第1490話 UFOの動き
命名クエストの選択肢を選び終わった。どのエリア名になるか決まるまでは、このエリアに留まる事に決定。まぁ曼珠沙華が命名クエストをあまりした事がないって理由がなくても、普通に留まってそうではあるけど――
「おっしゃ! 1個、確保したぜ!」
「無茶な突っ込み方をしたと思ったら、すげぇな!?」
「紅焔、何が手に入りましたか!?」
「……無茶するよね。それで、本当に何が手に入ったんだ?」
「そう焦るなって! 揉みくちゃにされて、取得自体をまともに見れてないんだからよ! 一旦離脱だ、離脱! それから取得ログの確認だな!」
おっと、どうやら紅焔さん達の方に動きありっぽいね! 確か、氷樹の森にいて、ニーヴェア雪山方面にUFOが向かっていってたんだっけか?
落下物はなんとか1つ確保したみたいだけど、紅焔さん自身もまだ確認出来てないみたいだし、急かさずに待ちますかねー。
「おっし、なんとか距離は取れたな。さて、取得ログは……あー、手に入ったのは『進化の軌跡・投擲の極意』か。これ、使い道あんの?」
「正直、『投擲』は普段使いしない人でなければ微妙な気がしますね。ですが、普段から使う人はその特性は持っていますし……」
「いやいや、ライルさん! その判断は甘いぜ? 極意系の進化の軌跡は『純結晶』への素材になるからな。確かに、弾を常備する必要のある『投擲』は一時的な進化には向かないだろうが、アイテムとしての価値は十分あるぞ」
「……なるほど、言われてみれば確かにそうですね。素材としての優秀さというのはあるのですか」
「それなら、こりゃトレード向けのアイテムって事だな。桜花さん的にはありがたい代物か!」
「ま、そういう事になるな」
今回、入手した物で不要な物は桜花さんへ渡す事になってるし、『純結晶』の生成素材としては優秀だよねー。
とはいえ、まぁ極意系の進化の軌跡としては、性能は微妙なのは俺も思う。一時付与のスキルは応用スキルが連撃系とチャージ系が1個ずつだろうから……やっぱり、普段使いしてないと微妙な部分かも? でも、やっぱりそういう人はもう特性『投擲』は持ってるよな。
「あぅ……投擲が微妙と言われると、なんとも微妙な心境なのです……」
「ハーレ、ドンマイ? あ、でもサヤなら使えるんじゃない?」
「……確かに、状況次第では使えそうかな?」
「本当に状況次第だろうな。ケイと対戦してた時に、思いっきり投げまくってたし、ああいう場合には有効だろうよ」
「あー、木が飛んできまくってたもんなー」
「はっ! 確かにそうだったのさー!」
「……あはは、まぁそうかな?」
あの時は出来るだけサヤに距離を詰められないようにしたけど……近接メインだと思っている相手が、『投擲』での遠距離攻撃を仕掛けてくれば、完全に意表を突かれる形にはなるのか。……使えなさそうと断じた認識こそ、一番危険な状態かも?
「桜花さん、『投擲』も結構ヤバそう……いや、『投擲』こそヤバそうだから、素材にはしない方がいいかも?」
「ん? ケイさんからだと、そういう判定になるのか?」
「もし、サヤが『貫通狙撃』を使ってきたらって想定をしたら……とんでもなく危険な気がするからさ。想定してない距離からの攻撃が、一番油断しそうだし……対人戦、それも近接で知名度がある人ほど危険だと思う」
「……なるほど。そういう事なら、下手に素材にするのは勿体ないか?」
「むしろ、サヤ用に俺らが欲しいくらい?」
「え、私が使うのかな!?」
「ほら、俺らはハーレさんがいるから、投擲はハーレさんの仕業だと思われるだろ? それが実はサヤのものだったら――」
「あっ! そこに油断が出来るかな!?」
「ふっふっふ! その時こそ、私が狙い撃つチャンスなのです!」
「そうそう、そういう事!」
この場合、サヤの投擲は牽制や囮の役割になるから、命中精度は極端に外し過ぎなければ特に問題はない。どちらかといえば、ハーレさんの投擲を着実に撃ち込む為の手段だな。
「そうか、そういう使い道もありか! 桜花さん、この『進化の軌跡・投擲の極意』はサヤさんに渡すのでもいいか? 今のを聞いたら、ケイさん達の手札を増やすのに使った方がいい気がするぜ?」
「別にそれで問題ないぞ。今回は協力関係で動いてるんだし、俺の取り分は本当に誰も不要そうなもので――」
「……待て、桜花。ケイ、紅焔、彼岸花……今回、お前達はどういう条件で桜花と協力関係を結んでいる?」
「へ? あ、十六夜さんには説明してなかったっけ!?」
「……そういえば、言っていない?」
「そういやそうだな!」
後から協力関係になった十六夜には、この条件って伝わってなかったか。今聞いてくれなきゃ、本当に気付かずにスルーになってたかも?
「桜花さんは移動が出来ないから、俺らが手に入れた物の中でトレード可能で不要な物を桜花さんに進呈って事になってるぞ。あ、でも『縁の下の力持ち』に同じ条件を求めてはいないから、そこは合わせなくて大丈夫だからな!」
「……なるほど、そういう条件か。どうして不動種の桜花がこういう形で参加しているのかが疑問だったが、それを聞いて腑に落ちた。商人としては、十分な報酬になる訳か」
「そういう事になる。ま、何が手に入るかは最後までやってみないと分からんがな」
「……そこは、参加者の誰もが同じだがな。ケイは不要だと言ったが、『縁の下の力持ち』からも同様の提供はいるか?」
「ん? 俺としちゃうありがたい話だが……いいのか?」
「構わん。自分の不要物でいいのであれば、どちらにせよトレードに持ち込む事になるアイテムだ。貴重な索敵の為の情報と、この協力関係の報酬としてなら悪くはない」
「そりゃ、ありがたい話だな。なら、その言葉に甘えさせてもらうぜ」
「あぁ、それで決まりだ。それにこれであれば、俺らが桜花の元に出入りしていても不自然ではないだろう? いつでも俺が窓口になれる訳じゃないからな」
「……なるほど、近付く口実でもある訳か。それも了解だ」
ほほう? 確かにずっと十六夜さんが対応出来る訳じゃないだろうから、桜花さんへ情報を持ち込む時のカモフラージュにしようって狙いか! 受け渡す物が本当に不要物なら、不自然ではないもんな!
「えーと、みんな、ちょっといいかい?」
「ん? ソラさん、どした?」
「UFOに動きがあってね。雪山から逃げるように転移したみたいで、西の方で急に反応が現れたよ」
「マジか!? ソラ、ナイス情報だ! ライル、カステラ、辛子! すぐに移動するぞ!」
「えぇ、了解しました!」
「え、ちょ!? 僕、争奪戦の真っ只中なんだけど!?」
「置いていくぞ、カステラ」
「あー!? 本当に置いていかないでよ、辛子!?」
「なんか進展があったら、報告をよろしくなー!」
「もちろん、そのつもりさ。とりあえず、僕らはこれからUFOを追いかけていくよ」
「ほいよっと!」
ふむふむ、俺らが最初にUFOを見た時も黒の異形種に襲われてから逃げるように転移してたけど、その転移先の察知が可能なのはいいね。それに、1撃で完全に墜落する訳じゃないっぽいのも大きい情報かも?
「ケイさん、ケイさん! こっちでの反応はどうですか!?」
「あー、特にこれと言って目立った変化はないな。てか、もう効果時間が半分を切ったか……」
これ、どうやったって命名クエストの完了よりも先に効果が切れるよな……。サヤ達がそれぞれ『侵食』の進化の軌跡は持ってるから、すぐに効果自体は戻せるけど……それまでに補充の目処は立てておきたいね。
「桜花さん、そっちは不要な持ち込みは来てる?」
「いや、今はまだ特にはねぇな。一応、不動種仲間にも聞いてみてはいるが……まだ『侵食』の進化の軌跡の入手情報はないぜ」
「そう都合よくはいかないか……」
うーん、根本的に大多数の人が闇雲にノーヒントで探している段階だろうし……手に入れてたとしても、不用品としてトレードに出しに来るのはまだ先の話だよなー。
「……ケイ、丁度いい内容がこちらで出てきたぞ。『侵食』の進化の軌跡を入手した奴が出た」
「マジで!? 十六夜さん、それは良い情報!」
よし! 入手率がどの程度のものかは分からないけど、それでも落下物の中から出てくるのが確定したのは大きい! さっきの紅焔さんの『投擲の極意』の進化の軌跡の入手と合わせて考えれば、変質進化用の進化の軌跡の入手率は意外と悪くないのかも!
「はい! 十六夜さん、それはどこのエリアでの落下物ですか!? 行ける場所ですか!?」
「……場所は、ネス湖の水中だそうだ。今は落下場所には人は少ないみたいだが、落下中の目撃者はそれなりにいるようだから……今から向かって手に入れるのは現実的ではないな」
「あぅ……。全然近くなかったのさー!?」
「……それは……仕方ないね」
うん、それは本当に風音さんの言う通り。近くなら取りに行くのもありだろうけど、ネス湖は流石にここからは遠い! ……あれ? でも、UFOが動く様子ってあったっけ?
「私達は戦闘中だったんだし、見落としていた可能性もあるんじゃないかな?」
「あー、まぁそれもあるかも……」
サヤやハーレさんなら見落とす可能性は低いんだろうけど、俺は絶対に見落とさないと断言する自信はないわ!
「……ケイさんが察知する前に、既に降りていた可能性は?」
「あ、それもありそう! すぐに完全に撃墜される訳でもないっぽいし、あちこちを移動しながら落としてるのかも!」
「その可能性は確かにある……いや、待て。あのルストさんが見つけていた落下物も、その1つか? 群雄の密林でダメージを受けたUFOがここに転移をして、その際に落とした物という可能性もあるだろう?」
「あー、確かにそれも可能性としてはありそうだなー」
とはいえ、追跡が出来てた訳じゃないから、ラジアータさんの推測を肯定する材料もないんだよなー。むしろ、ルストさんが見つけたのが先で、1個目の落下物かもしれない――
「って、いきなり反応が出た!?」
「っ!? ケイ、どっちかな!?」
「西の方! これ、近……って、すぐ目の前じゃん!?」
ちょ!? 澱んだ黄色い矢印が出たと思って、その方向を向いたら、煙を上げてる歪んだ空間があるんだけど! どう見ても、光学迷彩が半端に壊れた状態のUFOだろ、これ! よし、すぐに――
「ラジアータ、いつものパターンで! 『アクアクリエイト』『水の操作』!」
「分かっている! 『並列制御』『エレクトロエンチャント』『エレクトロインパクト』!」
おっ、反応が早い! あっという間に水で包み込んで、そこに電気を流しているね。
「……捕まえる! 『アイスクリエイト』『氷の操作』!」
おー、しかも水を覆うように氷で包んで、逃亡も防ぐか。へぇ、動きに迷いがないし、連携精度はバッチリっすなー。さて、ここから本格的に墜として――
「おぉ!? UFOが爆発……あー!? どこかに消えたのさー!?」
「……転移で逃げられた?」
「捕獲は出来ないのかな!?」
「おいおい、あの状態からでも逃げられるのかよ」
「どうもそうっぽいなー」
うーん、まさかあの状態からでも逃亡してしまうのは予想外……。今ので捕まえておけないのなら、拘束するんじゃなくて、一気に高火力の攻撃を叩き込んだ方がいい?
いや、結構な威力の攻撃は当てたんだし、あれでも撃墜するには威力が不足なのか……。うーん、今の以上となると……何人かで一斉に大技を叩き込むか、昇華魔法でも叩き込む?
「……落下物は、残ったよ?」
「お、マジだな! おし、各自1個ずつ確保! リコリスさん、水の操作は解除しといてくれ。彼岸花さんは、氷でみんなが回収するまで保持をよろしく! あ、取りやすいように下に降ろすのも頼む」
「はいはいっと。水の操作、解除!」
「……うん」
「ふっふっふ! 何が出るか、お楽しみなのさー!」
「良い物、出てきてかな!」
「人数分以上はありそうだね、これ」
ビックリするようなUFOの出現だったけど……ダメージが蓄積してれば、意外と見つけやすいな。降りてきたばかりのUFOを探すのが難しいだけなのかも?
まぁはっきりと姿は分からないままだから、未確認飛行物体って事には変わらないままか。でも、生物感がないのは間違いないっぽいよなー。なんか煙は出てたし、爆発もしてたしさ。
「あ、人が集まり始めたか。みんな、回収を急げ! 回収が済んだら、この場を離れるからな!」
「……その方が……いいね」
「……あぁ、同感だ。残っても良い事はないだろうよ」
囲まれても面倒だから、俺もささっと彼岸花さんの氷の上に降りて回収していこ。色々考えるのは、その後からでも問題はないだろうしね。
「さっき、グリーズ・リベルテの近くで煙が上がってたよな!?」
「今度こそ、何かあるかも!」
「おい見ろ! 氷で何かを持ち上げてるぞ!」
「さっきはただのフィールドボスとの戦闘みたいだったけど、今度はそうじゃないっぽい!」
「急げ、急げ、急げ!」
「取らせてたまるか! 『ウィンドクリエイト』『強風の操作』!」
「おわっ!? ちっ、やりやがったな!」
「構うな! 一気に駆け抜けて――」
「「『エレクトロクリエイト』!」」
「「「「ぎゃー!」」」」
「ちょ!? 昇華魔法!?」
「あれを取るのは我らだ。なぁ、疾風の!」
「取りに行きたいなら、俺らを倒す事だな。なぁ、迅雷の!」
「げっ!? 風雷コンビ!?」
「相手にしてられるか! 『自己強化』『飛翔疾走』!」
「移動、任せるぜ! 『根の操作』!」
「ちょ!? ザックさん、人を移動に使うな!?」
……なんか聞こえてくる声がとんでもない事になってるし、本当に巻き込まれないうちに退散してしまおう! 完全に奪い合いの戦闘が始まってるしさ。
しかもその戦場の中に風雷コンビやザックさんがいるとか、冗談抜きでやってられるか! そりゃまぁ、イベントに参加してるのなら知り合いがこうやって出てくるのも当然だろうけどさ!
「よし、確保完了! まだ取れてない人はいるか!?」
……慌ただしい状態になってきたけど、誰からも特に反応はない。うん、どうやら全員確保済みになったみたいだね。
「アル、全力でこの場を離れる! エリアの端くらいまで進んでくれ!」
「おうよ! 『自己強化』『高速遊泳』!」
紅焔さんが確保してすぐに内容を確認出来なかった理由が、今よーく分かったよ! これ、確保は出来ても、その内容を確認をしてる余裕が全然ないわ! こういう状態になってくるなら、まずその場から離れないとどうしようもないよなー!?
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