存在になりかねないな。協力関係を結ぶには相手の目的の悪影響が酷そうだし……あー、でも人によってはそういう選択をしてくるかも? うーん、ちょっと厄介な状態になってきた?


 

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